63 / 72
第二章
63.不満と不安
しおりを挟む
あの光景を見てしまったことで、私の心は一日中靄がかかったかの様にどんよりとしていた。
ロランが嘘を付いたこと。
そして未だにそのことを打ち明けてくれないことに不満を感じてしまう。
授業が終わると私とロランは普段通り、同じ馬車に乗り屋敷までの道のりを移動していた。
ガタガタガタ……、と車輪の回る音が響く。
私もロランも先程から口を閉ざしたままだ。
(どうして、何も話してくれないの。私には話せないことなのかな……)
この状況が更に追い打ちをかけるかのように、私の不安を増大させていく。
ロランは先程から窓の奥をじっと見つめ黙ったままだ。
私が目の前にいるのに、そのことすら忘れている様に見えて胸が締め付けられる。
「ロラン……」
私は我慢出来なくなり、ゆっくりと口を開いた。
「…………」
しかしロランは私の呼びかけには全く気付かない程、考え事に没頭しているようだ。
ロランの態度に私の表情は次第に厳しくなる。
眉間に皺を寄せ、しかめっ面で視線を送っているが相変わらず反応は無い。
(なによ。今一緒にいるのは私なのに……)
そんな時、突然馬車が激しく揺れた。
「……きゃっ」
私はその衝撃で小さく声を漏らしてしまう。
今の揺れでロランはハッと我を取り戻したかのように、私の方へと視線を向けた。
そして漸くこちらへと視線を向けた。
「シャル、大丈夫か?」
「…………」
私は今更声をかけて来たことへの不満から『ふんっ』と視線を逸らし無視をした。
「シャル……?」
私のとった態度にロランは驚いた顔をしていた。
普段の私なら、こんなこと位でここまであからさまに嫌な態度をみせたりはしない。
だけど今日は違う。
一日中やもやしていたのは確実にロランの所為だし、その上何も言ってくれない態度に苛立ちは限界値を達していた。
あの時は傍にジェラルドもいたから話しづらいのかな、なんて思ったりもした。
だから馬車の中で、二人っきりになったタイミングで事情を話してくれるんじゃないかと密かに期待していた。
だけど未だにロランは何も話してくれない。
やっぱりあの時ルチアと会っていたのは、隠したいことだったのだろうか。
そんな風に考えてしまう。
「もしかして怒っているのか?」
ロランは困ったように呟いた。
私はロランの言葉に再び顔を顰めた。
今のロランの顔は、明らかに何故怒っているの分からないと言っているように見えたからだ。
「なんで、そう思うの?」
「なんでって……。そんな顔を見せられたら普通気付くだろ。俺、シャルに何かしたか?」
ロランの言葉で私の心は再び揺さぶられる。
心の奥がざわつき、不安という感情にぎゅっと締め付けられているようだ。
私は一瞬悲しそうな顔を浮かべてしまう。
「別に、なんでもない」
「何でも無いわけないだろう。もしかして、ジェラルドになにかされたのか?」
私が目を逸らして小さく呟くと、ロランは直ぐさま言い返してきた。
ジェラルドの名前が聞こえ、私は再びロランの方に視線を向けた。
「ジェラルドは関係ないよ。何もされてないし。課題を今度一緒にやろうって誘われただけ」
「ああ、あれか。違うのなら、シャルの機嫌を損ねているのは一体何なんだ?」
思わず『ロランだよ!』と言いたくなったが、その言葉をぐっと呑み込んだ。
ロランは全く心当たりがないという顔をしていたからだ。
もしかしたらルチアに会っていたのは本当に偶然で、ロランにとっては大したことではなかったのかもしれない。
だけど、それならどうしてあの時私を探していたなんて嘘を言ったのだろう。
ロランに嘘を付かれることが、こんなにも辛いだなんて思いもしなかった。
今この場でその事を問い詰めたらロランはどんな態度を示すのだろう。
「シャル?話してくれないか?黙ったままじゃ分からないぞ」
「……それは。ロランは心当たりないの?」
「俺?……やっぱり俺が何かしたのか?」
(本当に分からないの?)
私は自分の手をぎゅっと握りしめた。
そしてゆっくりと口を開く。
「今日、見ちゃったの」
「何を?」
「ロランが、……あの子とベンチに座って話してるところ」
「…………」
一瞬ロランの表情が強張って見えた様な気がした。
なにかまずいものを見られたといったような顔だ。
「あの時、ロラン言ったよね。私を探していたって。どうして本当のことを言わなかったの?」
「……そうか、あれを見られていたのか」
私が思いきって打ち明けると、ロランは深くため息を漏らして静かに答えた。
(やっぱり隠そうとしていたの……?)
