11 / 45
11.噂
しおりを挟む
ハーラルトに好きだと言われたあの日から、ハーラルトの態度が一変した。
人前でも気にすることなく私に触ってくるし、とにかく距離が近すぎて困っている。
周囲からは私がハーラルトと婚約したんじゃないかという噂まで出始めていた。
しかも当の本人は全く否定するつもりもないらしく、思わせぶりな発言までしている。
「リリー様、婚約されたんですか?」
「……してないです」
教室でまたクラスの子達にこの質問をされて私は困っていた。
苦笑交じりに私が答えると背後から「まだしていないよ」と声が響いた。
「それって近々されるって事ですか?」
「……どうだろうな?」
ハーラルトは質問に答えながら、私の方にチラッと視線を向けてきた。
クスっと笑みを浮かべるハーラルトはこの状況を絶対楽しんでるのが見て取れた。
「ハーラルト様、ちょっと宜しいですか?」
私は居たたまれなくなりハーラルトの手をぎゅっと握り強引に教室から連れ出した。
教室を出て人通りが無い廊下まで出るとハーラルトを睨みつけた。
「一体どういうつもりですか?」
「どうって…何が?」
とぼける態度をとるハーラルトに私は困った顔をした。
「婚約なんてしてないのに…どうしてそういう思わせぶりな態度をとるんですか?ちゃんと否定してください!」
私がムッとした表情で強めに言うと、ハーラルトは私の両頬を包む様に掌を添えた。
「前にも伝えたけど僕はリリーの事が好きだし諦めるつもりは更々ない。こうやって周りを巻き込めば君は逃げられなくなるだろ?」
「……っ…!!」
ハーラルトは不敵な笑みを浮かべると、私の額にそっと口付けた。
額から伝わる熱を感じて私の顔はどんどん赤く染まっていく。
「ねえ、リリーは嫌がってるの?それとも喜んでるの?…そんなに顔を赤く染めて、誰か通るかもしれない所で僕にキスをされて興奮しているのか?」
「違いますっ…!離れてください…」
私が逃げようとハーラルトの掌を剥がすと、腰を捕まえられそのまま抱き寄せられてしまう。
「今の僕達を誰かが見たら絶対誤解されるよな。僕としてはその方が好都合だけど…」
ハーラルトは体を密着させる様に私を抱きしめたまま、耳元で意地悪な声で囁いた。
「……っ!!」
吐息が耳元にかかると私はぴくっと反応してしまい、ハーラルトはそれを見逃さなかった。
「リリーは耳弱かったな、こんなに真っ赤に染めて…可愛いな」
ハーラルトはわざとらしく吐息交じりに囁くと私の耳朶を甘噛みした。
「ぁっ……もういい加減…に…してくださいっ…!!」
顔を真っ赤に染めて涙目で訴える私を見て漸く解放してくれた。
「少し虐め過ぎたか、すまない。リリーが可愛すぎて…ついな」
珍しくハーラルトは反省している様だった。
だけどそんな態度を取られるとこれ以上何も言えなくなる。
「もういいです。教室に戻りましょうか」
「ああ、そうだな」
完全にハーラルトのペースに巻き込まれている気がする。
人前でも気にすることなく私に触ってくるし、とにかく距離が近すぎて困っている。
周囲からは私がハーラルトと婚約したんじゃないかという噂まで出始めていた。
しかも当の本人は全く否定するつもりもないらしく、思わせぶりな発言までしている。
「リリー様、婚約されたんですか?」
「……してないです」
教室でまたクラスの子達にこの質問をされて私は困っていた。
苦笑交じりに私が答えると背後から「まだしていないよ」と声が響いた。
「それって近々されるって事ですか?」
「……どうだろうな?」
ハーラルトは質問に答えながら、私の方にチラッと視線を向けてきた。
クスっと笑みを浮かべるハーラルトはこの状況を絶対楽しんでるのが見て取れた。
「ハーラルト様、ちょっと宜しいですか?」
私は居たたまれなくなりハーラルトの手をぎゅっと握り強引に教室から連れ出した。
教室を出て人通りが無い廊下まで出るとハーラルトを睨みつけた。
「一体どういうつもりですか?」
「どうって…何が?」
とぼける態度をとるハーラルトに私は困った顔をした。
「婚約なんてしてないのに…どうしてそういう思わせぶりな態度をとるんですか?ちゃんと否定してください!」
