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33.婚約者候補たち③
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「彼女の事情を調べて、何が知りたいんだ?」
アイロスは私の視線に気付くと、私達が座っている席の方まで近づいて来た。
そして鋭い視線を向けられたカトリナは焦っている様に見えた。
「それは、同じ婚約者候補の一人ですもの。どんな方か気になるのは当然じゃなくって?」
一度は怯んでいた様だが、すぐにカトリナは言い返して来た。
「それを決められたのは他でもないザシャ様だ。この決定に何か不満がある様な言い方だな」
「まさかっ、誤解です。私はそんなつもりでは」
ザシャの名前を出されると、カトリナはそれ以上は何も言えず黙り込んでしまう。
(さすがアイロスさんね! 助かった)
「エミリーについてこれ以上詮索されると私が困ることになる。彼女には今は表に出せない事情があるからね。勿論私が選んだ婚約者候補であるのだから、それなりの地位にある者だ。頭が良い君達ならこの意味分かってくれるよね?」
ザシャが小さく笑うと、二人は気まずそうな顔をしている様に見えた。
(ザシャさん。そんなハッタリなんて言って大丈夫なのかな。私はただの田舎の貧乏男爵令嬢ですけど)
「エミリー、二人とも分かってくれたみたいだ。私の説明不足で不安にさせてしまって申し訳なかったね」
「いえ、大丈夫です」
ザシャの顔は大丈夫だと言っている様で、私はほっとした。
「他に私に聞きたい事が無ければ、このまま解散にしようか」
ザシャの言葉に問いかける者はいなかった為、ここで顔合わせは解散となった。
「ユリア嬢、それでは行こうか。庭を案内するよ」
「はいっ」
ザシャに声を掛けられてユリアは嬉しそうに表情を緩めていた。
「今日は二人とも急な事にも関わらず集まってくれてありがとう。皆と一緒に食事を出来て楽しかったよ」
ザシャの言葉に私達は一礼した。
ザシャとユリアが部屋から出て行くと、私はアイロスの傍へと向かった。
カトリナは二人が出て行った後、直ぐに部屋を出て行ってしまった。
「アイロスさん、さっきは助かりました。ありがとうございます」
「構わない。お前にしては良い判断だったな」
アイロスに褒められるとなんだか不思議な気持ちになった。
「戻るか。今日は疲れただろ?」
「もう、すっごく疲れました。だけど無事に終わって良かったです」
アイロスは私の視線に気付くと、私達が座っている席の方まで近づいて来た。
そして鋭い視線を向けられたカトリナは焦っている様に見えた。
「それは、同じ婚約者候補の一人ですもの。どんな方か気になるのは当然じゃなくって?」
一度は怯んでいた様だが、すぐにカトリナは言い返して来た。
「それを決められたのは他でもないザシャ様だ。この決定に何か不満がある様な言い方だな」
「まさかっ、誤解です。私はそんなつもりでは」
ザシャの名前を出されると、カトリナはそれ以上は何も言えず黙り込んでしまう。
(さすがアイロスさんね! 助かった)
「エミリーについてこれ以上詮索されると私が困ることになる。彼女には今は表に出せない事情があるからね。勿論私が選んだ婚約者候補であるのだから、それなりの地位にある者だ。頭が良い君達ならこの意味分かってくれるよね?」
ザシャが小さく笑うと、二人は気まずそうな顔をしている様に見えた。
(ザシャさん。そんなハッタリなんて言って大丈夫なのかな。私はただの田舎の貧乏男爵令嬢ですけど)
「エミリー、二人とも分かってくれたみたいだ。私の説明不足で不安にさせてしまって申し訳なかったね」
「いえ、大丈夫です」
ザシャの顔は大丈夫だと言っている様で、私はほっとした。
「他に私に聞きたい事が無ければ、このまま解散にしようか」
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「ユリア嬢、それでは行こうか。庭を案内するよ」
「はいっ」
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カトリナは二人が出て行った後、直ぐに部屋を出て行ってしまった。
「アイロスさん、さっきは助かりました。ありがとうございます」
「構わない。お前にしては良い判断だったな」
アイロスに褒められるとなんだか不思議な気持ちになった。
「戻るか。今日は疲れただろ?」
「もう、すっごく疲れました。だけど無事に終わって良かったです」
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