ロランが嘘を付いたこと。
そして未だにそのことを打ち明けてくれないことに不満を感じてしまう。
授業が終わると私とロランは普段通り、同じ馬車に乗り屋敷までの道のりを移動していた。
ガタガタガタ……、と車輪の回る音が響く。
私もロランも先程から口を閉ざしたままだ。
(どうして、何も話してくれないの。私には話せないことなのかな……)
この状況が更に追い打ちをかけるかのように、私の不安を増大させていく。
ロランは先程から窓の奥をじっと見つめ黙ったままだ。
私が目の前にいるのに、そのことすら忘れている様に見えて胸が締め付けられる。
「ロラン……」
私は我慢出来なくなり、ゆっくりと口を開いた。
「…………」
しかしロランは私の呼びかけには全く気付かない程、考え事に没頭しているようだ。
ロランの態度に私の表情は次第に厳しくなる。
眉間に皺を寄せ、しかめっ面で視線を送っているが相変わらず反応は無い。
(なによ。今一緒にいるのは私なのに……)
そんな時、突然馬車が激しく揺れた。
「……きゃっ」
私はその衝撃で小さく声を漏らしてしまう。
今の揺れでロランはハッと我を取り戻したかのように、私の方へと視線を向けた。
そして漸くこちらへと視線を向けた。
「シャル、大丈夫か?」
「…………」
私は今更声をかけて来たことへの不満から『ふんっ』と視線を逸らし無視をした。
「シャル……?」
私のとった態度にロランは驚いた顔をしていた。
普段の私なら、こんなこと位でここまであからさまに嫌な態度をみせたりはしない。
だけど今日は違う。
一日中やもやしていたのは確実にロランの所為だし、その上何も言ってくれない態度に苛立ちは限界値を達していた。
あの時は傍にジェラルドもいたから話しづらいのかな、なんて思ったりもした。
だから馬車の中で、二人っきりになったタイミングで事情を話してくれるんじゃないかと密かに期待していた。
だけど未だにロランは何も話してくれない。
やっぱりあの時ルチアと会っていたのは、隠したいことだったのだろうか。
そんな風に考えてしまう。
「もしかして怒っているのか?」
ロランは困ったように呟いた。
私はロランの言葉に再び顔を顰めた。
今のロランの顔は、明らかに何故怒っているの分からないと言っているように見えたからだ。
「なんで、そう思うの?」
「なんでって……。そんな顔を見せられたら普通気付くだろ。俺、シャルに何かしたか?」
ロランの言葉で私の心は再び揺さぶられる。
心の奥がざわつき、不安という感情にぎゅっと締め付けられているようだ。
私は一瞬悲しそうな顔を浮かべてしまう。
「別に、なんでもない」
「何でも無いわけないだろう。もしかして、ジェラルドになにかされたのか?」
私が目を逸らして小さく呟くと、ロランは直ぐさま言い返してきた。
ジェラルドの名前が聞こえ、私は再びロランの方に視線を向けた。
「ジェラルドは関係ないよ。何もされてないし。課題を今度一緒にやろうって誘われただけ」
「ああ、あれか。違うのなら、シャルの機嫌を損ねているのは一体何なんだ?」
思わず『ロランだよ!』と言いたくなったが、その言葉をぐっと呑み込んだ。
ロランは全く心当たりがないという顔をしていたからだ。
もしかしたらルチアに会っていたのは本当に偶然で、ロランにとっては大したことではなかったのかもしれない。
だけど、それならどうしてあの時私を探していたなんて嘘を言ったのだろう。
ロランに嘘を付かれることが、こんなにも辛いだなんて思いもしなかった。
今この場でその事を問い詰めたらロランはどんな態度を示すのだろう。
「シャル?話してくれないか?黙ったままじゃ分からないぞ」
「……それは。ロランは心当たりないの?」
「俺?……やっぱり俺が何かしたのか?」
(本当に分からないの?)
私は自分の手をぎゅっと握りしめた。
そしてゆっくりと口を開く。
「今日、見ちゃったの」
「何を?」
「ロランが、……あの子とベンチに座って話してるところ」
「…………」
一瞬ロランの表情が強張って見えた様な気がした。
なにかまずいものを見られたといったような顔だ。
「あの時、ロラン言ったよね。私を探していたって。どうして本当のことを言わなかったの?」
「……そうか、あれを見られていたのか」
私が思いきって打ち明けると、ロランは深くため息を漏らして静かに答えた。
(やっぱり隠そうとしていたの……?)
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜
紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。
連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる
奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。
だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。
「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」
どう尋ねる兄の真意は……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる