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11.面倒ごと
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移動授業が終わり、教室に戻るために廊下を歩いている時のことだった。
「おい、ちょっといいか?」
私が通り過ぎようとした瞬間、横から声をかけられる。
そこにいたのはオリヴァーだった。
以前に比べたら絡まれる機会は減ったが、残念ながら完全になくなったわけではない。
私が無視して通り過ぎようとすると強引に腕を掴まれ、私は反射的に顔を上げた。
「何ですか?」
「無視するなよ」
私があからさまに嫌そうな態度で返すと、オリヴァーはむっとした目つきで私を不満げに睨む。
オリヴァーの威嚇を受けながら、私は腕に巻き付いた彼の掌をもう片方の手で剥がした。
「お前に話があるんだよ」
「私にはないです」
面倒ごとの予感しかしない。
関わりたくないので私が即答すると、オリヴァーは再び私の手首を強引に掴んだ。
今度はかなりきつく握られたため、痛みから私の顔は歪んでいく。
けれどオリヴァーは、そんことなど一切気にする様子もなかった。
「……痛いっ、離して!」
「うるさい、ちょっと来い!」
オリヴァーは見た目こそは少し可愛いく見えるが、やはり男なので力では敵わない。
***
私はオリヴァーに引っ張られるように空き教室へと連れて行かれた。
教室の中まで入ると漸くオリヴァーは私の腕を解放してくれた。
「一体何なんですか?」
「お前に頼みがある」
私がムスッとした顔で口を開くと、オリヴァーはじっと私を見つめてそう言った。
明らかに人に頼みをするような態度ではない。
そんな姿を見せられて、私の中で苛立ちが募っていく。
「……お断りします」
「は? まだ何も言ってないんだけど」
面倒ごとに巻き込まれるのは嫌だったので言われる前に答えると、オリヴァーは私を睨みつけてきた。
正直、幾ら睨まれても不快ではあるが怖くはない。
なんていうか、もう慣れてしまった。
「お前、ヒロインなんだろ?」
「は……?」
突然ヒロインと言われて、ドキッと心臓が飛び跳ねる。
けれど、なるべく顔には出さないようにして知らん振りを通すことに決めた。
(まさか、攻略対象たちも前世持ちなの……? だけど、そうだったとしたら私に敵意を向ける理由が分からないわ。もしかしてローゼマリーが話した?)
状況が分かるまでは、慎重にことを進めなければならない。
私がヒロインだと認めるということは、前世の記憶があると断言しているようなものだ。
そして彼は間違いなく私の敵。
私に少しでも好意を向けているのであれば、力づくで引っ張ったりなんてしない。
「お前に手を貸してやる。だから俺に協力して欲しい」
「何の話ですか?」
「とぼけても無駄だからな。マリー姉さんがそう言ってた。お前、本当はギルベルト殿下狙いなんだろう? 俺が強力してやるから、ギルベルト殿下に取り入ってマリー姉さんから奪って欲しい」
「…………」
突拍子もないことを言われ、私は唖然としてなにも言葉が出てこなかった。
しかもオリヴァーを見る限り冗談で言ってるようにも見えない。
(この人は一体なにを考えているの?)
