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8.初めての二人での戦闘
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私達は森の出口に向かい歩き出していた。
先程までいた場所は日差しが当たっていて明るかったが、そこから離れると再び薄暗い景色に戻り、私は普段以上に警戒心を持ちながら進んでいた。
神経を尖らせているせいか感覚が過敏になり、冷たい風が頬を撫でるだけでビクッと体が震えてしまう。
「ひっ……!」
「どうした? 近くに魔物でもいるのか?」
「魔物の反応は近くにはないです」
「そうか。それならば、何故そんなにおどおどしているんだ?」
「……っ、そんなことはないです」
私は昔から暗いところや、怖いものは大の苦手だった。
傍にユーリがいてくれて、時折話を振ってくれるおかげで、私はその恐怖から気を逸らすことが出来ている。
隣に彼がいてくれて本当に良かったと心底感じていた。
だけど、一度恐怖心を植え付けられてしまうと、それを排除するのは中々難しいものでもある。
今は一刻も早くこの森から抜け出したい。
その気持ちの焦りが、私の足取りを速くさせていた。
(今思うと……、こんな場所、良く一人で来れたなって思う。来た時はもう少し明るかったからなのかも。でも、これで道に迷って夜になっていたら……。だめ! 余計なことはなるべく考えないようにしよう)
不安を感じる時こそ、余計なことをあれこれと考えてしまうものだ。
「もしかして怖いのか?」
「ち、違いますっ!」
ユーリは私の速度に合わせるように、今も隣に並んでいる。
私は自分でも分かるくらい早足で歩いているのだが、彼は焦ったような表情はひとつも見せていない。
恐らく私の歩幅に合わせるように、歩いてくれているのだろう。
「あまり無理して早く歩かない方が良いぞ。ここは森の中だし、平坦な場所ばかりではないからな」
「……だ、大丈夫です! お気遣い、ありがとうございます」
私達は大きな道からは外れてしまい、現在は舗装されていない場所を歩いている。
その為、歩きやすい道とは言いがたい。
更に薄暗さも相まって、足下が見えづらくなっているのも確かだ。
「セラ、止まれ」
「え、なんですか? 私なら大丈っ……っ!?」
私が答えようとすると、不意に手首をぐいっと引っ張られてバランスを崩しそうになったが、気付くと何か温かいものに受け止められていた。
目の前には大きな胸板があり、顔を上げると直ぐ傍にはユーリの綺麗な顔がある。
突然距離が近くなったことに戸惑い、顔の奥がじわじわと熱を持ち始める。
そして、慌てるように彼の胸を手で押し返して離れようとした。
しかし腰をしっかりと掴まれているのでびくともしない。
(な、なんなの!?)
「いきなり何をするんですかっ!」
「気付いているか? 囲まれている……」
「え……?」
ユーリの冷静な声にハッとして、私は慌てるように周囲に視線を巡らせた。
すると彼の言った通り、私達はウルフの群れに包囲されていた。
どうやら私は他のことに気を取られていたせいで、辺りの状況を把握するのを怠ってしまったようだ。
(うそ、でしょ……。こんなに沢山)
「案ずるな。あれは低級魔物だ。倒すのは難しくは無いが、問題は少し数が多いところだな。出来る限り私が注意を惹き付けるから、セラは後方の敵を頼めるか?」
「は、はいっ!」
彼はこんな状況でも冷静に判断を下していて、焦った素振りなど一切見せなかった。
戦闘に慣れているというのは、本当なのだろう。
それよりも気になるのは、鑑定スキルを持っていないはずなのに、どうして囲まれていると気付いたのだろうか。
(敵の気配を読み取った……とか? 今はそんなことを考えている場合じゃないよね)
私は肩に掛けているバックから、青色のポーションの瓶を三本取り出した。
一つは基礎値上昇の効果がついているものだ。
これを飲めば全てのステータスが今の1.5倍にまで上昇する。
そしてもう一つは被ダメージを半減させるもの。
ウルフは何度か討伐したことがあるので、一撃で倒せることは分かっているのだが、敵の数が圧倒的に多い。
だからこれは保険だ。
そして最後は経験値倍増。
危機的状況にあるが、上手くいけば一気にレベルが上がるチャンスだ。
