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24.貴族令嬢としての自覚
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「ここにいる間は貴族令嬢としての自覚を持ってもらわないと困る。極力人目に付かない様にはするつもりだが、必ずしもそうなるとは限らないからな。場合に寄っては、顔合わせ等に参加せざるを得ない時も来るだろう。その日がいつ来ても良い様に準備だけはしとくべきだ。特にお前の場合はすぐに対応するのは無理だろうから、今からやらないときっと間に合わない」
「頑張ります……」
私が不満そうな顔をすると、アイロスに睨まれ、私は委縮してしまった。
「安心しろ、俺が教えてやる」
「アイロスさんって作法とか分かるんですか?」
「お前と一緒にするな。俺はこれでもそれなりの教育を受けて来ている」
「そ、そうなんですね」
(アイロスさんが作法の先生とか、怖すぎなんですけどっ! 絶対厳しいに決まってるわ)
「そうだな、来週から始めようか。俺はそのつもりで準備をしておくから、お前もそのつもりでいろよ」
「はい、アイロス先生」
私は引き攣った笑顔で答えた。
(はぁ、作法かぁ。私今まで作法なんて習った事ないけど、私に出来るのかな。でも私が頑張らないとザシャさんに結局は迷惑をかけてしまうことになるのよね。頑張らなきゃ、ね)
「アイロスさん、ザシャさんは今日は一日カトリナ様と一緒に過ごされるんですか?」
「予定が無い限り夜まで一緒にいる事になっているな」
「夜までって一晩カトリナ様と過ごされるってことですか?」
「は? そんなわけ無いだろう。いくら候補者だからと言って、そんな事をしたら大問題になる」
「そ、そうですよね」
それこそ責任問題になって、強引に結婚を迫られる事態になってしまいそうだ。
「お前は昨日ザシャ様の部屋に泊まったそうだが、あれは特殊な事情があるからだ。変に好かれているなどと勘違いはするなよ。お前はあくまでも協力者なんだからな」
「わ、わかってますっ」
私が昨日の事を思い出し、つい顔を赤く染めてしまうと、アイロスは目を細めて釘をさす様に言った。
(昨日の事は私へのサービスだったのかな? 協力してもらってるから愛人になってやるよ的な? 違うわ。最初に言い出したのは私の方だった気がする。この事は取り合えず今は考えるのは止めとくべきね。アイロスさんが変な目で見て来てる)
「あの、ザシャさんが戻って来たら教えて頂けませんか? こんな良い部屋を用意してくれたお礼を言いたくて」
「それなら明後日まで待つんだな。明後日はお前と過ごす日だからな」
「そうなんですけど、こういうのって少しでも早く伝えた様が良いのかなって思って」
「ザシャ様は候補者達と会った後、執務に入られる。昼間出来なかった仕事を、終わってからするんだ。この意味分かるよな?」
(それって遅い時間まで仕事をしてるって事よね)
朝から夜まで候補者と過ごし、その後に執務となれば休む時間はずっと後になるのだろう。
私はアイロスからその事を聞いてザシャの大変さを知った。
(この三日間はザシャさんにとっては、すごいハードなんだ。王太子っていうのも大変なのね)
「わかったか?」
「はい、わかりました! 私もちゃんとした令嬢になれる様に頑張りますっ! そして少しでもザシャさんに負担を掛けない様に!」
突然意気込んだ様に話す私を見て、アイロスは少し驚いた顔を見せた。
(私も頑張らなきゃね!)
***
一日が終わり私はベッドへと入った。
今日はあの後、アイロスに広い離宮の案内をしてもらい、歩き回ったせいで疲れてしまった。
「こんなふかふかなベッドで眠れるなんて、明日には疲れも吹っ飛んでそうね」
私はゆっくりと目を閉じると、心地よい眠りへと落ちて行った。
「……すごく気持ち良さそうに眠って。今日は疲れたのかな? この場所も気に入ってくれたみたいで良かったよ」
どこからかザシャの声が聞こえてきたが、重い瞼を開けるのが億劫で私は目を瞑ったまま暫くそのままでいた。
(ザシャ、さん……?)
するとザシャの手が私の頭の方に伸びて来て、髪を優しく撫でてくれた。
それがなんだかとても気持ち良くてもっと深い眠りに落ちてしまいそうになったが、目の前にザシャの存在を感じると無性に顔が見たくなり私はゆっくりと目を開いた。
部屋は薄暗くて慣れてない目では、辺りが真っ暗で何も見えない。
だけどザシャの気配は確かに感じていた。
「あれ、エミリー。目、覚めちゃった?」
「……っ!?」
ザシャの顔がなんとなく見える様になったと思っていたら、それはすぐ目の前にあった。
息がかかる程の距離にザシャがいて、私は恥ずかしくなりぎゅっと目を閉じた。
(び、びっくりしたっ!)
