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62.籠の中の鳥-sideシルヴィア-
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「ヴィー…、貴女本当に大丈夫?やっぱり心配だわ…」
「もう、お母様は心配し過ぎよ。私なら平気よ、王宮にはエレンを始め幼い頃から付いていてくれたメイド達も来てくれるし…、アイロスお兄様だっているわ…」
(……心配してくれるのは有難いけど、お母様は過保護すぎるのよね…)
「そう…よね。何かあったら…直ぐに連絡をするのよ…!」
「分かっているわ…。その時はちゃんと連絡します…」
心配する母親を説得して私は馬車へと乗り込んだ。
馬車の中に入ると「はぁ…」と深くため息を漏らした。
(やっと…ここから出られるのね…。とりあえず5か月間は自由になれる…!)
そう思うと心なしか笑みが溢れて来る。
先日私…シルヴィア・ハウラーは、この国の王太子であるザシャ・グスタフ・キルンベルガーの婚約者候補に正式に決まった。
私は公爵家の長女として生まれたが幼い頃から体が弱く、そのうえ過保護の両親の所為で外に出ることを許されず屋敷での生活を余儀なくされていた。
私は喘息持ちで、一度発作が起きると周りは大騒ぎをする。
確かに苦しいけど暫くすれば治まるし、そんなに大騒ぎする程の事ではないとは思う…。
医者は両親の圧力に押されてか『大事を取った方が良い』と言う。
子供の頃は良く駄々をこねて、強引に兄であるアイロスに付いて王宮へと行っていた。
もちろん数名の傍付きを従えて、まるで監視されているかのような状態ではあったけど、屋敷から出られることが嬉しかったので、そんなことは気にしない様にしていた。
そんな時に出会ったのがザシャだった。
ザシャは子供のくせにすました顔をしていて、なんとなく気に入らなかった。
王子だからそんな態度を取っていることは分かっていたけど、本当の姿が無性に知りたくなり悪戯をしたり罠をしかけたり色々したけど、見事に失敗に終わった。
時折見せる意地悪な態度に腹が立って、私もどこか意地になっていたのかもしれない。
だけどそんなことをしていくに連れて、なんとなくザシャとは打ち解けることが出来て少し仲良くなれた気がした。
しかしその後私は風邪を拗らせてしまい重病化してしまったことで、再び屋敷から出ることを許されなくなってしまった。
そして私の婚約話も中々決まることなく、私は一生この屋敷からは出られないのではないかと思うと息が詰まりそうだった。
そんな時、あの話を偶然耳にした。
両親が私の婚約について話していた。
そしてその相手はザシャだった。
なんでも婚約者が不慮の事故に遭い命を落としてしまった為、新たな婚約者候補を探すというものだった。
私はその瞬間、これはチャンスだと思った。
この家から出られるかもしれない――と。
今のザシャの事はあまり良くは知らないけど、幼い頃はそれなりに仲良くしていた。
それに傍にはアイロスだっているので安心だ。
私は兄であるアイロスの事が昔から大好きだった。
表情が薄いがいつも私の事を気に掛けてくれて、ザシャに仕える様になり屋敷を出て行ってからも週に一度必ず手紙を送ってくれる。
両親みたいに私の意見を決めつけず、ちゃんと私の言葉を聞いてくれる、唯一何でも話せる存在だ。
私にはもう一人兄がいるが、毒親の色に染まり私にとっては敵でしかなかった。
私はザシャの婚約者の件をアイロスに手紙で相談した。
するとアイロスの方から話を進めてくれた。
元々両親も私を高位貴族に嫁がせたかった様なので、王家であれば万々歳なのだろう。
おかげで話しはすぐに纏まり、この話はすぐに決まった。
もし…、ザシャと結婚出来れば、私はこの屋敷から出て…自由に暮らせるのかもしれない。
もう両親のいいなりになるのはうんざりだった。
いい加減私の事は解放して欲しい…。
今までの私は籠の中の鳥だったけど、扉は開かれた。
「ザシャとは随分会って無かったけど…、相変わらず意地悪なのかな…。それにアイロスお兄様に会えるのも楽しみね…」
私は胸を膨らませていた。
私には心強いアイロスが付いていてくれる。
だからきっとうまく行くと信じている。
「もう、お母様は心配し過ぎよ。私なら平気よ、王宮にはエレンを始め幼い頃から付いていてくれたメイド達も来てくれるし…、アイロスお兄様だっているわ…」
(……心配してくれるのは有難いけど、お母様は過保護すぎるのよね…)
「そう…よね。何かあったら…直ぐに連絡をするのよ…!」
「分かっているわ…。その時はちゃんと連絡します…」
心配する母親を説得して私は馬車へと乗り込んだ。
馬車の中に入ると「はぁ…」と深くため息を漏らした。
(やっと…ここから出られるのね…。とりあえず5か月間は自由になれる…!)
