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私の名前はリーゼル・ペーラー、現在魔法学園に通う十九歳。
艶やかな薔薇の花びらのような真っ赤な髪に、少しつり目の瞳は紫色をしている。
公爵家の長女として生まれて、両親は私にはとてつもなく甘い。
そのため傲慢で我が儘な性格になってもおかしくないのだが、私はそうはならなかった。
理由は簡単だ。
私は前世の記憶を持ったまま転生したから。
そして、自分の名前を聞いたとき妙な既視感を覚えた。
自分が乙女ゲームに出てくる悪役令嬢であると気づくのには、そう時間はかからなかった。
不幸中の幸いというべきなのか、この事実に気づいたのはまだ六歳の幼い頃。
そして、私を断罪することになるメインヒーローである王太子とはまだ婚約はしていなかったのだけど、幼い私の力でそれを阻止することは残念ながらできなかった。
アンドレアス・ハイゼ・ローマン、それが彼の名前だ。
私と同年齢の十九歳で、くせのないさらさらの金色の髪は腰までのびて、後ろで緩く結んでいる。
瞳の色は王家の人間である証となる黄金色。
容姿端麗で、頭脳明晰、魔力量も高い上に剣術の素質も有り、剣聖というギフトまで所持している。
どれをとっても、メインヒーローに相応しい設定だ。
それに比べて、私の持つギフトは状態異常の無効化という、なんとも地味なスキルだった。
これは悪役だから簡単に舞台から離脱させないための処置に違いない。
(強い作為を感じるわ……。だけど、私は絶対に諦めない! 悪役になんて絶対にならないんだからっ!)
そう、幼いときに決意した私は、現在進行形である作戦を実行している。
仕方なく成り行きで婚約者にはなってしまったが『私はあなたには全く興味ないですよ』と思わせる作戦だ。
媚びを売って良好な関係を作ろうとも考えたが、ヒロインが現れたとき嫉妬していると勘違いされる可能性もあるかもしれない。
その点、最初から興味がないと思わせておけば、不測の事態が起こったとしても、私のことなど気にとめることもしないはずだ。
我ながら、この作戦は絶対上手くいくと期待していた。
設定的な話にはなってしまうが、婚約者がいる身でありながら、しかも立場ある人間だというのに、他の令嬢と恋に落ちて本気になるなんて到底いい人間とは思えない。
私がいた前世ではそれを浮気という。
とはいえ、ゲームをしているときはそんなふうに思ったことはない。
こんな考えを持つのは、不運にも自分が悪役ポジションに転生してしまったからなのだろう。
だからこそ、穏便にことを進めたい。
(悪役にだって幸せになる権利はあるはずよ……!)
しかし、現実は思ったよりも上手くはいかなかった。
艶やかな薔薇の花びらのような真っ赤な髪に、少しつり目の瞳は紫色をしている。
公爵家の長女として生まれて、両親は私にはとてつもなく甘い。
そのため傲慢で我が儘な性格になってもおかしくないのだが、私はそうはならなかった。
理由は簡単だ。
私は前世の記憶を持ったまま転生したから。
そして、自分の名前を聞いたとき妙な既視感を覚えた。
自分が乙女ゲームに出てくる悪役令嬢であると気づくのには、そう時間はかからなかった。
不幸中の幸いというべきなのか、この事実に気づいたのはまだ六歳の幼い頃。
そして、私を断罪することになるメインヒーローである王太子とはまだ婚約はしていなかったのだけど、幼い私の力でそれを阻止することは残念ながらできなかった。
アンドレアス・ハイゼ・ローマン、それが彼の名前だ。
私と同年齢の十九歳で、くせのないさらさらの金色の髪は腰までのびて、後ろで緩く結んでいる。
瞳の色は王家の人間である証となる黄金色。
容姿端麗で、頭脳明晰、魔力量も高い上に剣術の素質も有り、剣聖というギフトまで所持している。
どれをとっても、メインヒーローに相応しい設定だ。
それに比べて、私の持つギフトは状態異常の無効化という、なんとも地味なスキルだった。
これは悪役だから簡単に舞台から離脱させないための処置に違いない。
(強い作為を感じるわ……。だけど、私は絶対に諦めない! 悪役になんて絶対にならないんだからっ!)
そう、幼いときに決意した私は、現在進行形である作戦を実行している。
仕方なく成り行きで婚約者にはなってしまったが『私はあなたには全く興味ないですよ』と思わせる作戦だ。
媚びを売って良好な関係を作ろうとも考えたが、ヒロインが現れたとき嫉妬していると勘違いされる可能性もあるかもしれない。
その点、最初から興味がないと思わせておけば、不測の事態が起こったとしても、私のことなど気にとめることもしないはずだ。
我ながら、この作戦は絶対上手くいくと期待していた。
設定的な話にはなってしまうが、婚約者がいる身でありながら、しかも立場ある人間だというのに、他の令嬢と恋に落ちて本気になるなんて到底いい人間とは思えない。
私がいた前世ではそれを浮気という。
とはいえ、ゲームをしているときはそんなふうに思ったことはない。
こんな考えを持つのは、不運にも自分が悪役ポジションに転生してしまったからなのだろう。
だからこそ、穏便にことを進めたい。
(悪役にだって幸せになる権利はあるはずよ……!)
しかし、現実は思ったよりも上手くはいかなかった。
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