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78.心配してくれる人
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私室に戻るとアンナとエラが私の帰りを待っていてくれた。
真っ赤に腫れた私の目元に気付くと、二人共驚いた顔で私の傍へと近づいて来た。
「エミリー様、その目はどうされたんですか?」
「これはその……」
アンナに心配そうな顔をされてしまい、大したことではないと伝えようと思ったのだが、どう説明したら良いのか迷っていた。
二人には今まで何でも話して来たので、この事も素直に伝えるつもりではいた。
「……まさか」
私が考えた込んでいると、その話を聞いていたエラが小さく体を震わせた。
そして私の傍にいたアイロスの方へ視線を向けると、キッときつく睨みつけた。
「なんだ?」
アイロスはエラの視線に気付き、ほとんど表情を変えることなく呟いた。
「アイロス様であろうと、エミリー様をいじめることは許せませんっ!!」
エラの手は若干震えている様に見えるが、掌をぎゅっと握りしめ必死に耐えている様だ。
「エラ、違うから…、アイロスさんは関係ないから落ち着いてっ!」
私は慌てて二人の間に入り、エラを落ち着かせようと声を掛けた。
「え…?ほ、本当ですか?脅されてたり……してませんか?」
「脅されてもないわ、本当だからっ…。だからお願い、落ち着いて」
私がじっとエラの目を見て答えていると、エラは徐々に落ち着きを取り戻していった。
「そっか、良かったですっ……」
エラはほっとしたのか、その場にずるずるとへたり込んでしまった。
私はそんなエラの姿を見て、胸の奥が熱くなった。
私の事を本気で心配してくれる姿に感動して、気付けばエラにぎゅっと抱き着いていた。
「エラ、心配かけてごめんなさいっ。本当に私大丈夫だからっ……」
「はいっ、それを聞けて安心しました」
気付けば私もエラも薄っすらと涙を滲ませていた。
ここには私の事を気に掛けて、心配してくれる人達がいる。
初めて来た時は心細い事も多かったけど、今は違うのだとはっきりと言える。
心の中に溜めて来た思いも、聞いてくれる人が私の傍には何人もいる。
そう思うと心強さを感じ、自然と勇気が溢れて来る。
(私、ここに来て良かったな……)
街にいた時はパン屋で働いたり、冒険者をしていたので出会いは多かった。
だけどその殆どがその場限りのもので、こんなにも深く関わるなんてことは無かった。
私はその後二人に事情を話した。
すると「もっと頼ってください」と二人共言ってくれた。
その言葉がすごく力強く感じて、私は笑顔で「ありがとう」と答えていた。
「アイロス様……、先程は、も、申し訳ありませんでしたっ!!」
エラは慌てる様にアイロスに何度も頭を下げて謝っていた。
「アイロスさん、ごめんなさい。元はと言えば私の所為です」
「ちがいますっ!私が勝手に勘違いしただけです……」
私とエラが交互に謝っているとアイロスは呆れた様に溜息を漏らした。
「もういい。別に気にしてないから、謝る必要なんてない」
アイロスはいつもの態度で気にしている様子はなかった。
私とエラは顔を見合わせて、ほっとした後に小さく笑っていた。
その様子を見ているアンナも微笑ましくその光景を眺めていて、穏やかな時間が流れていた。
真っ赤に腫れた私の目元に気付くと、二人共驚いた顔で私の傍へと近づいて来た。
「エミリー様、その目はどうされたんですか?」
「これはその……」
アンナに心配そうな顔をされてしまい、大したことではないと伝えようと思ったのだが、どう説明したら良いのか迷っていた。
二人には今まで何でも話して来たので、この事も素直に伝えるつもりではいた。
「……まさか」
私が考えた込んでいると、その話を聞いていたエラが小さく体を震わせた。
そして私の傍にいたアイロスの方へ視線を向けると、キッときつく睨みつけた。
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「え…?ほ、本当ですか?脅されてたり……してませんか?」
「脅されてもないわ、本当だからっ…。だからお願い、落ち着いて」
私がじっとエラの目を見て答えていると、エラは徐々に落ち着きを取り戻していった。
「そっか、良かったですっ……」
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「エラ、心配かけてごめんなさいっ。本当に私大丈夫だからっ……」
「はいっ、それを聞けて安心しました」
気付けば私もエラも薄っすらと涙を滲ませていた。
ここには私の事を気に掛けて、心配してくれる人達がいる。
初めて来た時は心細い事も多かったけど、今は違うのだとはっきりと言える。
心の中に溜めて来た思いも、聞いてくれる人が私の傍には何人もいる。
そう思うと心強さを感じ、自然と勇気が溢れて来る。
(私、ここに来て良かったな……)
街にいた時はパン屋で働いたり、冒険者をしていたので出会いは多かった。
だけどその殆どがその場限りのもので、こんなにも深く関わるなんてことは無かった。
私はその後二人に事情を話した。
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その言葉がすごく力強く感じて、私は笑顔で「ありがとう」と答えていた。
「アイロス様……、先程は、も、申し訳ありませんでしたっ!!」
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「アイロスさん、ごめんなさい。元はと言えば私の所為です」
「ちがいますっ!私が勝手に勘違いしただけです……」
私とエラが交互に謝っているとアイロスは呆れた様に溜息を漏らした。
「もういい。別に気にしてないから、謝る必要なんてない」
アイロスはいつもの態度で気にしている様子はなかった。
私とエラは顔を見合わせて、ほっとした後に小さく笑っていた。
その様子を見ているアンナも微笑ましくその光景を眺めていて、穏やかな時間が流れていた。
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