上 下
11 / 64
第一章:幼少期(1)初めての友達と伝説の薬草

10.今の私と前世の私

しおりを挟む
 私は屋敷に戻ると、お父様に包み隠さず全て事情を話した。
 いくら王子であるラインハルトの付き添いがあるとは言っても過保護なお父様のことだ。
 絶対に反対されると思っていた。
 だけど実際は私の話をすんなりと受け入れてくれて、反対など一切されることは無かった。
 意外過ぎて、私は拍子抜けしてしまっていた。


「そうか。そんな事があったのだな。最近のルティはどこか変わったと思っていたが、随分と成長したんだね。昔の甘えて来るルティも私は好きだったが、一生懸命になっているルティの事も私は大好きだよ」
「……お父様っ!」

 お父様の言葉に胸の奥がじーんと熱くなり、私は泣きそうな顔をしてしまう。

(お父様優し過ぎよ。ルティナって本当に愛されているのね)

 私がここまで大きく変わったのは、ラフィーとの出会いがあったからだろう。
 初めて出来た友達で、これから先もずっと友達でいたくて、絶対に失いたくは無かった。
 それが私の心をここまで突き進ませた。

 今までは自分中心で周りの事なんて考えたことは殆ど無かったが、ラフィーと出会う事で誰かの為に何かしたいと言う感情が芽生えた。
 それは今の私、ルティナ・グレイスという令嬢の人生を大きく変えるきっかけだったのだと思う。

 確かに私は前世を思い出し、その過去の人格を思い出した。
 だけど今のルティナも私であることには変わりない。

 ここは乙女ゲームの世界だから、シナリオ通りに進まなければならないの?
 申し訳ないけど、そんな気は更々ない。
 どんな理由で私がこの世界に転生したのかは分からないけど、私は自分が思うように生きていくつもりだ。

(だから、ラフィーは絶対に私が救う!)

「護衛がいるのなら安心だとは思うが、あまり無茶はしないようにな。それにしても、ラインハルト殿下とも仲良くなるなんて中々やるな」
「ふふっ、ライとも友達になったのよっ!」

 私がラインハルトの事を愛称で呼ぶと、父は目を見開いて驚いた表情をさせた。

(私が王子の名前をあだ名で気安く呼んでいるから驚いたのかな?)

 今の私の中には前世の人格もあり、気軽に愛称で呼ぶことには何ら抵抗が無かった。
 それに本人から直々に許可は貰った。
『ライ』と呼んでも何ら問題はないはずだ。

「お父様、そう呼ぶ様に言い出したのは私じゃなくて、ライの方ですっ! だから大丈夫です」
「そ、そうか……」

 私は慌てて説明するが、それでも父は驚いた顔をしたままだった。

(ライが良いって言ったんだから何も問題はないよね? 私から言い出したことじゃないし!)

「まあ、殿下には迷惑を掛けない様にするんだよ」
「はいっ!」
 
 無事お父様にも報告が出来て、後ろめたい気持ちも無くなり明日は余計な事を気にせず月下草を探しに行けそうだ。
 そう思うと今から明日が楽しみで仕方なくなった。

(ラフィーちゃん、待っていてね! 絶対明日、見つけて帰るから!)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ゲームの序盤に殺されるモブに転生してしまった

白雲八鈴
恋愛
「お前の様な奴が俺に近づくな!身の程を知れ!」 な····なんて、推しが尊いのでしょう。ぐふっ。わが人生に悔いなし! ここは乙女ゲームの世界。学園の七不思議を興味をもった主人公が7人の男子生徒と共に学園の七不思議を調べていたところに学園内で次々と事件が起こっていくのです。 ある女生徒が何者かに襲われることで、本格的に話が始まるゲーム【ラビリンスは人の夢を喰らう】の世界なのです。 その事件の開始の合図かのように襲われる一番目の犠牲者というのが、なんとこの私なのです。 内容的にはホラーゲームなのですが、それよりも私の推しがいる世界で推しを陰ながら愛でることを堪能したいと思います! *ホラーゲームとありますが、全くホラー要素はありません。 *モブ主人のよくあるお話です。さらりと読んでいただけたらと思っております。 *作者の目は節穴のため、誤字脱字は存在します。 *小説家になろう様にも投稿しております。

転生したらただの女子生徒Aでしたが、何故か攻略対象の王子様から溺愛されています

平山和人
恋愛
平凡なOLの私はある日、事故にあって死んでしまいました。目が覚めるとそこは知らない天井、どうやら私は転生したみたいです。 生前そういう小説を読みまくっていたので、悪役令嬢に転生したと思いましたが、実際はストーリーに関わらないただの女子生徒Aでした。 絶望した私は地味に生きることを決意しましたが、なぜか攻略対象の王子様や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛される羽目に。 しかも、私が聖女であることも判明し、国を揺るがす一大事に。果たして、私はモブらしく地味に生きていけるのでしょうか!?

