16 / 41
16.この世界のお風呂事情①
しおりを挟む
「……ん……っ」
意識が下りてくると、私はゆっくりと瞼を開いた。
私はふかふかのベッドの上で寝ていて、この感覚にどこか懐かしさを感じ、同時に悪い夢から覚めたのでは無いかという錯覚すら持った。
異世界に来てからは安宿にばかり滞在していたので、固いベッドでいつも寝ていた。
体に負担を感じることなく眠っていた所為か、目覚めはとてもすっきりしていた。
しかし、すぐにそれが夢では無いと気付く。
だだっ広い室内に視線を巡らせていると、ゆっくりと記憶が舞い戻って来て、ここは自分が元いた世界では無いことに気付かされた。
そして下半身からは違和感のような怠さを感じる。
そこで漸く昨晩ユーリと体を重ねたことを思い出した。
「……っ、夢じゃない、よね」
私は顔の火照りを感じながら独り言を呟くと、ゆっくりと体を起こした。
そして布団を捲り上げて、自分の胸元に視線を落とす。
すると無数に散らされた、彼に愛された証拠が残っていた。
(やっぱり、夢じゃない。私、昨日ユーリに抱かれたんだ)
枕元にはピンク色のナイトガウンが置かれていた。
私は手を伸ばしてそれを取ると、慌てるように袖を通した。
シルクのような手触りで、とても着心地が良い。
「セラ、起きたのか?」
「……っ!?」
不意に聞き慣れた声が響いてきて、私はビクッと体を震わせた。
ゆっくりと声のする方向へと視線を向ける。
声の主は当然ユーリであり、私は戸惑った顔で「お、おはよう」と挨拶をした。
上は白いシャツを着ただけのラフな格好なのに、それだけで絵になる姿でドキドキしてしまう。
彼は私のいる寝台へと近づいて来ると、端に腰掛けた。
そして私の手を取り、自然な流れで甲にキスを落としてくる。
「おはよう、セラ」
「……っ」
「朝から随分と顔が真っ赤だな。もしかして、昨日のことを思い出したのか?」
「ち、ちがっ……!」
言い当てられてしまい、私は慌てて否定をした。
金色の髪の彼は皇子のイメージそのものだったが、黒髪の姿はさらに色気が増したように見えて妙に緊張してしまう。
理由はそれだけではない。
昨日の出来事が頭に纏わり付いており、彼が見せた艶やかで悩ましげな表情を思い出してしまう。
(どうしよう。まともに顔が見れない……)
私が俯いていると「セラ」と名前を呼ばれて、仕方なく顔を上げた。
彼の両手が顔の方へと伸びてきて、頬を大きな掌に包まれてしまう。
そうなると強制的に視線が絡む。
「体は平気か?」
「う、うん……。少し重い感じはあるけど、多分大丈夫だと思う」
「そうか。でも今日はゆっくり過ごそうか。昨晩出来なかった話もしたいからな」
「話……?」
ここに来る前に、何か私に話したいことがあると言っていたのを思い出した。
「ああ。でもそれは後でな」
「え? ……んっ」
ユーリは目を細めると、ゆっくりと顔を近づけてくる。
そして私の唇と重なると、ちゅっと音を当てて啄むように吸い上げてきた。
本当にこの人は自然な流れでキスを仕掛けて来る。
まるで本物の恋人かのように……。
「まずはセラを味わわせて」
「……はぁっ、……っ」
私は流されるままにキスを受けているが、内心はかなり焦っていた。
(まさか……、朝からまたするの!?)
しかし私の考えは当たらず、暫くすると唇は離れていった。
その瞬間、ふわっと石けんのようないい匂いがした。
「あ……」
「どうした?」
私は思わず声を漏らしてしまうと、彼は不思議そうな顔で問いかけてきた。
「私も、体を拭いてきます」
昨日は散々乱されて、沢山汗を掻いてしまった。
好きな人と言うわけでは無いが、あんなことをしてしまったので少し気にしてしまう。
「一応セラの体は拭いておいたぞ」
「そうなんですか? ……ありがとうございます」
きっと私が眠っている間に拭いてくれたのだろう。
気に掛けてくれたことは有り難いけど、なんとなく恥ずかしい。
「一応奥に浴場があるから、すっきりしたいのなら入ってくるといい」
「浴場……? それって湯船があって、お湯の中に浸かったり出来る、あれのことですか?」
「ああ、恐らくそれで間違いない。シャワーという魔道具も付いているから、体も簡単に洗い流すことが出来るはずだ」
「シャワー!? ……なんで」
私は思わず声を上げてしまう。
この世界に魔道具と呼ばれるものが存在していることは知っている。
今の話を聞いた感じから、私のいた世界に存在するものと同じような気がする。
「セラはシャワーを使ったことがあるのか?」
「……はい、一応」
(この世界ではないけど……)
「そうなのか。まあ、一部の貴族の間では使われている物ではあるからな。浴場に興味がありそうだから連れて行ってやる」
「……え?」
「私の首にしっかりとしがみついているんだぞ」
「……わっ、ちょっと、待ってっ……!」
私が戸惑いがちに彼の首に腕を絡めると、突然体がふわっと浮き上がった。
「何、気にすることは無い。すぐそこだ」
「自分で歩けますっ!」
「遠慮するな。昨日は無理をさせてしまったから、これくらいさせてくれ」
「……っ」
この状況で断っても聞き入れてくれないことは分かっていたので、ここは諦めて運んで貰うことにした。
(でも、どうしてこの世界にシャワーがあるんだろう。明らかに違う文明を辿っているはずなのに……)
意識が下りてくると、私はゆっくりと瞼を開いた。
私はふかふかのベッドの上で寝ていて、この感覚にどこか懐かしさを感じ、同時に悪い夢から覚めたのでは無いかという錯覚すら持った。
異世界に来てからは安宿にばかり滞在していたので、固いベッドでいつも寝ていた。
体に負担を感じることなく眠っていた所為か、目覚めはとてもすっきりしていた。
しかし、すぐにそれが夢では無いと気付く。
だだっ広い室内に視線を巡らせていると、ゆっくりと記憶が舞い戻って来て、ここは自分が元いた世界では無いことに気付かされた。
そして下半身からは違和感のような怠さを感じる。
そこで漸く昨晩ユーリと体を重ねたことを思い出した。
「……っ、夢じゃない、よね」
私は顔の火照りを感じながら独り言を呟くと、ゆっくりと体を起こした。
そして布団を捲り上げて、自分の胸元に視線を落とす。
すると無数に散らされた、彼に愛された証拠が残っていた。
(やっぱり、夢じゃない。私、昨日ユーリに抱かれたんだ)
枕元にはピンク色のナイトガウンが置かれていた。
私は手を伸ばしてそれを取ると、慌てるように袖を通した。
シルクのような手触りで、とても着心地が良い。
「セラ、起きたのか?」
「……っ!?」
不意に聞き慣れた声が響いてきて、私はビクッと体を震わせた。
ゆっくりと声のする方向へと視線を向ける。
声の主は当然ユーリであり、私は戸惑った顔で「お、おはよう」と挨拶をした。
上は白いシャツを着ただけのラフな格好なのに、それだけで絵になる姿でドキドキしてしまう。
彼は私のいる寝台へと近づいて来ると、端に腰掛けた。
そして私の手を取り、自然な流れで甲にキスを落としてくる。
「おはよう、セラ」
「……っ」
「朝から随分と顔が真っ赤だな。もしかして、昨日のことを思い出したのか?」
「ち、ちがっ……!」
言い当てられてしまい、私は慌てて否定をした。
金色の髪の彼は皇子のイメージそのものだったが、黒髪の姿はさらに色気が増したように見えて妙に緊張してしまう。
理由はそれだけではない。
昨日の出来事が頭に纏わり付いており、彼が見せた艶やかで悩ましげな表情を思い出してしまう。
(どうしよう。まともに顔が見れない……)
私が俯いていると「セラ」と名前を呼ばれて、仕方なく顔を上げた。
彼の両手が顔の方へと伸びてきて、頬を大きな掌に包まれてしまう。
そうなると強制的に視線が絡む。
「体は平気か?」
「う、うん……。少し重い感じはあるけど、多分大丈夫だと思う」
「そうか。でも今日はゆっくり過ごそうか。昨晩出来なかった話もしたいからな」
「話……?」
ここに来る前に、何か私に話したいことがあると言っていたのを思い出した。
「ああ。でもそれは後でな」
「え? ……んっ」
ユーリは目を細めると、ゆっくりと顔を近づけてくる。
そして私の唇と重なると、ちゅっと音を当てて啄むように吸い上げてきた。
本当にこの人は自然な流れでキスを仕掛けて来る。
まるで本物の恋人かのように……。
「まずはセラを味わわせて」
「……はぁっ、……っ」
私は流されるままにキスを受けているが、内心はかなり焦っていた。
(まさか……、朝からまたするの!?)
しかし私の考えは当たらず、暫くすると唇は離れていった。
その瞬間、ふわっと石けんのようないい匂いがした。
「あ……」
「どうした?」
私は思わず声を漏らしてしまうと、彼は不思議そうな顔で問いかけてきた。
「私も、体を拭いてきます」
昨日は散々乱されて、沢山汗を掻いてしまった。
好きな人と言うわけでは無いが、あんなことをしてしまったので少し気にしてしまう。
「一応セラの体は拭いておいたぞ」
「そうなんですか? ……ありがとうございます」
きっと私が眠っている間に拭いてくれたのだろう。
気に掛けてくれたことは有り難いけど、なんとなく恥ずかしい。
「一応奥に浴場があるから、すっきりしたいのなら入ってくるといい」
「浴場……? それって湯船があって、お湯の中に浸かったり出来る、あれのことですか?」
「ああ、恐らくそれで間違いない。シャワーという魔道具も付いているから、体も簡単に洗い流すことが出来るはずだ」
「シャワー!? ……なんで」
私は思わず声を上げてしまう。
この世界に魔道具と呼ばれるものが存在していることは知っている。
今の話を聞いた感じから、私のいた世界に存在するものと同じような気がする。
「セラはシャワーを使ったことがあるのか?」
「……はい、一応」
(この世界ではないけど……)
「そうなのか。まあ、一部の貴族の間では使われている物ではあるからな。浴場に興味がありそうだから連れて行ってやる」
「……え?」
「私の首にしっかりとしがみついているんだぞ」
「……わっ、ちょっと、待ってっ……!」
私が戸惑いがちに彼の首に腕を絡めると、突然体がふわっと浮き上がった。
「何、気にすることは無い。すぐそこだ」
「自分で歩けますっ!」
「遠慮するな。昨日は無理をさせてしまったから、これくらいさせてくれ」
「……っ」
この状況で断っても聞き入れてくれないことは分かっていたので、ここは諦めて運んで貰うことにした。
(でも、どうしてこの世界にシャワーがあるんだろう。明らかに違う文明を辿っているはずなのに……)
1
お気に入りに追加
1,204
あなたにおすすめの小説
先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…
ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。
しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。
気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
ヤンデレ王太子と、それに振り回される優しい婚約者のお話
下菊みこと
恋愛
この世界の女神に悪役令嬢の役に選ばれたはずが、ヤンデレ王太子のせいで悪役令嬢になれなかった優しすぎる女の子のお話。あと女神様配役ミスってると思う。
転生者は乙女ゲームの世界に転生したと思ってるヒロインのみ。主人公の悪役令嬢は普通に現地主人公。
実は乙女ゲームの世界に似せて作られた別物の世界で、勘違いヒロインルシアをなんとか救おうとする主人公リュシーの奮闘を見て行ってください。
小説家になろう様でも投稿しています。
異世界に突然飛ばされたら、ヤンデレ王子に捕まり溺愛され過ぎて困っています【R18】
Rila
恋愛
(※注意:1話目からいきなりRに入ります。ご注意ください!)
