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30.頼れる協力者
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アイロスのおかげで歩くよりも大分早く入口まで辿り着くことが出来た。
そして入口には馬車が用意されている様だった。
以前ここに来た時は徒歩で来たのだが、慣れてない靴を履いていたと言う事もあり、結構な時間がかかっていた気がする。
「アイロスさん、馬車を用意してくれたんですか?」
「馬でも良かったんだが、今回は事情があるからな」
アイロスが言う事情と言うのは、婚約者候補達が集まる場であるからと言う事だろう。
一応私はザシャの婚約者候補の一人である為、令嬢らしく振る舞わなければならない。
「さっさと乗ってくれ。馬車なら十分程度で着くはずだ」
「はいっ!」
私はアイロスに急かされると急いで馬車へと乗り込んだ。
そして私達を乗せると馬車はすぐに動き出す。
ガタガタと馬車に揺られながら、私は窓の奥の景色をただなんとなく眺めていた。
私の鼓動はバクバクとなり、緊張し過ぎてどうにかなってしまいそうだった。
「緊張でもしているのか?」
私が強張った表情をしていると、対面する様に座っているアイロスが私に声を掛けて来た。
「当然じゃないですか! 私みたいな貴族になれてない人間が、これから本当の貴族の人達と食事をするんですよ? しかもマナーすら全く分からない状態で」
「手が震えているな。怖いのか?」
私はアイロスに言われるまで気付かなかったが、自分の手が震えていることに気付いた。
「ほ、本当だ。震えてる。アイロスさん、どうしよう……」
「今更焦った所でどうにもならない。だけど安心しろ。お前の傍には俺が付いてる。何かあればすぐに俺が対処するから、お前はただ大人しく座っていればいい」
こんなに優しい言葉をアイロスに掛けられたのは初めての様な気がして、私は驚いた顔でアイロスを見ていた。
「どうした?」
アイロスは驚いた顔をしている私を見て、僅かに眉を顰めた。
「そうですよね。アイロスさんが傍にいてくれるなら心強いですっ! なんだか少し安心出来ました。ありがとうございます!」
僅かだが緊張の糸が切れ、私の表情は明るくなっていた。
(私は一人じゃない。きっと何かあればアイロスさんがすぐに助けてくれるはずよ!)
失敗しないようにと余計な事を考え過ぎてしまうと、逆に失敗してしまうものだ。
余計な事を考えない様にしようと心を落ち着かせる為に、私は深呼吸をした。
そんな事をしていると王宮へと到着した。
***
馬車が止まると、アイロスは私の手を取り馬車から下ろしてくれた。
先程深呼吸をして少し心に余裕が出来たはずなのに、大きな宮殿を目の前にすると再び緊張が戻って来そうになる。
(だめよ。落ち着かなきゃ。今の私はザシャさんの婚約者候補なのだから)
「行くぞ。俺の手に掴まって歩いていいから」
「はい、ありがとうございますっ」
私はアイロスの腕に掴まりながら王宮へと入って行った。
中に入ると入口には執事が待ち構えており、私達を部屋へと案内してくれた。
「ザシャ様はもう来られているのか?」
「はい。今は別のお部屋で待機しておられます。婚約者候補の皆様が揃われましたら皆様が待つお部屋へと向かわれるそうです」
歩きながらアイロスは執事に声をかけていた。
きっと一番最後に到着したのは私なのだろう。
他の者達を待たせていると思うと、なんとなく申し訳なさを感じてしまう。
「こちらのお部屋になります」
それから少し歩くと大きな扉の前で執事は止まった。
「エミリー、準備はいいか?」
「は、はいっ」
今まで『お前』としか呼ばれたことが無いアイロスに初めて名前を呼ばれ、私はドキッとしてしまった。
「それでは扉を開きます」
執事は静かに答えると、ゆっくりと扉を開いた。
そして入口には馬車が用意されている様だった。
以前ここに来た時は徒歩で来たのだが、慣れてない靴を履いていたと言う事もあり、結構な時間がかかっていた気がする。
「アイロスさん、馬車を用意してくれたんですか?」
「馬でも良かったんだが、今回は事情があるからな」
アイロスが言う事情と言うのは、婚約者候補達が集まる場であるからと言う事だろう。
一応私はザシャの婚約者候補の一人である為、令嬢らしく振る舞わなければならない。
「さっさと乗ってくれ。馬車なら十分程度で着くはずだ」
「はいっ!」
私はアイロスに急かされると急いで馬車へと乗り込んだ。
そして私達を乗せると馬車はすぐに動き出す。
ガタガタと馬車に揺られながら、私は窓の奥の景色をただなんとなく眺めていた。
私の鼓動はバクバクとなり、緊張し過ぎてどうにかなってしまいそうだった。
「緊張でもしているのか?」
私が強張った表情をしていると、対面する様に座っているアイロスが私に声を掛けて来た。
「当然じゃないですか! 私みたいな貴族になれてない人間が、これから本当の貴族の人達と食事をするんですよ? しかもマナーすら全く分からない状態で」
「手が震えているな。怖いのか?」
私はアイロスに言われるまで気付かなかったが、自分の手が震えていることに気付いた。
「ほ、本当だ。震えてる。アイロスさん、どうしよう……」
「今更焦った所でどうにもならない。だけど安心しろ。お前の傍には俺が付いてる。何かあればすぐに俺が対処するから、お前はただ大人しく座っていればいい」
こんなに優しい言葉をアイロスに掛けられたのは初めての様な気がして、私は驚いた顔でアイロスを見ていた。
「どうした?」
アイロスは驚いた顔をしている私を見て、僅かに眉を顰めた。
「そうですよね。アイロスさんが傍にいてくれるなら心強いですっ! なんだか少し安心出来ました。ありがとうございます!」
僅かだが緊張の糸が切れ、私の表情は明るくなっていた。
(私は一人じゃない。きっと何かあればアイロスさんがすぐに助けてくれるはずよ!)
失敗しないようにと余計な事を考え過ぎてしまうと、逆に失敗してしまうものだ。
余計な事を考えない様にしようと心を落ち着かせる為に、私は深呼吸をした。
そんな事をしていると王宮へと到着した。
***
馬車が止まると、アイロスは私の手を取り馬車から下ろしてくれた。
先程深呼吸をして少し心に余裕が出来たはずなのに、大きな宮殿を目の前にすると再び緊張が戻って来そうになる。
(だめよ。落ち着かなきゃ。今の私はザシャさんの婚約者候補なのだから)
「行くぞ。俺の手に掴まって歩いていいから」
「はい、ありがとうございますっ」
私はアイロスの腕に掴まりながら王宮へと入って行った。
中に入ると入口には執事が待ち構えており、私達を部屋へと案内してくれた。
「ザシャ様はもう来られているのか?」
「はい。今は別のお部屋で待機しておられます。婚約者候補の皆様が揃われましたら皆様が待つお部屋へと向かわれるそうです」
歩きながらアイロスは執事に声をかけていた。
きっと一番最後に到着したのは私なのだろう。
他の者達を待たせていると思うと、なんとなく申し訳なさを感じてしまう。
「こちらのお部屋になります」
それから少し歩くと大きな扉の前で執事は止まった。
「エミリー、準備はいいか?」
「は、はいっ」
今まで『お前』としか呼ばれたことが無いアイロスに初めて名前を呼ばれ、私はドキッとしてしまった。
「それでは扉を開きます」
執事は静かに答えると、ゆっくりと扉を開いた。
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