14 / 30
14.自分の気持ち
しおりを挟む
「ミア、何もされてないか?」
ルーカスは抱きしめている腕を緩めると、私の頬を両手で包むように触れ、心配そうな瞳で顔を覗き込んできた。
その瞳は本気で心配しているように見えた。
彼は髪型を変えたようで、今でははっきりとその素顔を確認することができる。
だから、私は普段以上にドキドキしているのかもしれない。
「顔に吹きかけられたのは魅了の香水と言ってましたが、私には効果がなかったみたいです」
彼に瞳の奥をじっと覗き込まれて、先ほどから私の鼓動はドクドクと揺れている。
目を逸らしたいのに吸い込まれてしまいそうで、それは叶わない。
「魅了の……? 顔が赤いのはそのせいか」
「ちっ、違いますっ! 多分、これは違うと思います」
私の顔が赤く染まっていることに気づくと、ルーカスは僅かに目を細めた。
慌てるように私は否定した。理由は自分が良く分かっている。
(これは、ルーカス様の顔が近いからっ……)
私の顔が火照っているのは、あの香水のせいなんかじゃない。
ルーカスとの距離が近くて、私が勝手にドキドキしているだけだ。
けれど言葉に出してそんな説明をするは恥ずかしい。
「とりあえず、ソファーに座ろうか。ミアが落ち着けるようにお茶を淹れるから、少し座って待っていてくれるか?」
「あ、ありがとうございますっ。でも、授業がそろそろ……」
ルーカスに促されるように私はソファーへと座った。
「こんなことがあった後だし、ミアだって教室に戻ってあの男と顔を合わせたくはないだろう?」
「……はい」
私が曇った顔をすると、ルーカスは私の傍に近付いて来て頭を優しく撫でてくれた。
「ミアはなにも心配することなんてないからな。今はなにも考えず、ゆっくりしていたらいいよ」
「ルーカス様……」
ルーカスの優しい言葉を聞くと、心に残っていた緊張も徐々に緩んでいくようだ。
同時に、じわっと目元が熱くなっていくのを感じる。
私は自分が泣いてることに気づくと、慌てて指で涙を拭った。
「ミア、そんなに擦ったら目が腫れてしまうよ。可愛い顔が台無しになるぞ?」
「えっ? ……っ!」
ルーカスは困った顔で呟くと、私の手首を優しく掴んで目を擦るのをやめさせた。
そして暫くすると、ルーカスの顔が迫ってきて、私の瞼にそっと口づけ、目尻に溜まっていた涙を舌で舐めとった。
「さすがに、涙はしょっぱいな」
「……っ」
突然のことに動揺してしまうが、今のルーカスの言葉がおかしくてクスクスと小さく笑ってしまった。
「涙は止まったようだな」
「……あ、ほんとだ」
私はその言葉を聞いてぽつりと小さく呟いた。
「ミアはそこで待っていて、今お茶の準備をするから」
ルーカスは私の額にちゅっと音を立てて優しく口づけると、ソファーから立ち上がった。
「そんなに切なそうな顔をして、また抱きしめて欲しいのか?」
「……え? あ……、ち、違っ……!」
私は無意識でそんな顔をルーカスに向けていたことに気づき、慌てて言い返した。
焦った私の姿を見て、ルーカスは「寂しがるミアも可愛いよ」と笑っていた。
私は恥ずかしくなり、俯いた。
(……どうしよう。私、ルーカス様のこと好きになちゃったのかも……)
ルーカスは抱きしめている腕を緩めると、私の頬を両手で包むように触れ、心配そうな瞳で顔を覗き込んできた。
その瞳は本気で心配しているように見えた。
彼は髪型を変えたようで、今でははっきりとその素顔を確認することができる。
だから、私は普段以上にドキドキしているのかもしれない。
「顔に吹きかけられたのは魅了の香水と言ってましたが、私には効果がなかったみたいです」
彼に瞳の奥をじっと覗き込まれて、先ほどから私の鼓動はドクドクと揺れている。
目を逸らしたいのに吸い込まれてしまいそうで、それは叶わない。
「魅了の……? 顔が赤いのはそのせいか」
「ちっ、違いますっ! 多分、これは違うと思います」
私の顔が赤く染まっていることに気づくと、ルーカスは僅かに目を細めた。
慌てるように私は否定した。理由は自分が良く分かっている。
(これは、ルーカス様の顔が近いからっ……)
私の顔が火照っているのは、あの香水のせいなんかじゃない。
ルーカスとの距離が近くて、私が勝手にドキドキしているだけだ。
けれど言葉に出してそんな説明をするは恥ずかしい。
「とりあえず、ソファーに座ろうか。ミアが落ち着けるようにお茶を淹れるから、少し座って待っていてくれるか?」
「あ、ありがとうございますっ。でも、授業がそろそろ……」
ルーカスに促されるように私はソファーへと座った。
「こんなことがあった後だし、ミアだって教室に戻ってあの男と顔を合わせたくはないだろう?」
「……はい」
私が曇った顔をすると、ルーカスは私の傍に近付いて来て頭を優しく撫でてくれた。
「ミアはなにも心配することなんてないからな。今はなにも考えず、ゆっくりしていたらいいよ」
「ルーカス様……」
ルーカスの優しい言葉を聞くと、心に残っていた緊張も徐々に緩んでいくようだ。
同時に、じわっと目元が熱くなっていくのを感じる。
私は自分が泣いてることに気づくと、慌てて指で涙を拭った。
「ミア、そんなに擦ったら目が腫れてしまうよ。可愛い顔が台無しになるぞ?」
「えっ? ……っ!」
ルーカスは困った顔で呟くと、私の手首を優しく掴んで目を擦るのをやめさせた。
そして暫くすると、ルーカスの顔が迫ってきて、私の瞼にそっと口づけ、目尻に溜まっていた涙を舌で舐めとった。
「さすがに、涙はしょっぱいな」
「……っ」
突然のことに動揺してしまうが、今のルーカスの言葉がおかしくてクスクスと小さく笑ってしまった。
「涙は止まったようだな」
「……あ、ほんとだ」
私はその言葉を聞いてぽつりと小さく呟いた。
「ミアはそこで待っていて、今お茶の準備をするから」
ルーカスは私の額にちゅっと音を立てて優しく口づけると、ソファーから立ち上がった。
「そんなに切なそうな顔をして、また抱きしめて欲しいのか?」
「……え? あ……、ち、違っ……!」
私は無意識でそんな顔をルーカスに向けていたことに気づき、慌てて言い返した。
焦った私の姿を見て、ルーカスは「寂しがるミアも可愛いよ」と笑っていた。
私は恥ずかしくなり、俯いた。
(……どうしよう。私、ルーカス様のこと好きになちゃったのかも……)
15
お気に入りに追加
1,518
あなたにおすすめの小説
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。ユリウスに一目で恋に落ちたマリナは彼の幸せを願い、ゲームとは全く違う行動をとることにした。するとマリナが思っていたのとは違う展開になってしまった。

じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが
カレイ
恋愛
天使な妹。それに纏わりつく金魚のフンがこの私。
両親も妹にしか関心がなく兄からも無視される毎日だけれど、私は別に自分を慕ってくれる妹がいればそれで良かった。
でもある時、私に嫉妬する兄や婚約者に嵌められて、婚約破棄された上、実家を追い出されてしまう。しかしそのことを聞きつけた騎士団長が何故か私の前に現れた。
「ずっと好きでした、もう我慢しません!あぁ、貴方の匂いだけで私は……」
そうして、何故か最強騎士団長に囚われました。

ヒョロガリ殿下を逞しく育てたのでお暇させていただきます!
冬見 六花
恋愛
突如自分がいる世界が前世で読んだ異世界恋愛小説の中だと気づいたエリシア。婚約者である王太子殿下と自分が死ぬ運命から逃れるため、ガリガリに痩せ細っている殿下に「逞しい体になるため鍛えてほしい」とお願いし、異世界から来る筋肉好きヒロインを迎える準備をして自分はお暇させてもらおうとするのだが……――――もちろん逃げられるわけがなかったお話。
【無自覚ヤンデレ煽りなヒロイン ✖️ ヒロインのためだけに体を鍛えたヒロイン絶対マンの腹黒ヒーロー】
ゆるゆるな世界設定です。
急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。
石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。
雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。
一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。
ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。
その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。
愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。

呪われた黒猫と蔑まれた私ですが、竜王様の番だったようです
シロツメクサ
恋愛
ここは竜人の王を頂点として、沢山の獣人が暮らす国。
厄災を運ぶ、不吉な黒猫─────そう言われ村で差別を受け続けていた黒猫の獣人である少女ノエルは、愛する両親を心の支えに日々を耐え抜いていた。けれど、ある日その両親も土砂崩れにより亡くなってしまう。
不吉な黒猫を産んだせいで両親が亡くなったのだと村の獣人に言われて絶望したノエルは、呼び寄せられた魔女によって力を封印され、本物の黒猫の姿にされてしまった。
けれど魔女とはぐれた先で出会ったのは、なんとこの国の頂点である竜王その人で─────……
「やっと、やっと、見つけた────……俺の、……番……ッ!!」
えっ、今、ただの黒猫の姿ですよ!?というか、私不吉で危ないらしいからそんなに近寄らないでー!!
「……ノエルは、俺が竜だから、嫌なのかな。猫には恐ろしく感じるのかも。ノエルが望むなら、体中の鱗を剥いでもいいのに。それで一生人の姿でいたら、ノエルは俺にも自分から近付いてくれるかな。懐いて、あの可愛い声でご飯をねだってくれる?」
「……この周辺に、動物一匹でも、近づけるな。特に、絶対に、雄猫は駄目だ。もしもノエルが……番として他の雄を求めるようなことがあれば、俺は……俺は、今度こそ……ッ」
王様の傍に厄災を運ぶ不吉な黒猫がいたせいで、万が一にも何かあってはいけない!となんとか離れようとするヒロインと、そんなヒロインを死ぬほど探していた、何があっても逃さない金髪碧眼ヤンデレ竜王の、実は持っていた不思議な能力に気がついちゃったりするテンプレ恋愛ものです。世界観はゆるふわのガバガバでつっこみどころいっぱいなので何も考えずに読んでください。
※ヒロインは大半は黒猫の姿で、その正体を知らないままヒーローはガチ恋しています(別に猫だから好きというわけではありません)。ヒーローは金髪碧眼で、竜人ですが本編のほとんどでは人の姿を取っています。ご注意ください。

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。
そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。
相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。
トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。
あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。
ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。
そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが…
追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。
今更ですが、閲覧の際はご注意ください。
獣人公爵のエスコート
ざっく
恋愛
デビューの日、城に着いたが、会場に入れてもらえず、別室に通されたフィディア。エスコート役が来ると言うが、心当たりがない。
将軍閣下は、番を見つけて興奮していた。すぐに他の男からの視線が無い場所へ、移動してもらうべく、副官に命令した。
軽いすれ違いです。
書籍化していただくことになりました!それに伴い、11月10日に削除いたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる