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32.婚約者候補たち②
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「準備は出来ている様だから、早速席に着こうか」
「はいっ」
ザシャの言葉にユリアは嬉しそうに笑顔で返事をしていて、未だにザシャの腕に手を絡みつけたままだった。
それを見ていたカトリナは不満そうな顔をユリアへと向けていた。
(二人とも、ザシャさんの事が好きなのかな。それとも婚約者になって、未来の王妃になりたいだけなのかな)
私はザシャに協力して婚約者候補を演じているだけの存在であり、本物ではない。
だから傍観者のように3人の姿を眺めてはそんな事を考えていた。
しかし何故だか分からないが、胸の奥がもやもやして仕方がなかった。
「おい、何をぼけっとしている。エミリーも早く席に着け」
「……っ!? は、はいっ」
突然アイロスに声を掛けられ、私ははっと我に返った。
私がそんな事を考えている内に既に3人は席に着き始めていて、私は慌ててテーブルの方へと向かった。
今回は堅苦しい集まりではないとのことなので、一つのテーブルに二人づつ対面する形で座る事となった。
ザシャの隣にはユリアが座り、カトリナはザシャと対面する席に座っていた為、私は余ってる最後の席へと着席した。
(どうしよう、急にすごく緊張してきたわ。カトリナ様は私の隣なのね)
私達が席に着くと使用人達が料理を運んでくれて、食事が始まった。
私は隣に座るカトリナをチラチラと見ながら真似をする様に食べていた。
どうしてもそっちに気を取られてしまう為、周りの会話を聞き逃してしまう場面も何度かあり、不意に私に話を振られる度に笑って誤魔化し、曖昧な返事を繰り返していた。
しかし大きな失敗も無く、恙無く食事を終えることが出来て私はほっとしていた。
手の込んだ高級そうな料理だったのに、緊張のせいで味をあまり覚えて無いのが残念ではあったが。
(食事も終わったし、これで解散かな。早く部屋に戻って落ち着きたいな)
「ザシャ様、私行ってみたい所があるんですが」
「どこかな?」
ユリアは隣に座るザシャと楽し気に会話を続けていた。
「王宮内にある庭園を歩いてみたいです。様々な色の薔薇が咲いていて、素敵な所だって聞いていたから。是非ザシャ殿下と一緒に行ってみたいわ。駄目でしょうか」
「庭園か、勿論構わないよ」
ザシャが優しい声で呟くと、ユリアは嬉しそうに頬を染めて喜んでいた。
「嬉しいですっ! 折角なので、良かったらお二人もご一緒にいかがですか?」
「折角だけど、私は遠慮させて頂くわ。今日はユリアさんと過ごす時間ですし。私は別の機会にザシャ殿下に案内していただくわ」
カトリナは落ち着いた口調でユリアの誘いを断っていた。
何故カトリナが誘いを断ったのかは、今までの様子を見ていればなんとなく想像がついた。
今日はユリアと過ごす日と言う事で、ユリアは来てからずっとザシャにくっついている。
そんな態度を見せつけられても何も言う事が出来ないなんて、プライドが高いカトリナにとっては苦痛以外の何物でもないのだろう。
「そうですか。残念です」
ユリアはカトリナの返事を聞いて残念がっていた。
ユリアは以前見た時、酷い事をカトリナに言われていた。
それなのに自分からカトリナに会う事を選んで、更にはこの後も誘おうとしている。
嫌いなら普通は避ける所ではないのだろうか。
いくらザシャと過ごす日だからと言っても、他の婚約者候補がいるのに、しかも相手はあのカトリナなのに平然とザシャにくっついている。
私は初めて会った時のあのユリアは別人の様に思えて仕方が無かった。
(もしかして、ユリアさんって実は腹黒い? 普段カトリナ様にいじめられていて、今日はザシャさんと一緒で何も言えないからあんな態度をとっているのかな)
「エミリー様はいかがですか?」
「え? わ、私も遠慮させて頂きます。二人の邪魔をしたら申し訳ないですし」
私もカトリナに続く様に断った。
カトリナが断ってくれたおかげで、言いやすい状況になり感謝した。
「エミリーとは明日庭園でお茶をする約束をしていたからな」
「はい。私は明日ゆっくり案内して頂きますので大丈夫です。お気遣い感謝致します」
ザシャの言葉に便乗する様に私は慌てて答えた。
「あの、ザシャ様とエミリー様って、仲が宜しいのですか?」
ユリアはじっと私の顔を見つめながら問いかけて来た。
私はどきっとして心臓がバクバクと鳴り始めた。
(どうしよう。なんて答えればいいのかな。こんな事になるのなら、事前に対処法を聞いておけば良かった!)
