42 / 64
第三章:学園生活スタート
40.秘めていた事②
しおりを挟む
「ライは、ウォリアス帝国のシーラ王女って知ってますよね?」
「シーラ王女か。ああ、そういえば昔幼い時に一度会ったことはあるな」
ラインハルトのその言葉を聞いて私の表情は曇った。
(やっぱり、幼い頃に出会っていたんだ)
「シーラ王女がどうしたんだ?」
「ライとは昔、その……、婚約してたんですよね?」
私が声を震わせながら問いかけると、ラインハルトは僅かに目を細めた。
「婚約の話が持ち上がりそうになったことはあったらしいが、私はシーラ王女と婚約を結んだことなどないぞ」
「……え? うそ!」
私は信じられなくて思わず叫んでしまうと、ライは呆れたように溜息を漏らした。
「うそって、こんなことを嘘ついてどうする。元々その時点でルティとの婚約を決めていたからな。その話が持ち上がってすぐに消えていったそうだ」
「じゃあ、ライがシーラ王女と出会ったのはいつの話なの?」
「たしか、ラフィーの病が治って一ヶ月後くらいだったか、それ位の時だな。その頃ウォリアス帝国は我が国と同盟を結ぶことになり、その時にシーラ王女も付いて来てた。出会ったのはその一度きりだ」
「その時、シーラ王女と仲良くなりましたか?」
(タイミング的にも、きっとこの時で間違いないはず……)
「少し城内を案内して他愛のない会話をした程度だ。とりわけ仲良くしたつもりはないと思うが」
ラインハルトは記憶の糸を辿るように話していた。
「その時、シーラ王女に対して何か感じるものはありましたか?」
「感じるものとは?」
「えっと、胸がドキドキしたり、可愛いなって思ったりとかですっ!」
私が問いかけると、ラインハルトは再び深くため息を漏らした。
「無い」
「本当に?」
ラインハルトははっきりとした口調で端的に答えていたが、私はじっと疑いの視線を向けていた。
「随分、疑ってかかってくるな。だけど『無い』としか言いようがない。回りくどい言い方で聞いて来る様だが、要するに私がシーラ王女に好意を持っているかを聞きたいんだよな?」
「そうです」
「それならやはり答えは『無い』だな。その頃の私には既に心を惹かれている者がいたからな。婚約の話もその時には決まりかけていたし、他の女性に興味を持つなんてことは絶対に無い」
「……っ」
ラインハルトが言っている『心を惹かれている者』というのは私の事だろう。
まるで私がそれを言わせているような気分になり、恥ずかしくてじわじわと顔の奥に熱が篭っていくのを感じる。
「どうして、ここで照れるんだ? 幼い頃から私が見ていたのはルティだと言わせたかったのか?」
ラインハルトは私の反応に気付くと意地悪そうに呟いた。
「ち、違うっ! 今はそれが目的で聞いたのではないわっ」
「知ってる。ルティは鈍感だからな。その頃は私の気持ちなんて全く気付きもしなかっただろうからな」
「……っ、鈍感なのは認めるわ。だけど、今はちゃんと知ってるからっ」
私は恥ずかしそうに小声で呟いた。
今この現時点でラインハルトが思ってくれているのは間違いなく私だろう。
そう思うと不安だった気持ちも薄れ、心が安堵感に包まれていくのを感じる。
だけど今の話が本当だとすれば、以前アーベルから聞いた話はなんだったのだろう。
アーベルが言っていた10年後に再開するという言葉からも、初めて出会ったとされる日はラインハルトから聞いた頃で間違いないはずだ。
(一体、どうなってるの……)
「話はズレたが、シーラ王女はどう関わってくるんだ?」
「えっと、アーベルの話だとライと出会ったのは10年前で、その時に恋に落ちて一度は婚約を結ぶことになるはずだったの。だけどその婚約は色々な事情で白紙に戻されてしまうとか。それで10年後に再会して、また惹かれ合うという話らしいわ」
その話を聞いてラインハルトは僅かに眉を顰めた。
「ルティの前世で見たオトメゲーム? と言うのではそういう話だったのかもしれないが、ここでは違う様だな。私はシーラ王女に惹かれた事など一度も無いし、婚約を結んだことも無い」
「……確かにそうね」
「――それよりも、アーベルって誰だ?」
「シーラ王女か。ああ、そういえば昔幼い時に一度会ったことはあるな」
ラインハルトのその言葉を聞いて私の表情は曇った。
(やっぱり、幼い頃に出会っていたんだ)
「シーラ王女がどうしたんだ?」
「ライとは昔、その……、婚約してたんですよね?」
私が声を震わせながら問いかけると、ラインハルトは僅かに目を細めた。
「婚約の話が持ち上がりそうになったことはあったらしいが、私はシーラ王女と婚約を結んだことなどないぞ」
