上 下
6 / 64
第一章:幼少期(1)初めての友達と伝説の薬草

5.初めて出来た友達①

しおりを挟む
 昨日は久しぶりに歩き回った事と前日の寝不足がたたり、すぐに休んでしまった。
 翌日、私は昨日の出来事を楽しそうにお父様に話していた。

「昨日はすごく楽しかったのっ! 行って良かったわ」

 思い出すだけで胸が高鳴り、私は声を弾ませながら楽しそうに話していた。

「そうか。そんなに楽しめたなら良かったな」
「うんっ! それにね、すごく可愛いお友達が出来たの」

(そういえば私に友達っていたっけ? いなかった……。じゃあラフィーちゃんが初めてのお友達ってことか。あんな可愛い子が初めてのお友達だなんて素敵!)

「お父様、ラフィーって名前の子知ってますか? わたしよりも少し年齢は下の子で。どこの家の子か聞かなかったんだけど、多分良く王宮に遊びに来ている子だと思うんだけど」
「ラフィー?」

 私は社交界にはまだ出たことも無いし、お茶会に参加するのも初めてだった為、ラフィーがどこの家の子か分からなかった。
 父は私の言葉を聞いて僅かに目を細めた。

「お父様? 心当たりがあるんですか?」
「恐らくその子はラフィー王女のことじゃないか?」

「……王女?」

 私は意外な言葉が返ってきた為、思わず聞き直してしまった。

「王宮にいてラフィーと言う名であるのなら、間違いないだろうな」
「…………」

 父の言葉に絶句した。
 確かにラフィーちゃんは可愛くて天使みたいだと思ったし、王女と言われたら納得は多分出来る。
 私が動揺していると、お父様は顔を曇らせていた。

「ルティ、こんな事を言うのは心苦しいんだが。少しラフィー王女について話をさせてもらってもいいか?」
「……はい」

 お父様の曇った表情から察するに、いい話ではないことは分かってしまった。

「ラフィー王女はラインハルト王子の3歳下になる妹君なんだが、昔から体がとても弱くてね。部屋から出ることは殆ど無く、ベッドの上で生活を送っているらしい。きっとルティが会った時は体調が良かったんだろうね」
「体が弱いって。でも昨日は普通に遊んでたわ。そんなに弱いの?」

「そうだね。状態は良くない方に進んでいるらしい。ラフィー王女の病を治す薬見つからないんだ。各地から優秀な医師を呼んで診てもらっても結果はいつも同じだそうだ。病名が分からないからこそ、治療する方法が分からない。それが病気なのか呪いなのかも分からない。そんな状態で手の打ちようがないそうだ。だけど病気は待ってはくれない。刻一刻と悪い方向へは進んでいて、最近は中々外に出る事も出来ないと聞いた」
「そん、なっ……」

 私の声は震えていた。
 昨日会ったラフィーちゃんは、私と何ら変わらないくらい元気そうに笑っていた。
 あの時病気だなんて微塵も感じなかった。

(信じられない。そんな事……)

「わたし、王宮に行ってラフィーちゃんに会って来る!」

 私は居ても立っても居られなくなり、席を立とうとした。

「ルティ、やめなさい。今の話を聞いて分かるだろう。ラフィー王女は昨日元気だったからと言って、今日も元気だとは限らない」
「で、でもっ……」

 普段なら優しく答えてくれるお父様だが、今日は真面目な顔で私の事を止めていた。
 私の瞳には涙が浮かび、耐えていなければ溢れてしまいそうだった。

「それなら手紙を書いてみたらどうだ? きっとラフィー王女も喜んでくれるんじゃないか?」
「手紙……? そうね。わたし、手紙書くわ!」

 私は席を立ち、慌てる様に自室へと戻った。


***


 自室に戻ると、私は机の上に置かれている花柄の便箋と睨めっこをしていた。

(なんて書こう)

 あまり病気の事には触れない方が良いだろうし、この前の遊んだ時のお礼とか書けばいいのだろうか。
 
(お花の冠の作り方を教えてもらったことと、また遊ぼうって事を書けばいいかな)

 私は置いてあるペンを手にすると、ゆっくりと書き始めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

婚約破棄したい悪役令嬢と呪われたヤンデレ王子

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「フレデリック殿下、私が十七歳になったときに殿下の運命の方が現れるので安心して下さい」と婚約者は嬉々として自分の婚約破棄を語る。 それを阻止すべくフレデリックは婚約者のレティシアに愛を囁き、退路を断っていく。 そしてレティシアが十七歳に、フレデリックは真実を語る。 ※王子目線です。 ※一途で健全?なヤンデレ ※ざまああり。 ※なろう、カクヨムにも掲載

ヤンデレお兄様に殺されたくないので、ブラコンやめます!(長編版)

夕立悠理
恋愛
──だって、好きでいてもしかたないもの。 ヴァイオレットは、思い出した。ここは、ロマンス小説の世界で、ヴァイオレットは義兄の恋人をいじめたあげくにヤンデレな義兄に殺される悪役令嬢だと。  って、むりむりむり。死ぬとかむりですから!  せっかく転生したんだし、魔法とか気ままに楽しみたいよね。ということで、ずっと好きだった恋心は封印し、ブラコンをやめることに。  新たな恋のお相手は、公爵令嬢なんだし、王子様とかどうかなー!?なんてうきうきわくわくしていると。  なんだかお兄様の様子がおかしい……? ※小説になろうさまでも掲載しています ※以前連載していたやつの長編版です

【R18】悪役令嬢は元お兄様に溺愛され甘い檻に閉じこめられる

夕日(夕日凪)
恋愛
※連載中の『悪役令嬢は南国で自給自足したい』のお兄様IFルートになります。 侯爵令嬢ビアンカ・シュラットは五歳の春。前世の記憶を思い出し、自分がとある乙女ゲームの悪役令嬢である事に気付いた。思い出したのは自分にべた甘な兄のお膝の上。ビアンカは躊躇なく兄に助けを求めた。そして月日は経ち。乙女ゲームは始まらず、兄に押し倒されているわけですが。実の兄じゃない?なんですかそれ!聞いてない!そんな義兄からの溺愛ストーリーです。 ※このお話単体で読めるようになっています。 ※ひたすら溺愛、基本的には甘口な内容です。

【R18】悪役令嬢(俺)は嫌われたいっ! 〜攻略対象に目をつけられないように頑張ったら皇子に執着された件について〜

べらる@R18アカ
恋愛
「あ、やべ。ここ乙女ゲームの世界だわ」  ただの陰キャ大学生だった俺は、乙女ゲームの世界に──それも女性であるシスベルティア侯爵令嬢に転生していた。  シスベルティアといえば、傲慢と知られる典型的な“悪役”キャラ。だが、俺にとっては彼女こそ『推し』であった。  性格さえ除けば、学園一と言われるほど美しい美貌を持っている。きっと微笑み一つで男を堕とすことができるだろう。 「男に目をつけられるなんてありえねぇ……!」  これは、男に嫌われようとする『俺』の物語……のはずだったが、あの手この手で男に目をつけられないようにあがいたものの、攻略対象の皇子に目をつけられて美味しくいただかれる話。 ※R18です。 ※さらっとさくっとを目指して。 ※恋愛成分は薄いです。 ※エロコメディとしてお楽しみください。 ※体は女ですが心は男のTS主人公です

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

転生したらただの女子生徒Aでしたが、何故か攻略対象の王子様から溺愛されています

平山和人
恋愛
平凡なOLの私はある日、事故にあって死んでしまいました。目が覚めるとそこは知らない天井、どうやら私は転生したみたいです。 生前そういう小説を読みまくっていたので、悪役令嬢に転生したと思いましたが、実際はストーリーに関わらないただの女子生徒Aでした。 絶望した私は地味に生きることを決意しましたが、なぜか攻略対象の王子様や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛される羽目に。 しかも、私が聖女であることも判明し、国を揺るがす一大事に。果たして、私はモブらしく地味に生きていけるのでしょうか!?

処理中です...