「えっと、私はユリア様と同じくただの婚約者候補の一人ですよ?」
私は焦っている心の内を隠す様に、必死に笑顔を作って答えた。
「私もそれは気になっていたわ。調べさせてもらったけど、エミリーさんの家って王都から随分離れた場所にある男爵家の生まれよね。今日見ていて思ったけど、綺麗に着飾ってはいる様だけどマナーは全然なっていないし。どうして貴女の様な人が婚約者候補に選ばれたのか、不思議でならないわ」
カトリナは目を細め、隣に座る私に鋭い視線を向けて来た。
「そ、それはっ……」
(私の事なんて調べればすぐ分かると思っていたけど、なんて答えればいいの。こんな時はアイロスさんに頼るしか、ないよね)
私はアイロスの方を向き、助けを求めるような視線を送った。
「はいっ」
ザシャの言葉にユリアは嬉しそうに笑顔で返事をしていて、未だにザシャの腕に手を絡みつけたままだった。
それを見ていたカトリナは不満そうな顔をユリアへと向けていた。
(二人とも、ザシャさんの事が好きなのかな。それとも婚約者になって、未来の王妃になりたいだけなのかな)
私はザシャに協力して婚約者候補を演じているだけの存在であり、本物ではない。
だから傍観者のように3人の姿を眺めてはそんな事を考えていた。
しかし何故だか分からないが、胸の奥がもやもやして仕方がなかった。
「おい、何をぼけっとしている。エミリーも早く席に着け」
「……っ!? は、はいっ」
突然アイロスに声を掛けられ、私ははっと我に返った。
私がそんな事を考えている内に既に3人は席に着き始めていて、私は慌ててテーブルの方へと向かった。
今回は堅苦しい集まりではないとのことなので、一つのテーブルに二人づつ対面する形で座る事となった。
ザシャの隣にはユリアが座り、カトリナはザシャと対面する席に座っていた為、私は余ってる最後の席へと着席した。
(どうしよう、急にすごく緊張してきたわ。カトリナ様は私の隣なのね)
私達が席に着くと使用人達が料理を運んでくれて、食事が始まった。
私は隣に座るカトリナをチラチラと見ながら真似をする様に食べていた。
どうしてもそっちに気を取られてしまう為、周りの会話を聞き逃してしまう場面も何度かあり、不意に私に話を振られる度に笑って誤魔化し、曖昧な返事を繰り返していた。
しかし大きな失敗も無く、恙無く食事を終えることが出来て私はほっとしていた。
手の込んだ高級そうな料理だったのに、緊張のせいで味をあまり覚えて無いのが残念ではあったが。
(食事も終わったし、これで解散かな。早く部屋に戻って落ち着きたいな)
「ザシャ様、私行ってみたい所があるんですが」
「どこかな?」
ユリアは隣に座るザシャと楽し気に会話を続けていた。
「王宮内にある庭園を歩いてみたいです。様々な色の薔薇が咲いていて、素敵な所だって聞いていたから。是非ザシャ殿下と一緒に行ってみたいわ。駄目でしょうか」
「庭園か、勿論構わないよ」
ザシャが優しい声で呟くと、ユリアは嬉しそうに頬を染めて喜んでいた。
「嬉しいですっ! 折角なので、良かったらお二人もご一緒にいかがですか?」
「折角だけど、私は遠慮させて頂くわ。今日はユリアさんと過ごす時間ですし。私は別の機会にザシャ殿下に案内していただくわ」
カトリナは落ち着いた口調でユリアの誘いを断っていた。
何故カトリナが誘いを断ったのかは、今までの様子を見ていればなんとなく想像がついた。
今日はユリアと過ごす日と言う事で、ユリアは来てからずっとザシャにくっついている。
そんな態度を見せつけられても何も言う事が出来ないなんて、プライドが高いカトリナにとっては苦痛以外の何物でもないのだろう。
「そうですか。残念です」
ユリアはカトリナの返事を聞いて残念がっていた。
ユリアは以前見た時、酷い事をカトリナに言われていた。
それなのに自分からカトリナに会う事を選んで、更にはこの後も誘おうとしている。
嫌いなら普通は避ける所ではないのだろうか。
いくらザシャと過ごす日だからと言っても、他の婚約者候補がいるのに、しかも相手はあのカトリナなのに平然とザシャにくっついている。
私は初めて会った時のあのユリアは別人の様に思えて仕方が無かった。
(もしかして、ユリアさんって実は腹黒い? 普段カトリナ様にいじめられていて、今日はザシャさんと一緒で何も言えないからあんな態度をとっているのかな)
「エミリー様はいかがですか?」
「え? わ、私も遠慮させて頂きます。二人の邪魔をしたら申し訳ないですし」
私もカトリナに続く様に断った。
カトリナが断ってくれたおかげで、言いやすい状況になり感謝した。
「エミリーとは明日庭園でお茶をする約束をしていたからな」
「はい。私は明日ゆっくり案内して頂きますので大丈夫です。お気遣い感謝致します」
ザシャの言葉に便乗する様に私は慌てて答えた。
「あの、ザシャ様とエミリー様って、仲が宜しいのですか?」
ユリアはじっと私の顔を見つめながら問いかけて来た。
私はどきっとして心臓がバクバクと鳴り始めた。
(どうしよう。なんて答えればいいのかな。こんな事になるのなら、事前に対処法を聞いておけば良かった!)
「えっと、私はユリア様と同じくただの婚約者候補の一人ですよ?」
私は焦っている心の内を隠す様に、必死に笑顔を作って答えた。
「私もそれは気になっていたわ。調べさせてもらったけど、エミリーさんの家って王都から随分離れた場所にある男爵家の生まれよね。今日見ていて思ったけど、綺麗に着飾ってはいる様だけどマナーは全然なっていないし。どうして貴女の様な人が婚約者候補に選ばれたのか、不思議でならないわ」
カトリナは目を細め、隣に座る私に鋭い視線を向けて来た。
「そ、それはっ……」
(私の事なんて調べればすぐ分かると思っていたけど、なんて答えればいいの。こんな時はアイロスさんに頼るしか、ないよね)
私はアイロスの方を向き、助けを求めるような視線を送った。
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