王太子の婚約者選考会に代理で参加しただけなので、私を選ばないでください【R18】

Rila

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49.一緒にお風呂で...④

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「……んっ……」
唇が重なると同時に、ザシャの舌が私の歯列をなぞるように舐め、私は僅かに口を開く。
すると待っていたと言わんばかりに、熱を帯びたザシャの舌が私の腔内へと入り込んできて、舌同士を執拗に絡みつけてきた。

「んんっ……っ…」
私はくぐもった声を出しながら、ザシャの腕に抱きついた。

普段以上に熱を感じるのは、ここが浴場だからなのだろうか。
それともザシャと繋がり、お互い達したばかりだからなのか…。
もしくはお互いの心が通じ合って、感情が昂ぶっているから…?

きっと全てだろう。

今の私は全身でザシャの事を求めているのかもしれない。
そう思うと余計に体の奥が熱くなり、ザシャを求めずにはいられなくなる。
自らも舌を伸ばして絡め始めた。

「……エミリーは温かくて、柔らかいからずっとこうしていたくなるな…」
「はぁっ…わたし…もっ…んっ…」
ザシャの言葉を聞くとなんだか嬉しくなり、私は明るい声で答えてしまう。

暫くの間、味わう様にキスを繰り返していると、ザシャの唇がゆっくりと離れていく。
離れたくなくて、距離を詰めるように、ついザシャの方に顔を寄せていってしまう。

「ふふっ、エミリーは本当に可愛いことばかりするね。だけどここに長居するとまたエミリーがのぼせてしまうから…今はここまでにしておこうか」
「……っ…!!覚えて…いたんですかっ…」
私はその言葉に過去の失態を思い出し、恥ずかしそうに顔を赤く染めた。

「エミリーのことは何だって覚えているよ。後でまた口移しで水を飲ませてあげるね…」
「……っ…、ザシャさんの意地悪っ…」
ザシャは愉しげにからかうような口調で話していた。
だけど私も途中から可笑しく思えてきて少し笑ってしまった。

(ザシャさんと過ごす時間、楽しいな。ずっとこんな時間が続けば良いのに…)


その後はザシャに体と髪を洗ってもらった。
人に洗ってもらう事は今まで殆どなかったため、少し照れくさくて最初は落ち着かなかったが、途中から気持ち良く感じるようになっていた。


***


体を洗い終えると、大きな浴槽に二人で身を寄せ合う様にして浸かっていた。
後ろからザシャに抱きしめられるような形で入っているため、体が密着してドキドキしてしまう。

(この体勢…密着しすぎ…)

お湯は温かくて気持ち良いけど、それ以上にザシャの体温が心地良くてたまらない。
ザシャに触れていると、どうしてこんなにも落ち着くんだろう。

「ザシャさんって…本当は結構意地悪な人なんですね…」
私は不意にそんなことを口にしていた。

「ふふっ、そうだよ。私は意地悪な人間だ、嫌いになった…?」
私はその言葉に慌てるように顔を横に振った。

優しいザシャも、意地悪なザシャもどちらともザシャであることには変わりないし、普段とは違う姿を見れることはドキドキ出来て嫌ではなかった。
寧ろ色々な表情のザシャを見れて嬉しく感じていた。

「エミリーは意地悪されるのが好きだもんな…。私達は体の相性も良い様だし、このまま上手くやっていけそうだね…」
私はその言葉を聞いて嬉しく思う反面、少し不安も感じていた。

ザシャの本心が未だによく分からないからだ。

「ザシャさんは……本気で私のことを婚約者にしようと思っているんですか…?」
私は思いきって言葉に出して聞いてみた。

すると背後から深いため息が聞こえてきて、私は動揺してしまう。

私が慌てて後ろを振り返ろうとすると、ザシャに持ち上げられて体を横向きにされてしまう。
今の私はザシャの膝の上に乗っかっているような状態だ。

「エミリー…まだそんなことを言っているの?」
「……だって…」

「私は好きでもない相手にこんなことはしないし、エミリーだから最後まで抱いたんだ…。それに中にたっぷり子種を注いだからね…、もうここに私の子が宿っているかもしれないな…」
「……っ…!」
ザシャは私の顔をまっすぐに見つめながら答えると、私のお腹を掌で優しく撫でた。
その言葉を聞いて、顔の奥が一気に熱を持ち始める。

「ふふっ、顔が真っ赤だよ。いい加減認めて欲しいな…、私はエミリーが好きだよ。その気持ちは本物だ…」
「……でも、私は田舎に住む貧乏男爵家の次女で…ザシャさんに釣り合うような人間では…」
私が悲しそうな顔で喋っていると、ザシャの手が伸びてきて私の唇を指で挟まれた。

「その事は私がなんとかする問題であって、エミリーが心配する事ではないよ。だから私を信じて待っていて欲しい。半年の間は仮の婚約者候補ということにはなってしまうけど、私の心はいつだってエミリーのものだよ」
「……っ…」
ザシャは優しく微笑んでいた。
その表情を見ていると、不安が全て吹っ飛んでしまいそうになる。

(私…このままザシャさんの傍にいていいんだ…。嬉しいな…)

そう思うと私の目からは涙が溢れていた。

突然私が泣き出してしまい、ザシャは少し動揺しているようだった。

「エミリー…なんで泣くの…?泣かないで…」

「…っ…ザシャさんっ…っ…私……ザシャさんのこと…諦めなくても…本当に良いんですよね…?」
ザシャは何度も指で私の涙を拭ってくれたが、感情が昂ぶり涙はなかなか止まらなかった。

「うん、逆に諦められたら、私が寂しいよ…。だから…ずっと私の事を思っていて…。エミリーが思ってくれる以上に、私もエミリーのことを思っているから…」
「……っ…」
ザシャは私を宥めるように今度は頭を優しく撫でてくれた。
私は止まらない涙を流しながら、何度も首を縦に振った。

「エミリー…好きだよ。私にはエミリーだけだ…。これから先も…ずっとね…」
「……わ、私もっ…」
私が恥ずかしそうに答えるとザシャは優しく微笑んで、耳元で「愛してる」と静かに囁いた。
その瞬間、私の顔は耳まで真っ赤に染まっていった。

「ふふっ、やっぱりエミリーの反応は可愛いね。もっと言おうか…?」
「……もう十分ですっ、これ以上言われたら…またのぼせてしまいますっ…」
私が必死に答えるとザシャは笑いながら「それは困るな」と続けた。


私はザシャの気持ちを信じることにした。
それはザシャの態度を見ていれば、すぐに分かることだったのかもしれない。

だから少しでもザシャのふさわしい相手になれるように、努力しようと心に誓った。
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