残念系悪役令嬢に転生したら、婚約破棄される予定の王太子に溺愛されています【R-18】

Rila

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第二章:幼少期(2)魔法の勉強と二人の王子

17.三人目の攻略対象者

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 ラインハルトとの婚約は怖いくらい、順調に決まっていった。
 まるでこうなる事が最初から決まっていたかのように。

 私が悪役令嬢で、ラインハルトは攻略対象者で、そして私の婚約者に決まった。
 ここまで来ると確実にストーリー通りの展開に戻されて来ていることに、私は動揺していた。

 私は確かに未来は変えた。
 ラインハルトの妹のラフィーを救って、ラインハルトとも友人になり良い関係を結ぶことが出来たのに。
 ここに来てストーリーの強制力がかかったとでも言うのだろうか。

 私にとっての最大の悪夢は『断罪イベント』である事は変わりない。
 一度はそれを回避出来るかと思ったはずなのに、またこの大きな問題にぶち当たる事になってしまった。

(まずいわ。これは非常にまずい)

 私は自分的なバッドエンドを避ける為にいくつかルールを考えた。

 まずはラインハルトには絶対に嫌われないようにする。
 もしヒロインがラインハルトのルートを選んだ場合、高確率で私はラインハルトによって断罪される事が予想されるからだ。
 そんな事が起こらないと願いたいが、絶対に無いとは言い切れない。
 だから今のうちにラインハルトと仲良くして、敵じゃないアピールをしっかりとしておく必要がある。

 そしてヒロインがラインハルト以外を選んだ場合の対処も考えておかなければならない。
 その為に、他の攻略対象者との仲を悪くさせない様に心掛けなければならない。
 私にとって攻略対象者は全て敵になるわけだが、敵意を持たれない限り回避可能では無いかと考えている。

 ヒロインが現れたら、絶対に恋路は邪魔しない。
 寧ろ応援して、良い人アピールでもしておこう。
 最初からヒロインをいじめなければ、私が悪役令嬢になることは無いだろう。
 もしヒロインがラインハルトを選んだ時は、きっぱりと手を引こうと考えている。

 ラフィーの件で未来が変えられる事は実証済みだ。
 そう思うといくらか前向きに頑張れる気がした。

(絶対私は生き残ってみせるわ!)

 それから魔法が使えることが先日分かったので、少し魔法を極めようと思っている。
 そうすればもし国外追放なんてなった時も冒険者として生きていける筈だ。
 寧ろ冒険者には憧れを持っていたので、私の良い目標になっていた。
 魔法学校を卒業したら、楽しい異世界生活を送る為に頑張ろうと決意した。


***


 私は王宮の庭園で久しぶりにラフィーと談笑しながらお茶をしていた。

「ルティお姉さま、婚約おめでとうございます」
「あ、ありがとう」

 ラフィーはにっこり笑いながら祝ってくれたが、ちっとも嬉しくなかった。
 だけどそんな表情をそのまま顔に出す訳にも行かなかったので、笑顔を作って答えた。

「これで私とルティお姉さまは姉妹になれるんですねっ! わぁ、夢みたいっ」

 ラフィーは目をキラキラと輝かせながら本気で喜んでいる様子だった
 私だってこんなに可愛いラフィーと姉妹になれるのは嬉しい。
 だけど本当にそんな未来が来るのかは分からない。
 そう思うと、何とも言えない気持ちになる。

「お前、ラインハルトと婚約したんだってな」

 ラフィーと談笑していると、不意にクライスが現れ空いてる席に勝手に腰掛けていた。

「あら、クライスお兄さま。サボっているとディスにまた叱られてしまうのでは?」
「……っ!! ラフィー、頼むからそういう怖い事は言わないでくれ! 本当にあいつが現れたらどうするんだ」

 ラフィーは鋭い口調で答えると、クライスは辺りを警戒する様にきょろきょろと見渡していた。

(クライス様は本当にディス様の事が苦手なのね)

「お久しぶりです、クライス様」
「久しぶりだな、あれから魔法の方は順調か?」

「はい! おかげさまで、今は中級魔法の習得を頑張っています」

 思わずガッツポーズを出してしまう私を見て、クライスは満足そうに笑っていた。

「そうかそうか! ルティは頑張っているんだな! 俺は頑張る奴は好きだぞ」
「へぇ、自分はサボっているのに良くそんな事が言えますね。ディスには後で伝えておきますね」

「……っ!! ラフィー、やめてくれ。そんなことしたら大変な事になる」

 慌てるクライスに、ラフィーは涼し気な顔で話していた。
 最近ラフィーがラインハルトに似て来ている気がするのは気のせいだろうか。

「クライス様、こんな所で何をされているのですか?」

 突如背後から声が響いた。
 全く気配を感じず、私はドキッと心臓が飛び跳ねてしまう。
 そしてクライスの顔はみるみるうちに青ざめて行く。

「……ディス。これはあれだ! ラインハルトの婚約者になったルティに挨拶をと思ってだな」
「……っ」

 クライスは相当取り乱している様だった。
 焦っているのがこちらまで伝わって来る程に、クライスは動揺しきっている。

 だからと言っていきなりこちらに話を振られても困ってしまう。
 私は突然現れたディスに視線を向けた。
 彼に会うのは初めてだった。

 ディスは肌がとても白く、それでいて漆黒の長い髪が際立って見える。
 鋭い視線の所為か怖く見えてしまうが、中世的な顔立ちでとても綺麗な顔をしていた。
 容姿についてはさすが攻略対象といった所だろうか。

「初めまして、ルティナ様。私はディス・グランディアと申します」
「初めまして、私はルティナ・グレイスです。よろしくお願いしますっ」

 ディスはとても丁寧な口調で話しているが、威圧感を感じる。
 きっと笑顔を向けられているが目が笑っていないから怖く見えるのかもしれない。

(クライス様の言った通り、油断できなさそうな人ね)

「ディス、またクライスお兄さまがサボっていたわ! 本当にお兄さまには困ったものだわ。私とルティお姉さまの楽し時間を邪魔しようとするなんて」
「ラフィー、俺はサボってなんかいない!」

「クライス様、では挨拶も終わった事ですし戻りましょうか」
「……ああ」

 クライスは半ば強制的にディスに連れて行かれた。

「ディス様って何者なんですか?」
「ルティお姉さまはディスに会うのは初めてですか?」

「はい。クライス様、いつもディス様を怖がっている様だったので」
「ディスの父はこの国の宰相を努めているの。そしてグランディア家は代々魔法学園を取り仕切っているわ。昔からあの家系は魔力が高くて。かつての英雄と言われた大魔術師もあの家の血を継いでる者が何人かいた気がします」

 私はラフィーの話を聞いて感心してしまった。

(ディスの家ってそんなすごい人なんだ。しかも魔力が高いって、絶対に敵にしてはならない人間ね)

「昔からクライスお兄さまはディスと一緒にいたから、仲良いはずなのにどうしていつも逃げるんだろう。不思議ね」
「そ、そうなんだ」

 なんだろう。
 ラフィーが限りなく黒く見える。
 天使のように見えた、あの頃のラフィーはどこにいってしまったのだろう。
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