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第二章:幼少期(2)魔法の勉強と二人の王子
15.初めての魔法
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「風の初級魔法くらいは使えるよな?」
「た、多分?」
クライスの言葉に、私は自信なさそうに答えた。
(私って魔法使えるの? 魔法使った事なんて今まであったっけ?)
私が思い返す限り、無い様な気がする。
「使えないのかよ。マジかよ。お前、俺よりも酷いな。これはもうディスに見てらうしかないか」
「……っ! 自分が怖いからって私に押し付けるのは止めてくださいっ!」
私の中では完全にディス=怖い人になっていて、出来る事なら避けたい相手になっていた。
私が必死に拒否していると、クライスは笑っていた。
「ルティって面白いな。顔が青ざめてるぞ。あはは」
「酷いっ! 誰のせいだと思っているんですかっ!!」
「ああ、ごめんごめん。冗談だ。俺が責任を持って教えてやるから、許してくれ」
「……っ」
クライスは苦笑しながら謝ると、私に魔法学の勉強を教えてくれることになった。
「魔法はイメージが大事らしい」
「イメージ、ですか」
「ルティの場合は属性が風だから、実際に風を感じてそのイメージを思い浮かべてみるのが良いかもしれないな。初級魔法なら簡単だし、一週間もすれば習得できるんじゃないか?」
「風を感じて思い浮かべる、か。頑張ってみますっ!」
「ルティって公爵家の人間だよな? だったら強い魔力を持ってる可能性が高いかもな。ほら、位の高い貴族程魔力量も多いって言うからな」
「なるほど。帰ったら早速試してみます!」
「頑張れよ!」
***
私は屋敷に戻ると、庭に向かった。
先程クライスに色々と教えてもらったばかりだったので、試したくてうずうずしていたからだ。
「風のイメージ。風の……、出でよ、風っ!!」
私が手を前に伸ばして『風』と叫ぶと、ヒューと風が流れた。
(うそ、成功したの?)
「勘違いするな。それは魔法では無く、ただ単に風が吹いただけだ」
私が感動していると背後から、冷めた声が響いた。
「お、お兄様っ! いつの間に」
「ルティが何か変な事を始めるんじゃないかと心配になって見に来ただけだ」
(変な事って酷いわ、お兄様!)
「今のは練習で。そう、練習よ! ……本番はこれからなんだから」
私はなんだか悔しくなり必死に強がって見せた。
この世界での魔法がどんなものか、私には良く分からなかった。
だから何をイメージすればいいのか分からない。
でも私がいた前世では、魔法を使ったゲームや話はいくつも存在していた。
それは何度も目にしていたから、私はとりあえずそれをイメージしてみることにした。
静かに目を閉じる。
そして頭の奥に風のイメージを膨らませていく。
(風と言えば竜巻とかよね。やってみるか)
「……トルネードっ!!」
イメージを頭の奥に強く念じて、言葉と同時に指先に集中させる。
言葉を放った後ゆっくりと目を開けると、ゴオォォっとすごい音で鳴り響きながら、私の身長よりも高い竜巻が目の前に発生していた。
(……え?)
「お、お兄様っ! 成功しましたっ!! 私、成功した! ……ってこれどうするの!?」
私が出したであろう竜巻が、ぐるぐるとうねりながら私の方へと迫って来る。
「お前、一体何をっ!!」
兄は慌てて私の前に出ると、私の出した竜巻を別の魔法で掻き消してくれた。
「……び、びっくりした。さすがお兄様っ」
私は驚き過ぎて腰を抜かしてしまい、その場にぺたんと座り込んでいた。
「ルティ、今のはなんだ?」
「えっと、風の魔法だと思います」
兄は私の前にしゃがむと、じっと顔を覗く様に聞いて来た。
私は戸惑いながらも、そう答えた。
すると兄は何やら考え込んでいる様子だった。
「あんなものは見たことが無い」
「そうなの? 今日王宮でクライス様からイメージが大事と聞いたから、風をイメージしてみたんです」
「ルティはクライス殿下から魔法を教えてもらっているのか?」
「はい! 今日偶然図書室で会って色々と教えてくれました」
「そうなのか。ラフィー王女や、ラインハルト殿下といい、お前は王族と親しいんだな。ああ、それで思い出したけど、父さんがルティの事を呼んでいたぞ。何か話があるみたいだから執務室に行ってくれ」
「お父様が? なんだろう……」
私は立ち上がると、兄と別れて父のいる書斎へと向かった。
***
「ルティ、来てくれたか」
「はい! 今お兄様と会って、私にお話があるとか」
「ああ、そうなんだ。そこにかけてくれ」
父は私をソファーに座る様にと促すと、対面する様に腰掛けた。
「話と言うのは、ルティに王宮からの招待状が届いている。正確に言うと、ラインハルト殿下からな」
「ライから?」
(ライからの招待状って一体なんだろう)
「以前ルティが行ったお茶会を覚えているか? あれはラインハルト殿下の婚約者選びの為に開かれたものだったのだが。それの最終選考にどうやらルティが残っている様で、その話があるから来て欲しいとの事らしい」
「お茶会には参加したけど、あの時私は……」
私は父の言葉に引き攣った顔を浮かべた。
(あの時、私お茶会を勝手に抜け出して迷子になっていたんだったわ。しかも一切ライには会っていなかったのに。なんで私が最終選考に残ってるの? ……何かの間違いかな)
あまり気は進まなかったが、ライにはラフィーの件で大分お世話になっていた事と、友人でもある。
それに最近ライの姿を見かけて無かった為行くことにした。
元々頻繁に王宮には通っていたので、ついでと思えば大した問題ではなかった。
私はそんな安易な考えで行くことを決めてしまった。
「分かりました、行きます」
「た、多分?」
クライスの言葉に、私は自信なさそうに答えた。
(私って魔法使えるの? 魔法使った事なんて今まであったっけ?)