鞄の中に手を伸ばした時、たまたま目に入ったので思わず取ってしまった。
先程は突然のことに戸惑ってしまったが、冷静を取り戻すと恐怖心は自然と薄れていた。
ユーリのステータスは先程確認したし、この程度ならきっと簡単に処理出来るはずだろう。
私は弓を取ると、矢の準備を始めた。
その間にユーリは大剣を両手で持ち、既に構えている様子だった。
なんていうか剣を持つ姿はすごく様になっていて、思わず見惚れてしまいそうになる。
(さすが勇者……。あんなに重そうな剣なのに、軽々と持っていてすごいな)
私がそんなことを考えていると、こちらに向かって敵が勢い良く飛びかかってきた。
ユーリが軽々と大剣を振り上げると、圧のようなもので敵はあっさりと吹き飛んでいく。
綺麗な金色の髪が揺れて、彼のしなやかな剣裁きに目が惹き付けられてしまう。
今までずっと一人だったから、こんな風に誰かの戦闘場面を見る機会なんてなかった。
だけどこんなにも目で追いかけてしまうのは、きっと彼だからだろう。
剣を振るった直後、青白い光が一瞬見えた。
(今のは……魔法?)
「セラ、来るぞ」
「あ……、はいっ!」
私は鑑定スキルで敵の位置を把握すると、そこに向けて矢を放った。
読み取れる鑑定スキルには範囲があり、それがそのまま射程距離になるようだ。
標準を合わせるように狙いを定めた相手は必中するという、なんとも便利なスキルだ。
しかしこれにも難点があって、複数の敵が一斉に襲ってきた場合、範囲攻撃が出来ない私は確実に詰む。
この場にユーリがいてくれて本当に助かった。
「お前って、案外やるんだな」
「……うん。単体ならね。ユーリの方こそ、すごいね」
周囲の敵を全て倒し終えると、彼は感心したように声を掛けてきた。
褒められることになんだか恥ずかしさを覚え、僅かに頬を赤く染めてしまう。
「これか? この剣、重そうに見えるだろう。だけど実際はそうでもないんだ。仮の武器として使っているものなんだが、素材は軽いもので出来ている。それに魔力を通して剣を振るっているから、あまり力は入れていない」
「すごい、そんなものがあるんだ」
彼は剣を軽く振るって見せてくれたが、確かに力を入れているようには見えなかった。
それにこんなに大きな大剣を持つにしては、彼の体は細過ぎるようにも思えた。
私は思わず感心したように呟いていた。
「お前はその武器に魔力を通していないのか?」
「ないよ。だって私、魔力無しだから」
「……そうなのか? 悪い……」
「ううん。気にしてないから大丈夫っ!」
きっと彼の国でも魔力によって地位が決められているのだろう。
今の反応から、何となく察しが付いた。
私は貴族に興味を持っていないし、魔力無しが悪いとも思っていない。
だから気にすることは無かった。
「そういえば、お前。なんで戦う前に薬を三本も飲んだんだ? あれって下級ポーションだよな」
「え……?」
「どこか怪我をしていたのか? そんな風には見えなかったが」
「え、えっと……それはっ……」
突然痛い所を指摘されて、私は戸惑い始めた。
あの時は焦っていたので何も考えずにいつも通りポーションを使ってしまった。
怪我をしてない人間が三本も纏めて飲むなんて、周りから見たらどう考えてもおかしく映るはずだ。
しかも戦闘前に。
疑問を持って指摘してくるのも当然だと言える。
「取り敢えず、見せてみろ」
「だ、大丈夫! さっきので治ったので」
「やはり怪我をしていたのか。それならば私が全て倒すべきだったな」
「ううん。本当に大丈夫だから、気にしないでっ!」
私が戸惑いながら答えていると、彼の手が私の顔の方に伸びてきて頬にそっと添えられる。
当然距離も近くなり、私は焦っていた。
「顔が真っ赤だ。それに目が泳いでいるぞ」
「……っ、これはっ!」
「素直に白状しとけよ。低級薬よりもっと良い薬を持っている。私の前で我慢する必要なんて無いんだぞ? 今は仲間だろう」
「……本当に、何でも無いんです」
彼は本気で心配そうな顔で私の瞳を覗き込んでいた。
そんな風に真っ直ぐに見つめられると、どうして良いのか分からなくなる。
それに私の鼓動は煩いくらいにバクバクと鳴ったままだ。
「鼓動も随分と早いようだな、頬も熱い」
「……っ」
(それは全部ユーリのせいだからでっ……。お願い、もう離れて)
私が固まっていると、彼の顔がゆっくりと迫ってくる。
またキスをされるのでは無いかと思い、私は咄嗟に口を開いた。
