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第二部

42.嵐の日の来客者

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シリルと並んで廊下を歩いていると、前から執事がやって来た。

「シリル様、こちらにいらっしゃいましたか…」
「どうかしたのか…?」
どうやら執事はシリルの事を探している様子だった。

「シリル様にお会いしたいと言う方が来られてまして…」
「こんな日にか…?誰だ…?」
シリルにそう聞かれると執事は困った様な顔をしていた。

確かにこんな荒れた日にやって来るとは、急な用事でもあるのだろうか。
私はシリルの横で、大人しくその光景を眺めていた。

「エレノア様が、お越しになっております。応接間の方で待って頂いているのですが…どうされますか?」
「………」
その名前を聞くと、シリルの表情が一瞬強張った様に見えた。

私はエレノアと言う名前に聞き覚えがあり、何処であったのか頭の中で思い出していた。

(…あの時の人だ…。アレクシア公爵の葬儀の時に会った…綺麗な人…)

「……アリア、すまない。聞いての通り来客だそうだ、俺は少し話して来るから…アリアはどうする?俺の部屋で待っていても良いし、自分の部屋に戻っても構わないが…」
「来客なら仕方ないですね。私は自分の部屋に帰ります…」
どれくらい時間がかかるかも分からないし、私がシリルの部屋で待っていたら気を遣わせてしまうかもしれないと思い、私はそう答えた。

「そうか、ごめんな…。雷、怖いのに…」
「……っ…大丈夫ですっ…」
シリルは申し訳なさそうに言っている様で、小さく笑っていて少しからかわれている様な気さえした。
私は恥ずかしくなり慌てて答えた。

「それじゃあ、アリア…またな…」
「はい…」
挨拶を済ますと私はぺこっと軽く頭を下げて自分の部屋へと戻ることにした。

正直、雷は怖いけど仕方が無い。



***


自室に戻ると、私はベッドの上に座った。
そして前に会ったエレノアの事を思い出していた。

(エレノアさんって…シリル様と何かありそうな雰囲気があったけど…どういう関係なんだろう…)

以前エレノアと会った時、シリルは不機嫌そうな態度を取っていた。
私にはあからさまにエレノアの事を避けようとしている様に見えた。
二人の間に何があったんだろうと気にはなっていた。
だけど…、その時の私はローレンの件があったから深く考える余裕がなくて、すっかり忘れてしまっていた様だ。

シリルは嫌悪感を抱いている様に見えたが、エレノアはシリルに対して親近感を持って近づいていたように見えた。
それに家までやってくる位なのだから、親しい関係であるのは間違いないだろう。

二人が一体どんな関係なのか少し気になったが、私が聞いても良い事なのかはわからない。
特に何もないなら、シリルから話してくるだろうと思って、その時の私は大して気にはしなかった。


「……折角借りて来たし、本でも読もうかな…」
私は持って来た本を手に取ると、ページを捲り読み始めた。

時折窓の奥で光っては、鳴り響く雷音にビクッと体を震わせて、それでも必死に本を読もうとするが全く集中なんて出来なかった。
予測できない雷に怯えて、ついつい窓の方ばかり気にしてしまう。

(やっぱり無理だ…!本なんて読めっこない…)

私は本を横に置くと、窓の奥を睨んだ。
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