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第二部
38.満たされない日々-sideローレン-
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アリアが俺の前から居なくなって半年が過ぎた。
あの日から俺の心はぽっかりと穴が開いてしまった様だ。
何をしても心が満たされることはなかった。
アリアに会いたい。
アリアに触れたい。
アリアに満たされたい…。
思う事はそればかりだ。
俺は心の底からアリアを、アリアだけを愛していた。
それは今も変わることはない。
そんなある日の事だった。
俺の前にある女がやって来た。
彼女の名前はエレノア。
俺の父の妾だった女だ。
元は高級娼館にいたらしいが、父が大金を払い身請けさせたらしい。
俺は数回見かけただけで話したことはない。
一体…今頃になって俺の所に会いに来るだなんて、金をせびりにでも来たのだろうか。
本当は会うのも面倒で断ろうと思っていた。
しかしどうしても俺に話したい事があるとの事らしい。
しかもその内容が『アリア』に関しての事だと言う。
その言葉を聞いた瞬間、会う事にした。
今の俺はアリアの事なら何でも知りたかった。
***
エレノアがいる応接間に入ると、彼女は俺に気付き視線があった。
俺のタイプでは無いが、見た目は色っぽくて綺麗な女だった。
俺に気付くとエレノアはソファーから立ち上がり、俺に微笑みかけた。
「ローレン様、突然こちらに伺ってしまい申し訳ありません…」
「挨拶は要らない、…アリアの話を聞きたい」
俺は対面する様にエレノアとは逆のソファーに腰掛けた。
「はい…。アリア様が…今どこにいるのかご存知ですよね?」
「ああ、ライラッド国にいるんだろう?」
「その通りです…。ローレン様は、アリア様を…とても愛していらっしゃるのですよね?」
「当然だ、アリアは俺のモノだったのに……っ…あの男に奪われた…」
今でもこんなにもアリアの事を思っている。
アリアは俺のモノだったのに…。
あの男さえ現れなければ、今頃アリアは俺の妻になっていたはずだ…。
そう思うと、全てをおかしくさせたシリルに対して怒りが込み上げてくる。
「悔しいですよね…、愛している人を奪われる悲しみ…苦しみは私も知っています。だから…ローレン様の気持ちがどれ程のものかお察しします」
「お前は、俺を慰めに来たのか…?」
俺が苛々とした口調で聞き返すと、エレノアはクスっと小さく笑った。
「そんなことをしてもローレン様の心は癒されませんよね?貴方の心を癒せるのはアリア様だけ…、だから…アリア様を取り返しませんか?元々はローレン様のモノだったのだから、返してもらうのは当然の事です」
「……どうやって?相手は王子だぞ…?」
俺だって手段があるのなら、すぐにでもアリアを取り返したい。
だけど他国の、しかも王子に匿われている以上取り返すことが困難なのは分かっている。
「まぁ、そうですね…。でも彼女はシリル王子のいる屋敷で雇われている只のメイド…。まだシリル王子の婚約者でも恋人でもない…。ならば、取り返すのはそう難しくはないと思います…」
「…アリアを…取り戻せるのか!?」
「はい、勿論です。私がそのお手伝いを致します。必ず…貴方の元に彼女をお戻しするとお約束致しましょう…」
「報酬は何だ?」
「とりあえず…お金、とでも言っておきましょうか…。だけど貴方なら簡単に支払える額です。ですが…少し強引なやり方をしますので、彼女を手に入れたら…なるべく人目に付かないようにさせて下さいね」
「……分かった」
「それでは…交渉は成立と言う事で…宜しいですね…」
「ああ…。だけど…どうしてお前はアリアの事を知っているんだ?金の為に俺の事を調べたのか…?」
「ふふっ…、復讐ですよ…。私の人生をおかしくさせた…あの男への…ね…」
エレノアの瞳からは奥深い闇を感じた。
恐らく彼女はこちら側の人間なのだとすぐに察知した。
彼女が指す、『あの男』と言うのは恐らくシリルの事だろう。
そんな気がした。
だけど…俺はアリアさえ手に入れば、他の事はどうでも良かった。
あの日から俺の心はぽっかりと穴が開いてしまった様だ。
何をしても心が満たされることはなかった。
アリアに会いたい。
アリアに触れたい。
アリアに満たされたい…。
思う事はそればかりだ。
俺は心の底からアリアを、アリアだけを愛していた。
それは今も変わることはない。
そんなある日の事だった。
俺の前にある女がやって来た。
彼女の名前はエレノア。
俺の父の妾だった女だ。
元は高級娼館にいたらしいが、父が大金を払い身請けさせたらしい。
俺は数回見かけただけで話したことはない。
一体…今頃になって俺の所に会いに来るだなんて、金をせびりにでも来たのだろうか。
本当は会うのも面倒で断ろうと思っていた。
しかしどうしても俺に話したい事があるとの事らしい。
しかもその内容が『アリア』に関しての事だと言う。
その言葉を聞いた瞬間、会う事にした。
今の俺はアリアの事なら何でも知りたかった。
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俺のタイプでは無いが、見た目は色っぽくて綺麗な女だった。
俺に気付くとエレノアはソファーから立ち上がり、俺に微笑みかけた。
「ローレン様、突然こちらに伺ってしまい申し訳ありません…」
「挨拶は要らない、…アリアの話を聞きたい」
俺は対面する様にエレノアとは逆のソファーに腰掛けた。
「はい…。アリア様が…今どこにいるのかご存知ですよね?」
「ああ、ライラッド国にいるんだろう?」
「その通りです…。ローレン様は、アリア様を…とても愛していらっしゃるのですよね?」
「当然だ、アリアは俺のモノだったのに……っ…あの男に奪われた…」
今でもこんなにもアリアの事を思っている。
アリアは俺のモノだったのに…。
あの男さえ現れなければ、今頃アリアは俺の妻になっていたはずだ…。
そう思うと、全てをおかしくさせたシリルに対して怒りが込み上げてくる。
「悔しいですよね…、愛している人を奪われる悲しみ…苦しみは私も知っています。だから…ローレン様の気持ちがどれ程のものかお察しします」
「お前は、俺を慰めに来たのか…?」
俺が苛々とした口調で聞き返すと、エレノアはクスっと小さく笑った。
「そんなことをしてもローレン様の心は癒されませんよね?貴方の心を癒せるのはアリア様だけ…、だから…アリア様を取り返しませんか?元々はローレン様のモノだったのだから、返してもらうのは当然の事です」
「……どうやって?相手は王子だぞ…?」
俺だって手段があるのなら、すぐにでもアリアを取り返したい。
だけど他国の、しかも王子に匿われている以上取り返すことが困難なのは分かっている。
「まぁ、そうですね…。でも彼女はシリル王子のいる屋敷で雇われている只のメイド…。まだシリル王子の婚約者でも恋人でもない…。ならば、取り返すのはそう難しくはないと思います…」
「…アリアを…取り戻せるのか!?」
「はい、勿論です。私がそのお手伝いを致します。必ず…貴方の元に彼女をお戻しするとお約束致しましょう…」
「報酬は何だ?」
「とりあえず…お金、とでも言っておきましょうか…。だけど貴方なら簡単に支払える額です。ですが…少し強引なやり方をしますので、彼女を手に入れたら…なるべく人目に付かないようにさせて下さいね」
「……分かった」
「それでは…交渉は成立と言う事で…宜しいですね…」
「ああ…。だけど…どうしてお前はアリアの事を知っているんだ?金の為に俺の事を調べたのか…?」
「ふふっ…、復讐ですよ…。私の人生をおかしくさせた…あの男への…ね…」
エレノアの瞳からは奥深い闇を感じた。
恐らく彼女はこちら側の人間なのだとすぐに察知した。
彼女が指す、『あの男』と言うのは恐らくシリルの事だろう。
そんな気がした。
だけど…俺はアリアさえ手に入れば、他の事はどうでも良かった。
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