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第一章:幼少期(1)初めての友達と伝説の薬草

3.お茶会に参加する②

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 それから2週間があっという間に過ぎ、いよいよ待ちに待ったお茶会が開かれる日になった。
 私は興奮のあまり昨日はなかなか眠れず、少し寝不足気味だった。
 しかしそこはプロの使用人達が綺麗にメイクを施してくれて、更に可愛らしいピンク色のふわっとしたドレスへと着替えさせてくれた。
 おかげで悪い所なんて見当たらない程に私は美しくなっていた。

 悪目立ちしないようにパステルカラーの柔らかい色を選んだ。
 今までの私なら誰よりも目立つことを一番に考えていたから、真っ赤に燃えるような色のドレスだったり、目がちかちかする様な色の物を選んでいたに違いない。
 そう言った色のドレスは私の部屋の奥の方に沢山並べられている。

(あのドレス、もう着ないから処分してしまいたいわ。完全に黒歴史ね)

 準備が出来ると私は馬車へと乗り込んだ。
 私の屋敷から王都までは馬車で20分もあれば着くだろう。
 窓の方に視線を向け、景色を見るわけでも無く考え事を始めていた。

 今日は未来の私の婚約者になるかもしれない、ラインハルト死神と初めて出会う場でもある。
 ちなみに今日は遠くから眺めているだけで出会うつもりはない。
 敵を知るために視察に来たと言うところだろうか。

(ここで失敗したら、全て終わりと言っても過言では無いわ!最初はそれくらい大切よね。心して参加しなきゃ)

 何も知らずに参加していたら、きっとこんな風に物語は展開していくのだろう。
 これは悪い事例だ。

 今日のお茶会に参加した私は、見目麗しいラインハルトに一目惚れをしてしまう。
 屋敷に帰り、即お父様に泣きつき強引に婚約者になれるように頼み込む。
 娘に甘いお父様は間違いなく私の要求を受け入れてくれる。
 更に私は公爵家という優位な地位にいる為、選ばれる確率は高いと思う。
 婚約者に決まった後は、しつこくラインハルトに付き纏い、ウンザリされ避けられると言うパターンで間違いないはずだ。

(ド定番の展開よね)

 その後、本編である学園生活が始まるとラインハルトの前にヒロインが現れる。
 ヒロインに嫉妬した私はあの手この手でヒロインをいじめまくる。
 その事がラインハルトにバレて断罪劇が始まり、婚約破棄。
 そして私は追放か処刑になり、物語から強制退場。
 邪魔者がいなくなった二人は、ついにハッピーエンドを迎える。
 まあ、こんな所だろう。

「ふふふっ、案ずることは無い。だって、今のわたしならそれを回避するのは容易いこと。なんたって王太子に近付かなければいいだけのことなのだから」

 私はふんふんと鼻で高らかに笑い、満足そうに独り言を呟いていた。

(王太子がどの程度の者か、しっかりとこの目で確かめてあげるわ)



***


 そんな事を考えていると20分なんてあっという間で、王都にある王宮へと到着した。
 私は馬車から降りると、大きな庭園の中にある広場へと案内された。


 すでにもう何十人もの着飾った令嬢達が集まっている模様で、広場は賑やかな雰囲気に包まれていた。
 ここにいる令嬢達は皆王太子の婚約者になりたくて来ているのだろうか。
 私は初めて参加するお茶会に少し戸惑っていたが、その雰囲気には直ぐに慣れることが出来た。

 会場になっている広場の周りには色んな色の薔薇が咲き誇っていて、甘い匂いを感じていると緊張が解れていくようだ。
 そして奥の方には大きなテーブルが多数並べられていて、その上には可愛くデコレーションされた可愛らしいお菓子が沢山並んでいた。

(……っ!?)

 私はそれに目を奪われると、迷うことなく後ろのテーブルへと移動して取ったお皿の上に色々なお菓子を乗せていった。
 私がお菓子選びに夢中になっていると前の方から『キャー!!』と言う黄色い歓声が上がる。
 驚いて視線をそちらの方へと向けた。

 何気なく向けた視線の先には、今回の主役であるラインハルトの姿があった。
 人を惹き付ける魅力と言うのは、こういう人の事を言うのだろう。
 遠くから見ていたのにも関わらず、視界に入った瞬間その場面が写真のように静止した。
 私は一瞬でラインハルトという男に目を奪われた。

 黄金色に輝くサラサラの髪に、吸い込まれてしまいそうな青い宝石の様な瞳。
 容姿は言うまでも無く端麗で、それでいて私と同じ年齢だと言うのにどことなく大人の雰囲気を感じさせる。

 想像以上だった。
 胸の奥が先程からドキドキとうるさい位に鳴っていて、未だに収まる気配は無さそうだ。

(乙女ゲーム恐るべし。イケメン過ぎて眩しいわ)

 これは周りの令嬢達がキャーキャー騒ぐのも納得出来る。
 私は目的を忘れ、他の令嬢のように暫くの間ぽーっと見惚れていた。
 我に返ると皆からは離れた所で、お菓子を食べながら周りの光景を眺めていた。

「んー! 美味しいっ! さすが王宮ね。良い料理人を雇っているのね。それに街で人気のお菓子も揃っているし、素晴らしいわ。これなら毎日でも参加してもいいわ」

 私は呑気にパクパクとお菓子を食べ進めながら、時間を過ごしていた
 どれも美味しくて、少し食べ過ぎてしまったみたいだ。

「ふぅ、食べ過ぎた。綺麗な庭園だし、食後の運動がてら少し覗いてみようかな」

 今日の私の目的は全て果たされていた。
 王太子であるラインハルトを拝むことも出来たし、王宮の美味しいお菓子も食べる事も出来て私はすごく足している。

 私は広場を抜け出し庭園の方へと歩き出した。
 気軽な気持ちで庭園に入ったのだが、大きな問題に即ぶち当たる事となった。
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