「ふふっ、寝ちゃうの? バレてから寝たフリをしようとするなんて、エミリーはやっぱり面白いな。起きちゃったなら少し悪戯してもいいかな?」
「頑張ります……」
私が不満そうな顔をすると、アイロスに睨まれ、私は委縮してしまった。
「安心しろ、俺が教えてやる」
「アイロスさんって作法とか分かるんですか?」
「お前と一緒にするな。俺はこれでもそれなりの教育を受けて来ている」
「そ、そうなんですね」
(アイロスさんが作法の先生とか、怖すぎなんですけどっ! 絶対厳しいに決まってるわ)
「そうだな、来週から始めようか。俺はそのつもりで準備をしておくから、お前もそのつもりでいろよ」
「はい、アイロス先生」
私は引き攣った笑顔で答えた。
(はぁ、作法かぁ。私今まで作法なんて習った事ないけど、私に出来るのかな。でも私が頑張らないとザシャさんに結局は迷惑をかけてしまうことになるのよね。頑張らなきゃ、ね)
「アイロスさん、ザシャさんは今日は一日カトリナ様と一緒に過ごされるんですか?」
「予定が無い限り夜まで一緒にいる事になっているな」
「夜までって一晩カトリナ様と過ごされるってことですか?」
「は? そんなわけ無いだろう。いくら候補者だからと言って、そんな事をしたら大問題になる」
「そ、そうですよね」
それこそ責任問題になって、強引に結婚を迫られる事態になってしまいそうだ。
「お前は昨日ザシャ様の部屋に泊まったそうだが、あれは特殊な事情があるからだ。変に好かれているなどと勘違いはするなよ。お前はあくまでも協力者なんだからな」
「わ、わかってますっ」
私が昨日の事を思い出し、つい顔を赤く染めてしまうと、アイロスは目を細めて釘をさす様に言った。
(昨日の事は私へのサービスだったのかな? 協力してもらってるから愛人になってやるよ的な? 違うわ。最初に言い出したのは私の方だった気がする。この事は取り合えず今は考えるのは止めとくべきね。アイロスさんが変な目で見て来てる)
「あの、ザシャさんが戻って来たら教えて頂けませんか? こんな良い部屋を用意してくれたお礼を言いたくて」
「それなら明後日まで待つんだな。明後日はお前と過ごす日だからな」
「そうなんですけど、こういうのって少しでも早く伝えた様が良いのかなって思って」
「ザシャ様は候補者達と会った後、執務に入られる。昼間出来なかった仕事を、終わってからするんだ。この意味分かるよな?」
(それって遅い時間まで仕事をしてるって事よね)
朝から夜まで候補者と過ごし、その後に執務となれば休む時間はずっと後になるのだろう。
私はアイロスからその事を聞いてザシャの大変さを知った。
(この三日間はザシャさんにとっては、すごいハードなんだ。王太子っていうのも大変なのね)
「わかったか?」
「はい、わかりました! 私もちゃんとした令嬢になれる様に頑張りますっ! そして少しでもザシャさんに負担を掛けない様に!」
突然意気込んだ様に話す私を見て、アイロスは少し驚いた顔を見せた。
(私も頑張らなきゃね!)
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一日が終わり私はベッドへと入った。
今日はあの後、アイロスに広い離宮の案内をしてもらい、歩き回ったせいで疲れてしまった。
「こんなふかふかなベッドで眠れるなんて、明日には疲れも吹っ飛んでそうね」
私はゆっくりと目を閉じると、心地よい眠りへと落ちて行った。
「……すごく気持ち良さそうに眠って。今日は疲れたのかな? この場所も気に入ってくれたみたいで良かったよ」
どこからかザシャの声が聞こえてきたが、重い瞼を開けるのが億劫で私は目を瞑ったまま暫くそのままでいた。
(ザシャ、さん……?)
するとザシャの手が私の頭の方に伸びて来て、髪を優しく撫でてくれた。
それがなんだかとても気持ち良くてもっと深い眠りに落ちてしまいそうになったが、目の前にザシャの存在を感じると無性に顔が見たくなり私はゆっくりと目を開いた。
部屋は薄暗くて慣れてない目では、辺りが真っ暗で何も見えない。
だけどザシャの気配は確かに感じていた。
「あれ、エミリー。目、覚めちゃった?」
「……っ!?」
ザシャの顔がなんとなく見える様になったと思っていたら、それはすぐ目の前にあった。
息がかかる程の距離にザシャがいて、私は恥ずかしくなりぎゅっと目を閉じた。
(び、びっくりしたっ!)
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