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25.嫉妬
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私はマティアスと話をすることを決めたのは良いけど、その手段に悩んでいた。
学園で話してサラに見つかり大事になるのは正直避けたい。
だから少し手間はかかるけど、手紙を書くことにした。
私が手紙を書いてから数日後マティアスから返事が来て会って話をすることに同意してもらえた。
そして今日がその日だった。
私はマティアスの屋敷に来ていた。
住居している方ではなく別邸の方だった。
私達は一度婚約解消になった中であり、今はまだマティアスの婚約者はサラの為目立った所で会うのは控えた方が良いと言う事になりここに決まった。
私がマティアスの屋敷に到着すると、すぐにマティアスが出迎えてくれた。
「リリー、良く来てくれたね。さぁ入って…」
「お邪魔します…」
マティアスは快く私の事を歓迎してくれた。
この前会った時に酷い事を言ってしまったから、どんな顔をして会えば良いのか迷っていたけどいつも通りのマティアスでほっとしていた。
私が屋敷に入ると、マティアスに案内され応接間へと移動した。
私達は大きなソファーに向かい合うように座った。
メイドがお茶の準備をしてくれて、終わると部屋から出て行った。
「今日はリリーが来てくれたこと、俺に話す機会を与えてくれたことに感謝するよ」
「あの…この前は酷い事言ってしまってごめんなさい…」
私は申し訳なさそうに謝った。
「リリーは久しぶりに俺と会って混乱したんだよな。だからその事は気にしないで大丈夫だよ」
「本当に…?」
私が聞くとマティアスは小さく笑いながら「ああ」と答えた。
「今日はリリーが来ると思って、リリーの好きだったお菓子を用意させたんだ。だから遠慮なく食べて」
「……あ、ありがとう」
実はさっきから気になっていたのをマティアスに気づかれていたらしい。
私が少し恥ずかしそうに顔を染めると、マティアスは楽しそうに笑っていた。
私はお菓子とお茶を頂きながら話を始めた。
「私達の婚約解消は仕組まれたものだったんだよね…?」
「ああ…。俺はすぐにどうにか出来ると思って動いてた。全部片付いたら全てリリーに説明するつもりでいた。だけど予想以上に時間がかかり過ぎて…説明する機会もタイミングも失われて、あんな形での再開になってしまった。リリーは怒って当然だよ。俺は何もリリーには伝えなかったんだから…」
マティアスは思い出しながら苦しそうな表情で言った。
「私の事は…責めないの?」
「どうしてリリーの事を責める必要があるの?リリーは何も悪くないだろ。説明しなかった俺が完全に悪い。だからリリーは余計な事は何も考えなくていいんだよ」
私が聞くとマティアスは優しい表情でそう言った。
私の事を責める素振りは一切なかった。
「サラ様との婚約は…白紙に戻るの?」
「おそらくもう少ししたら白紙に戻るかな」
私はその言葉に俯いてしまった。
「リリーにはもう好きな人がいるんだろ…?」
「え…?」
「噂になってるから知ってるよ。ハーラルト殿下との婚約がまじかだとか…」
「……うん」
マティアスは余り表情を変えないまま話していた。
私はそんなに気にしてないのかな?と思い少し安心した。
「リリーは殿下に愛されてるんだね。首筋に痕を残される位…」
「え…?」
「噂になってたよ。リリーの首筋に痕を残したのは殿下じゃないかって…ね」
「………っ…」
急にそんな話をされて恥ずかしくなり顔が赤く染まってしまう。
「だけど…ね。俺はリリーの事を手放すつもりなんてないよ。たった数か月一緒だった男に奪わせるなんて事はさせない」
「……マティ…アス…?」
なんか頭の奥がボーっとしてきてマティアスの話が頭の中に入って来ない。
「俺と離れていてリリーは寂しかったからきっと勘違いしていただけなんだ。すぐに俺に気持ちは戻ってくるはずだよ…というよりは戻すから心配しないでね」
「……あ……れ………」
私は目を開けているのが耐えられない程睡魔に襲われ、ゆっくりと目を閉じると共に意識も手放した。
「随分と薬の効きが早かったな…まぁ、いいか。」
私が眠ってしまったのを確認するとマティアスは私の顔を覗きながら小さく呟いた。
「相変わらずリリーの寝顔はいつ見ても可愛いな。……もう絶対手放さないから…」
マティアスは眠っている私を愛おしそうに見つめると唇にそっと口付けた。
「リリー、…愛してる」
学園で話してサラに見つかり大事になるのは正直避けたい。
だから少し手間はかかるけど、手紙を書くことにした。
私が手紙を書いてから数日後マティアスから返事が来て会って話をすることに同意してもらえた。
そして今日がその日だった。
私はマティアスの屋敷に来ていた。
住居している方ではなく別邸の方だった。
私達は一度婚約解消になった中であり、今はまだマティアスの婚約者はサラの為目立った所で会うのは控えた方が良いと言う事になりここに決まった。
私がマティアスの屋敷に到着すると、すぐにマティアスが出迎えてくれた。
「リリー、良く来てくれたね。さぁ入って…」
「お邪魔します…」
マティアスは快く私の事を歓迎してくれた。
この前会った時に酷い事を言ってしまったから、どんな顔をして会えば良いのか迷っていたけどいつも通りのマティアスでほっとしていた。
私が屋敷に入ると、マティアスに案内され応接間へと移動した。
私達は大きなソファーに向かい合うように座った。
メイドがお茶の準備をしてくれて、終わると部屋から出て行った。
「今日はリリーが来てくれたこと、俺に話す機会を与えてくれたことに感謝するよ」
「あの…この前は酷い事言ってしまってごめんなさい…」
私は申し訳なさそうに謝った。
「リリーは久しぶりに俺と会って混乱したんだよな。だからその事は気にしないで大丈夫だよ」
「本当に…?」
私が聞くとマティアスは小さく笑いながら「ああ」と答えた。
「今日はリリーが来ると思って、リリーの好きだったお菓子を用意させたんだ。だから遠慮なく食べて」
「……あ、ありがとう」
実はさっきから気になっていたのをマティアスに気づかれていたらしい。
私が少し恥ずかしそうに顔を染めると、マティアスは楽しそうに笑っていた。
私はお菓子とお茶を頂きながら話を始めた。
「私達の婚約解消は仕組まれたものだったんだよね…?」
「ああ…。俺はすぐにどうにか出来ると思って動いてた。全部片付いたら全てリリーに説明するつもりでいた。だけど予想以上に時間がかかり過ぎて…説明する機会もタイミングも失われて、あんな形での再開になってしまった。リリーは怒って当然だよ。俺は何もリリーには伝えなかったんだから…」
マティアスは思い出しながら苦しそうな表情で言った。
「私の事は…責めないの?」
「どうしてリリーの事を責める必要があるの?リリーは何も悪くないだろ。説明しなかった俺が完全に悪い。だからリリーは余計な事は何も考えなくていいんだよ」
私が聞くとマティアスは優しい表情でそう言った。
私の事を責める素振りは一切なかった。
「サラ様との婚約は…白紙に戻るの?」
「おそらくもう少ししたら白紙に戻るかな」
私はその言葉に俯いてしまった。
「リリーにはもう好きな人がいるんだろ…?」
「え…?」
「噂になってるから知ってるよ。ハーラルト殿下との婚約がまじかだとか…」
「……うん」
マティアスは余り表情を変えないまま話していた。
私はそんなに気にしてないのかな?と思い少し安心した。
「リリーは殿下に愛されてるんだね。首筋に痕を残される位…」
「え…?」
「噂になってたよ。リリーの首筋に痕を残したのは殿下じゃないかって…ね」
「………っ…」
急にそんな話をされて恥ずかしくなり顔が赤く染まってしまう。
「だけど…ね。俺はリリーの事を手放すつもりなんてないよ。たった数か月一緒だった男に奪わせるなんて事はさせない」
「……マティ…アス…?」
なんか頭の奥がボーっとしてきてマティアスの話が頭の中に入って来ない。
「俺と離れていてリリーは寂しかったからきっと勘違いしていただけなんだ。すぐに俺に気持ちは戻ってくるはずだよ…というよりは戻すから心配しないでね」
「……あ……れ………」
私は目を開けているのが耐えられない程睡魔に襲われ、ゆっくりと目を閉じると共に意識も手放した。
「随分と薬の効きが早かったな…まぁ、いいか。」
私が眠ってしまったのを確認するとマティアスは私の顔を覗きながら小さく呟いた。
「相変わらずリリーの寝顔はいつ見ても可愛いな。……もう絶対手放さないから…」
マティアスは眠っている私を愛おしそうに見つめると唇にそっと口付けた。
「リリー、…愛してる」
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