王太子の婚約者選考会に代理で参加しただけなので、私を選ばないでください【R18】

Rila

文字の大きさ
上 下
33 / 133

33.婚約者候補たち③

しおりを挟む
「彼女の事情を調べて、何が知りたいんだ?」

 アイロスは私の視線に気付くと、私達が座っている席の方まで近づいて来た。
 そして鋭い視線を向けられたカトリナは焦っている様に見えた。

「それは、同じ婚約者候補の一人ですもの。どんな方か気になるのは当然じゃなくって?」

 一度は怯んでいた様だが、すぐにカトリナは言い返して来た。

「それを決められたのは他でもないザシャ様だ。この決定に何か不満がある様な言い方だな」
「まさかっ、誤解です。私はそんなつもりでは」

 ザシャの名前を出されると、カトリナはそれ以上は何も言えず黙り込んでしまう。

(さすがアイロスさんね! 助かった)

「エミリーについてこれ以上詮索されると私が困ることになる。彼女には今は表に出せない事情があるからね。勿論私が選んだ婚約者候補であるのだから、それなりの地位にある者だ。頭が良い君達ならこの意味分かってくれるよね?」

 ザシャが小さく笑うと、二人は気まずそうな顔をしている様に見えた。

(ザシャさん。そんなハッタリなんて言って大丈夫なのかな。私はただの田舎の貧乏男爵令嬢ですけど)

「エミリー、二人とも分かってくれたみたいだ。私の説明不足で不安にさせてしまって申し訳なかったね」
「いえ、大丈夫です」

 ザシャの顔は大丈夫だと言っている様で、私はほっとした。

「他に私に聞きたい事が無ければ、このまま解散にしようか」

 ザシャの言葉に問いかける者はいなかった為、ここで顔合わせは解散となった。

「ユリア嬢、それでは行こうか。庭を案内するよ」
「はいっ」

 ザシャに声を掛けられてユリアは嬉しそうに表情を緩めていた。

「今日は二人とも急な事にも関わらず集まってくれてありがとう。皆と一緒に食事を出来て楽しかったよ」

 ザシャの言葉に私達は一礼した。

 ザシャとユリアが部屋から出て行くと、私はアイロスの傍へと向かった。
 カトリナは二人が出て行った後、直ぐに部屋を出て行ってしまった。

「アイロスさん、さっきは助かりました。ありがとうございます」
「構わない。お前にしては良い判断だったな」

 アイロスに褒められるとなんだか不思議な気持ちになった。

「戻るか。今日は疲れただろ?」
「もう、すっごく疲れました。だけど無事に終わって良かったです」
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

離婚した彼女は死ぬことにした

まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。 ----------------- 事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。 もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。 今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、 「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」 返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。 それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。 神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。 大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。 ----------------- とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。 まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。 書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。 作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。

記憶がないなら私は……

しがと
恋愛
ずっと好きでようやく付き合えた彼が記憶を無くしてしまった。しかも私のことだけ。そして彼は以前好きだった女性に私の目の前で抱きついてしまう。もう諦めなければいけない、と彼のことを忘れる決意をしたが……。  *全4話

愛されていたのだと知りました。それは、あなたの愛をなくした時の事でした。

桗梛葉 (たなは)
恋愛
リリナシスと王太子ヴィルトスが婚約をしたのは、2人がまだ幼い頃だった。 それから、ずっと2人は一緒に過ごしていた。 一緒に駆け回って、悪戯をして、叱られる事もあったのに。 いつの間にか、そんな2人の関係は、ひどく冷たくなっていた。 変わってしまったのは、いつだろう。 分からないままリリナシスは、想いを反転させる禁忌薬に手を出してしまう。 ****************************************** こちらは、全19話(修正したら予定より6話伸びました🙏) 7/22~7/25の4日間は、1日2話の投稿予定です。以降は、1日1話になります。

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います

菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。 その隣には見知らぬ女性が立っていた。 二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。 両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。 メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。 数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。 彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。 ※ハッピーエンド&純愛 他サイトでも掲載しております。

三度目の嘘つき

豆狸
恋愛
「……本当に良かったのかい、エカテリナ。こんな嘘をついて……」 「……いいのよ。私に新しい相手が出来れば、周囲も殿下と男爵令嬢の仲を認めずにはいられなくなるわ」 なろう様でも公開中ですが、少し構成が違います。内容は同じです。

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

処理中です...