王太子の婚約者選考会に代理で参加しただけなので、私を選ばないでください【R18】

Rila

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116.求めて、求められて②※

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「んっ……ぁあっ!」
「こんなに反応させて、私を受け入れてくれて嬉しいよ。愛している、エミリー」

 ザシャは時折『愛している』と口にしてくる。
 それは私と同じで、離れていたことで行き場を失った思いが、今溢れるように出てきているのではないだろうか。
 これは私の都合の良い解釈であるが、彼の切なげな声を聞いているとそんな風に感じてしまう。

(どうして、こんなにも思い合っているのに離れないといけないんだろう……)

 こんなことを考えてもどうしようもないことは分かっているが、理不尽に感じると、ついそんなことを思ってしまう。
 それは彼のことを思えば思う程に溢れてくる私の本音だった。

「エミリー、何を考えているの?」
「……っ」

 不意にザシャの愛撫が止まり、気付けば彼の顔が目の前にあった。
 私はハッとした顔を浮かべると、困ったように眉を寄せる。
 彼の瞳は真っ直ぐに私だけを見ていて、まるで心の中を見透かされているかのように思えたからだ。

「どうしたの? 悩みがあるのなら全て話して。普段会えないから、そんな顔を見ると余計に放っておけなくなる」

 彼の口から出た『普段会えない』という言葉に、胸の奥がズキッと痛くなる。
 私は表情を曇らせると、静かに口を開いた。

「ザシャさんを困らせてしまうかも……」
「構わないよ。エミリーが困っているほうが私は辛いからね」

 戸惑う私に対してザシャは優しく微笑むと、額にそっと口付けて頬に優しく掌を添えた。

「さっきは大丈夫なんて強がりを言っちゃったけど、本当はすごく寂しいっ……。また一週間も会えないなんて、考えたくないっ」

 あの時は、特に気丈に振る舞っていたわけでもなく、私自身大丈夫だと思っていた。
 しかし、彼に触れられることで、暫く会えなくなるということがどうしようもなく不安に思えてしまったのだろう。

「……ごめん。全て私の力が至らないせいだな」
「そんなことっ! 私の方こそ努力が足りないから……」

 僅かに見せたザシャの悔しそうな顔を見て、私は慌てて言い返した。

「それはないよ。エミリーは十分過ぎるほど頑張っているし、私としてはこれ以上無理はしないで欲しいと思っているくらいだからね。今度はエミリーのほうが倒れてしまうかもしれないよ」
「……っ、私は大丈夫です! 意外と頑丈なので……」

 私が反射するように即答すると、彼は溜息を漏らした。

「そういうところが心配なんだよ。今は傍にいられないから、余計にね」
「……っ!」

 ザシャにはっきりと指摘されてしまい、私は言葉を詰まらせた。

「休んでいる間、何もしていなかったわけではないんだ。内々に調べていたことも、漸く手掛かりが掴めて、やっと真相に辿り着けそうだからね」
「それって、もしかして……エリーザさんの事故のこと?」

「ごめん、今はまだ詳しいことは話せない。極力エミリーを巻き込ませたくないんだ。すまないが、分かって欲しい」
「それは危険なことなんですか?」

 私は不安そうな顔を浮かべて問い返す。
 エリーザの死が事故ではなく、何者かの手によって故意的に引き起こしたものだとすれば、きっと大変なことになるだろう。
 今の彼の口振りからして、既にザシャは真実を知っているのかもしれない。

(やっぱり、あれは事故ではなかったってこと……?)

 そんな風に考えると急に恐怖心を感じ、胸の奥がざわざわと騒ぎ始める。

「危険なこと、というわけではないけど、エミリーは気にするかもしれないから」
「え?」

 私が表情を曇らせたから、ザシャはそんな風に言ったのだろうか。
 想定外な返答に、私は一瞬きょとんとしてしまう。

「だけど、これだけは伝えておくよ。この件が解決したら、恐らく全ての問題が解決すると思う。そうしたら、もうエミリーに寂しい思いはさせないから。少しだけ我慢していて欲しい。出来そう?」
「……分かりました。あのっ、なんかごめんなさい……」

 彼の表情を見る限り、嘘を言っているようには感じられなかった。
 ほっとする反面、困らせてしまったことには違いがないので少し罪悪感を抱いてしまう。
 思わず謝罪の言葉を述べてしまうと、彼は「どうして謝るの?」といつもの柔らかな口調で聞き返してきた。

「それはっ……」
「エミリーは私に気を遣いすぎ。これから私達は本当の婚約者になるんだよ。ひいては夫婦になるのだから、私に気を遣う必要なんてないよ」

 ザシャは目を細めて鋭い視線を送ってくると、私の唇を指で這わせ始めた。
 突然表情を変えた彼に、私の鼓動はバクバクと揺れ始める。

「やっぱり、心配だな。だけど、私はエミリーが素直になれる方法を知っているからね。心の内を全て吐き出させてみようかな」
「……っ!?」

 彼は口端を上げて不敵に笑うと、胸元に顔を下ろして愛撫を再開させた。
 ザシャの熱を帯びた唇が私の胸の先端を捉えると、一気に体温が上昇する。

「……や、ぁあっ!」
「可愛い声、もっと聞かせて」

 ぷっくりと膨らんだ先端を舌先で丹念に絡めとられたり、深く吸われていく度に、私の口元からは甲高い声が勝手に溢れてしまう。
 それと同時に彼の掌は私の内腿を撫で、ゆっくりと中心に向けて這い上がってくる。
 行き止まりまで到達すると、彼の指は秘裂をなぞるように何度も往復し、その感覚に私は体を小さく震わせた。

