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第三章:学園生活スタート

45.コレットの悩み事①

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 昼休みになり、私はコレットと共に食堂に向かっていた。
 最近はラインハルトを含め三人で昼食を採る機会が多かったが、今日に限っては違う。
 放課後私との時間を作るために、昼休みを使って生徒会の業務を先に済ませようとしてくれている。

(ライって意地悪だけど、いつも私のことを優先してくれている気がするわ)

 大切にされているのだと実感すると、嬉しくて胸の奥が温かくなった。

「今日はラインハルト様はご一緒じゃ無くて残念ですね」
「そうね。でもコレットさんと二人でご飯を食べるのって、今までなかったからちょっと嬉しいかもっ!」

 私は笑顔で答えた。
 頭の中ではコレットの好きな相手が誰なのか、ずっと気になったままだ。
 一緒にいればヒントになる言葉が聞けるかも知れないと、どこかで期待していた。

 勿論、それだけではない。
 素直にコレットとお喋りするのは楽しく感じていたから嬉しかった。
 
「私も嬉しいです。ルティナ様もラインハルト様もすごい貴族なのに、私のような者に普通に接してくれて。本当に感謝しています」
「感謝だなんて大げさね。ここでは身分は平等ってことになっているし、それに感謝しているのは私の方なのかも。学園内に同性の友人ってコレットさんくらいだし。同性の女の子とお喋りしたり、お昼を一緒に食べたりするのにちょっと憧れてたから」

 私達は身分は違うが、似ているのかも知れない。
 相手から一方的に敵対心を持たれ、疎まれる存在。
 コレットは貴族よりも優秀だったから。
 私はラインハルトの婚約者に選ばれたから。
 そして私達は王族の人間と親しくしている。

(こうやって考えてみると、悪役令嬢の私が嫉妬心を燃やさなければ普通に仲良く出来るのよね。付き合っている人間は同じなわけだし)

 本来のゲームに登場するルティナは、悪いところばかりが目立ってしまったのだろう。
 幼い頃に婚約して、その間もずっとルティナはラインハルトに恋をしていたはずだ。
 それが突然現れたヒロインに簡単に奪われてしまうとなれば、誰だって戸惑うし嫉妬心を持つのも当然だ。
 ルティナの場合は、それに加えて傲慢さと公爵家という高い身分を持っていた為、行き過ぎた行動に出てしまったのだろう。

(コレットが好きなのはライでは無いとは思うけど、もしそうだったら私はどうするんだろう)

 変なことを考えてしまい、頭の中がもやもやし始めてしまう。
 私はラインハルトの言葉を信じている。
 もしコレットの好きな相手がラインハルトだとしても、意地悪なことをするつもりはないし、諦める気も無い。

「わ、私も憧れてましたっ! この学園に入る前に、何度も頭の中で思い浮かべてドキドキしたりして」

 コレットは嬉しそうに表情を緩めて話していた。
 その横顔は無邪気で愛らしくて、こんな表情を見せられたら簡単に落ちてしまう男も多いだろう。

(さすがヒロインね。笑顔の破壊力がすごすぎるわ。私もコレットさんを見習って笑顔の練習をするべきかしら)

 私は気付けばじっとコレットの顔を見つめていた。
 これは観察しているというべきなのだろうか。
 視線に気付いたのか、コレットと目が合いドキッとしてしまう。

「ルティナ様?」
「あ……、ごめんなさい。コレットさんの笑顔が眩しくてつい見惚れてしまったわ!」

 私が慌てて返すと、コレットは一瞬驚いた顔を見せて照れたように頬を染めていた。

「そ、そんなことないです」
「ふふっ、照れちゃった? 可愛いわね」

「もうっ! ルティナ様、あまりからかわないでください」
「ごめんね。だけど可愛いのは本当よ」

 私が楽しそうに笑っていると、コレットは困った顔で恥ずかしそうにもじもじしていた。

(可愛い……! なるほどね。少しライの気持ちが分かった気がするわ)

 普段私はからかわれる側の人間だ。
 逆側に立ってみると、いじめたくなる衝動が沸くというか。
 もじもじされると更につっこみたくなってしまう!

(今度ライに試してみよう! ライになら遠慮無く出来そうだし)

 今まで散々意地悪されてきたのだから、少しくらい反撃しても文句は言われないはずだ。

「あの……」
「どうしたの?」

 突然コレットの足が止まった。

「良かったらなんですが、相談に乗っていただけませんか?」
「相談?」

 突然のことに私はきょとんとしてしまう。

「他に話せる方がいなくて……」
「コレットの相談ならなんだって聞くわ!」

「本当ですか? 嬉しいです。ルティナ様、ありがとうございますっ!」

 不安そうに見えたコレットの表情が一瞬で笑顔に変わる。
 頼って貰えることが嬉しくて、私も自然と笑顔になっていた。
 相談すると言うことは、少なくとも私のことを信用してくれている証拠だ。
 本当に友人になれた気がして嬉しかった。
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