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第一章:聖女から冒険者へ
55.ジースの街⑥
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「やっぱり全然違うな」
「うんうん! もっと早くに買っておけば良かったね」
新しいコートを着て、私は楽しそうに会話を弾ませていた。
フードまで被れば、頭も耳も温かくて快適だ。
それでいて見た目も可愛いし、早くも私のお気に入りになっていた。
「そうだな。これがあれば狩りも難なくこなせそうだね」
「外に出ても、この寒さで困る事はないもんね。ここでランクを上げられたらいいな」
私が話に夢中になっていると、突然イザナに手を握られた。
(……っ!!)
「忘れてた……」
「ルナが忘れていそうだったから、私から繋いでみることにしたよ」
イザナは満足そうに話していたが、私は手を繋がれ僅かに頬を赤く染めてしまった。
だけど、フードを被っている為、顔の火照りを少し隠せているのかもしれない。
「ルナは手袋をした状態で手を繋がれても照れるんだな。本当に可愛い妻だ。こんな姿を見せられたら、ますます手を離せなくなるな」
「……っ!!」
イザナはクスクスと愉しそうに笑っていた。
街中でこんなことを言われるのは相変わらず恥ずかしいけど、本当は幸せだった。
ずっとこんな関係になりたいと願っていたことが今叶っているのだから、これ以上の幸せはないだろう。
そんなことを話していると、ギルドの建物の前まで辿り着いていた。
ジースは大きな街なので、ギルドの外観もそれなりに立派な作りになっていた。
それに、シーライズのギルドに劣らない大きさだ。
***
中に入ると何やら慌ただしい雰囲気であり、何かが起こっているのだとすぐに気付いた。
忙しなくギルド員が動き回り、冒険者達は何やら集まって話をしている様子だった。
「どうしたんだろう」
「何かあったみたいだな。聞いてみようか」
不安そうな表情を浮かべる私に、イザナは優しい声で答えた。
「何かあったのか?」
「……はい。ここから北に位置している森の中で、魔物の大群が現れたと知らせが入りまして。今、対応出来る冒険者の方を探しているんです」
イザナが近くにいたギルド員に声を掛けると、緊迫した顔色で事情を説明してくれた。
(魔物の大群……?)
「分かっている範囲で構わないから、詳しい情報を教えて貰えるか?」
「はい。魔物の数については、しっかりとした数は把握しきれていませんが、恐らくは数千……。レベルや種族は様々で、中には上級クラスの魔物も混じっているそうです。今Cランク以上の冒険者に当たってもらっている所なんです」
私はその話を聞いて、正直信じることが出来なかった。
なぜなら数千の魔物が突然現れるなんて、通常ならあり得ないことだからだ。
でも過去に同じような出来事があったことを思い出した。
(……うそ。そんなこと、有り得ないよ)
「数千って、間違えではないんですか?」
「詳しいことは分かりませんが、報告ではそのように聞きました」
思わず聞いてしまったが、ギルド員もそれ以上は知らない様子だった。
私の鼓動は次第にバクバクと激しく震えだす。
掌も先程から震えている。
「私達もその場所に向かわせてもらう」
「ほ、本当ですか!? 助かります!」
「ルナ、急だけどこんな事態になっていることを知った以上、私達も手を貸そう」
「うん、そうだね。行こう……!」
イザナの言葉に私は力強く頷いた。
何故こんな状況になっているのかは分からない。
だけど、自分の目で確認しなければいけない気がした。
もし、私達が知っているあの現象が起こってるのだとしたら……。
かなり大変なことになる。
「ちなみに、ダクネス法国の方も動いてくれているそうです」
「え?」
私はその話を聞いて不安な顔でイザナの方に視線を向けた。
「ルナ、きっと大丈夫だ。今の敵は魔物だ」
「そう、だよね」
まだ不安は消えたわけでは無いけど、イザナの言う通り今の敵はダクネス法国では無く、魔物だ。
このまま放っておけば大きな問題に繋がってしまう可能性だってある。
私達は、準備をして北の森に向かうこととなった。
「うんうん! もっと早くに買っておけば良かったね」
新しいコートを着て、私は楽しそうに会話を弾ませていた。
フードまで被れば、頭も耳も温かくて快適だ。
それでいて見た目も可愛いし、早くも私のお気に入りになっていた。
「そうだな。これがあれば狩りも難なくこなせそうだね」
「外に出ても、この寒さで困る事はないもんね。ここでランクを上げられたらいいな」
私が話に夢中になっていると、突然イザナに手を握られた。
(……っ!!)
「忘れてた……」
「ルナが忘れていそうだったから、私から繋いでみることにしたよ」
イザナは満足そうに話していたが、私は手を繋がれ僅かに頬を赤く染めてしまった。
だけど、フードを被っている為、顔の火照りを少し隠せているのかもしれない。
「ルナは手袋をした状態で手を繋がれても照れるんだな。本当に可愛い妻だ。こんな姿を見せられたら、ますます手を離せなくなるな」
「……っ!!」
イザナはクスクスと愉しそうに笑っていた。
街中でこんなことを言われるのは相変わらず恥ずかしいけど、本当は幸せだった。
ずっとこんな関係になりたいと願っていたことが今叶っているのだから、これ以上の幸せはないだろう。
そんなことを話していると、ギルドの建物の前まで辿り着いていた。
ジースは大きな街なので、ギルドの外観もそれなりに立派な作りになっていた。
それに、シーライズのギルドに劣らない大きさだ。
***
中に入ると何やら慌ただしい雰囲気であり、何かが起こっているのだとすぐに気付いた。
忙しなくギルド員が動き回り、冒険者達は何やら集まって話をしている様子だった。
「どうしたんだろう」
「何かあったみたいだな。聞いてみようか」
不安そうな表情を浮かべる私に、イザナは優しい声で答えた。
「何かあったのか?」
「……はい。ここから北に位置している森の中で、魔物の大群が現れたと知らせが入りまして。今、対応出来る冒険者の方を探しているんです」
イザナが近くにいたギルド員に声を掛けると、緊迫した顔色で事情を説明してくれた。
(魔物の大群……?)
「分かっている範囲で構わないから、詳しい情報を教えて貰えるか?」
「はい。魔物の数については、しっかりとした数は把握しきれていませんが、恐らくは数千……。レベルや種族は様々で、中には上級クラスの魔物も混じっているそうです。今Cランク以上の冒険者に当たってもらっている所なんです」
私はその話を聞いて、正直信じることが出来なかった。
なぜなら数千の魔物が突然現れるなんて、通常ならあり得ないことだからだ。
でも過去に同じような出来事があったことを思い出した。
(……うそ。そんなこと、有り得ないよ)
「数千って、間違えではないんですか?」
「詳しいことは分かりませんが、報告ではそのように聞きました」
思わず聞いてしまったが、ギルド員もそれ以上は知らない様子だった。
私の鼓動は次第にバクバクと激しく震えだす。
掌も先程から震えている。
「私達もその場所に向かわせてもらう」
「ほ、本当ですか!? 助かります!」
「ルナ、急だけどこんな事態になっていることを知った以上、私達も手を貸そう」
「うん、そうだね。行こう……!」
イザナの言葉に私は力強く頷いた。
何故こんな状況になっているのかは分からない。
だけど、自分の目で確認しなければいけない気がした。
もし、私達が知っているあの現象が起こってるのだとしたら……。
かなり大変なことになる。
「ちなみに、ダクネス法国の方も動いてくれているそうです」
「え?」
私はその話を聞いて不安な顔でイザナの方に視線を向けた。
「ルナ、きっと大丈夫だ。今の敵は魔物だ」
「そう、だよね」
まだ不安は消えたわけでは無いけど、イザナの言う通り今の敵はダクネス法国では無く、魔物だ。
このまま放っておけば大きな問題に繋がってしまう可能性だってある。
私達は、準備をして北の森に向かうこととなった。
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