「少し触っただけなのに、もうこんなに濡れてる。もっと素直なエミリーを私に見せて」
「はぁっ、……ザシャさんっ、もっと……」

 私は眉根を下げて懇願するように答えていた。
 こんな小さな刺激だけでは全然足りない。
 漸く彼に触れてもらえたことで気持ちが昂り、強欲な感情が表に出てしまう。

「私のことをちゃんと覚えているか、中も確認しておこうか」

 彼の意地悪そうな声が響いたかと思うと、蜜壺にグッと指を押し込まれる。
 先程の愛撫からずっと濡らしていたこともあり、彼の指を簡単に受け入れてしまう。

「ぁっ……、気持ち、いいっ……んっ、ぁあっ!」
「中、すごく熱いな。エミリーがどれだけ興奮しているのか、良く伝わってくるよ。でも、いきなり三本は苦しいかな?」

 今、私の蜜壺の中で蠢いている指はそれぞれ角度を変えて、内壁を擦るように激しく刺激を与えてくる。
 彼の指が動く度に、下腹部からはぐちゅっと厭らしい水音が響く。
 私がいかに貪欲であるかをザシャに知られてしまい少し恥ずかしくもあったが、それ以上に与えられた快楽に喜びを感じていた。

「だ、い、じょうぶっ……んっ」
「そう? それならば、もう少し激しくするよ」

 ザシャは私の言葉に直ぐに返事をくれると、その言葉通り彼の動きが更に激しくなる。
 上からも下からも同時に強い刺激を与えられ、全身の血液が沸騰するかのように熱くなっていく。
 噛みつくように胸の突起を嬲られ、彼の指先は私の弱い部分を的確に刺激してくる。
 何度もザシャと体を重ねていることもあり、私の敏感な部分は全て把握されているのだろう。

「ぁああっ! だ、だめっ!!」

 じわじわと絶頂に近付いていくと、頭の奥が真っ白になり、息をするのも忘れそうになる。
 ザシャの指をきつく締め付けて達してしまうが、それでも彼の動きが止まることはなかった。

「ぁっ、やぁっ、まって……ぁあっ!」
「エミリーがこれだけで満足しないことは分かっているよ。こんなにぎゅうぎゅう締め付けて、まだ物足りないって主張しているようだね」

 ザシャの指を咥えたまま、膣内はビクビクと痙攣したままだ。
 何度も何度も果てているのに、一向に彼はやめてくれない。
 そのことに焦り始めた私は彼から逃れようと体を捩ってみせるが、絶頂を繰り返していることで上手く力が入らなかった。
 目からは生理的な涙が溢れてきて、視界はぼんやりとしている。


「え、ちがっ……ぁっ、やぁっ……もう、だめっ、おかしくなるっ!」

 終わりの見えない快楽に、私は弱弱しく首を横に振って抵抗していた。
 今の私に出来ることは、それくらいしかない。
 
(今日のザシャさん、いつもよりも意地悪な気がする……)

「いいよ、おかしくなって。私はどんなエミリーだって受け入れるから。だから、今だけは私以外のことは考えないで」
「……ザシャ、さん?」

 ザシャの声はどこか切なそうに聞こえた。
 その時、私はハッとして先程のことを思い出す。

(もしかして、さっき私が考え事をしていたから……?)

 それでザシャは自分以外のことを考えられないように意地悪しているのだろうか。
 彼と深い関係になっていくに連れて、意外とザシャは独占欲が強いのではないかと感じる機会があったからだ。
 勝手にそんな想像を巡らせていくと、興奮からか胸の高鳴りが強くなっていく。

「私、ザシャさんと繋がりたいっ……」

 気付けば、私はそんな事を口走っていた。
 すると彼の動きがぴたりと止まる。
 そして彼の顔が目の前に現れて、濡れている目元を舌先で舐められる。

「んっ、擽ったい……」

 再び目を開けると、熱っぽい瞳を向けている彼と目が合い鼓動が速まる。

「私も、早くエミリーと繋がりたい。今日は優しく出来るか自信はないけど、いいかな?」

 ドクドクとうるさい程に鳴り響く自分の鼓動を感じながら、私は恥ずかしそうに小さく頷く。
 すると彼は一度体を起こして、服を脱ぎ捨てた。
 そして再び私の体の上に覆い被さってくる。
 肌と肌が重なると、彼の体も少し火照っているように感じて更にドキドキしてしまう。

(ザシャさんも、興奮しているのかな……)

「エミリー、ごめん。もう、我慢出来そうにない」
「……ぁっ」

 彼は少しすまなさそうに呟くと、硬くなった熱杭を私に蜜口に擦り付けてきた。
 つい先程まで散々嬲られていた入口からは愛液が溢れ出していて、彼の熱杭が触れる度にくちゅくちゅと厭らしい音を響かせている。
 そして、蜜口にぐっと押し付けられると、一気に熱いものが私の中に入り込んできた。

「ぁああっ!!」
「ああ、やっと繋がれた……」

 指とは比べ物にならない程、質量の大きいものが入ってきて膣壁を広げられる。
 最奥まで一気に貫かれ、私は悲鳴のような嬌声を室内に響かせた。
 久しぶりの感覚に少し苦しさを感じたが、それ以上に嬉しかったのだと思う。
 ずっと、ザシャとこうなることを望んでいたのだから。
 そして、そう思っているのはザシャも同じなのだろう。

「ぁっ、ん、はぁっ……」

 彼は貫いた後、ゆっくりと抽挿を繰り返していく。
 速度を変えて、まるで私の反応を愉しむかのように。

「この体は、私のことを覚えていてくれたようで嬉しいよ」
「当然、ですっ……んぅっ、はぁっ……」

「当然、か。それならば、また忘れないように、沢山私の存在を刻み込んでおかないとな」
「はいっ……」

 彼の言葉に私は息を切らしながら、嬉しそうに返した。
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