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第三章:学園生活スタート
24.迫られる②
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心の中をまるで見透かすように真っ直ぐな瞳で見つめられ、私は動揺していた。
悔しいけど、やっぱりラインハルトには嘘は付けないと悟ったが、素直に話したからといってすんなり受け入れて貰えるような話では無い事は分かっていた。
それに、私には話したくない理由が他にもあった。
(どうしよう、もうこれ以上嘘は付けない。でも……)
私は焦りと動揺から困った表情を浮かべてしまう。
本当は全て洗いざらい話してしまいたい。
そうすれば楽になれる気がしたから。
きっと今のラインハルトなら、私の話を最後まで聞いてくれるだろう。
そして私の話を信じようと努力はしてくれるかもしれない。
最大の敵であるラインハルトを味方に付けることが出来れば、断罪へと道は確実に遠のくだろう。
そう思っている判明、話したくないと私の心が邪魔をする。
もし全てを話してしまえば、運命の相手であるヒロインに興味を持ち、私から離れていってしまうような気がした。
言葉に出してしまえば、それが強制力のように現実になってしまいそうな気がして、今まで私が築き上げたものが足下から崩れていくような気がして怖かったのかもしれない。
私は9歳の頃に前世の記憶が蘇り、それなりに頑張って来たつもりだ。
私の希望する結果とは少し離れてしまってはいるが、ラインハルトや周囲の者達とはそれなりに上手くやってこれていると思っている。
それらは全て、今の私にとっては大切な存在になっていた。
ラインハルトは私に意地悪ばかりして来るし、それが悔しくて嫌だと思うこともあったけど、その理由の大半は恥ずかしさであり、本気で嫌いなわけでは無かった。
前世の私は高校生だったのだが、彼氏なんていたことはなかった為、単にこういうことには慣れていないだけなのだと思う。
ヒロインが現れる前までは、断罪される事が一番の恐怖だった。
前世の記憶が蘇った瞬間は、まるで死の宣告をされている様な気分だったからだ。
だから何が何でも回避することを一番に考えていた。
だけど、今は少し違う気がする。
この関係を壊したくない。
ラインハルトに嫌われるの事が怖いと感じてしまう。
だから素直に話すことが出来なかった。
私が黙っていると、ラインハルトは小さく息を吐いた。
そしてどこか寂しそうな顔で見つめてくる。
「私には話せないか?」
「…………」
ラインハルトの表情に気付くと胸の奥がチクっと痛くなる。
だけど私はなんて答えて良いのか、良い言葉が見つからず口を噤んでしまう。
ラインハルトが私の事を心配してくれていることは分かっていた。
その気持ちが分かっているからこそ、私を堪らない気持ちにさせる。
嬉しい感情と、申し訳ない思いと、どうすればいいのか分からない気持ちでいっぱいになり、私は困った顔をすることしか出来なかった。
「ルティは強情だな。そこまで頑なに言いたくないことなら、もう無理には聞かない。だけどこれだけは覚えておいて。私はいつだってルティ味方だ。どうにもならなくなった時は頼って」
ラインハルトは優しい声で呟くと、私の髪を優しく撫でてくれた。
その優しい言葉に涙が零れそうになった。
(ライ、ごめんなさい)
「でも、ルティは分かりやすいからな。少しでも様子がおかしいと感じたら私の方から手を差し伸べてやるから、その時は遠慮せず私の手を取ること。それを約束出来るのであれば、これ以上このことは聞かないことにする」
「わ、分かりました」
私が納得するとラインハルトは小さくため息を漏らした。
「私はルティには甘いな。だけど勘違いはするなよ?」
「勘違い?」
「決してルティを逃がすために言った言葉ではないって事だ。寧ろ、余計に心配になったから手放せなくなったな」
「……っ」
私が僅かに顔を赤く染めてしまうと、ラインハルトは僅かに目を細めた。
「そんな態度を取る癖に、本当に素直じゃないな。前途多難だが、今まで以上にルティに伝わるように愛情表現は続けていかないとな」
「愛情表現って……」
「覚悟しておけよ? ルティが認めるまで、いや、認めても絶対に逃がしてはやらない」
ラインハルトは唇がくっつきそうな程の距離で呟き、言い終わると私の唇を再び奪っていく。
「……んっ」
「とりあえず昼休みまでは口付けをしようか。それとも体中に痕を残されたいか? ルティに選択肢を与えてあげる。好きな方を選んで」
ラインハルトは私の唇を味わうように啄みながら私に答えを求めて来るが、急にそんな事を言われても困ってしまう。
「……っ」
「何も言わないなら、両方試すか?」
「キ、キスで」
私は慌てるように顔を真っ赤にさせながら答えた。
するとラインハルトは意地悪そうに微笑む。
「それなら口を開けて、舌を伸ばして」
「え、それって……」
私 は先程の激しいキスを思い出し、更に顔の奥が熱くなる。
「そう、ルティが蕩けそうな顔になった、いやらしいキスだ」
「……っ」
「ほら、早くして? じゃないと、もっといじめるけどいいのか?」
「ライの意地悪」
私は悔しそうな表情を浮かべ、仕方なくゆっくりと舌を伸ばしていく。
「いい表情だな。ルティの恥ずかしそうな顔、私は好きだ。まるでもっといじめて欲しいとねだっているみたいだな」