私が思い返す限り、無い様な気がする。
「使えないのかよ。マジかよ。お前、俺よりも酷いな。これはもうディスに見てらうしかないか」
「……っ! 自分が怖いからって私に押し付けるのは止めてくださいっ!」
私の中では完全にディス=怖い人になっていて、出来る事なら避けたい相手になっていた。
私が必死に拒否していると、クライスは笑っていた。
「ルティって面白いな。顔が青ざめてるぞ。あはは」
「酷いっ! 誰のせいだと思っているんですかっ!!」
「ああ、ごめんごめん。冗談だ。俺が責任を持って教えてやるから、許してくれ」
「……っ」
クライスは苦笑しながら謝ると、私に魔法学の勉強を教えてくれることになった。
「魔法はイメージが大事らしい」
「イメージ、ですか」
「ルティの場合は属性が風だから、実際に風を感じてそのイメージを思い浮かべてみるのが良いかもしれないな。初級魔法なら簡単だし、一週間もすれば習得できるんじゃないか?」
「風を感じて思い浮かべる、か。頑張ってみますっ!」
「ルティって公爵家の人間だよな? だったら強い魔力を持ってる可能性が高いかもな。ほら、位の高い貴族程魔力量も多いって言うからな」
「なるほど。帰ったら早速試してみます!」
「頑張れよ!」
***
私は屋敷に戻ると、庭に向かった。
先程クライスに色々と教えてもらったばかりだったので、試したくてうずうずしていたからだ。
「風のイメージ。風の……、出でよ、風っ!!」
私が手を前に伸ばして『風』と叫ぶと、ヒューと風が流れた。
(うそ、成功したの?)
「勘違いするな。それは魔法では無く、ただ単に風が吹いただけだ」
私が感動していると背後から、冷めた声が響いた。
「お、お兄様っ! いつの間に」
「ルティが何か変な事を始めるんじゃないかと心配になって見に来ただけだ」
(変な事って酷いわ、お兄様!)
「今のは練習で。そう、練習よ! ……本番はこれからなんだから」
私はなんだか悔しくなり必死に強がって見せた。
この世界での魔法がどんなものか、私には良く分からなかった。
だから何をイメージすればいいのか分からない。
でも私がいた前世では、魔法を使ったゲームや話はいくつも存在していた。
それは何度も目にしていたから、私はとりあえずそれをイメージしてみることにした。
静かに目を閉じる。
そして頭の奥に風のイメージを膨らませていく。
(風と言えば竜巻とかよね。やってみるか)
「……トルネードっ!!」
イメージを頭の奥に強く念じて、言葉と同時に指先に集中させる。
言葉を放った後ゆっくりと目を開けると、ゴオォォっとすごい音で鳴り響きながら、私の身長よりも高い竜巻が目の前に発生していた。
(……え?)
「お、お兄様っ! 成功しましたっ!! 私、成功した! ……ってこれどうするの!?」
私が出したであろう竜巻が、ぐるぐるとうねりながら私の方へと迫って来る。
「お前、一体何をっ!!」
兄は慌てて私の前に出ると、私の出した竜巻を別の魔法で掻き消してくれた。
「……び、びっくりした。さすがお兄様っ」
私は驚き過ぎて腰を抜かしてしまい、その場にぺたんと座り込んでいた。
「ルティ、今のはなんだ?」
「えっと、風の魔法だと思います」
兄は私の前にしゃがむと、じっと顔を覗く様に聞いて来た。
私は戸惑いながらも、そう答えた。
すると兄は何やら考え込んでいる様子だった。
「あんなものは見たことが無い」
「そうなの? 今日王宮でクライス様からイメージが大事と聞いたから、風をイメージしてみたんです」
「ルティはクライス殿下から魔法を教えてもらっているのか?」
「はい! 今日偶然図書室で会って色々と教えてくれました」
「そうなのか。ラフィー王女や、ラインハルト殿下といい、お前は王族と親しいんだな。ああ、それで思い出したけど、父さんがルティの事を呼んでいたぞ。何か話があるみたいだから執務室に行ってくれ」
「お父様が? なんだろう……」
私は立ち上がると、兄と別れて父のいる書斎へと向かった。
***
「ルティ、来てくれたか」
「はい! 今お兄様と会って、私にお話があるとか」
「ああ、そうなんだ。そこにかけてくれ」
父は私をソファーに座る様にと促すと、対面する様に腰掛けた。
「話と言うのは、ルティに王宮からの招待状が届いている。正確に言うと、ラインハルト殿下からな」
「ライから?」
(ライからの招待状って一体なんだろう)
「以前ルティが行ったお茶会を覚えているか? あれはラインハルト殿下の婚約者選びの為に開かれたものだったのだが。それの最終選考にどうやらルティが残っている様で、その話があるから来て欲しいとの事らしい」
「お茶会には参加したけど、あの時私は……」
私は父の言葉に引き攣った顔を浮かべた。
(あの時、私お茶会を勝手に抜け出して迷子になっていたんだったわ。しかも一切ライには会っていなかったのに。なんで私が最終選考に残ってるの? ……何かの間違いかな)
あまり気は進まなかったが、ライにはラフィーの件で大分お世話になっていた事と、友人でもある。
それに最近ライの姿を見かけて無かった為行くことにした。
元々頻繁に王宮には通っていたので、ついでと思えば大した問題ではなかった。
私はそんな安易な考えで行くことを決めてしまった。
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