「……え? うそ!」
私は信じられなくて思わず叫んでしまうと、ライは呆れたように溜息を漏らした。
「うそって、こんなことを嘘ついてどうする。元々その時点でルティとの婚約を決めていたからな。その話が持ち上がってすぐに消えていったそうだ」
「じゃあ、ライがシーラ王女と出会ったのはいつの話なの?」
「たしか、ラフィーの病が治って一ヶ月後くらいだったか、それ位の時だな。その頃ウォリアス帝国は我が国と同盟を結ぶことになり、その時にシーラ王女も付いて来てた。出会ったのはその一度きりだ」
「その時、シーラ王女と仲良くなりましたか?」
(タイミング的にも、きっとこの時で間違いないはず……)
「少し城内を案内して他愛のない会話をした程度だ。とりわけ仲良くしたつもりはないと思うが」
ラインハルトは記憶の糸を辿るように話していた。
「その時、シーラ王女に対して何か感じるものはありましたか?」
「感じるものとは?」
「えっと、胸がドキドキしたり、可愛いなって思ったりとかですっ!」
私が問いかけると、ラインハルトは再び深くため息を漏らした。
「無い」
「本当に?」
ラインハルトははっきりとした口調で端的に答えていたが、私はじっと疑いの視線を向けていた。
「随分、疑ってかかってくるな。だけど『無い』としか言いようがない。回りくどい言い方で聞いて来る様だが、要するに私がシーラ王女に好意を持っているかを聞きたいんだよな?」
「そうです」
「それならやはり答えは『無い』だな。その頃の私には既に心を惹かれている者がいたからな。婚約の話もその時には決まりかけていたし、他の女性に興味を持つなんてことは絶対に無い」
「……っ」
ラインハルトが言っている『心を惹かれている者』というのは私の事だろう。
まるで私がそれを言わせているような気分になり、恥ずかしくてじわじわと顔の奥に熱が篭っていくのを感じる。
「どうして、ここで照れるんだ? 幼い頃から私が見ていたのはルティだと言わせたかったのか?」
ラインハルトは私の反応に気付くと意地悪そうに呟いた。
「ち、違うっ! 今はそれが目的で聞いたのではないわっ」
「知ってる。ルティは鈍感だからな。その頃は私の気持ちなんて全く気付きもしなかっただろうからな」
「……っ、鈍感なのは認めるわ。だけど、今はちゃんと知ってるからっ」
私は恥ずかしそうに小声で呟いた。
今この現時点でラインハルトが思ってくれているのは間違いなく私だろう。
そう思うと不安だった気持ちも薄れ、心が安堵感に包まれていくのを感じる。
だけど今の話が本当だとすれば、以前アーベルから聞いた話はなんだったのだろう。
アーベルが言っていた10年後に再開するという言葉からも、初めて出会ったとされる日はラインハルトから聞いた頃で間違いないはずだ。
(一体、どうなってるの……)
「話はズレたが、シーラ王女はどう関わってくるんだ?」
「えっと、アーベルの話だとライと出会ったのは10年前で、その時に恋に落ちて一度は婚約を結ぶことになるはずだったの。だけどその婚約は色々な事情で白紙に戻されてしまうとか。それで10年後に再会して、また惹かれ合うという話らしいわ」
その話を聞いてラインハルトは僅かに眉を顰めた。
「ルティの前世で見たオトメゲーム? と言うのではそういう話だったのかもしれないが、ここでは違う様だな。私はシーラ王女に惹かれた事など一度も無いし、婚約を結んだことも無い」
「……確かにそうね」
「――それよりも、アーベルって誰だ?」
11
お気に入りに追加
2,237
あなたにおすすめの小説

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。

前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。
棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。
これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。
それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

勝手にしなさいよ
棗
恋愛
どうせ将来、婚約破棄されると分かりきってる相手と婚約するなんて真っ平ごめんです!でも、相手は王族なので公爵家から破棄は出来ないのです。なら、徹底的に避けるのみ。と思っていた悪役令嬢予定のヴァイオレットだが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる