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第三章:学園生活スタート
43.色づき始めた日常
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「気付いていて、してたんですかっ!」
「気付いていたと言えばそうなるな」
「なっ……!」
ラインハルトはあっさりと認めた。
こういう男であることはもう既に分かっているが、とてつもなく悔しく感じてしまう。
いつも冷静で、何事にも動じない。
動揺しているのは私ばかりで、そんなラインハルトにいつも振り回されてばかりいる。
だけど私はそれを嫌だと感じていない。
私の胸を昂ぶらせるのも、動揺させるのも全てラインハルトだ。
気付かないうちに、深いところまで心を奪われていた。
「今日はやけに素直だったから離したくなかった。他の男に蕩けている顔を見せるのは気に入らないが、そうさせているのは私だからな」
「……っ、そんなこと聞いてませんっ! 恥ずかしいことばっかり言わないでっ」
彼のことが好きだと認めたけど、こんな態度を取られると恥ずかしくて黙っていられなくなる。
「ルティは恥ずかしがりだからな。今もこんなに耳まで真っ赤にさせて可愛いな」
「私の話、聞いてますかっ!」
いつものラインハルトのペースに吞まれつつ、私はむっとした顔で不満そうに告げた。
すると大きな手が私の頬をすっと包み込むように触れる。
惚れた弱みなのだろうか。
その温かさが心地よいと思ってしまう。
この現実を喜んでしまう自分がなんとも悔しい。
こんなんじゃ私は本当にチョロい女ではないか。
(嬉しいけど、悔しいわ。でも、やっぱり嬉しいかも……)
私はラインハルトの手の上から、自分の掌を被せた。
いつもとは違う私の行動に、ラインハルトは少し驚いているようだ。
こんな態度を取る自分が恥ずかしいが、やっと本当の意味で気持ちが通じ合ったのだから、もう少しこの時間を味わっていたいと思ってしまう。
私はじっとラインハルトの瞳を覗き、視線で「もう少し」と訴えていた。
言葉に出すのは恥ずかしくて、今の私にはそれが精一杯なのだろう。
今まで我慢していたから、甘えたいという感情が溢れてくる。
(少しくらい、いいよね。だって、私達、こ……恋人、だし?)
「本当に今日のルティはいつもとは違うな。そんな瞳で私の事を見つめて、何がお望みだ?」
「え? ……じゃあもう少し、こうしていたい。だ、だめ、かな?」
思い切って言葉に出してみると、想像以上に恥ずかしくて消えたくなった。
言っている傍から顔に熱が溜まっていくのがわかる。
「だめではないよ。だけどそろそろ移動しないと遅刻するな」
「え? もうそんな時間!?」
私が戸惑っていると、ラインハルトは私の手を取って自分の顔の前まで移動させた。
そして手の甲に深く口付ける。
「……っ」
チクッと鋭い痛みを感じていたが、それ以上にラインハルトの瞳から目を離すことが出来なかった。
碧い瞳に真っ直ぐに見つめられ、吸い込まれてしまいそうだ。
「続きは授業が終わってからでもいいか? ルティが望むだけ付き合うよ」
「う、うん……。じゃあそれで」
(なんなのこれ。なんか調子が狂う。っていうか私、凄く恥ずかしいことしてる気がするわ)
「教室まで行こうか。もちろんこの手は繋いだままで」
「手はいい。誰かに見られたら恥ずかしいし」
そんな会話を繰り広げながら、私達は歩き出した。
手を繋ぐことを断ったが、ラインハルトは離す気は無いようだ。
「慣れれば気にならなくなる」
「……っ、じゃあ明日からでっ!」
「ルティはいつも先延ばしにしようとするけど、今日からでも大して変わらないだろう」
「変わるわ! 心の準備には時間が必要なのよっ!」
「心の準備って今更過ぎないか? 私達が仲の良い婚約者であることは今や殆どの生徒が知っていると思うが」
「うっ、それはライがいつも勝手に行動するからでしょ」
「ルティが逃げるからな。周りにルティは私のものだから近づくなと知らしめる目的もある」
「……っ!」
「それくらい私にとっては大切な存在なんだ。誰にも触れさせたくはないし、出来ることなら常に目の届く所に置いておきたい。やっとルティが私の気持ちを受け入れてくれたのだから、これからはどれだけ自分が愛されているのか思い知ってもらう。当然、逃げるなんて選択肢を与えるつもりはないからな」
ラインハルトは小さく口端を上げると、私の耳元で「好きだよ、ルティ」と低く艶のある声で囁いた。
その瞬間、私の胸の鼓動はものすごい早さでドクドクと鳴り始める。
きっとすぐ隣にいるラインハルトには聞こえているのだろう。
私は今まで断罪から逃げるために、何度もラインハルトの気持ちを見ないようにしてきた。
私は今まで自分の気持ちを伝えたことがあっただろうか。
いつもはぐらかして逃げていたのでない気がする。
その時、自分の気持ちを伝えたいと思った。
「逃げない、から」
「本当に今日は素直だな。今日だけでない事を願うよ」
「私も、ライのことが……」
「気付いていたと言えばそうなるな」
「なっ……!」
ラインハルトはあっさりと認めた。
こういう男であることはもう既に分かっているが、とてつもなく悔しく感じてしまう。
いつも冷静で、何事にも動じない。
動揺しているのは私ばかりで、そんなラインハルトにいつも振り回されてばかりいる。
だけど私はそれを嫌だと感じていない。
私の胸を昂ぶらせるのも、動揺させるのも全てラインハルトだ。
気付かないうちに、深いところまで心を奪われていた。
「今日はやけに素直だったから離したくなかった。他の男に蕩けている顔を見せるのは気に入らないが、そうさせているのは私だからな」
「……っ、そんなこと聞いてませんっ! 恥ずかしいことばっかり言わないでっ」
彼のことが好きだと認めたけど、こんな態度を取られると恥ずかしくて黙っていられなくなる。
「ルティは恥ずかしがりだからな。今もこんなに耳まで真っ赤にさせて可愛いな」
「私の話、聞いてますかっ!」
いつものラインハルトのペースに吞まれつつ、私はむっとした顔で不満そうに告げた。
すると大きな手が私の頬をすっと包み込むように触れる。
惚れた弱みなのだろうか。
その温かさが心地よいと思ってしまう。
この現実を喜んでしまう自分がなんとも悔しい。
こんなんじゃ私は本当にチョロい女ではないか。
(嬉しいけど、悔しいわ。でも、やっぱり嬉しいかも……)
私はラインハルトの手の上から、自分の掌を被せた。
いつもとは違う私の行動に、ラインハルトは少し驚いているようだ。
こんな態度を取る自分が恥ずかしいが、やっと本当の意味で気持ちが通じ合ったのだから、もう少しこの時間を味わっていたいと思ってしまう。
私はじっとラインハルトの瞳を覗き、視線で「もう少し」と訴えていた。
言葉に出すのは恥ずかしくて、今の私にはそれが精一杯なのだろう。
今まで我慢していたから、甘えたいという感情が溢れてくる。
(少しくらい、いいよね。だって、私達、こ……恋人、だし?)
「本当に今日のルティはいつもとは違うな。そんな瞳で私の事を見つめて、何がお望みだ?」
「え? ……じゃあもう少し、こうしていたい。だ、だめ、かな?」
思い切って言葉に出してみると、想像以上に恥ずかしくて消えたくなった。
言っている傍から顔に熱が溜まっていくのがわかる。
「だめではないよ。だけどそろそろ移動しないと遅刻するな」
「え? もうそんな時間!?」
私が戸惑っていると、ラインハルトは私の手を取って自分の顔の前まで移動させた。
そして手の甲に深く口付ける。
「……っ」
チクッと鋭い痛みを感じていたが、それ以上にラインハルトの瞳から目を離すことが出来なかった。
碧い瞳に真っ直ぐに見つめられ、吸い込まれてしまいそうだ。
「続きは授業が終わってからでもいいか? ルティが望むだけ付き合うよ」
「う、うん……。じゃあそれで」
(なんなのこれ。なんか調子が狂う。っていうか私、凄く恥ずかしいことしてる気がするわ)
「教室まで行こうか。もちろんこの手は繋いだままで」
「手はいい。誰かに見られたら恥ずかしいし」
そんな会話を繰り広げながら、私達は歩き出した。
手を繋ぐことを断ったが、ラインハルトは離す気は無いようだ。
「慣れれば気にならなくなる」
「……っ、じゃあ明日からでっ!」
「ルティはいつも先延ばしにしようとするけど、今日からでも大して変わらないだろう」
「変わるわ! 心の準備には時間が必要なのよっ!」
「心の準備って今更過ぎないか? 私達が仲の良い婚約者であることは今や殆どの生徒が知っていると思うが」
「うっ、それはライがいつも勝手に行動するからでしょ」
「ルティが逃げるからな。周りにルティは私のものだから近づくなと知らしめる目的もある」
「……っ!」
「それくらい私にとっては大切な存在なんだ。誰にも触れさせたくはないし、出来ることなら常に目の届く所に置いておきたい。やっとルティが私の気持ちを受け入れてくれたのだから、これからはどれだけ自分が愛されているのか思い知ってもらう。当然、逃げるなんて選択肢を与えるつもりはないからな」
ラインハルトは小さく口端を上げると、私の耳元で「好きだよ、ルティ」と低く艶のある声で囁いた。
その瞬間、私の胸の鼓動はものすごい早さでドクドクと鳴り始める。
きっとすぐ隣にいるラインハルトには聞こえているのだろう。
私は今まで断罪から逃げるために、何度もラインハルトの気持ちを見ないようにしてきた。
私は今まで自分の気持ちを伝えたことがあっただろうか。
いつもはぐらかして逃げていたのでない気がする。
その時、自分の気持ちを伝えたいと思った。
「逃げない、から」
「本当に今日は素直だな。今日だけでない事を願うよ」
「私も、ライのことが……」
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