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2.教会でいつも見かける人
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あれから月日は流れ、私は18歳になっていた。
私は仕事に向かう前に、いつも教会に寄る。
これを1年程続けていた為、気付けば教会に行くことは生活の一部になっていた。
私が教会に行く時間は大体昼前だ。
そしてこの時間はほとんど人はいないのだが、一人だけ毎日見かける人物がいる。
その人はいつも左奥の一番後ろの席に座っている。毎日見かけるので気になっていた。
(あの人、今日も来てる…)
銀色のサラサラとした髪に、濃い緑の瞳。綺麗な顔立ちをしているが、その表情は暗く何か心に深い闇を抱えている様に見えた。
そんな重たい雰囲気を纏っている為、気になってはいるけど一度も声を掛けたことは無かった。
きっと、あの人は私よりもずっと前から教会に通っているのだろう。
なんとなくそんな気がした。
私はそんなことを考えながら中央の通路を歩いて、一番前まで行くと真ん中の席に腰掛けた。
そして胸の前で手を組んで、目を瞑った。
こうやって深く深呼吸をしていると、心が澄んだ気持ちになり、とても落ち着く。
(今日もジルが元気でいますように…)
恋人であるジルの姿を頭の中に思い浮かべて、無事を祈った。
(よし、私も今日も頑張ろっ…!)
そう自分に言い聞かせると、ゆっくりと目を開けて席を立った。
滞在時間は10分程度だ。
扉に向かい歩きながら、一番奥の席に座るあの人の方にちらっと視線を向けた。
普段ならただ前を向いてぼーっとしているのだが、私の視線に気付いたのか此方の方へと視線を向けてきたので一瞬目が合ってしまう。
(……っ…!?)
私は突然の事に動揺してしまい、露骨に視線を逸らしてしまった。
(び、びっくりした…!)
胸の鼓動が速くなるのを感じ、私は胸に手を当てて心を落ち着かせようとしながら足早に教会から出た。
(まさか目が合うなんて…。どうしよう…、私がじっと見ていたの気付かれたかも…)
私が教会の前に立ち止まり、動揺しながらそんなことを考えていると「なぁ…」と後ろから声が響いた。
私はドキッとし心臓を跳ね上げてしまうが、恐る恐る振り返ると目の前にはあの人が立っていた。
「こ、こんにちはっ…!」
突然の事で私は動揺してしまい、気付けば慌てるように挨拶をしていた。
「……ああ。これ、お前のじゃないか?」
「え…?」
そう言うと彼は私の前で掌を開いた。
その中には母の形見である指輪が入っていた。
(……っ…!!)
「昨日教会の入口の所に落ちてるのを見つけたんだ。俺が来る前は落ちてなかったから、お前のだと思ったんだけど…。その反応を見る限り間違って無さそうだな」
「あ、ありがとうございますっ…!これ大事な物なんです…」
私は指輪を受け取ると、ぎゅっと大事そうに握った。
(いつの間に落としていたんだろう。こんなに大事な物を落として気付かないとか…私バカだ…)
「大事な物なら、もう落とすなよ。お前どんくさそうだもんな…」
「ひ、酷いっ…!そんなことありませんっ…!」
急にそんな失礼な言葉を言われて、私はむっとしながら彼を睨みつけた。
「そうか?良く転びそうになったり、物を落としたりしてるよな?」
「なんで、知ってるんですかっ…」
「なんでって…、そんな姿を割と良く見かけるからな…」
「……っ…!」
そんな恥ずかしい姿を見られていたなんて…と思うと、消えたくなった。
「そうだ、お前に良い物やるよ。指輪ちょっと貸して…」
「え…?」
そう言って私の手を掴み、掌の中にあった指輪を取ると、ポケットから取り出したシルバーのチェーンに通した。そして私の方に近づき、首に指輪のかかったネックレスを付けてくれた。
突然彼との距離が急接近して、私はドキドキしてしまう。
「こうしておけば落として無くすこともないだろ?」
「あ、ありがとうございますっ…」
「別にいいよ。大したものじゃないしな。じゃあな…」
「あ、待ってくださいっ…!」
私は思わず呼び止めてしまった。
「何?まだ何か用か?」
「あのっ…、お名前を伺っても宜しいですか?私はニナって言います。いつもこの教会に来てますよね…」
「俺はレオンハルト。レオンって呼んでくれればいい。俺もそうだけど、お前も毎日いるよな」
「レオンさんですねっ、覚えました!ずっと気になっていたんです…」
「俺の事が…?」
「はい…。毎日来ているし、ずっと声を掛けたいなって思っていたんですが…中々掛けられなくて…」
私が困った顔で答えると、レオンは悪戯っぽく笑い「俺の追っかけか?」と冗談でぽく言って来たので、私はむっとしながら「違います!」と勢い良く反論した。
「私にはちゃんと恋人がいるのでっ…!それは無いです…」
「そうか…」
「あ、そうだっ…。レオンさんてこの辺に住んでいる方ですか?」
「どうしてそんなことを聞くんだ?」
「私、この近くの食堂で働いているんです!割引券あげますっ!これのお礼ですっ…。なので良かった是非来てくださいっ!」
私は鞄の中から紙切れを取り出すと、レオンに手渡した。
そして指輪に手を添えて、笑顔を見せた。
「ぷっ…、割引券か」
「…っ、ごめんなさいっ…今これしかあげられそうなもの持ってなくて。だけど美味しいって評判のお店なので!レオンさんが来てくれたら私嬉しいですっ…!」
笑われて恥ずかしくなったが、何かお礼をしたかった。だけど思いつくものはこれしか無かった。
(割引券じゃなくて、無料券を持っていれば良かったなぁ…)
「ニナはこれから仕事なのか?」
「え…?はい、そうですけど…」
初めて「ニナ」と名前を呼ばれてドキッとしてしまった。
「そうか、ならこれから行くか。丁度昼時だしな…」
「そ、そうですね!行きましょうっ!私、案内しますっ…」
これからと言われて私は驚いてしまったが、私の好意に答えてくれるレオンに嬉しくなった。
ずっと話しにくい人だと思っていたけど、実はこんなにも話しやすい人だったのだと知ると、もっと早くに声を掛けておけば良かったと後悔した。
私は仕事に向かう前に、いつも教会に寄る。
これを1年程続けていた為、気付けば教会に行くことは生活の一部になっていた。
私が教会に行く時間は大体昼前だ。
そしてこの時間はほとんど人はいないのだが、一人だけ毎日見かける人物がいる。
その人はいつも左奥の一番後ろの席に座っている。毎日見かけるので気になっていた。
(あの人、今日も来てる…)
銀色のサラサラとした髪に、濃い緑の瞳。綺麗な顔立ちをしているが、その表情は暗く何か心に深い闇を抱えている様に見えた。
そんな重たい雰囲気を纏っている為、気になってはいるけど一度も声を掛けたことは無かった。
きっと、あの人は私よりもずっと前から教会に通っているのだろう。
なんとなくそんな気がした。
私はそんなことを考えながら中央の通路を歩いて、一番前まで行くと真ん中の席に腰掛けた。
そして胸の前で手を組んで、目を瞑った。
こうやって深く深呼吸をしていると、心が澄んだ気持ちになり、とても落ち着く。
(今日もジルが元気でいますように…)
恋人であるジルの姿を頭の中に思い浮かべて、無事を祈った。
(よし、私も今日も頑張ろっ…!)
そう自分に言い聞かせると、ゆっくりと目を開けて席を立った。
滞在時間は10分程度だ。
扉に向かい歩きながら、一番奥の席に座るあの人の方にちらっと視線を向けた。
普段ならただ前を向いてぼーっとしているのだが、私の視線に気付いたのか此方の方へと視線を向けてきたので一瞬目が合ってしまう。
(……っ…!?)
私は突然の事に動揺してしまい、露骨に視線を逸らしてしまった。
(び、びっくりした…!)
胸の鼓動が速くなるのを感じ、私は胸に手を当てて心を落ち着かせようとしながら足早に教会から出た。
(まさか目が合うなんて…。どうしよう…、私がじっと見ていたの気付かれたかも…)
私が教会の前に立ち止まり、動揺しながらそんなことを考えていると「なぁ…」と後ろから声が響いた。
私はドキッとし心臓を跳ね上げてしまうが、恐る恐る振り返ると目の前にはあの人が立っていた。
「こ、こんにちはっ…!」
突然の事で私は動揺してしまい、気付けば慌てるように挨拶をしていた。
「……ああ。これ、お前のじゃないか?」
「え…?」
そう言うと彼は私の前で掌を開いた。
その中には母の形見である指輪が入っていた。
(……っ…!!)
「昨日教会の入口の所に落ちてるのを見つけたんだ。俺が来る前は落ちてなかったから、お前のだと思ったんだけど…。その反応を見る限り間違って無さそうだな」
「あ、ありがとうございますっ…!これ大事な物なんです…」
私は指輪を受け取ると、ぎゅっと大事そうに握った。
(いつの間に落としていたんだろう。こんなに大事な物を落として気付かないとか…私バカだ…)
「大事な物なら、もう落とすなよ。お前どんくさそうだもんな…」
「ひ、酷いっ…!そんなことありませんっ…!」
急にそんな失礼な言葉を言われて、私はむっとしながら彼を睨みつけた。
「そうか?良く転びそうになったり、物を落としたりしてるよな?」
「なんで、知ってるんですかっ…」
「なんでって…、そんな姿を割と良く見かけるからな…」
「……っ…!」
そんな恥ずかしい姿を見られていたなんて…と思うと、消えたくなった。
「そうだ、お前に良い物やるよ。指輪ちょっと貸して…」
「え…?」
そう言って私の手を掴み、掌の中にあった指輪を取ると、ポケットから取り出したシルバーのチェーンに通した。そして私の方に近づき、首に指輪のかかったネックレスを付けてくれた。
突然彼との距離が急接近して、私はドキドキしてしまう。
「こうしておけば落として無くすこともないだろ?」
「あ、ありがとうございますっ…」
「別にいいよ。大したものじゃないしな。じゃあな…」
「あ、待ってくださいっ…!」
私は思わず呼び止めてしまった。
「何?まだ何か用か?」
「あのっ…、お名前を伺っても宜しいですか?私はニナって言います。いつもこの教会に来てますよね…」
「俺はレオンハルト。レオンって呼んでくれればいい。俺もそうだけど、お前も毎日いるよな」
「レオンさんですねっ、覚えました!ずっと気になっていたんです…」
「俺の事が…?」
「はい…。毎日来ているし、ずっと声を掛けたいなって思っていたんですが…中々掛けられなくて…」
私が困った顔で答えると、レオンは悪戯っぽく笑い「俺の追っかけか?」と冗談でぽく言って来たので、私はむっとしながら「違います!」と勢い良く反論した。
「私にはちゃんと恋人がいるのでっ…!それは無いです…」
「そうか…」
「あ、そうだっ…。レオンさんてこの辺に住んでいる方ですか?」
「どうしてそんなことを聞くんだ?」
「私、この近くの食堂で働いているんです!割引券あげますっ!これのお礼ですっ…。なので良かった是非来てくださいっ!」
私は鞄の中から紙切れを取り出すと、レオンに手渡した。
そして指輪に手を添えて、笑顔を見せた。
「ぷっ…、割引券か」
「…っ、ごめんなさいっ…今これしかあげられそうなもの持ってなくて。だけど美味しいって評判のお店なので!レオンさんが来てくれたら私嬉しいですっ…!」
笑われて恥ずかしくなったが、何かお礼をしたかった。だけど思いつくものはこれしか無かった。
(割引券じゃなくて、無料券を持っていれば良かったなぁ…)
「ニナはこれから仕事なのか?」
「え…?はい、そうですけど…」
初めて「ニナ」と名前を呼ばれてドキッとしてしまった。
「そうか、ならこれから行くか。丁度昼時だしな…」
「そ、そうですね!行きましょうっ!私、案内しますっ…」
これからと言われて私は驚いてしまったが、私の好意に答えてくれるレオンに嬉しくなった。
ずっと話しにくい人だと思っていたけど、実はこんなにも話しやすい人だったのだと知ると、もっと早くに声を掛けておけば良かったと後悔した。
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