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23.与えられた部屋
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アイロスに案内されて離宮内部にある長い回廊を進み、突き当りを曲がってまた更に奥へと向かっていく。
「結構遠いんですね?」
「一番奥の部屋だからな」
「まさか、私が逃げない様に一番奥の部屋を選んだとか?」
「お前、本当に何も知らないんだな」
私が答えるとアイロスは呆れたように深くため息を漏らした。
「お前は一応は王太子であるザシャ様の婚約者候補だから、それ相応の部屋を与えられたという事だ」
「それはどういう意味ですか?」
「ここは未来の王妃、つまりはザシャ様の婚約者になった者に与えられる部屋だ。お前はただの候補者ではあるが、今回ザシャ様の強い希望により特別にこの部屋を使わせることに決まったんだ」
その話を聞いて私は足を止めてしまった。
「私、そんなにすごい部屋を使っても良いんでしょうか」
「本来ならあり得ないが、今回お前に協力を頼んだ事もあり、周りを欺く目的もある。そんな理由でここを使わせることになった、と言う事だ」
アイロスは所々わざと刺々しく言って来る。
「な、なるほど」
「ここまで優遇されているのは、お前が協力者だからだ。その事を忘れない様に、変な動きはするなよ」
「変な動きって、例えばどんな?」
「お前が持って来た荷物はここでは使うな。荷物は俺の方で預かっているから、帰る時になったら返す」
「えぇー」
「えー、じゃない!お前は王太子の婚約者候補に選ばれた一人だって事、絶対に忘れるなよ。服は全てこちらで用意する。もちろんあのドレスを着ることもここでは禁止だ!」
私はその言葉に苦笑した。
(私は別にあれを着たいわけじゃないんだけどな)
そんな話をしていると、一番奥にある部屋の前まで辿り着いた。
部屋の前に立つと大きな扉が視界に飛び込んで来た。
扉は白く、その周りには金で描かれた薔薇の模様が描かれている。
(扉もまたすごいな。さすが未来の王妃様の部屋ね。私本当にこんな部屋にいていいの? 不安になって来たわ)
私が扉の模様を眺めていると、隣にいたアイロスが扉を開いた。
扉が開かれると私の視界に部屋の中が映し出された。
「うわぁ、すごい! 広いし窓も沢山あるわ!」
私は部屋の中に入ると、興奮しながら部屋中を歩き回った。
「アイロスさん、奥に大きな浴場があるわ! わぁ、化粧室もすごく広いっ! すごく素敵ね」
「こんなに大きなクローゼット見るの初めてかもっ! ベッドもふかふかだし! ちょっと、アイロスさんっ! 外にお茶が出来るスペースがあるっ!」
「うるさい! お前、はしゃぎ過ぎなんだよ」
アイロスに睨まれ、私はびくっと体を震わせた。
それで漸く我に返った。
「ご、ごめんなさい。こんな豪邸見るのも初めてで。で、でも、ちょっと位はしゃいだっていいじゃないっ!」
「お前の場合はちょっとじゃないだろ? 今は俺しかいないから良いが、他の者の前ではそんな態度は見せるなよ」
アイロスは目を細め、冷ややかな視線を私に向けながら盛大にため息を漏らした。
「気をつけます。でもっ、今はアイロスさんしかいないし良いわよね?」
「…………」
アイロスは面倒臭そうな顔で、相変わらず私の事を睨んでいた。
「お前がここまで酷いとは思ってなかった。これは躾が必要だな」
「躾……?」
「結構遠いんですね?」
「一番奥の部屋だからな」
「まさか、私が逃げない様に一番奥の部屋を選んだとか?」
「お前、本当に何も知らないんだな」
私が答えるとアイロスは呆れたように深くため息を漏らした。
「お前は一応は王太子であるザシャ様の婚約者候補だから、それ相応の部屋を与えられたという事だ」
「それはどういう意味ですか?」
「ここは未来の王妃、つまりはザシャ様の婚約者になった者に与えられる部屋だ。お前はただの候補者ではあるが、今回ザシャ様の強い希望により特別にこの部屋を使わせることに決まったんだ」
その話を聞いて私は足を止めてしまった。
「私、そんなにすごい部屋を使っても良いんでしょうか」
「本来ならあり得ないが、今回お前に協力を頼んだ事もあり、周りを欺く目的もある。そんな理由でここを使わせることになった、と言う事だ」
アイロスは所々わざと刺々しく言って来る。
「な、なるほど」
「ここまで優遇されているのは、お前が協力者だからだ。その事を忘れない様に、変な動きはするなよ」
「変な動きって、例えばどんな?」
「お前が持って来た荷物はここでは使うな。荷物は俺の方で預かっているから、帰る時になったら返す」
「えぇー」
「えー、じゃない!お前は王太子の婚約者候補に選ばれた一人だって事、絶対に忘れるなよ。服は全てこちらで用意する。もちろんあのドレスを着ることもここでは禁止だ!」
私はその言葉に苦笑した。
(私は別にあれを着たいわけじゃないんだけどな)
そんな話をしていると、一番奥にある部屋の前まで辿り着いた。
部屋の前に立つと大きな扉が視界に飛び込んで来た。
扉は白く、その周りには金で描かれた薔薇の模様が描かれている。
(扉もまたすごいな。さすが未来の王妃様の部屋ね。私本当にこんな部屋にいていいの? 不安になって来たわ)
私が扉の模様を眺めていると、隣にいたアイロスが扉を開いた。
扉が開かれると私の視界に部屋の中が映し出された。
「うわぁ、すごい! 広いし窓も沢山あるわ!」
私は部屋の中に入ると、興奮しながら部屋中を歩き回った。
「アイロスさん、奥に大きな浴場があるわ! わぁ、化粧室もすごく広いっ! すごく素敵ね」
「こんなに大きなクローゼット見るの初めてかもっ! ベッドもふかふかだし! ちょっと、アイロスさんっ! 外にお茶が出来るスペースがあるっ!」
「うるさい! お前、はしゃぎ過ぎなんだよ」
アイロスに睨まれ、私はびくっと体を震わせた。
それで漸く我に返った。
「ご、ごめんなさい。こんな豪邸見るのも初めてで。で、でも、ちょっと位はしゃいだっていいじゃないっ!」
「お前の場合はちょっとじゃないだろ? 今は俺しかいないから良いが、他の者の前ではそんな態度は見せるなよ」
アイロスは目を細め、冷ややかな視線を私に向けながら盛大にため息を漏らした。
「気をつけます。でもっ、今はアイロスさんしかいないし良いわよね?」
「…………」
アイロスは面倒臭そうな顔で、相変わらず私の事を睨んでいた。
「お前がここまで酷いとは思ってなかった。これは躾が必要だな」
「躾……?」
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