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第三章:学園生活スタート
34.転生者
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私は送り届けてくれた騎士にお礼を伝えて別れると、同じ班だった3人の姿を探し始めた。
「……ルティナ…様?」
周囲を見渡しながら探し歩いていると、背後から私の名前を呼ぶ声が響いて来たので振り返った。
そこには心配そうな顔をするリリアスの姿があり、探し人が見つかった事で私の表情は安堵感から緩んでいく。
「良かった。無事だったのね!」
「はい、私は大丈夫です。ルティナ様、本当にごめんなさいっ! ロイドはあんな状況で、女の子を一人残して行くとか本当に馬鹿なの?」
リリアスはすぐ傍に居たロイドを睨みつける様に呟いた。
「本当に申し訳ない」
ロイドは反省した表情で謝ると、私に向けて深く頭を下げて来た。
「あ、謝らないで。私はこの通り怪我もしてないから大丈夫っ」
「本当ですか? はぁ、良かったー」
私の言葉を聞いて、ロイドは心底ほっとした様に深く息を吐いていた
後から知ったのだが、リリアスとロイドは幼馴染であり婚約をしている仲だった。
大切な人が危険な目に遭うかもしれないと思って咄嗟に追いかけてしまったのだろう。
「あれ、アーベル様の姿が見えないけど一緒じゃないの?」
私がきょろきょろと辺りに視線を巡らせていると背後から「俺なら平気だ」という声が響いた。
突然の声に私はビクッと体を跳ね上げてしまう。
「……っ!! ぶ、無事なら良かったわ。そういえば助けに行った子も大丈夫だったの?」
「俺が到着した時にはその場に倒れていたな。だけど怪我は無さそうだった」
「そっか、良かった。魔人に攻撃でもされていないか心配だったけど、何も無くて良かったわ」
「ルティナ嬢は魔人に遭遇したのか?」
私が『魔人』と口に出すとアーベルの表情が強張った。
「うん。会ったには会ったんだけど、通りすがりの暗殺者さんに助けてもらったから大丈夫よ!」
「暗殺者?」
私はうっかり暗殺者と答えてしまい、そんな私の発言を聞いてますますアーベルは眉を顰めていく。
(やばっ、思わず暗殺者なんて物騒な事を言ってしまったわ)
「えっと……、なんとなく見た目がそんな格好をしていたからそうなのかなーって思っただけよ。本当はただの冒険者だったのかも!」
「…………」
私が焦って訂正すると、アーベルは信じて無さそうにじっとこちらを見つめて来る。
それが非常に気まずくて私は更に焦っていってしまう。
「どっちかというと吸血鬼みたいな容姿だったわ。肌は怖い位に白くて、手も死人の様に冷たかったし。もしかしてコスプレしている冒険者だったのかもっ!」
焦っているせいで自分が何を言っているのか、だんだん分からなくなっていた。
そんな私の発言を聞いてリリアスとロイズは不安そうな表情を浮かべていた。
『暗殺者』や『吸血鬼』といった物騒な言葉を聞けば不安を感じるのも当然だろう。
そんな時アーベルは私の腕を掴み「ちょっといいか?」と言って来た。
「え?」
「お前に聞きたい事がある」
アーベルはそう言うと、私を腕を掴んで人が集まっていない方へと移動して行った。
***
危険だからという理由でこの場所から離れることは出来なかった為、極力人が集まっていない端の方へと移動していた。
「ルティナ嬢が会った吸血鬼ってのは、ブラッドという名前では無いか?」
「知ってるの?」
「やっぱりな。あいつがいるのか。ってことはそう言うことか」
アーベルは私の言葉を聞くと、何やら意味深な事を呟いていた。
私は何を言っているのか分からず不思議そうな顔をしていると、アーベルと視線が合った。
「間違いは無いとは思うけど、お前転生者だろ?」
「……え?」
突然の問いかけに、私の頭の中は一瞬思考が止まる様に固まってしまった。
アーベルは間違いなく『転生者』と言っていた。
私の聞き間違えでなければ、アーベルは転生者の存在を知っていて、私の正体にも気付いていると言う事になる。
私は今まで誰にも自分が転生者であることを他人に話したことは無かった。
それは言っても信じてもらえないだろうという理由と、自分が悪役令嬢であるから隠して来た。
一番傍にいたラインハルトにも私が転生者であることは伝えて無いし、気付かれてもいないと思う。
なのに最近出会ったばかりのアーベルにはすぐに気付かれてしまった。
私は動揺と混乱で戸惑っていた。
何も言わずにいると、更にアーベルは質問をして来た。
「さっきコスプレって単語も使っていたよな。この世界にコスプレなんて単語は存在しない。お前が転生者じゃなければ仮装という言葉を使うはずだ。それに以前会った時にも『映画』という単語を言っていたよな。それもこの世界には無いものだ。お前、前世は日本人だろ?」
的確に当てられてしまい、私は驚いた顔でアーベルをただ見つめていた。
「もしかして、アーベル様も転生者?」
私は声を震わせながら問いかけた。
確かに私が使った言葉は、この世界には存在しないものだ。
だけど、それを知っていると言う事は、間違いなくアーベルも転生者であると言っている様なものだった。
(私以外にも転生者は存在してたの?)
私はじっとアーベルの顔を伺うように見つめていた。
するとアーベルはふっと小さく笑った。
「ああ、俺も転生者だ。お前と同じで、前世は日本人だ」
その言葉を聞いて興奮で胸の奥がざわざわと騒がしくなっていくのを感じていた。
今の私の感情は驚きと喜びで二分されているのだろう。
「転生者が私以外にもいるなんて思っても無かった。ここは乙女ゲームが舞台の世界よね? 転生者って他にもいるの?」
「たしかに、ここは乙女ゲームの世界で間違いないな。転生者に会ったのはお前が初めてだから、他に居るのかは分からない」
(私と同じ転生者がいた! どうしよう、すごく嬉しいっ!)
「アーベル様はこのゲームをプレイした? 私はやる前に死んじゃったから、ストーリーは全く知らないんだ。事前にキャラクター紹介や概要部分だけは読んでたから、それだけは知っている感じかな」
「それはどのシリーズの事を指しているんだ?」
「え? どのシリーズって『幻想☆魔法恋学園』でしょ?」
「まあ、そうなんだけど。これはシリーズ化されていて俺が知っている限り三作存在している。ブラッドの存在があるのならば、一作目か三作目のどちらかだな」
「シリーズ化? ちょっとまって。これってそんなにシリーズ化されてるの? 私が見たのは多分、一番最初に出た作品だと思うけど」
私はかなり動揺していた。
アーベルの話が正しいのであれば、私の知っているものとは違う物語の世界になってしまうのだろうか。
「……ルティナ…様?」
周囲を見渡しながら探し歩いていると、背後から私の名前を呼ぶ声が響いて来たので振り返った。
そこには心配そうな顔をするリリアスの姿があり、探し人が見つかった事で私の表情は安堵感から緩んでいく。
「良かった。無事だったのね!」
「はい、私は大丈夫です。ルティナ様、本当にごめんなさいっ! ロイドはあんな状況で、女の子を一人残して行くとか本当に馬鹿なの?」
リリアスはすぐ傍に居たロイドを睨みつける様に呟いた。
「本当に申し訳ない」
ロイドは反省した表情で謝ると、私に向けて深く頭を下げて来た。
「あ、謝らないで。私はこの通り怪我もしてないから大丈夫っ」
「本当ですか? はぁ、良かったー」
私の言葉を聞いて、ロイドは心底ほっとした様に深く息を吐いていた
後から知ったのだが、リリアスとロイドは幼馴染であり婚約をしている仲だった。
大切な人が危険な目に遭うかもしれないと思って咄嗟に追いかけてしまったのだろう。
「あれ、アーベル様の姿が見えないけど一緒じゃないの?」
私がきょろきょろと辺りに視線を巡らせていると背後から「俺なら平気だ」という声が響いた。
突然の声に私はビクッと体を跳ね上げてしまう。
「……っ!! ぶ、無事なら良かったわ。そういえば助けに行った子も大丈夫だったの?」
「俺が到着した時にはその場に倒れていたな。だけど怪我は無さそうだった」
「そっか、良かった。魔人に攻撃でもされていないか心配だったけど、何も無くて良かったわ」
「ルティナ嬢は魔人に遭遇したのか?」
私が『魔人』と口に出すとアーベルの表情が強張った。
「うん。会ったには会ったんだけど、通りすがりの暗殺者さんに助けてもらったから大丈夫よ!」
「暗殺者?」
私はうっかり暗殺者と答えてしまい、そんな私の発言を聞いてますますアーベルは眉を顰めていく。
(やばっ、思わず暗殺者なんて物騒な事を言ってしまったわ)
「えっと……、なんとなく見た目がそんな格好をしていたからそうなのかなーって思っただけよ。本当はただの冒険者だったのかも!」
「…………」
私が焦って訂正すると、アーベルは信じて無さそうにじっとこちらを見つめて来る。
それが非常に気まずくて私は更に焦っていってしまう。
「どっちかというと吸血鬼みたいな容姿だったわ。肌は怖い位に白くて、手も死人の様に冷たかったし。もしかしてコスプレしている冒険者だったのかもっ!」
焦っているせいで自分が何を言っているのか、だんだん分からなくなっていた。
そんな私の発言を聞いてリリアスとロイズは不安そうな表情を浮かべていた。
『暗殺者』や『吸血鬼』といった物騒な言葉を聞けば不安を感じるのも当然だろう。
そんな時アーベルは私の腕を掴み「ちょっといいか?」と言って来た。
「え?」
「お前に聞きたい事がある」
アーベルはそう言うと、私を腕を掴んで人が集まっていない方へと移動して行った。
***
危険だからという理由でこの場所から離れることは出来なかった為、極力人が集まっていない端の方へと移動していた。
「ルティナ嬢が会った吸血鬼ってのは、ブラッドという名前では無いか?」
「知ってるの?」
「やっぱりな。あいつがいるのか。ってことはそう言うことか」
アーベルは私の言葉を聞くと、何やら意味深な事を呟いていた。
私は何を言っているのか分からず不思議そうな顔をしていると、アーベルと視線が合った。
「間違いは無いとは思うけど、お前転生者だろ?」
「……え?」
突然の問いかけに、私の頭の中は一瞬思考が止まる様に固まってしまった。
アーベルは間違いなく『転生者』と言っていた。
私の聞き間違えでなければ、アーベルは転生者の存在を知っていて、私の正体にも気付いていると言う事になる。
私は今まで誰にも自分が転生者であることを他人に話したことは無かった。
それは言っても信じてもらえないだろうという理由と、自分が悪役令嬢であるから隠して来た。
一番傍にいたラインハルトにも私が転生者であることは伝えて無いし、気付かれてもいないと思う。
なのに最近出会ったばかりのアーベルにはすぐに気付かれてしまった。
私は動揺と混乱で戸惑っていた。
何も言わずにいると、更にアーベルは質問をして来た。
「さっきコスプレって単語も使っていたよな。この世界にコスプレなんて単語は存在しない。お前が転生者じゃなければ仮装という言葉を使うはずだ。それに以前会った時にも『映画』という単語を言っていたよな。それもこの世界には無いものだ。お前、前世は日本人だろ?」
的確に当てられてしまい、私は驚いた顔でアーベルをただ見つめていた。
「もしかして、アーベル様も転生者?」
私は声を震わせながら問いかけた。
確かに私が使った言葉は、この世界には存在しないものだ。
だけど、それを知っていると言う事は、間違いなくアーベルも転生者であると言っている様なものだった。
(私以外にも転生者は存在してたの?)
私はじっとアーベルの顔を伺うように見つめていた。
するとアーベルはふっと小さく笑った。
「ああ、俺も転生者だ。お前と同じで、前世は日本人だ」
その言葉を聞いて興奮で胸の奥がざわざわと騒がしくなっていくのを感じていた。
今の私の感情は驚きと喜びで二分されているのだろう。
「転生者が私以外にもいるなんて思っても無かった。ここは乙女ゲームが舞台の世界よね? 転生者って他にもいるの?」
「たしかに、ここは乙女ゲームの世界で間違いないな。転生者に会ったのはお前が初めてだから、他に居るのかは分からない」
(私と同じ転生者がいた! どうしよう、すごく嬉しいっ!)
「アーベル様はこのゲームをプレイした? 私はやる前に死んじゃったから、ストーリーは全く知らないんだ。事前にキャラクター紹介や概要部分だけは読んでたから、それだけは知っている感じかな」
「それはどのシリーズの事を指しているんだ?」
「え? どのシリーズって『幻想☆魔法恋学園』でしょ?」
「まあ、そうなんだけど。これはシリーズ化されていて俺が知っている限り三作存在している。ブラッドの存在があるのならば、一作目か三作目のどちらかだな」
「シリーズ化? ちょっとまって。これってそんなにシリーズ化されてるの? 私が見たのは多分、一番最初に出た作品だと思うけど」
私はかなり動揺していた。
アーベルの話が正しいのであれば、私の知っているものとは違う物語の世界になってしまうのだろうか。
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