■ストーリー■
椎名真白は最近何度も夢を見る。
夢の中で真白は『シロ』と呼ばれ『バル』と呼ぶ男に心も体も激しく求められていた。
それは夢のはずなのに…とてもリアルで、まるで実際に体験をしているかの様だった。
そしてバルは真白の事を『運命の番』だと言う。
そんなある日、真白は気が付くと夢の中の世界にいた。
そしてバルと出会う。
そこで出会ったバルはバルハルト・エグナー・エーレンベルクと名乗り、この国の第三王子だと言う。
夢の中だからと軽い気持ちでバルに抱かれてしまう。
しかしそれは夢ではなく現実であり、バル本人が真白をこの世界に呼び寄せた様だった。
優しいバルに惹かれていく真白だったが、バルは本性を少しずつ見せ始めていく…。
**こちらの作品は前作の改稿版になります**
旧タイトル『異世界に突然飛ばされ、助けてくれた王子に溺愛されすぎて困っています』
前作の内容が余りにも酷すぎたため全文書き直すことにしました。
ストーリーは内容を大幅に変えてあります。
前作は短編で4万文字程度の作品でしたが、改稿版は長編を予定しています。
同じタイトルにしようと思ったのですが少し内容が変わったので変更しました。
**補足説明**
R18作品になります。ご注意ください。
基本的に前戯~本番※(キスや軽いスキンシップにはいれていません)
毎回Rに入るのが遅くなってしまう為、今回は1話目からR話を入れてみました。
全体的にR多め、強引多めです。
前半甘々、後半シリアス要素などが入ってきます。
ヤンデレが苦手な方はご注意ください。(ヤンデレを発揮するのは後半になります)
恋愛小説大賞参加作品になります。
気付いたら異世界の娼館に売られていたけど、なんだかんだ美男子に救われる話。
sorato
恋愛
20歳女、東京出身。親も彼氏もおらずブラック企業で働く日和は、ある日突然異世界へと転移していた。それも、気を失っている内に。
気付いたときには既に娼館に売られた後。娼館の店主にお薦め客候補の姿絵を見せられるが、どの客も生理的に受け付けない男ばかり。そんな中、日和が目をつけたのは絶世の美男子であるヨルクという男で――……。
※男は太っていて脂ぎっている方がより素晴らしいとされ、女は細く印象の薄い方がより美しいとされる美醜逆転的な概念の異世界でのお話です。
!直接的な行為の描写はありませんが、そういうことを匂わす言葉はたくさん出てきますのでR15指定しています。苦手な方はバックしてください。
※小説家になろうさんでも投稿しています。
私が美女??美醜逆転世界に転移した私
鍋
恋愛
私の名前は如月美夕。
27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。
私は都内で独り暮らし。
風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。
転移した世界は美醜逆転??
こんな地味な丸顔が絶世の美女。
私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。
このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。
※ゆるゆるな設定です
※ご都合主義
※感想欄はほとんど公開してます。
黒豹の騎士団長様に美味しく食べられました
Adria
恋愛
子供の時に傷を負った獣人であるリグニスを助けてから、彼は事あるごとにクリスティアーナに会いにきた。だが、人の姿の時は会ってくれない。
そのことに不満を感じ、ついにクリスティアーナは別れを切り出した。すると、豹のままの彼に押し倒されて――
イラスト:日室千種様(@ChiguHimu)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる