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第一章:幼少期(1)初めての友達と伝説の薬草

7.伝説の薬草①

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 私はラインハルトに案内されて、客間のソファーに腰を掛けていた。
 ラインハルトとは対面する様に座っているのだが、緊張から私の顔は強張っている。
 視線を上げる勇気が無くて私がいつまでも俯いたままでいると、ラインハルトが小さく笑った。

「そんなに緊張されなくても大丈夫ですよ。ここには私と貴女しかいませんから」
「は、はいっ……」

 ラインハルトはそうは言うけど、二人だから余計に緊張していた。
 だけどいつまでも俯いてばかりはいられないと思い、私はゆっくりと顔を上げると優しい表情でこちらを見ているラインハルトと目が合いドキドキしてしまう。
 やっぱり何度見てもラインハルトの顔は綺麗で、悔しいが見惚れてしまう。

「妹のラフィーは本当に貴女との事を楽しそうに話すんです。きっと近い年の子とあまり遊んだことが無かったから、嬉しかったんでしょうね。あんなに楽しそうな姿を見るのは本当に久しぶりだった。だからこそ本当に貴女には感謝しています。ありがとう」
「そ、そんなことないですっ。嬉しいのも感謝しているのも私の方で、それに初めての友達がラフィーちゃ、ラフィー王女でした」

「いつも通り『ラフィーちゃん』と呼んで構いませんよ」
「……っ!」

 私が戸惑った顔をしていると、ラインハルトは小さく笑った。

「さっき泣いていたのは、ラフィーの事ですよね?」
「え? は、はいお恥ずかしい所を見せてしまい、ごめんなさい。ラフィーちゃんの病状については、お父様からある程度は聞きました。病名が分からないから治す薬も作れないと」

「残念ながらその通りです。各地から腕の立つ医師を呼んで診てもらいましたが、皆が同じ答えでした。『分からない』と」
「何か助ける方法は無いんでしょうか」

 私は縋るような顔でラインハルトを見つめていた。

「試せることは全てしましたが、残念ながら効果はありませんでした。もし、この世界に聖女がいれば治せるかもしれません。しかし残念ながらこの時代にはまだ現れてはいない」
「聖女……? それなら」

 私はその言葉にはっとしたが、すぐに言葉は止まってしまった。
 今後聖女は現れる。
 だけど、私はその名前を知らない。

 聖女となるのは、この世界のヒロインである主人公。
 その為名前欄は空白で、私が確認した限りではデフォルト名は記されてはいなかった。

 名前が分からなければ探す術はない。
 私はゲームをプレイしていなかった為、ヒロインが何処に住んでいるのかも分からない。
 それに学園に入学するのはまだずっと先だ。
 ラインハルトの紹介欄にも亡くなったと書かれていたわけだし、救えるとすれば多分今しかない。

 この世界には魔法や聖女が存在する。
 そうであるならば他にもっと特別な何かも存在したりはしないだろうか?
 例えば神とか天使。
 もしくはなんでも治せる薬草など。

(薬草……?)

 そう言えば昔、何かで読んだことがあるような気がする。
 どんな病も傷も治せる万能薬。

「……月下草」

 私は思い出すようにぼそりと呟いた。

「月下草か。私も聞いたことがあります。どんな病でも治せる伝説の薬草ですよね」
「そうですっ! それがあればラフィーちゃんのこと助けられるかもしれませんっ!」

 月下草、別名月下想。
 どんな傷も病も治せると言われている伝説の薬草。
 昔、お父様にに買って貰った絵本にそう書かれていた。

「たしかに月下草があればラフィーの病気も治せるかもしれない。だけどそれはあくまでも伝説上の話です。本当に存在するかもわからないものだ。それを探すのは不可能に近いと思いますが」
「大丈夫です! この世界には魔法もあるし聖女だっている。だったらなんでも治せる薬草だって存在するはずです! 私が絶対に見つけてラフィーちゃんを助けます!」

 私は真直ぐにラインハルトの瞳を見つめながら答えていた。
 今の私には迷いなんてないし、絶対に見つかると本気で信じている。
 そして今やるべきことが見えて、私は喜んでいた。

「見つけると言っても、どうやって?」
「まずは本を探してみます」

「本か。それなら王宮内にある図書館を使うといい。あそこならそれなりに古いものまで揃っていると思うからね。貴女が今後自由に出入り出来るように私の方から伝えておきます」
「ありがとうございますっ! では早速行ってきます!」

 私は勢い良くソファーから立ち上がった。

「案内するよ。私も救えるものならラフィーの事を救いたいと思っているからね」
「お願いします!」
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