「なぁ、聞いているのか? 俺はマリー姉さんをあんな男になんて渡したくないんだ。他の令嬢からちやほやされて浮かれてるような奴、絶対浮気するだろ?」
「知らないですよ、そんなの。それに私はギルベルト殿下には全く興味がないのでお断りします」
私は盛大にため息を漏らして、きっぱりと答えると扉のほうへと向かい歩き始めた。
「待てよ! まだ話は終わってないし、俺が協力してやるって言ってるんだよ。後で後悔しても知らないからな? こんなチャンスは二度とないぞ!」
「…………」
背後からうるさく叫ぶ声が響いていたが、私は完全に無視して教室から出ていった。
(関わったほうが、後悔するに決まっているじゃない……)
私はヒロインに転生してしまった運命を憎んだ。
「おい、ちょっといいか?」
私が通り過ぎようとした瞬間、横から声をかけられる。
そこにいたのはオリヴァーだった。
以前に比べたら絡まれる機会は減ったが、残念ながら完全になくなったわけではない。
私が無視して通り過ぎようとすると強引に腕を掴まれ、私は反射的に顔を上げた。
「何ですか?」
「無視するなよ」
私があからさまに嫌そうな態度で返すと、オリヴァーはむっとした目つきで私を不満げに睨む。
オリヴァーの威嚇を受けながら、私は腕に巻き付いた彼の掌をもう片方の手で剥がした。
「お前に話があるんだよ」
「私にはないです」
面倒ごとの予感しかしない。
関わりたくないので私が即答すると、オリヴァーは再び私の手首を強引に掴んだ。
今度はかなりきつく握られたため、痛みから私の顔は歪んでいく。
けれどオリヴァーは、そんことなど一切気にする様子もなかった。
「……痛いっ、離して!」
「うるさい、ちょっと来い!」
オリヴァーは見た目こそは少し可愛いく見えるが、やはり男なので力では敵わない。
***
私はオリヴァーに引っ張られるように空き教室へと連れて行かれた。
教室の中まで入ると漸くオリヴァーは私の腕を解放してくれた。
「一体何なんですか?」
「お前に頼みがある」
私がムスッとした顔で口を開くと、オリヴァーはじっと私を見つめてそう言った。
明らかに人に頼みをするような態度ではない。
そんな姿を見せられて、私の中で苛立ちが募っていく。
「……お断りします」
「は? まだ何も言ってないんだけど」
面倒ごとに巻き込まれるのは嫌だったので言われる前に答えると、オリヴァーは私を睨みつけてきた。
正直、幾ら睨まれても不快ではあるが怖くはない。
なんていうか、もう慣れてしまった。
「お前、ヒロインなんだろ?」
「は……?」
突然ヒロインと言われて、ドキッと心臓が飛び跳ねる。
けれど、なるべく顔には出さないようにして知らん振りを通すことに決めた。
(まさか、攻略対象たちも前世持ちなの……? だけど、そうだったとしたら私に敵意を向ける理由が分からないわ。もしかしてローゼマリーが話した?)
状況が分かるまでは、慎重にことを進めなければならない。
私がヒロインだと認めるということは、前世の記憶があると断言しているようなものだ。
そして彼は間違いなく私の敵。
私に少しでも好意を向けているのであれば、力づくで引っ張ったりなんてしない。
「お前に手を貸してやる。だから俺に協力して欲しい」
「何の話ですか?」
「とぼけても無駄だからな。マリー姉さんがそう言ってた。お前、本当はギルベルト殿下狙いなんだろう? 俺が強力してやるから、ギルベルト殿下に取り入ってマリー姉さんから奪って欲しい」
「…………」
突拍子もないことを言われ、私は唖然としてなにも言葉が出てこなかった。
しかもオリヴァーを見る限り冗談で言ってるようにも見えない。
(この人は一体なにを考えているの?)
「なぁ、聞いているのか? 俺はマリー姉さんをあんな男になんて渡したくないんだ。他の令嬢からちやほやされて浮かれてるような奴、絶対浮気するだろ?」
「知らないですよ、そんなの。それに私はギルベルト殿下には全く興味がないのでお断りします」
私は盛大にため息を漏らして、きっぱりと答えると扉のほうへと向かい歩き始めた。
「待てよ! まだ話は終わってないし、俺が協力してやるって言ってるんだよ。後で後悔しても知らないからな? こんなチャンスは二度とないぞ!」
「…………」
背後からうるさく叫ぶ声が響いていたが、私は完全に無視して教室から出ていった。
(関わったほうが、後悔するに決まっているじゃない……)
私はヒロインに転生してしまった運命を憎んだ。
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