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54.三人でお茶会②
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室内を出ると、私達は並びながら長い廊下を歩いていた。
アイロスはお茶会の場所である庭の方で待機しているようで、そこにたどり着くまではザシャと二人きりだ。
「エミリー…、どうしてそんなに緊張しているの?」
「え…?……なんか…」
未だに表情が硬い私を見てザシャは顔を傾けてきた。
「うん……?」
「こ…恋人みたいだなって思って……」
私は恥ずかしそうに小さな声で呟くと、ザシャはクスッと小さく笑った。
「みたい…ではなく、お互いの気持ちが通じ合ったのだから、今の私達は間違いなく恋人では無いのか…?」
「……っ…」
ザシャの言葉を聞いて、私の顔に熱が走る。
「ふふっ、顔が真っ赤だ。エミリーはこういうことを言われるのには本当に慣れていないんだね」
ザシャは楽しそうな口調で答えると、私の耳元に唇を寄せて「抱かれている時は素直なのにね」と意地悪そうな声で囁いた。
「……っ…!!」
私の顔は沸騰したかのように真っ赤に染まら、ザシャは可笑しそうにクスクスと隣で笑っていた。
「耳まで赤く染めて可愛いね…だけど他人には見せたくないから、意地悪なことを言うのは二人だけの時にするよ…」
「……っ…」
ザシャはそのままピタッと足を止めると、私の頬にそっと手を被せてきた。
私が反射的に顔を上に向けると、ザシャの顔がゆっくりと迫ってくる。
ここまで来ると何をされるのか予想がついてしまう。
「ザシャさんっ…ここ…外ですっ…」
「そうだね、だけど今ここには私達しかいない…」
ザシャは真っ直ぐに私のことを見つめていた。
真っ直ぐ過ぎるその瞳からは逃げられなかった。
だけど恥ずかしくなり、私はぎゅっと目を瞑ってしまう。
するとザシャの意地悪そうな笑い声が響いてきた。
「本当に…エミリーの反応は私を楽しませてくれるな…。目を瞑ってキスを待っているの…?」
「……っ…!…ち…違……んっ…」
私が目を開けて慌てて反論しようとした瞬間唇が塞がれた。
ザシャの温かい唇が重なり、私の胸の音はバクバクと激しく鳴り始める。
ここは部屋では無く廊下であるから、もしかしたら通りがかった誰かに見れてしまうかもしれないと勝手に想像してしまい、焦りと恥ずかしさから更に鼓動は早くなる。
(どうしようっ……誰かに見られちゃうっ…)
私が焦っていると、間もなくして唇が剥がされていく。
「あんまりのんびりしていると、アイロスを待たせてしまうから…少し急ごうか…」
「……え……?わぁっ…!!」
ザシャは小さく独り言のように呟くと、突然私のことを横向きに抱きかかえた。
ふわっとした浮き上がる感覚に、びくっと体を震わせ、反射的にザシャの首に手を回した。
「な…何をするんですかっ…!下ろしてくださいっ…」
「安心して、このまま私が会場までエミリーのことを運んであげるよ」
私は恥ずかしさから再び顔を赤くさせてしまう。
「昨日は…アイロスにこうやって運ばれたんだってね…。だから上書きさせて…」
「……?」
ザシャの発言に私は不思議そうな顔をした。
ザシャは嫉妬でもしているのだろうか…?
今の発言はそんな風にも聞き取れる。
(まさか…そんなわけ……ないよね…)
昨日に続き、またしてもこの廊下を抱っこされて通ることになるなんて思いもしなかった。
アイロスはお茶会の場所である庭の方で待機しているようで、そこにたどり着くまではザシャと二人きりだ。
「エミリー…、どうしてそんなに緊張しているの?」
「え…?……なんか…」
未だに表情が硬い私を見てザシャは顔を傾けてきた。
「うん……?」
「こ…恋人みたいだなって思って……」
私は恥ずかしそうに小さな声で呟くと、ザシャはクスッと小さく笑った。
「みたい…ではなく、お互いの気持ちが通じ合ったのだから、今の私達は間違いなく恋人では無いのか…?」
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「ふふっ、顔が真っ赤だ。エミリーはこういうことを言われるのには本当に慣れていないんだね」
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私の顔は沸騰したかのように真っ赤に染まら、ザシャは可笑しそうにクスクスと隣で笑っていた。
「耳まで赤く染めて可愛いね…だけど他人には見せたくないから、意地悪なことを言うのは二人だけの時にするよ…」
「……っ…」
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私が反射的に顔を上に向けると、ザシャの顔がゆっくりと迫ってくる。
ここまで来ると何をされるのか予想がついてしまう。
「ザシャさんっ…ここ…外ですっ…」
「そうだね、だけど今ここには私達しかいない…」
ザシャは真っ直ぐに私のことを見つめていた。
真っ直ぐ過ぎるその瞳からは逃げられなかった。
だけど恥ずかしくなり、私はぎゅっと目を瞑ってしまう。
するとザシャの意地悪そうな笑い声が響いてきた。
「本当に…エミリーの反応は私を楽しませてくれるな…。目を瞑ってキスを待っているの…?」
「……っ…!…ち…違……んっ…」
私が目を開けて慌てて反論しようとした瞬間唇が塞がれた。
ザシャの温かい唇が重なり、私の胸の音はバクバクと激しく鳴り始める。
ここは部屋では無く廊下であるから、もしかしたら通りがかった誰かに見れてしまうかもしれないと勝手に想像してしまい、焦りと恥ずかしさから更に鼓動は早くなる。
(どうしようっ……誰かに見られちゃうっ…)
私が焦っていると、間もなくして唇が剥がされていく。
「あんまりのんびりしていると、アイロスを待たせてしまうから…少し急ごうか…」
「……え……?わぁっ…!!」
ザシャは小さく独り言のように呟くと、突然私のことを横向きに抱きかかえた。
ふわっとした浮き上がる感覚に、びくっと体を震わせ、反射的にザシャの首に手を回した。
「な…何をするんですかっ…!下ろしてくださいっ…」
「安心して、このまま私が会場までエミリーのことを運んであげるよ」
私は恥ずかしさから再び顔を赤くさせてしまう。
「昨日は…アイロスにこうやって運ばれたんだってね…。だから上書きさせて…」
「……?」
ザシャの発言に私は不思議そうな顔をした。
ザシャは嫉妬でもしているのだろうか…?
今の発言はそんな風にも聞き取れる。
(まさか…そんなわけ……ないよね…)
昨日に続き、またしてもこの廊下を抱っこされて通ることになるなんて思いもしなかった。
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