王太子の婚約者選考会に代理で参加しただけなので、私を選ばないでください【R18】

Rila

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56.4人目の婚約者候補

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お茶会が終わると私はザシャと共に自室へと戻って来ていた。
そして今この部屋には私とザシャしかいない。

「お茶会は楽しめた…?」
「……はい…」
私達はソファーに並んで座っていて、ザシャの質問に苦笑しながら答えた。

(楽しめたかと言えば…楽しめたけど…、変な雰囲気になって恥ずかしかった…)

思い出すと、また顔の奥が熱くなってきそうだったので私は考えない様にした。


「ふふっ、さっきは言いそびれたけど…甘いものは普段はあまり食べないかな…。だけど…、これはすごく好き…かな」
ザシャは私の唇に指をなぞると、ゆっくりと顔を近づけ、そのまま私の唇を食むように口付けていく。

「……んっ…」
「やっぱり…甘いな…」
ザシャは味わうように私の唇に舌を這わせ、軽く吸い上げた。

「はぁっ…ザシャさ…ん…」
「今日のエミリーは可愛らしい格好をしているから、このまま攫ってしまいたくなるな…」
私が蕩けた瞳を向けると、ザシャは冗談ぽく話して私の頭を優しく撫でてくれた。

(ザシャさんに頭撫でられるの…すごく気持ち良い……)

私は自然と嬉しそうな笑みを零していた。
しばらくゆったりとした時間を楽しんでいた。



「エミリー…、今朝話したこと覚えている?」
「…あ…、…はい」
徐にザシャは今朝の事を口に出して来たので、私はドキッとした。
正直なところ、いつ切り出してくるのかドキドキしながら待っていた。

私が不安そうな顔を浮かべていると、ザシャはすぐに私の手を握ってくれた。
ザシャの温もりを感じると、いつでも私は簡単に安心出来てしまうようだ。

「あのっ…、聞いてる間…手を握っていて貰ってもいいですか?」
「うん、勿論だよ…」
ザシャは私の言葉に優しく応えてくれた。

(何の話か少し怖いけど…きっと大丈夫…)

「い、いつでも…どうぞ…!」
私が真剣な顔でザシャをじっと見つめていると、ザシャは小さく笑った。

「ふふっ、そんなに身構えなくても平気だよ。本当にエミリーは可愛いな…。それじゃあ話すから、聞いていてくれるかな…」
ザシャの言葉に私は小さく頷くと、ザシャはゆっくりとした口調で話し始めた。


「アイロスには妹がいるんだ…」
「え…?妹…さん?」

(アイロスさんの…妹さんの話…?)

想像とは全く別の話をされ、私はキョトンとした顔をしてしまった。

「うん、シルヴィアという名前でエミリーとは…たしか年齢は同じだったかな…。今年で18歳になる」
「18なら…私と同い年です。アイロスさんに妹…初めて知りました」

「アイロスはあまり自分のことは話さないからね。シルヴィアは幼い頃から体が弱くてね、本来ならば私の婚約者に選ばれるはずだったんだけど、候補からは外されたんだ。それでエリーザに決まった…」
「あれ……、今回の話しでは無いんですね…?」

(今の話し方だと…初期の婚約者候補って事だったのかな…。だけどアイロスさんの妹さんって体が弱いんだ…、心配ね…)

「そうだね…。アイロスの家は公爵家なんだけど、私との婚約話が無くなると、その後すぐに婚約者探しを始めたそうなんだ。だけど…、彼女は体が弱い。だからまともな縁談が来なかった。貴族の家を繋いでいくためには、世継ぎは大切だ。彼女は子供を産めるかどうかも分からないから……。だからと言って、大切な娘を適当な家には渡したく無いらしい…。正直なところ、選り好みし過ぎているのが見つからない一番の原因だとは思うんだけどね…」
「……貴族って何だか大変なんですね…」
私が困った顔で呟くと「そうだな」とザシャも納得していた。

「そんな時にエリーザが亡くなり、再度私の婚約者候補を探すこととなった…。そこでシルヴィアも候補に入れて欲しいと強く嘆願されたんだ…」

「……アイロスさんに…?」
「うん、アイロスもそうだし、その両親からもね…。シルヴィアは私の従兄妹に当たるから結婚も可能だ。昔は濃い王家の血筋を残すために親族同士で婚姻を結んでいた時代もあるから、今でもシルヴィアを押す者達は一部にはいる。その者達を巻き込んで強引に決まってしまった様だ…」
ザシャは参ったと言わんばかりに深く息を漏らした。

「え…?決まった…?」
「勝手に決められたと言うのが正しいかな…。4人目の婚約者候補がシルヴィアだ…。そしてアイロスの強い要望により、エミリーと同様にこの離宮での生活をしてもらうことになった。大事な妹だから傍に置いておきたいと、言っていてね…。私もその気持ちは汲みたいと思っていたから、許可した」
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