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第一章
17.戸惑い
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「シャル…辛そうに笑う必要なんて無い…。行こう…」
曇る視界の先には心配そうな顔で私を見ているロランの姿があった。
ロランの声も普段とは少し違うように感じて、動揺しているのだと分かった。
私は小さく頷くと、ロランに手を引かれて応接室を後にした。
応接室を出て暫く廊下を歩いていると、私はピタッと足を止めた。
それに気付いたロランは振り返り、不安そうな顔で私の顔を見つめて来た。
「お、驚いたね…」
「……ああ」
「私…婚約解消されたって…ことだよね?」
「………」
私の言葉にロランは苦しそうな表情を滲ませ、目を逸らした。
きっとロランは、今の私にどの様な言葉を返せば良いのかわからないのだろう。
ロランの事を困らせたいわけではない。
だけど今起こった出来事が本当に事実なのか分からなくなっていた。
突然あんなことを言われて私は混乱しているのだと思う。
「シャル…ごめん。俺…シャルに安心しろなんて適当な事を言った。まさかこんなことになるなんて…思っても見なくて…」
「あ…謝らないで…。ロランが悪いわけじゃないよっ…!悪いのは…浮気をしていたジェラルドだし…。本当に悪いのは私かも…、私ずっとジェラルドに素直になれなかったから…、嫌われちゃったのかも…」
申し訳なさそうに話すロランを見て慌てて答えると、へらっと力なく笑って見せた。
私はこうなるかもしれないと、どこかで不安を感じていたのに…自分で行動を起こそうとはしなかった。
ジェラルドの態度がおかしくなった時も、無理に聞いて嫌われるのが怖くて何もしなかった。
私は肝心な時に何も出来ない、ただの臆病者だ。
そんな自分が心底嫌になる。
(ジェラルド…、アリエル王女と婚約するんだ…)
そう思うと胸の奥がズキズキ痛んで、再び目の奥が熱くなってくる。
「うっ…、こんなの…やっぱり…嫌…。…私の方がずっと前から…好きなのにっ…どうして…」
私が再び泣き出してしまうと、ロランは何も言わずに私の事を抱きしめてくれた。
「……ロランっ…」
私は震えた手で抱き返すと、そのままロランの腕の中で落ち着くまで泣き続けた。
ロランは何も言わず、私が泣き止むまで傍にいてくれた。
それから暫くすると、廊下の奥から足音と言い争う声が近づいて来るのに気付いた。
私はその声の主が直ぐに誰だか分かった。
恐らく先程の部屋から出て来た、ジェラルドとアリエルに間違いないだろう。
私が戸惑った顔でロランを見つめると、ロランに「こっちに…」と言われ誰もいない教室の中へと入った。
息を殺す様に私は二人が廊下を抜けていくのを待つことにした。
(二人の会話なんて…聞きたく無いな…)
「ジェラルド様、そんなに怒らなくたっていいじゃないっ…、悪かったって謝っているのに…」
「…言わない約束をしたはずだ…。君は約束すら守れない人間なんだな…」
アリエルは不満そうに高い声を上げ、ジェラルドは冷めた声で怒っている様に聞こえた。
「僕はあの日の出来事を信じたわけじゃない…。酔っていたと言うよりは、激しい睡魔に襲われて…それ以降の記憶がないからな…。仕組まれたとしか思えない…」
「何を言っているの?…証明はされているのよ…。酷いわ…そんな事を言うなんて…。それにもう私達の婚約は決まって、ジェラルド様の婚約者は私になったのよ。もっと私の事を大事に扱って欲しいものだわ…」
(仕組まれた…?)
「……今だけはな」
ジェラルドは不機嫌そうに呟いていた。
その後も二人は何やら言い合っている様子だったが、その声は徐々に遠くなりそのまま奥へと消えて行った。
「今の話って…」
私は困惑した顔でロランを見つめた。
「何か事情がありそうだな…」
曇る視界の先には心配そうな顔で私を見ているロランの姿があった。
ロランの声も普段とは少し違うように感じて、動揺しているのだと分かった。
私は小さく頷くと、ロランに手を引かれて応接室を後にした。
応接室を出て暫く廊下を歩いていると、私はピタッと足を止めた。
それに気付いたロランは振り返り、不安そうな顔で私の顔を見つめて来た。
「お、驚いたね…」
「……ああ」
「私…婚約解消されたって…ことだよね?」
「………」
私の言葉にロランは苦しそうな表情を滲ませ、目を逸らした。
きっとロランは、今の私にどの様な言葉を返せば良いのかわからないのだろう。
ロランの事を困らせたいわけではない。
だけど今起こった出来事が本当に事実なのか分からなくなっていた。
突然あんなことを言われて私は混乱しているのだと思う。
「シャル…ごめん。俺…シャルに安心しろなんて適当な事を言った。まさかこんなことになるなんて…思っても見なくて…」
「あ…謝らないで…。ロランが悪いわけじゃないよっ…!悪いのは…浮気をしていたジェラルドだし…。本当に悪いのは私かも…、私ずっとジェラルドに素直になれなかったから…、嫌われちゃったのかも…」
申し訳なさそうに話すロランを見て慌てて答えると、へらっと力なく笑って見せた。
私はこうなるかもしれないと、どこかで不安を感じていたのに…自分で行動を起こそうとはしなかった。
ジェラルドの態度がおかしくなった時も、無理に聞いて嫌われるのが怖くて何もしなかった。
私は肝心な時に何も出来ない、ただの臆病者だ。
そんな自分が心底嫌になる。
(ジェラルド…、アリエル王女と婚約するんだ…)
そう思うと胸の奥がズキズキ痛んで、再び目の奥が熱くなってくる。
「うっ…、こんなの…やっぱり…嫌…。…私の方がずっと前から…好きなのにっ…どうして…」
私が再び泣き出してしまうと、ロランは何も言わずに私の事を抱きしめてくれた。
「……ロランっ…」
私は震えた手で抱き返すと、そのままロランの腕の中で落ち着くまで泣き続けた。
ロランは何も言わず、私が泣き止むまで傍にいてくれた。
それから暫くすると、廊下の奥から足音と言い争う声が近づいて来るのに気付いた。
私はその声の主が直ぐに誰だか分かった。
恐らく先程の部屋から出て来た、ジェラルドとアリエルに間違いないだろう。
私が戸惑った顔でロランを見つめると、ロランに「こっちに…」と言われ誰もいない教室の中へと入った。
息を殺す様に私は二人が廊下を抜けていくのを待つことにした。
(二人の会話なんて…聞きたく無いな…)
「ジェラルド様、そんなに怒らなくたっていいじゃないっ…、悪かったって謝っているのに…」
「…言わない約束をしたはずだ…。君は約束すら守れない人間なんだな…」
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「僕はあの日の出来事を信じたわけじゃない…。酔っていたと言うよりは、激しい睡魔に襲われて…それ以降の記憶がないからな…。仕組まれたとしか思えない…」
「何を言っているの?…証明はされているのよ…。酷いわ…そんな事を言うなんて…。それにもう私達の婚約は決まって、ジェラルド様の婚約者は私になったのよ。もっと私の事を大事に扱って欲しいものだわ…」
(仕組まれた…?)
「……今だけはな」
ジェラルドは不機嫌そうに呟いていた。
その後も二人は何やら言い合っている様子だったが、その声は徐々に遠くなりそのまま奥へと消えて行った。
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私は困惑した顔でロランを見つめた。
「何か事情がありそうだな…」
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