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86.二人だけのお茶会①
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私もザシャと一緒に王都を歩いてみたい。
残念だが今は叶わないことだ。
いつかザシャが案内してくれると言ってくれたので、その時まで楽しみに待っていようと思う。
今日はザシャと二人っきりでのお茶会が決まった。
私が今身に付けているのは、白色のシンプルなワンピース。
ふんわりとしていて、甘めのレースが可愛らしく見える。
そして薄化粧に、髪は梳かした位でアレンジなどは一切していない。
普段から質の良いオイルを使っているため、特に施さなくても髪は艶々だし、透明感のある肌だ。
ザシャとのんびりと過ごすという目的があるため、敢えてこのスタイルを選んだ。
いつもしっかりとした服装を着込んでいるザシャだが、普段とは違う姿を見てみたいという欲もあった。
事前にザシャには楽な格好で来て欲しいと伝えておいた。
(ザシャさん、どんな格好で来るのか楽しみだな)
私はザシャが呼びに来るのを、胸を躍らせながら待っていた。
「まだお茶会は始まってもいないのに、エミリー様ったらもう楽しんでそうに見えるわ」
先程から顔を綻ばせている私を見てエラが呟いた。
「待ってる間もドキドキするし、既に楽しいのかも」
「本当にザシャ殿下の事好きなんですね。ふふっ、エミリー様の気持ちが私にまで伝染してきてしまいそうです」
エラは私の準備を済ませると、ザシャが来るまで話し相手をしてくれていた。
それから間もなくして、ザシャがやってきた。
「ザシャさんっ!」
私はザシャの姿を視界に入れると、すぐにソファーから立ち上がり扉の方へと向かった。
ザシャは白のシャツに、黒いベストを着ていた。
首元のボタンは開いていて、今日は装飾品も付けていない。
私の言葉通り寛げるような格好をしていたのだが、それさえも魅力的に映っていた。
普段と違う装いということもあり、なんだか胸が高鳴っていく。
(ザシャさんはどんな格好でも素敵だな)
「エミリー、待たせてしまったかな。色々準備の指示をしていたら少し時間が掛かってしまってみたいだ。ごめんね」
「だ、大丈夫です」
私が近づくとザシャの手が私の頬を包み込むように触れた。
ザシャの微笑む姿を見ていると、鼓動がバクバクと早くなる。
いつもと違う格好だから、余計にドキドキしてしまっているのだろうか。
「今日はこんなにも可愛らしいエミリーを、一日中独り占め出来るなんて最高だな」
「……っ」
真直ぐに見つめる瞳に、吸い込まれてしまいそうになる。
私の頬は徐々に熱を持ち、赤く染まっていく。
「それじゃあ行こうか。エラ、エミリーは貰っていくよ」
「え?……わっ!?」
ザシャは突然私のことを横向きに抱きかかえた。
私は驚いて慌ててザシャの首に手を回した。
「は、はいっ!エミリー様、楽しんで来てくださいね」
エラは私に向かって軽く手をヒラヒラと振ると、笑顔で見送ってくれた。
突然ザシャとの距離が急接近して、更に私の鼓動は激しく脈打ち始める。
そして今日は一日中ザシャの傍にいられると思うと、顔が勝手に緩んでいく。
***
「わ、私……、自分で歩けます」
「ダメだよ。私の楽しみを奪わないで欲しいな」
周囲に誰もいないと分かっていても、抱きかかえられながら歩くのは恥ずかしいものだ。
「ふふっ、照れてるの?可愛いな」
「ザシャさんは、可愛いって言い過ぎです……」
私は恥ずかしそうに小さく答えた。
「エミリーは可愛いと言う度に照れるから、つい言いたくなってしまうんだよ」
「……っ!」
言われた傍から私が照れた素振りを見せると、ザシャは満足そうな顔で「その顔だ」と呟いた。
(ザシャさんの意地悪……)
そんな時だった。
「あれ?ザシャ……?」
突然背後から聞き覚えのある声が響いた。