私がムッとした表情で強めに言うと、ハーラルトは私の両頬を包む様に掌を添えた。
「前にも伝えたけど僕はリリーの事が好きだし諦めるつもりは更々ない。こうやって周りを巻き込めば君は逃げられなくなるだろ?」
「……っ…!!」
ハーラルトは不敵な笑みを浮かべると、私の額にそっと口付けた。
額から伝わる熱を感じて私の顔はどんどん赤く染まっていく。
「ねえ、リリーは嫌がってるの?それとも喜んでるの?…そんなに顔を赤く染めて、誰か通るかもしれない所で僕にキスをされて興奮しているのか?」
「違いますっ…!離れてください…」
私が逃げようとハーラルトの掌を剥がすと、腰を捕まえられそのまま抱き寄せられてしまう。
「今の僕達を誰かが見たら絶対誤解されるよな。僕としてはその方が好都合だけど…」
ハーラルトは体を密着させる様に私を抱きしめたまま、耳元で意地悪な声で囁いた。
「……っ!!」
吐息が耳元にかかると私はぴくっと反応してしまい、ハーラルトはそれを見逃さなかった。
「リリーは耳弱かったな、こんなに真っ赤に染めて…可愛いな」
ハーラルトはわざとらしく吐息交じりに囁くと私の耳朶を甘噛みした。
「ぁっ……もういい加減…に…してくださいっ…!!」
顔を真っ赤に染めて涙目で訴える私を見て漸く解放してくれた。
「少し虐め過ぎたか、すまない。リリーが可愛すぎて…ついな」
珍しくハーラルトは反省している様だった。
だけどそんな態度を取られるとこれ以上何も言えなくなる。
「もういいです。教室に戻りましょうか」
「ああ、そうだな」
完全にハーラルトのペースに巻き込まれている気がする。
2
お気に入りに追加
1,791
あなたにおすすめの小説
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
優しく微笑んでくれる婚約者を手放した後悔
しゃーりん
恋愛
エルネストは12歳の時、2歳年下のオリビアと婚約した。
彼女は大人しく、エルネストの話をニコニコと聞いて相槌をうってくれる優しい子だった。
そんな彼女との穏やかな時間が好きだった。
なのに、学園に入ってからの俺は周りに影響されてしまったり、令嬢と親しくなってしまった。
その令嬢と結婚するためにオリビアとの婚約を解消してしまったことを後悔する男のお話です。
【完結】見返りは、当然求めますわ
楽歩
恋愛
王太子クリストファーが突然告げた言葉に、緊張が走る王太子の私室。
伝統に従い、10歳の頃から正妃候補として選ばれたエルミーヌとシャルロットは、互いに成長を支え合いながらも、その座を争ってきた。しかし、正妃が正式に決定される半年を前に、二人の努力が無視されるかのようなその言葉に、驚きと戸惑いが広がる。
※誤字脱字、勉強不足、名前間違い、ご都合主義などなど、どうか温かい目で(o_ _)o))
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
優しい愛に包まれて~イケメンとの同居生活はドキドキの連続です~
けいこ
恋愛
人生に疲れ、自暴自棄になり、私はいろんなことから逃げていた。
してはいけないことをしてしまった自分を恥ながらも、この関係を断ち切れないままでいた。
そんな私に、ひょんなことから同居生活を始めた個性的なイケメン男子達が、それぞれに甘く優しく、大人の女の恋心をくすぐるような言葉をかけてくる…
ピアノが得意で大企業の御曹司、山崎祥太君、24歳。
有名大学に通い医師を目指してる、神田文都君、23歳。
美大生で画家志望の、望月颯君、21歳。
真っ直ぐで素直なみんなとの関わりの中で、ひどく冷め切った心が、ゆっくり溶けていくのがわかった。
家族、同居の女子達ともいろいろあって、大きく揺れ動く気持ちに戸惑いを隠せない。
こんな私でもやり直せるの?
幸せを願っても…いいの?
動き出す私の未来には、いったい何が待ち受けているの?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる