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91.二人だけの空間
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ザシャと過ごす時間は本当に楽しくて、気付けば辺りは薄暗くなり始めていた。
もうそろそろこのお茶会も終わりなのかな、と思うと寂しくなり胸の奥が切なく締め付けられる。
ザシャと離れたくなくて、お茶会を終わらせたくなくて、私から切り上げるような言葉は告げなかった。
(このまま時間が止まってくれたら、いいのにな……)
「さっきからずっとそわそわしているようだけど、どうしたの?」
「そ、そうかな?私、別にそわそわなんて……」
自分では当然分かっていたが、咄嗟に誤魔化してしまった。
ザシャは「そう?」と聞き返してきたので、私は小さく頷いた。
「そろそろ暗くなってきたから、明かりを付けようか」
「え?」
一瞬『戻ろうか』と言われるんじゃないかと身構えてしまったが、予想外の言葉にきょとんとしてしまう。
「そんなに驚いてどうしたの?まだエミリーを解放する気は無いよ。だけどこのままだと暗闇に包まれて何も見えなくなってしまうから、とりあえず明るくするよ」
ザシャは立ち上がると周囲に置かれているキャンドルに火を灯し始めた。
ザシャの手の中から微かな炎が生まれ、淡い光が室内を照らす。
静かに揺れるオレンジ色の火はとても綺麗で、それでいて心が癒やされていくようだった。
(ザシャさんとまだ一緒にいられるんだ。良かった……)
ザシャが全てのキャンドルに火を付けて戻ってくると、私はザシャの胸にぎゅっと抱きついた。
「少し離れただけなのにもう寂しくなっちゃった?エミリーは本当に可愛らしいことをするね。実は結構な甘えただったりするのかな?」
「す、するかもっ……」
肯定するのはとても恥ずかしかったが、ザシャにもっと甘えたいという思いが私にそう言わせた。
私はこの人を独占したくてたまらない。
一時でも惜しいと思ってしまう程に。
「最近のエミリーは素直だね。それなら今日は沢山甘えさせてあげないとな。私の膝の上に頭を乗せるようにして、横になって」
「いきなり何ですかっ?」
顔を上げるとザシャと視線が合いドキドキしてしまう。
室内は薄暗いがザシャがキャンドルに火を灯してくれたおかげで、お互いの表情を確認出来る程度は明るくなった。
ザシャは穏やかで優しい顔付きで私のことをを見つめていた。
「いいから。エミリーは甘えたいんだろう?」
「そ、そうだけど……」
「だったら横になって」
「……わかりました」
私はドキドキしながら言われた通り、横になりザシャの膝に頭を預けた。
この体勢だと自然とザシャと視線が合ってしまい、鼓動は落ち着くことなくバクバクと鳴ったままだ。
「もしかして、緊張してる?私の前では緊張は無用だよ。エミリーが落ち着けるようにまずは髪を撫でてあげようかな」
ザシャの長い指が、私の髪に優しく触れゆっくりと動く。
撫でられていると心地よくて、少しずつではあるが心も落ち着き始めてくる。
「いつも私ばっかこうされている気がします。次は私がザシャさんの頭を撫でますねっ!」
「ふふっ、それは嬉しいな。だけどそれは次回ね。今日は私にさせて。実はエミリーの髪を撫でるの、結構好きだったりするんだよ」
「私の頭を撫でて楽しいですか?」
「楽しいよ。こうしているとエミリーはすごく気持ちよさそうな表情を見せるからね。勿論、私に抱かれて善がっている時のエミリーも好きだけどね」
ザシャは意地悪そうな顔でクスッと笑った。
抱かれている時の自分の姿を思い出し、私の頬は火照っていく。
「……っ!!ザシャさんの意地悪……」
「想像したの?それは後でたっぷりと見せて貰う事にするけど、今は私の手で気持ちよくされていて」
「その言い方、なんかいやらしいです」
「そう?エミリーがいやらしい想像をしているだけじゃない?」
私の言葉にザシャはサラリと返してきて、更に私の頬は赤く染まっていく。
「本当にエミリーは気持ちいいことが大好きだよな。その体はもう私無しではダメな体になってくれたのかな?」
「……なりました」
私は恥ずかしそうに小さく呟いた。
心も体もザシャを強く求めている。
ザシャの思惑通り、私はそんな風に変えられてしまった。
「ザシャさんのせいです」
「それは私も同じだよ」
ザシャはその後も私の髪を撫で続けてくれた。
それが心地よくて、瞼が徐々に重く感じて来てしまう。
「……そろそろかな」
ザシャは不意に上を見つめて、ぼそりと呟いた。
「……?」
私は不思議そうな顔でザシャの顔を見つめた。
すると口元が僅かに上がり、次の瞬間先程のキャンドルの光が一斉に消えた。
「え?な、何!?」
突然の事に私は動揺してしまう。
闇に包まれてしまったことに驚いて、ザシャの手をぎゅっと握っていた。
「エミリー、上を見てみて」
「上?……っ!」
ザシャに言われるままに天井を見上げると、暗闇の中に無数の星が散らばっていてキラキラと光り輝いている。
私はその光景に魅入られてしまう。
ここは天井もガラス張りになっているので、天を仰ぐ事が出来る。
「すごく綺麗……」
届かないことは分かっていたが、星に向かい手を伸ばしていた。
もうそろそろこのお茶会も終わりなのかな、と思うと寂しくなり胸の奥が切なく締め付けられる。
ザシャと離れたくなくて、お茶会を終わらせたくなくて、私から切り上げるような言葉は告げなかった。
(このまま時間が止まってくれたら、いいのにな……)
「さっきからずっとそわそわしているようだけど、どうしたの?」
「そ、そうかな?私、別にそわそわなんて……」
自分では当然分かっていたが、咄嗟に誤魔化してしまった。
ザシャは「そう?」と聞き返してきたので、私は小さく頷いた。
「そろそろ暗くなってきたから、明かりを付けようか」
「え?」
一瞬『戻ろうか』と言われるんじゃないかと身構えてしまったが、予想外の言葉にきょとんとしてしまう。
「そんなに驚いてどうしたの?まだエミリーを解放する気は無いよ。だけどこのままだと暗闇に包まれて何も見えなくなってしまうから、とりあえず明るくするよ」
ザシャは立ち上がると周囲に置かれているキャンドルに火を灯し始めた。
ザシャの手の中から微かな炎が生まれ、淡い光が室内を照らす。
静かに揺れるオレンジ色の火はとても綺麗で、それでいて心が癒やされていくようだった。
(ザシャさんとまだ一緒にいられるんだ。良かった……)
ザシャが全てのキャンドルに火を付けて戻ってくると、私はザシャの胸にぎゅっと抱きついた。
「少し離れただけなのにもう寂しくなっちゃった?エミリーは本当に可愛らしいことをするね。実は結構な甘えただったりするのかな?」
「す、するかもっ……」
肯定するのはとても恥ずかしかったが、ザシャにもっと甘えたいという思いが私にそう言わせた。
私はこの人を独占したくてたまらない。
一時でも惜しいと思ってしまう程に。
「最近のエミリーは素直だね。それなら今日は沢山甘えさせてあげないとな。私の膝の上に頭を乗せるようにして、横になって」
「いきなり何ですかっ?」
顔を上げるとザシャと視線が合いドキドキしてしまう。
室内は薄暗いがザシャがキャンドルに火を灯してくれたおかげで、お互いの表情を確認出来る程度は明るくなった。
ザシャは穏やかで優しい顔付きで私のことをを見つめていた。
「いいから。エミリーは甘えたいんだろう?」
「そ、そうだけど……」
「だったら横になって」
「……わかりました」
私はドキドキしながら言われた通り、横になりザシャの膝に頭を預けた。
この体勢だと自然とザシャと視線が合ってしまい、鼓動は落ち着くことなくバクバクと鳴ったままだ。
「もしかして、緊張してる?私の前では緊張は無用だよ。エミリーが落ち着けるようにまずは髪を撫でてあげようかな」
ザシャの長い指が、私の髪に優しく触れゆっくりと動く。
撫でられていると心地よくて、少しずつではあるが心も落ち着き始めてくる。
「いつも私ばっかこうされている気がします。次は私がザシャさんの頭を撫でますねっ!」
「ふふっ、それは嬉しいな。だけどそれは次回ね。今日は私にさせて。実はエミリーの髪を撫でるの、結構好きだったりするんだよ」
「私の頭を撫でて楽しいですか?」
「楽しいよ。こうしているとエミリーはすごく気持ちよさそうな表情を見せるからね。勿論、私に抱かれて善がっている時のエミリーも好きだけどね」
ザシャは意地悪そうな顔でクスッと笑った。
抱かれている時の自分の姿を思い出し、私の頬は火照っていく。
「……っ!!ザシャさんの意地悪……」
「想像したの?それは後でたっぷりと見せて貰う事にするけど、今は私の手で気持ちよくされていて」
「その言い方、なんかいやらしいです」
「そう?エミリーがいやらしい想像をしているだけじゃない?」
私の言葉にザシャはサラリと返してきて、更に私の頬は赤く染まっていく。
「本当にエミリーは気持ちいいことが大好きだよな。その体はもう私無しではダメな体になってくれたのかな?」
「……なりました」
私は恥ずかしそうに小さく呟いた。
心も体もザシャを強く求めている。
ザシャの思惑通り、私はそんな風に変えられてしまった。
「ザシャさんのせいです」
「それは私も同じだよ」
ザシャはその後も私の髪を撫で続けてくれた。
それが心地よくて、瞼が徐々に重く感じて来てしまう。
「……そろそろかな」
ザシャは不意に上を見つめて、ぼそりと呟いた。
「……?」
私は不思議そうな顔でザシャの顔を見つめた。
すると口元が僅かに上がり、次の瞬間先程のキャンドルの光が一斉に消えた。
「え?な、何!?」
突然の事に私は動揺してしまう。
闇に包まれてしまったことに驚いて、ザシャの手をぎゅっと握っていた。
「エミリー、上を見てみて」
「上?……っ!」
ザシャに言われるままに天井を見上げると、暗闇の中に無数の星が散らばっていてキラキラと光り輝いている。
私はその光景に魅入られてしまう。
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