そう思うと心なしか笑みが溢れて来る。
先日私…シルヴィア・ハウラーは、この国の王太子であるザシャ・グスタフ・キルンベルガーの婚約者候補に正式に決まった。
私は公爵家の長女として生まれたが幼い頃から体が弱く、そのうえ過保護の両親の所為で外に出ることを許されず屋敷での生活を余儀なくされていた。
私は喘息持ちで、一度発作が起きると周りは大騒ぎをする。
確かに苦しいけど暫くすれば治まるし、そんなに大騒ぎする程の事ではないとは思う…。
医者は両親の圧力に押されてか『大事を取った方が良い』と言う。
子供の頃は良く駄々をこねて、強引に兄であるアイロスに付いて王宮へと行っていた。
もちろん数名の傍付きを従えて、まるで監視されているかのような状態ではあったけど、屋敷から出られることが嬉しかったので、そんなことは気にしない様にしていた。
そんな時に出会ったのがザシャだった。
ザシャは子供のくせにすました顔をしていて、なんとなく気に入らなかった。
王子だからそんな態度を取っていることは分かっていたけど、本当の姿が無性に知りたくなり悪戯をしたり罠をしかけたり色々したけど、見事に失敗に終わった。
時折見せる意地悪な態度に腹が立って、私もどこか意地になっていたのかもしれない。
だけどそんなことをしていくに連れて、なんとなくザシャとは打ち解けることが出来て少し仲良くなれた気がした。
しかしその後私は風邪を拗らせてしまい重病化してしまったことで、再び屋敷から出ることを許されなくなってしまった。
そして私の婚約話も中々決まることなく、私は一生この屋敷からは出られないのではないかと思うと息が詰まりそうだった。
そんな時、あの話を偶然耳にした。
両親が私の婚約について話していた。
そしてその相手はザシャだった。
なんでも婚約者が不慮の事故に遭い命を落としてしまった為、新たな婚約者候補を探すというものだった。
私はその瞬間、これはチャンスだと思った。
この家から出られるかもしれない――と。
今のザシャの事はあまり良くは知らないけど、幼い頃はそれなりに仲良くしていた。
それに傍にはアイロスだっているので安心だ。
私は兄であるアイロスの事が昔から大好きだった。
表情が薄いがいつも私の事を気に掛けてくれて、ザシャに仕える様になり屋敷を出て行ってからも週に一度必ず手紙を送ってくれる。
両親みたいに私の意見を決めつけず、ちゃんと私の言葉を聞いてくれる、唯一何でも話せる存在だ。
私にはもう一人兄がいるが、毒親の色に染まり私にとっては敵でしかなかった。
私はザシャの婚約者の件をアイロスに手紙で相談した。
するとアイロスの方から話を進めてくれた。
元々両親も私を高位貴族に嫁がせたかった様なので、王家であれば万々歳なのだろう。
おかげで話しはすぐに纏まり、この話はすぐに決まった。
もし…、ザシャと結婚出来れば、私はこの屋敷から出て…自由に暮らせるのかもしれない。
もう両親のいいなりになるのはうんざりだった。
いい加減私の事は解放して欲しい…。
今までの私は籠の中の鳥だったけど、扉は開かれた。
「ザシャとは随分会って無かったけど…、相変わらず意地悪なのかな…。それにアイロスお兄様に会えるのも楽しみね…」
私は胸を膨らませていた。
私には心強いアイロスが付いていてくれる。
だからきっとうまく行くと信じている。
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