婚約破棄したい悪役令嬢と呪われたヤンデレ王子

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「フレデリック殿下、私が十七歳になったときに殿下の運命の方が現れるので安心して下さい」と婚約者は嬉々として自分の婚約破棄を語る。 それを阻止すべくフレデリックは婚約者のレティシアに愛を囁き、退路を断っていく。 そしてレティシアが十七歳に、フレデリックは真実を語る。 ※王子目線です。 ※一途で健全?なヤンデレ ※ざまああり。 ※なろう、カクヨムにも掲載

18禁の乙女ゲームの悪役令嬢~恋愛フラグより抱かれるフラグが上ってどう言うことなの?

KUMA
恋愛
※最初王子とのHAPPY ENDの予定でしたが義兄弟達との快楽ENDに変更しました。※ ある日前世の記憶があるローズマリアはここが異世界ではない姉の中毒症とも言える2次元乙女ゲームの世界だと気付く。 しかも18禁のかなり高い確率で、エッチなフラグがたつと姉から嫌って程聞かされていた。 でもローズマリアは安心していた、攻略キャラクターは皆ヒロインのマリアンヌと肉体関係になると。 ローズマリアは婚約解消しようと…だが前世のローズマリアは天然タラシ(本人知らない) 攻略キャラは婚約者の王子 宰相の息子(執事に変装) 義兄(再婚)二人の騎士 実の弟(新ルートキャラ) 姉は乙女ゲーム(18禁)そしてローズマリアはBL(18禁)が好き過ぎる腐女子の処女男の子と恋愛よりBLのエッチを見るのが好きだから。 正直あんまり覚えていない、ローズマリアは婚約者意外の攻略キャラは知らずそこまで警戒しずに接した所新ルートを発掘!(婚約の顔はかろうじて) 悪役令嬢淫乱ルートになるとは知らない…

目が覚めたら夫と子供がいました

青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。 1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。 「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」 「…あなた誰?」 16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。 シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。 そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。 なろう様でも同時掲載しています。

悪役令嬢に転生したら溺愛された。(なぜだろうか)

どくりんご
恋愛
 公爵令嬢ソフィア・スイートには前世の記憶がある。  ある日この世界が乙女ゲームの世界ということに気づく。しかも自分が悪役令嬢!?  悪役令嬢みたいな結末は嫌だ……って、え!?  王子様は何故か溺愛!?なんかのバグ!?恥ずかしい台詞をペラペラと言うのはやめてください!推しにそんなことを言われると照れちゃいます!  でも、シナリオは変えられるみたいだから王子様と幸せになります!  強い悪役令嬢がさらに強い王子様や家族に溺愛されるお話。 HOT1/10 1位ありがとうございます!(*´∇`*) 恋愛24h1/10 4位ありがとうございます!(*´∇`*)

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

乙女ゲーのモブデブ令嬢に転生したので平和に過ごしたい

ゆの
恋愛
私は日比谷夏那、18歳。特に優れた所もなく平々凡々で、波風立てずに過ごしたかった私は、特に興味のない乙女ゲームを友人に強引に薦められるがままにプレイした。 だが、その乙女ゲームの各ルートをクリアした翌日に事故にあって亡くなってしまった。 気がつくと、乙女ゲームに1度だけ登場したモブデブ令嬢に転生していた!!特にゲームの影響がない人に転生したことに安堵した私は、ヒロインや攻略対象に関わらず平和に過ごしたいと思います。 だけど、肉やお菓子より断然大好きなフルーツばっかりを食べていたらいつの間にか痩せて、絶世の美女に…?! 平和に過ごしたい令嬢とそれを放って置かない攻略対象達の平和だったり平和じゃなかったりする日々が始まる。

処理中です...