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第一章:聖女から冒険者へ
59.安心感
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こちらに近づいてくる気配を感じて、私は視線をそちらへと向けた。
するとイザナと視線が合ったような気がした。
「ルナ、起きていたのか?」
「……うん」
私が起きていることに気付くと、彼はベッドの端に腰を下ろした。
そして私の額にそっと掌を乗せて、優しく撫で始めた。
「もしかして、さっきの話、聞いてた?」
「少しだけ。私、狙われてるの?」
私は不安をそのまま表情に出すように答えた。
「ごめん。ルナを不安にするような発言をしてしまったようだね。あれは用心するに越したことがないって意味で言っただけだよ。たしかに、ルナの存在は向こうにとっても貴重な情報源になるから、狙われないというのは嘘にはなるけど、私とゼロで守るから。安心していて欲しいな」
「二人とも強いし、きっと大丈夫だよねっ。私の方こそ、なんかごめんなさい。少し不安になっちゃって」
イザナが心配してくれていることが分かると嬉しい反面、少し申し訳なくも感じてしまった。
よくよく考えてみれば、Sランク冒険者である二人が付いてくれれば簡単に負けたりはしないだろう。
そんな風に前向きに考えていると、次第に不安も薄れていき私の表情も明るくなっていった。
「いや、ルナが謝る必要はないよ。不安に思うのは当然のことだからね。それに私はまだベルヴァルトの王子だから、そう簡単に手を出しては来ないだろうな。だから、きっと大丈夫だよ」
「うんっ」
彼がそう言うのなら、きっと大丈夫だろう。
「それと、急にはなるけど明日にはここを立とうと思っているんだ。もっとジースを見て回りたかったか?」
「ううんっ、大丈夫! 今日沢山イザナに案内して貰ったし、十分満足出来たよっ! デートも楽しかったし、イザナとの思い出も上書き出来たし……」
私が恥ずかしそうにもじもじしながら答えると、イザナは「可愛いな」と呟いて、私の額にそっと口付けた。
ソフィアとのことも、私が考え過ぎていただけなのかもしれない。
イザナが今見ているのは私で、気持ちも私にだけ向けてくれている。
それが分かっているのに、私は僅かな過去に嫉妬してしまった。
今思うと、それがとても恥ずかしく感じてしまう。
(大事なのは過去ではなく、今だよね……)
「そういえば、あの場所で光を放っていたのって聖女だったの?」
「確定は出来ないけど、黒竜を一瞬で消し去るだけの魔力を持っていることは間違いないからね。可能性としは十分あると思う」
「そっか……」
新しい聖女が現れたということは、いつ災厄が生まれてもおかしくないという状態なのかもしれない。
そう思うと、いくら自分がその役目を終えたからといって、素直に喜ぶことは出来なかった。
しかし、同時に気楽に考えることも出来た。
かつてのような重圧を感じることもなければ、誰かに強いられることもない。
私は自分に出来ることをすればいい。
そんな風に思うと、気持ちも大分楽になった。
(いつまでも不安でいてもしょうがないよね。折角の旅なんだし、楽しまないとっ……!)
「急に嬉しそうな顔に変わったけど、どうしたの?」
「新しい地に行けば、またイザナとの思い出が増えるのかなって思ったら、ちょっと嬉しくなっちゃって。やっぱり旅は楽しい気分でするものだよねっ!」
私が笑顔で答えると、イザナは微笑みながら「そうだな」と答えて、ゆっくりと顔を下ろしていった。
急に距離が近づき、私はドキドキしてしまう。
「やっぱり、はしゃいでいる姿のルナはいいな。私は、その笑顔を絶対に守らなければならないな」
「……っん」
イザナは優しい声で呟くと、私の唇をそっと口付けた。
そして何度も触れるだけのキスを繰り返していく。
私はその温かい感覚を心地よく思い、ゆっくりと目を閉じた。
するとイザナと視線が合ったような気がした。
「ルナ、起きていたのか?」
「……うん」
私が起きていることに気付くと、彼はベッドの端に腰を下ろした。
そして私の額にそっと掌を乗せて、優しく撫で始めた。
「もしかして、さっきの話、聞いてた?」
「少しだけ。私、狙われてるの?」
私は不安をそのまま表情に出すように答えた。
「ごめん。ルナを不安にするような発言をしてしまったようだね。あれは用心するに越したことがないって意味で言っただけだよ。たしかに、ルナの存在は向こうにとっても貴重な情報源になるから、狙われないというのは嘘にはなるけど、私とゼロで守るから。安心していて欲しいな」
「二人とも強いし、きっと大丈夫だよねっ。私の方こそ、なんかごめんなさい。少し不安になっちゃって」
イザナが心配してくれていることが分かると嬉しい反面、少し申し訳なくも感じてしまった。
よくよく考えてみれば、Sランク冒険者である二人が付いてくれれば簡単に負けたりはしないだろう。
そんな風に前向きに考えていると、次第に不安も薄れていき私の表情も明るくなっていった。
「いや、ルナが謝る必要はないよ。不安に思うのは当然のことだからね。それに私はまだベルヴァルトの王子だから、そう簡単に手を出しては来ないだろうな。だから、きっと大丈夫だよ」
「うんっ」
彼がそう言うのなら、きっと大丈夫だろう。
「それと、急にはなるけど明日にはここを立とうと思っているんだ。もっとジースを見て回りたかったか?」
「ううんっ、大丈夫! 今日沢山イザナに案内して貰ったし、十分満足出来たよっ! デートも楽しかったし、イザナとの思い出も上書き出来たし……」
私が恥ずかしそうにもじもじしながら答えると、イザナは「可愛いな」と呟いて、私の額にそっと口付けた。
ソフィアとのことも、私が考え過ぎていただけなのかもしれない。
イザナが今見ているのは私で、気持ちも私にだけ向けてくれている。
それが分かっているのに、私は僅かな過去に嫉妬してしまった。
今思うと、それがとても恥ずかしく感じてしまう。
(大事なのは過去ではなく、今だよね……)
「そういえば、あの場所で光を放っていたのって聖女だったの?」
「確定は出来ないけど、黒竜を一瞬で消し去るだけの魔力を持っていることは間違いないからね。可能性としは十分あると思う」
「そっか……」
新しい聖女が現れたということは、いつ災厄が生まれてもおかしくないという状態なのかもしれない。
そう思うと、いくら自分がその役目を終えたからといって、素直に喜ぶことは出来なかった。
しかし、同時に気楽に考えることも出来た。
かつてのような重圧を感じることもなければ、誰かに強いられることもない。
私は自分に出来ることをすればいい。
そんな風に思うと、気持ちも大分楽になった。
(いつまでも不安でいてもしょうがないよね。折角の旅なんだし、楽しまないとっ……!)
「急に嬉しそうな顔に変わったけど、どうしたの?」
「新しい地に行けば、またイザナとの思い出が増えるのかなって思ったら、ちょっと嬉しくなっちゃって。やっぱり旅は楽しい気分でするものだよねっ!」
私が笑顔で答えると、イザナは微笑みながら「そうだな」と答えて、ゆっくりと顔を下ろしていった。
急に距離が近づき、私はドキドキしてしまう。
「やっぱり、はしゃいでいる姿のルナはいいな。私は、その笑顔を絶対に守らなければならないな」
「……っん」
イザナは優しい声で呟くと、私の唇をそっと口付けた。
そして何度も触れるだけのキスを繰り返していく。
私はその温かい感覚を心地よく思い、ゆっくりと目を閉じた。
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