「ち、違っ! そんなこと思ってなっ……んんっ!!」
ラインハルトはクスッと悪戯に笑うと、伸ばした私の舌を絡め取るように深く吸い上げていく。
悔しいけど、やっぱりラインハルトには嘘は付けないと悟ったが、素直に話したからといってすんなり受け入れて貰えるような話では無い事は分かっていた。
それに、私には話したくない理由が他にもあった。
(どうしよう、もうこれ以上嘘は付けない。でも……)
私は焦りと動揺から困った表情を浮かべてしまう。
本当は全て洗いざらい話してしまいたい。
そうすれば楽になれる気がしたから。
きっと今のラインハルトなら、私の話を最後まで聞いてくれるだろう。
そして私の話を信じようと努力はしてくれるかもしれない。
最大の敵であるラインハルトを味方に付けることが出来れば、断罪へと道は確実に遠のくだろう。
そう思っている判明、話したくないと私の心が邪魔をする。
もし全てを話してしまえば、運命の相手であるヒロインに興味を持ち、私から離れていってしまうような気がした。
言葉に出してしまえば、それが強制力のように現実になってしまいそうな気がして、今まで私が築き上げたものが足下から崩れていくような気がして怖かったのかもしれない。
私は9歳の頃に前世の記憶が蘇り、それなりに頑張って来たつもりだ。
私の希望する結果とは少し離れてしまってはいるが、ラインハルトや周囲の者達とはそれなりに上手くやってこれていると思っている。
それらは全て、今の私にとっては大切な存在になっていた。
ラインハルトは私に意地悪ばかりして来るし、それが悔しくて嫌だと思うこともあったけど、その理由の大半は恥ずかしさであり、本気で嫌いなわけでは無かった。
前世の私は高校生だったのだが、彼氏なんていたことはなかった為、単にこういうことには慣れていないだけなのだと思う。
ヒロインが現れる前までは、断罪される事が一番の恐怖だった。
前世の記憶が蘇った瞬間は、まるで死の宣告をされている様な気分だったからだ。
だから何が何でも回避することを一番に考えていた。
だけど、今は少し違う気がする。
この関係を壊したくない。
ラインハルトに嫌われるの事が怖いと感じてしまう。
だから素直に話すことが出来なかった。
私が黙っていると、ラインハルトは小さく息を吐いた。
そしてどこか寂しそうな顔で見つめてくる。
「私には話せないか?」
「…………」
ラインハルトの表情に気付くと胸の奥がチクっと痛くなる。
だけど私はなんて答えて良いのか、良い言葉が見つからず口を噤んでしまう。
ラインハルトが私の事を心配してくれていることは分かっていた。
その気持ちが分かっているからこそ、私を堪らない気持ちにさせる。
嬉しい感情と、申し訳ない思いと、どうすればいいのか分からない気持ちでいっぱいになり、私は困った顔をすることしか出来なかった。
「ルティは強情だな。そこまで頑なに言いたくないことなら、もう無理には聞かない。だけどこれだけは覚えておいて。私はいつだってルティ味方だ。どうにもならなくなった時は頼って」
ラインハルトは優しい声で呟くと、私の髪を優しく撫でてくれた。
その優しい言葉に涙が零れそうになった。
(ライ、ごめんなさい)
「でも、ルティは分かりやすいからな。少しでも様子がおかしいと感じたら私の方から手を差し伸べてやるから、その時は遠慮せず私の手を取ること。それを約束出来るのであれば、これ以上このことは聞かないことにする」
「わ、分かりました」
私が納得するとラインハルトは小さくため息を漏らした。
「私はルティには甘いな。だけど勘違いはするなよ?」
「勘違い?」
「決してルティを逃がすために言った言葉ではないって事だ。寧ろ、余計に心配になったから手放せなくなったな」
「……っ」
私が僅かに顔を赤く染めてしまうと、ラインハルトは僅かに目を細めた。
「そんな態度を取る癖に、本当に素直じゃないな。前途多難だが、今まで以上にルティに伝わるように愛情表現は続けていかないとな」
「愛情表現って……」
「覚悟しておけよ? ルティが認めるまで、いや、認めても絶対に逃がしてはやらない」
ラインハルトは唇がくっつきそうな程の距離で呟き、言い終わると私の唇を再び奪っていく。
「……んっ」
「とりあえず昼休みまでは口付けをしようか。それとも体中に痕を残されたいか? ルティに選択肢を与えてあげる。好きな方を選んで」
ラインハルトは私の唇を味わうように啄みながら私に答えを求めて来るが、急にそんな事を言われても困ってしまう。
「……っ」
「何も言わないなら、両方試すか?」
「キ、キスで」
私は慌てるように顔を真っ赤にさせながら答えた。
するとラインハルトは意地悪そうに微笑む。
「それなら口を開けて、舌を伸ばして」
「え、それって……」
私 は先程の激しいキスを思い出し、更に顔の奥が熱くなる。
「そう、ルティが蕩けそうな顔になった、いやらしいキスだ」
「……っ」
「ほら、早くして? じゃないと、もっといじめるけどいいのか?」
「ライの意地悪」
私は悔しそうな表情を浮かべ、仕方なくゆっくりと舌を伸ばしていく。
「いい表情だな。ルティの恥ずかしそうな顔、私は好きだ。まるでもっといじめて欲しいとねだっているみたいだな」
「ち、違っ! そんなこと思ってなっ……んんっ!!」
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