51 / 64
第三章:学園生活スタート
48.言葉と思い①
しおりを挟む
放課後、帰る準備をしているとこちらに向かってくる足音に気がついた。
顔を上げると目の前にラインハルトの顔があり、急に心臓がバクバクと鳴り始める。
(全部アーベルのせいだわ! あんなこと言うから、変に意識してしまうじゃないっ)
「ルティ? 準備は出来たか?」
「う、うん。迎えに来てくれたのね」
「ああ。今日は生徒会の仕事も昼に済ませておいたからな」
「ありがとう……」
私が戸惑いながら答えると、ラインハルトはふっと優しく微笑んだ。
不意に浮かべた笑顔を見ただけで、顔の奥がボッと燃えるように熱くなるのを感じた。
「どうした?」
「な、なんでもないわ。行きましょう」
私はガタッと椅子を押して立ち上がった。
歩き出そうとすると突然手を握られ、慌てて顔を上げる。
「な、何?」
「そんなに焦ると転ぶぞ」
「大丈夫だから」
私が握られた手を剥がそうとしていると、ラインハルトは動じること無く笑顔で「行こうか」と告げて歩き出した。
だけど握られた手は決して離してはくれない。
結局帰りも手を繋いだまま廊下を歩くことになってしまった。
掌から伝わるラインハルトの体温が、私の熱を上げていく。
恥ずかしさもあるし、安心感もある。
私はこの手が本当に大好きなんだと思う。
ドキドキしながら顔を上げてラインハルトの横顔を眺めて歩いた。
たまに視線が合うと胸が飛び跳ね、思わず逸らしてしまう。
だけどラインハルトは何も言わずに黙って歩いていた。
***
「ルティが落ち着けるように、二階で話そうか」
「うん」
今ラインハルトの部屋にいる。
これから自分の気持ちを伝えるという大事な場面だ。
誰かに告白をするのは初めてのことで、先程から鼓動がバクバクと鳴っている。
(落ち着くのよ、私。今日こそはちゃんと伝えるって決めたんだから)
「随分緊張しているみたいだな。まずは茶でも飲んで落ち着いたらどうだ」
「そうするわ」
テーブルの上にはティーセットとカラフルの可愛いお菓子が並んでいる。
ラインハルトはカップの中に紅茶を注いでくれた。
前もって私が来ることが分かっていたので、この時間に合わせて用意させたのだろう。
今まで逃げるばかりで周りを見ていなかったけど、本当にこの人は気を遣ってくれて、いつも私の事をちゃんと見ていてくれる。
ずっと傍にいたのに、私はどうしてちゃんと向き合おうとしなかったのだろう。
ずっと手を伸ばせば届く距離にあったのに。
私は自ら遠ざけていたのだ。
(本当に私はバカね)
私はカップを手に取り一口喉に流した。
ハーブの爽やかな香りと、喉が潤っていくことで強ばっていた緊張が少しずつ解されていく。
持っているカップを静かに戻すと、顔を傾け視線をラインハルトへと向けた。
直ぐに視線が絡み、鼓動が再びバクバクと動き出す。
「あ、あのっ……」
私が口を開くとラインハルトは柔らかく微笑んでいた。
意識しているせいか、見慣れたその表情にさえドキドキしてしまう。
「……あの……」
「うん」
ラインハルトは見守るように私の顔を穏やかな表情で見つめていた。
そしてぎゅっと握りしめた私の拳を包むように、上から被せてきた。
心地の良い熱に包まれて、更に鼓動は加速する。
「焦らなくていいよ」
こんな時に優しくされると正直どうして良いのかわからなくなる。
それどころか更に私は追いつめられているような気さえする。
碧い瞳は優しいのに、眼光はどこか鋭くて目を逸らすことが出来なくなっていた。
この瞳を向けられているのは、私だけであって欲しい。
触れているこの掌も、私だけのものでいて欲しい。
(私は悪役令嬢だけど、後から現れたヒロインになんて奪われたくないっ)
強くそう思った瞬間、私の中で覚悟が決まった。
「私、ライのことが好き……。これからもずっとずっと傍にいたい」
シンプルな言葉だが、ずっと私の心の奥底に眠っていた気持ちだった。 言葉に出した後、顔の奥がカーッと沸騰するかのように熱くなる。
(い、言っちゃった……)
ラインハルトはじっとこちらを見つめていたが、暫くすると片方の手が顔の方へと伸びてきて、優しく私の頬に触れた。
顔を上げると目の前にラインハルトの顔があり、急に心臓がバクバクと鳴り始める。
(全部アーベルのせいだわ! あんなこと言うから、変に意識してしまうじゃないっ)
「ルティ? 準備は出来たか?」
「う、うん。迎えに来てくれたのね」
「ああ。今日は生徒会の仕事も昼に済ませておいたからな」
「ありがとう……」
私が戸惑いながら答えると、ラインハルトはふっと優しく微笑んだ。
不意に浮かべた笑顔を見ただけで、顔の奥がボッと燃えるように熱くなるのを感じた。
「どうした?」
「な、なんでもないわ。行きましょう」
私はガタッと椅子を押して立ち上がった。
歩き出そうとすると突然手を握られ、慌てて顔を上げる。
「な、何?」
「そんなに焦ると転ぶぞ」
「大丈夫だから」
私が握られた手を剥がそうとしていると、ラインハルトは動じること無く笑顔で「行こうか」と告げて歩き出した。
だけど握られた手は決して離してはくれない。
結局帰りも手を繋いだまま廊下を歩くことになってしまった。
掌から伝わるラインハルトの体温が、私の熱を上げていく。
恥ずかしさもあるし、安心感もある。
私はこの手が本当に大好きなんだと思う。
ドキドキしながら顔を上げてラインハルトの横顔を眺めて歩いた。
たまに視線が合うと胸が飛び跳ね、思わず逸らしてしまう。
だけどラインハルトは何も言わずに黙って歩いていた。
***
「ルティが落ち着けるように、二階で話そうか」
「うん」
今ラインハルトの部屋にいる。
これから自分の気持ちを伝えるという大事な場面だ。
誰かに告白をするのは初めてのことで、先程から鼓動がバクバクと鳴っている。
(落ち着くのよ、私。今日こそはちゃんと伝えるって決めたんだから)
「随分緊張しているみたいだな。まずは茶でも飲んで落ち着いたらどうだ」
「そうするわ」
テーブルの上にはティーセットとカラフルの可愛いお菓子が並んでいる。
ラインハルトはカップの中に紅茶を注いでくれた。
前もって私が来ることが分かっていたので、この時間に合わせて用意させたのだろう。
今まで逃げるばかりで周りを見ていなかったけど、本当にこの人は気を遣ってくれて、いつも私の事をちゃんと見ていてくれる。
ずっと傍にいたのに、私はどうしてちゃんと向き合おうとしなかったのだろう。
ずっと手を伸ばせば届く距離にあったのに。
私は自ら遠ざけていたのだ。
(本当に私はバカね)
私はカップを手に取り一口喉に流した。
ハーブの爽やかな香りと、喉が潤っていくことで強ばっていた緊張が少しずつ解されていく。
持っているカップを静かに戻すと、顔を傾け視線をラインハルトへと向けた。
直ぐに視線が絡み、鼓動が再びバクバクと動き出す。
「あ、あのっ……」
私が口を開くとラインハルトは柔らかく微笑んでいた。
意識しているせいか、見慣れたその表情にさえドキドキしてしまう。
「……あの……」
「うん」
ラインハルトは見守るように私の顔を穏やかな表情で見つめていた。
そしてぎゅっと握りしめた私の拳を包むように、上から被せてきた。
心地の良い熱に包まれて、更に鼓動は加速する。
「焦らなくていいよ」
こんな時に優しくされると正直どうして良いのかわからなくなる。
それどころか更に私は追いつめられているような気さえする。
碧い瞳は優しいのに、眼光はどこか鋭くて目を逸らすことが出来なくなっていた。
この瞳を向けられているのは、私だけであって欲しい。
触れているこの掌も、私だけのものでいて欲しい。
(私は悪役令嬢だけど、後から現れたヒロインになんて奪われたくないっ)
強くそう思った瞬間、私の中で覚悟が決まった。
「私、ライのことが好き……。これからもずっとずっと傍にいたい」
シンプルな言葉だが、ずっと私の心の奥底に眠っていた気持ちだった。 言葉に出した後、顔の奥がカーッと沸騰するかのように熱くなる。
(い、言っちゃった……)
ラインハルトはじっとこちらを見つめていたが、暫くすると片方の手が顔の方へと伸びてきて、優しく私の頬に触れた。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
2,251
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる