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序章:悪役令嬢に転生!?
1.悪役令嬢に転生!?
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「う、うそでしょ……」
私は鏡に映る自分の姿を見て、青ざめた顔で声を震わせていた。
鏡の奥にはミルクティー色のふわっとした長い髪に、くりっとした深い緑色の瞳をした可愛らしい少女が驚いた顔で私を見つめていた。
その表情はまるで絶望しきっているようだ。
(なんてことなの!? わたしが寄りにもよって、悪役令嬢だなんて……)
私はその場にガクッと座り込むと、小さく震えていた。
これは悪夢だ。
私は悪い夢を見ているのだと、必死に思い込もうとした。
私の名前はルティナ・グレイス。
公爵家の長女として生まれて、現在9歳になる。
こんなにも幼い少女がこれほどまでに絶望感を味わうことになっているのは、今しがた思い出した前世の記憶の所為だ。
どうやら私は前世に存在した乙女ゲーム『幻想☆魔法恋学園』に出て来る悪役令嬢として転生してしまった様だ。
前世を思い出した瞬間、今までは何とも感じなかった日頃の行いが、いかに悪役令嬢そのものだったのかと思い知らされて落ち込んでしまう。
メイド達に対しては威張り散らし、我儘三昧な生活を送っていた。
誰も私には注意しないし、それが当たり前のように罷り通っていたからだ。
世界は私の為に回っていると本気で思っていた。
そんな自分が恥ずかしくてたまらなくなる。
(うう……。わたしってどんだけ我儘で嫌なやつだったのよ。これって悪役令嬢まっしぐらじゃないっ!)
「どうしよう。このまま行くと断罪? 処刑? 悪役令嬢の行く末なんてそんなものよね。嫌……。そんなの絶対に嫌だわっ! そりゃあちょっと我が儘だったかもしれないけど、わたしはまだ9歳の幼気な子供よっ! こんな可愛い子供に死ねっていうの!? そんなのあんまりじゃないっ、酷すぎるっ!!」
私は鏡に映る自分の姿を見つめながら、必死な形相で独り言を続けていた。
「まずは落ちつこう……」
私は胸に手を当てるとゆっくりと深呼吸を始めた。
暫くすると混乱が収まって来たので、私はベッドの上に座り状況をしっかり把握することにした。
「えっと、わたしがルティナ・グレイスって事は『幻想☆魔法恋学園』という乙女ゲームで間違っては無さそうね。わたしプレイする前に事故で死んじゃったから内容は詳しくは分からないけど、キャラクター紹介は見たから覚えてる。悪役令嬢にしては珍しく可愛い系だったからな」
『幻想☆魔法恋学園』というのは、前世で私が発売を楽しみにしていた乙女ゲームのことだ。
発売数日前に私は交通事故に遭い、命を落としてしまった為プレイすることは叶わなかった。
事前にサイトなどで紹介ページを何度も見返していたから、キャラクターについてはある程度知識がある。
そしてルティナ・グレイスと言う名の人物は、ヒロインをいじめる悪役令嬢だった。
「ヒロインはたしか聖女設定だったはず。魔法学園に入学する所から物語は始まるって書かれていた気がするわ。このゲーム、本当に発売を楽しみにしてたんだよね。イラストもすごく好みだったし、ヒロインが着ることになる制服もすごく可愛くて。あと攻略対象達もイケメン揃いだったなぁ」
私はそんな事を懐かしんでいるとある事に気付いた。
「まって、これってある意味すごくラッキーな事じゃない? わたし、前世では出来なかったこのゲームを実際に体験出来るって事よね? ………っっ!!」
先程までの絶望感はいつの間にかなくなり、私の瞳は光り輝いていた。
私は手を震わせながらぎゅっと握りしめた。
「これはもしかして神様からの贈り物? わたしがこのゲームをプレイ出来ずに未練を残して死んじゃったから、それを叶えてくれようとしているのかな。神様っ、ありがとうございますっ!」
私の目からは薄っすらと涙まで滲んでいた。
「考えてみればわたしはルティナだけど、まだ何も始まってはいないはずだよね。たしか、わたしの婚約者に決まるのは多分メインヒーローの王太子よね。ふふふっ、まだ婚約してない! これって悪役令嬢にならなく済むんじゃない? うまくやれば悪役令嬢にはならずに、この世界を楽しめるって事よねっ! あああっ、最高だわっ!」
こんなに嬉しい事ってない。
さっきまでの絶望感なんて完全に消え去り、嬉しさで胸がいっぱいになった。
「決めたわ! わたしは絶対に悪役令嬢になんてならない! 静かに過ごして遠くから高みの見物でもさせてもらうんだから!」
私は鏡に映る自分の姿を見て、青ざめた顔で声を震わせていた。
鏡の奥にはミルクティー色のふわっとした長い髪に、くりっとした深い緑色の瞳をした可愛らしい少女が驚いた顔で私を見つめていた。
その表情はまるで絶望しきっているようだ。
(なんてことなの!? わたしが寄りにもよって、悪役令嬢だなんて……)
私はその場にガクッと座り込むと、小さく震えていた。
これは悪夢だ。
私は悪い夢を見ているのだと、必死に思い込もうとした。
私の名前はルティナ・グレイス。
公爵家の長女として生まれて、現在9歳になる。
こんなにも幼い少女がこれほどまでに絶望感を味わうことになっているのは、今しがた思い出した前世の記憶の所為だ。
どうやら私は前世に存在した乙女ゲーム『幻想☆魔法恋学園』に出て来る悪役令嬢として転生してしまった様だ。
前世を思い出した瞬間、今までは何とも感じなかった日頃の行いが、いかに悪役令嬢そのものだったのかと思い知らされて落ち込んでしまう。
メイド達に対しては威張り散らし、我儘三昧な生活を送っていた。
誰も私には注意しないし、それが当たり前のように罷り通っていたからだ。
世界は私の為に回っていると本気で思っていた。
そんな自分が恥ずかしくてたまらなくなる。
(うう……。わたしってどんだけ我儘で嫌なやつだったのよ。これって悪役令嬢まっしぐらじゃないっ!)
「どうしよう。このまま行くと断罪? 処刑? 悪役令嬢の行く末なんてそんなものよね。嫌……。そんなの絶対に嫌だわっ! そりゃあちょっと我が儘だったかもしれないけど、わたしはまだ9歳の幼気な子供よっ! こんな可愛い子供に死ねっていうの!? そんなのあんまりじゃないっ、酷すぎるっ!!」
私は鏡に映る自分の姿を見つめながら、必死な形相で独り言を続けていた。
「まずは落ちつこう……」
私は胸に手を当てるとゆっくりと深呼吸を始めた。
暫くすると混乱が収まって来たので、私はベッドの上に座り状況をしっかり把握することにした。
「えっと、わたしがルティナ・グレイスって事は『幻想☆魔法恋学園』という乙女ゲームで間違っては無さそうね。わたしプレイする前に事故で死んじゃったから内容は詳しくは分からないけど、キャラクター紹介は見たから覚えてる。悪役令嬢にしては珍しく可愛い系だったからな」
『幻想☆魔法恋学園』というのは、前世で私が発売を楽しみにしていた乙女ゲームのことだ。
発売数日前に私は交通事故に遭い、命を落としてしまった為プレイすることは叶わなかった。
事前にサイトなどで紹介ページを何度も見返していたから、キャラクターについてはある程度知識がある。
そしてルティナ・グレイスと言う名の人物は、ヒロインをいじめる悪役令嬢だった。
「ヒロインはたしか聖女設定だったはず。魔法学園に入学する所から物語は始まるって書かれていた気がするわ。このゲーム、本当に発売を楽しみにしてたんだよね。イラストもすごく好みだったし、ヒロインが着ることになる制服もすごく可愛くて。あと攻略対象達もイケメン揃いだったなぁ」
私はそんな事を懐かしんでいるとある事に気付いた。
「まって、これってある意味すごくラッキーな事じゃない? わたし、前世では出来なかったこのゲームを実際に体験出来るって事よね? ………っっ!!」
先程までの絶望感はいつの間にかなくなり、私の瞳は光り輝いていた。
私は手を震わせながらぎゅっと握りしめた。
「これはもしかして神様からの贈り物? わたしがこのゲームをプレイ出来ずに未練を残して死んじゃったから、それを叶えてくれようとしているのかな。神様っ、ありがとうございますっ!」
私の目からは薄っすらと涙まで滲んでいた。
「考えてみればわたしはルティナだけど、まだ何も始まってはいないはずだよね。たしか、わたしの婚約者に決まるのは多分メインヒーローの王太子よね。ふふふっ、まだ婚約してない! これって悪役令嬢にならなく済むんじゃない? うまくやれば悪役令嬢にはならずに、この世界を楽しめるって事よねっ! あああっ、最高だわっ!」
こんなに嬉しい事ってない。
さっきまでの絶望感なんて完全に消え去り、嬉しさで胸がいっぱいになった。
「決めたわ! わたしは絶対に悪役令嬢になんてならない! 静かに過ごして遠くから高みの見物でもさせてもらうんだから!」
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