【完結】婚約者が好きなのは妹だと告げたら、王子が本気で迫ってきて逃げられなくなりました【Ｒ18】

Rila

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89.作戦開始

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　控え室の扉を開けると、中にいた者の視線が一斉にこちらに向けられる
　皆鋭い視線をしていて、既に臨戦態勢に入っているようだ。
　その緊迫感がこちらにも伝わって来て、私の表情は強張っていく。

（いよいよなのね……）

　ヴィムは部屋の中に入ると、窓の前まで運んで行ってくれた。
　絶対に成功すると信じているが、胸の鼓動は激しく鳴ったままで抑えることは出来そうにない。
　自ずと掴まっている腕に力が入ってしまう。
　そして気付けば、もう窓の前まで到着していた。

「アリーセ、怖いか？」
「怖くないと言ったら嘘になるけど、私なら大丈夫」

　ヴィムは心配そうな顔で問いかけてきたので、私はへらっと笑顔を作って答えた。
　私が怖がっていても、計画はもう動き出している。
　それに私は安全圏な部屋に移動して、事が済むまで待機するだけだ。
　何もしない私が不安な顔を見せて、士気を下げては元も子もない。
　今の私に協力出来ることがあるとしたら、邪魔をしないことと、堂々とした態度をとることくらいだろう。

「本当に今日のアリーセは頼もしいな。だけど手が震えてる。俺の前では我慢する必要なんてないんだぞ」
「あ、本当だ……。これはっ、違うの」

　ヴィムに指摘されるまで、手が震えていることには気付かなかった。
　私が戸惑った声で呟くと、ヴィムは「こんな時でも強がるアリーセは可愛らしいな」と冗談交じりに呟いた。

「アリーセ、下ろすぞ」
「はいっ」

　ヴィムはゆっくりと私をその場に下ろしてくれた。
　足元がふらついて思わずヴィムに手を伸ばそうとすると、その前に抱きしめられていた。

「やっぱり危なっかしいところは変わらないな」
「……っ！」

　ヴィムは困った様に小さく笑っていた。

「暫く俺から離れることにはなるが、全てが終わるまでは待機室からは出るなよ？」
「分かっています。ヴィムはこれからどうするの？」

「俺も一度この部屋を出て行く。扉から俺だけが出て行けば、より油断させられるからな」
「たしかに……」

　ヴィムは短時間で作戦を立てて、それを実行までしている。
　ルシアノはいつからこんな計画を立てていたのかは分からないが、まさか自分の方が罠にかけられているなんて思いもしないはずだ。
　権力も頭もヴィムの方が上なのは間違いない。

　私達が会話をしていると、従者がこちらの方へと近づいて来た。

「ヴィム殿下、こちらの準備は既に整っております。手筈通りに動いても宜しいでしょうか」
「ああ、頼む」

　ヴィムの言葉を聞いた後、室内にいた従者達は窓の方に移動して準備を始めていく。

「そろそろ時間の様だ。アリーセ、また直ぐに会える。だから不安な顔は無用だ」
「そう、ですよね！ヴィムも気を付けて……」

　私がヴィムに声をかけると「ありがとう」と笑顔で返してくれた。
　そしてヴィムは「彼女の事を頼む」と言って、私の傍から離れて行った。

　その後、私は従者の指示によって、すぐに窓から梯子を伝い一階へと降りて別の部屋へと移動した。
　既に何もかもが用意されていて、滞りなく移動が完了した。

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