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97.作戦会議
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シルフィーナがザシャの母であると知らされ、どうしようもないくらい私の胸の鼓動は高鳴っていた。
初対面の印象で、私のイメージが付いてしまう可能性が大きいからだ。
私が戸惑った顔をしていると、アイロスが口を開く。
「恐らく他の候補者にも会っているはずだ。お前だけが王妃だと言うことを知らないまま対応したのだと思うが」
「……っ!」
私は思わず渋い顔をしてしまう。
もしシルフィーナが王妃だと分かっていれば、もう少し丁寧に対応が出来たのかも知れない。
私は先程の出来事を頭の中で思う浮かべては消えたくなっていた。
(絶対失敗だよね。どうしよう……)
「俺にそんな顔を見せたところでどうにもならないと思わないか?また会いに来るだろうし諦めるのは早いと思うが。だからそんなに絶望そうな顔はするな。そうだな、これは試験とでも思ったらやる気も出るんじゃ無いか?」
「試験と言われるとますます緊張してしまいますっ」
私はアイロスの言葉に苦笑しながら答えた。
するとアイロスは面倒臭そうにため息を漏らした。
「考えてみればお前にとっては良い機会だ。緊張する事は今後多くなるはずだからな。これを利用して慣れたら良い」
「ええ……、そんな悠長な」
私は他人事だと思って、ムッとした顔を向けてしまう。
「まずは深呼吸でもして落ち着け」
今の私は気が動転している所為か全てに焦っていた。
まずは落ち着いて良く考えてみたほうがいいのかもしれない。
私はアイロスに言われたとおり、深呼吸を繰り返した。
すると少しだけ冷静になったような気がしたが、ドクドクと心臓は未だに脈だっているようだ。
「エラ、こいつにお茶でも淹れてやってくれ」
「は、はいっ」
エラは急いでカップにお茶を注いでくれた。
私は『ありがとう』と告げるとごくんとお茶を喉に流した。
ハーブの香りが鼻から抜けて、また少し落ち着きを取り戻せたような気がする。
「どうだ?少しは落ち着いたか?」
「少しは……」
「気弱だな」
「うっ……」
「とりあえず今後に向けて作戦会議でもするか」
「是非、お願いしますっ!」
今ここにアイロスがいてくれることに感謝していた。
一切取り乱さないアイロスを見ていると、何故かそれだけで安心出来てしまう。
アイロスがいなければ、今も焦りと戸惑いからどうしていいか分からなかったのかも知れない。
「お前はそれなりに努力をしてきた。今ならドレスを着飾れば、他の令嬢達に見劣りすることはない程度には成長したと思う。気を抜かなければの話だが」
「あ、ははっ」
アイロスに鋭い視線を向けられ、思わず顔を引き攣らせてしまう。
「お前はすぐに気を抜くからな。その時は素の状態に戻るから気をつけろよ。今の様に気の抜けた表情のことだ」
「気をつけます」
「それさえ気を付ければ、あとは特に気にすることはないはずだ」
「え?」
もっと沢山気を付ける場所があるのだと思っていたので、意外な言葉が返ってきて思わずきょとんとした顔をしてしまう。
その顔に気付いたアイロスは僅かに目を細めた。
「お前はどういうわけか、人を惹き付けるのが上手いようだからな。愛想良く見えるのだろうな。それは強い武器になる。簡単に言えば、王妃に気に入られてしまえばこっちのものだということだ」
「…………」
私が驚いた顔でアイロスのことをじっと見つめていると「なんだ?」と眉を顰めながら問いかけられた。
「アイロスさんに褒められた」
「は?」
「多分愛想が良いのはずっとパン屋で働いていたからだと思います。こんな所で役に立つなんて」
「調子に乗らず落ち着いて行動すれば良い。俺もお前の傍付きに戻ったし、なるべく傍についているから」
「エミリー様、良かったですね!アイロス様がお側に付いていてくれたら怖いもの無しです!」
「たしかにそうかもっ!アイロスさん、お願いします!」
「おい、俺に頼りすぎるなよ。対応するのはお前だってことを忘れるな。それに相手は王妃だからな、さすがに俺も強くは言えない」
「傍にいてくれるだけで安心出来るので、私はそれだけで嬉しいです」
私がにこっと笑顔で答えると、アイロスは驚いたような顔を一瞬見せた後目を細めて顔を背けた。
僅かに顔が赤く見えたような気がしたのは気のせいだろうか。
(アイロスさんでも照れる事ってあるんだ……)
初対面の印象で、私のイメージが付いてしまう可能性が大きいからだ。
私が戸惑った顔をしていると、アイロスが口を開く。
「恐らく他の候補者にも会っているはずだ。お前だけが王妃だと言うことを知らないまま対応したのだと思うが」
「……っ!」
私は思わず渋い顔をしてしまう。
もしシルフィーナが王妃だと分かっていれば、もう少し丁寧に対応が出来たのかも知れない。
私は先程の出来事を頭の中で思う浮かべては消えたくなっていた。
(絶対失敗だよね。どうしよう……)
「俺にそんな顔を見せたところでどうにもならないと思わないか?また会いに来るだろうし諦めるのは早いと思うが。だからそんなに絶望そうな顔はするな。そうだな、これは試験とでも思ったらやる気も出るんじゃ無いか?」
「試験と言われるとますます緊張してしまいますっ」
私はアイロスの言葉に苦笑しながら答えた。
するとアイロスは面倒臭そうにため息を漏らした。
「考えてみればお前にとっては良い機会だ。緊張する事は今後多くなるはずだからな。これを利用して慣れたら良い」
「ええ……、そんな悠長な」
私は他人事だと思って、ムッとした顔を向けてしまう。
「まずは深呼吸でもして落ち着け」
今の私は気が動転している所為か全てに焦っていた。
まずは落ち着いて良く考えてみたほうがいいのかもしれない。
私はアイロスに言われたとおり、深呼吸を繰り返した。
すると少しだけ冷静になったような気がしたが、ドクドクと心臓は未だに脈だっているようだ。
「エラ、こいつにお茶でも淹れてやってくれ」
「は、はいっ」
エラは急いでカップにお茶を注いでくれた。
私は『ありがとう』と告げるとごくんとお茶を喉に流した。
ハーブの香りが鼻から抜けて、また少し落ち着きを取り戻せたような気がする。
「どうだ?少しは落ち着いたか?」
「少しは……」
「気弱だな」
「うっ……」
「とりあえず今後に向けて作戦会議でもするか」
「是非、お願いしますっ!」
今ここにアイロスがいてくれることに感謝していた。
一切取り乱さないアイロスを見ていると、何故かそれだけで安心出来てしまう。
アイロスがいなければ、今も焦りと戸惑いからどうしていいか分からなかったのかも知れない。
「お前はそれなりに努力をしてきた。今ならドレスを着飾れば、他の令嬢達に見劣りすることはない程度には成長したと思う。気を抜かなければの話だが」
「あ、ははっ」
アイロスに鋭い視線を向けられ、思わず顔を引き攣らせてしまう。
「お前はすぐに気を抜くからな。その時は素の状態に戻るから気をつけろよ。今の様に気の抜けた表情のことだ」
「気をつけます」
「それさえ気を付ければ、あとは特に気にすることはないはずだ」
「え?」
もっと沢山気を付ける場所があるのだと思っていたので、意外な言葉が返ってきて思わずきょとんとした顔をしてしまう。
その顔に気付いたアイロスは僅かに目を細めた。
「お前はどういうわけか、人を惹き付けるのが上手いようだからな。愛想良く見えるのだろうな。それは強い武器になる。簡単に言えば、王妃に気に入られてしまえばこっちのものだということだ」
「…………」
私が驚いた顔でアイロスのことをじっと見つめていると「なんだ?」と眉を顰めながら問いかけられた。
「アイロスさんに褒められた」
「は?」
「多分愛想が良いのはずっとパン屋で働いていたからだと思います。こんな所で役に立つなんて」
「調子に乗らず落ち着いて行動すれば良い。俺もお前の傍付きに戻ったし、なるべく傍についているから」
「エミリー様、良かったですね!アイロス様がお側に付いていてくれたら怖いもの無しです!」
「たしかにそうかもっ!アイロスさん、お願いします!」
「おい、俺に頼りすぎるなよ。対応するのはお前だってことを忘れるな。それに相手は王妃だからな、さすがに俺も強くは言えない」
「傍にいてくれるだけで安心出来るので、私はそれだけで嬉しいです」
私がにこっと笑顔で答えると、アイロスは驚いたような顔を一瞬見せた後目を細めて顔を背けた。
僅かに顔が赤く見えたような気がしたのは気のせいだろうか。
(アイロスさんでも照れる事ってあるんだ……)
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