私とザシャは同時に後ろを振り返る。
そこにはシルヴィアの姿があった。
残念だが今は叶わないことだ。
いつかザシャが案内してくれると言ってくれたので、その時まで楽しみに待っていようと思う。
今日はザシャと二人っきりでのお茶会が決まった。
私が今身に付けているのは、白色のシンプルなワンピース。
ふんわりとしていて、甘めのレースが可愛らしく見える。
そして薄化粧に、髪は梳かした位でアレンジなどは一切していない。
普段から質の良いオイルを使っているため、特に施さなくても髪は艶々だし、透明感のある肌だ。
ザシャとのんびりと過ごすという目的があるため、敢えてこのスタイルを選んだ。
いつもしっかりとした服装を着込んでいるザシャだが、普段とは違う姿を見てみたいという欲もあった。
事前にザシャには楽な格好で来て欲しいと伝えておいた。
(ザシャさん、どんな格好で来るのか楽しみだな)
私はザシャが呼びに来るのを、胸を躍らせながら待っていた。
「まだお茶会は始まってもいないのに、エミリー様ったらもう楽しんでそうに見えるわ」
先程から顔を綻ばせている私を見てエラが呟いた。
「待ってる間もドキドキするし、既に楽しいのかも」
「本当にザシャ殿下の事好きなんですね。ふふっ、エミリー様の気持ちが私にまで伝染してきてしまいそうです」
エラは私の準備を済ませると、ザシャが来るまで話し相手をしてくれていた。
それから間もなくして、ザシャがやってきた。
「ザシャさんっ!」
私はザシャの姿を視界に入れると、すぐにソファーから立ち上がり扉の方へと向かった。
ザシャは白のシャツに、黒いベストを着ていた。
首元のボタンは開いていて、今日は装飾品も付けていない。
私の言葉通り寛げるような格好をしていたのだが、それさえも魅力的に映っていた。
普段と違う装いということもあり、なんだか胸が高鳴っていく。
(ザシャさんはどんな格好でも素敵だな)
「エミリー、待たせてしまったかな。色々準備の指示をしていたら少し時間が掛かってしまってみたいだ。ごめんね」
「だ、大丈夫です」
私が近づくとザシャの手が私の頬を包み込むように触れた。
ザシャの微笑む姿を見ていると、鼓動がバクバクと早くなる。
いつもと違う格好だから、余計にドキドキしてしまっているのだろうか。
「今日はこんなにも可愛らしいエミリーを、一日中独り占め出来るなんて最高だな」
「……っ」
真直ぐに見つめる瞳に、吸い込まれてしまいそうになる。
私の頬は徐々に熱を持ち、赤く染まっていく。
「それじゃあ行こうか。エラ、エミリーは貰っていくよ」
「え?……わっ!?」
ザシャは突然私のことを横向きに抱きかかえた。
私は驚いて慌ててザシャの首に手を回した。
「は、はいっ!エミリー様、楽しんで来てくださいね」
エラは私に向かって軽く手をヒラヒラと振ると、笑顔で見送ってくれた。
突然ザシャとの距離が急接近して、更に私の鼓動は激しく脈打ち始める。
そして今日は一日中ザシャの傍にいられると思うと、顔が勝手に緩んでいく。
***
「わ、私……、自分で歩けます」
「ダメだよ。私の楽しみを奪わないで欲しいな」
周囲に誰もいないと分かっていても、抱きかかえられながら歩くのは恥ずかしいものだ。
「ふふっ、照れてるの?可愛いな」
「ザシャさんは、可愛いって言い過ぎです……」
私は恥ずかしそうに小さく答えた。
「エミリーは可愛いと言う度に照れるから、つい言いたくなってしまうんだよ」
「……っ!」
言われた傍から私が照れた素振りを見せると、ザシャは満足そうな顔で「その顔だ」と呟いた。
(ザシャさんの意地悪……)
そんな時だった。
「あれ?ザシャ……?」
突然背後から聞き覚えのある声が響いた。
私とザシャは同時に後ろを振り返る。
そこにはシルヴィアの姿があった。
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