「あ、あのっ!」
「どうした?」
「倒した魔物はどうするんですか?」
「ああ、私は必要ないが。セラは必要か?」
「はい、折角の素材なので。売ればお金になりますしっ!」
「分かった。集めてくる。セラはそこで少し休んでいて」
咄嗟に話題を変えたことで、彼は私の頬から掌を剥がし離れていった。
「でもっ、集めるって。結構な数ですよね?」
「アイテムボックスがあるからな。そこに入れていけばいい」
「じゃあ、お願いします……」
ユーリはそう言うと、倒した魔物を集めに行った。
彼の姿が遠ざかっていくと、私は「はぁ」と深くため息を漏らした。
(危なかった。またキスされるかと思った……)
今でも彼に触れられた感覚が頬に残っていて、ドキドキしたままだった。
ユーリは平気で触れてくるし、私は男に対しての耐性を待っていないので直ぐに反応してしまう。
そんなことを考えながら、自分のステータス画面を確認してみることにした。
先程の戦闘で、レベルは10から15にまで上がっていた。
私はほとんど見ていただけだというのに、パーティーを組んでいたからなのだろうか。
(あれ……? 絆レベル? こんなものあったっけ?)
私は見慣れない表示を見つけて不思議そうに眺めていた。
そこには絆レベル3と書かれてあるが、これを見るのは初めてだ。
なんだろうと思い、その上に手を触れてみると説明の画面が現れた。
『-絆システム-
特定の相手とパーティーを組み、特殊なアイテムを使用するとレベルが上がる。
1上がる毎に本能が目覚め、体に変化が起こる。
レベルが上がる毎にその変化は強くなる。
最大レベルは5。
※注意事項※
5まで到達すると禁断症状が出始めます。
特定の相手と体を結ぶことで症状は改善します。』
「……なに、これ」
私はぽかんとした顔で、その画面を眺めていた。
先程までいた場所は日差しが当たっていて明るかったが、そこから離れると再び薄暗い景色に戻り、私は普段以上に警戒心を持ちながら進んでいた。
神経を尖らせているせいか感覚が過敏になり、冷たい風が頬を撫でるだけでビクッと体が震えてしまう。
「ひっ……!」
「どうした? 近くに魔物でもいるのか?」
「魔物の反応は近くにはないです」
「そうか。それならば、何故そんなにおどおどしているんだ?」
「……っ、そんなことはないです」
私は昔から暗いところや、怖いものは大の苦手だった。
傍にユーリがいてくれて、時折話を振ってくれるおかげで、私はその恐怖から気を逸らすことが出来ている。
隣に彼がいてくれて本当に良かったと心底感じていた。
だけど、一度恐怖心を植え付けられてしまうと、それを排除するのは中々難しいものでもある。
今は一刻も早くこの森から抜け出したい。
その気持ちの焦りが、私の足取りを速くさせていた。
(今思うと……、こんな場所、良く一人で来れたなって思う。来た時はもう少し明るかったからなのかも。でも、これで道に迷って夜になっていたら……。だめ! 余計なことはなるべく考えないようにしよう)
不安を感じる時こそ、余計なことをあれこれと考えてしまうものだ。
「もしかして怖いのか?」
「ち、違いますっ!」
ユーリは私の速度に合わせるように、今も隣に並んでいる。
私は自分でも分かるくらい早足で歩いているのだが、彼は焦ったような表情はひとつも見せていない。
恐らく私の歩幅に合わせるように、歩いてくれているのだろう。
「あまり無理して早く歩かない方が良いぞ。ここは森の中だし、平坦な場所ばかりではないからな」
「……だ、大丈夫です! お気遣い、ありがとうございます」
私達は大きな道からは外れてしまい、現在は舗装されていない場所を歩いている。
その為、歩きやすい道とは言いがたい。
更に薄暗さも相まって、足下が見えづらくなっているのも確かだ。
「セラ、止まれ」
「え、なんですか? 私なら大丈っ……っ!?」
私が答えようとすると、不意に手首をぐいっと引っ張られてバランスを崩しそうになったが、気付くと何か温かいものに受け止められていた。
目の前には大きな胸板があり、顔を上げると直ぐ傍にはユーリの綺麗な顔がある。
突然距離が近くなったことに戸惑い、顔の奥がじわじわと熱を持ち始める。
そして、慌てるように彼の胸を手で押し返して離れようとした。
しかし腰をしっかりと掴まれているのでびくともしない。
(な、なんなの!?)
「いきなり何をするんですかっ!」
「気付いているか? 囲まれている……」
「え……?」
ユーリの冷静な声にハッとして、私は慌てるように周囲に視線を巡らせた。
すると彼の言った通り、私達はウルフの群れに包囲されていた。
どうやら私は他のことに気を取られていたせいで、辺りの状況を把握するのを怠ってしまったようだ。
(うそ、でしょ……。こんなに沢山)
「案ずるな。あれは低級魔物だ。倒すのは難しくは無いが、問題は少し数が多いところだな。出来る限り私が注意を惹き付けるから、セラは後方の敵を頼めるか?」
「は、はいっ!」
彼はこんな状況でも冷静に判断を下していて、焦った素振りなど一切見せなかった。
戦闘に慣れているというのは、本当なのだろう。
それよりも気になるのは、鑑定スキルを持っていないはずなのに、どうして囲まれていると気付いたのだろうか。
(敵の気配を読み取った……とか? 今はそんなことを考えている場合じゃないよね)
私は肩に掛けているバックから、青色のポーションの瓶を三本取り出した。
一つは基礎値上昇の効果がついているものだ。
これを飲めば全てのステータスが今の1.5倍にまで上昇する。
そしてもう一つは被ダメージを半減させるもの。
ウルフは何度か討伐したことがあるので、一撃で倒せることは分かっているのだが、敵の数が圧倒的に多い。
だからこれは保険だ。
そして最後は経験値倍増。
危機的状況にあるが、上手くいけば一気にレベルが上がるチャンスだ。
鞄の中に手を伸ばした時、たまたま目に入ったので思わず取ってしまった。
先程は突然のことに戸惑ってしまったが、冷静を取り戻すと恐怖心は自然と薄れていた。
ユーリのステータスは先程確認したし、この程度ならきっと簡単に処理出来るはずだろう。
私は弓を取ると、矢の準備を始めた。
その間にユーリは大剣を両手で持ち、既に構えている様子だった。
なんていうか剣を持つ姿はすごく様になっていて、思わず見惚れてしまいそうになる。
(さすが勇者……。あんなに重そうな剣なのに、軽々と持っていてすごいな)
私がそんなことを考えていると、こちらに向かって敵が勢い良く飛びかかってきた。
ユーリが軽々と大剣を振り上げると、圧のようなもので敵はあっさりと吹き飛んでいく。
綺麗な金色の髪が揺れて、彼のしなやかな剣裁きに目が惹き付けられてしまう。
今までずっと一人だったから、こんな風に誰かの戦闘場面を見る機会なんてなかった。
だけどこんなにも目で追いかけてしまうのは、きっと彼だからだろう。
剣を振るった直後、青白い光が一瞬見えた。
(今のは……魔法?)
「セラ、来るぞ」
「あ……、はいっ!」
私は鑑定スキルで敵の位置を把握すると、そこに向けて矢を放った。
読み取れる鑑定スキルには範囲があり、それがそのまま射程距離になるようだ。
標準を合わせるように狙いを定めた相手は必中するという、なんとも便利なスキルだ。
しかしこれにも難点があって、複数の敵が一斉に襲ってきた場合、範囲攻撃が出来ない私は確実に詰む。
この場にユーリがいてくれて本当に助かった。
「お前って、案外やるんだな」
「……うん。単体ならね。ユーリの方こそ、すごいね」
周囲の敵を全て倒し終えると、彼は感心したように声を掛けてきた。
褒められることになんだか恥ずかしさを覚え、僅かに頬を赤く染めてしまう。
「これか? この剣、重そうに見えるだろう。だけど実際はそうでもないんだ。仮の武器として使っているものなんだが、素材は軽いもので出来ている。それに魔力を通して剣を振るっているから、あまり力は入れていない」
「すごい、そんなものがあるんだ」
彼は剣を軽く振るって見せてくれたが、確かに力を入れているようには見えなかった。
それにこんなに大きな大剣を持つにしては、彼の体は細過ぎるようにも思えた。
私は思わず感心したように呟いていた。
「お前はその武器に魔力を通していないのか?」
「ないよ。だって私、魔力無しだから」
「……そうなのか? 悪い……」
「ううん。気にしてないから大丈夫っ!」
きっと彼の国でも魔力によって地位が決められているのだろう。
今の反応から、何となく察しが付いた。
私は貴族に興味を持っていないし、魔力無しが悪いとも思っていない。
だから気にすることは無かった。
「そういえば、お前。なんで戦う前に薬を三本も飲んだんだ? あれって下級ポーションだよな」
「え……?」
「どこか怪我をしていたのか? そんな風には見えなかったが」
「え、えっと……それはっ……」
突然痛い所を指摘されて、私は戸惑い始めた。
あの時は焦っていたので何も考えずにいつも通りポーションを使ってしまった。
怪我をしてない人間が三本も纏めて飲むなんて、周りから見たらどう考えてもおかしく映るはずだ。
しかも戦闘前に。
疑問を持って指摘してくるのも当然だと言える。
「取り敢えず、見せてみろ」
「だ、大丈夫! さっきので治ったので」
「やはり怪我をしていたのか。それならば私が全て倒すべきだったな」
「ううん。本当に大丈夫だから、気にしないでっ!」
私が戸惑いながら答えていると、彼の手が私の顔の方に伸びてきて頬にそっと添えられる。
当然距離も近くなり、私は焦っていた。
「顔が真っ赤だ。それに目が泳いでいるぞ」
「……っ、これはっ!」
「素直に白状しとけよ。低級薬よりもっと良い薬を持っている。私の前で我慢する必要なんて無いんだぞ? 今は仲間だろう」
「……本当に、何でも無いんです」
彼は本気で心配そうな顔で私の瞳を覗き込んでいた。
そんな風に真っ直ぐに見つめられると、どうして良いのか分からなくなる。
それに私の鼓動は煩いくらいにバクバクと鳴ったままだ。
「鼓動も随分と早いようだな、頬も熱い」
「……っ」
(それは全部ユーリのせいだからでっ……。お願い、もう離れて)
私が固まっていると、彼の顔がゆっくりと迫ってくる。
またキスをされるのでは無いかと思い、私は咄嗟に口を開いた。
「あ、あのっ!」
「どうした?」
「倒した魔物はどうするんですか?」
「ああ、私は必要ないが。セラは必要か?」
「はい、折角の素材なので。売ればお金になりますしっ!」
「分かった。集めてくる。セラはそこで少し休んでいて」
咄嗟に話題を変えたことで、彼は私の頬から掌を剥がし離れていった。
「でもっ、集めるって。結構な数ですよね?」
「アイテムボックスがあるからな。そこに入れていけばいい」
「じゃあ、お願いします……」
ユーリはそう言うと、倒した魔物を集めに行った。
彼の姿が遠ざかっていくと、私は「はぁ」と深くため息を漏らした。
(危なかった。またキスされるかと思った……)
今でも彼に触れられた感覚が頬に残っていて、ドキドキしたままだった。
ユーリは平気で触れてくるし、私は男に対しての耐性を待っていないので直ぐに反応してしまう。
そんなことを考えながら、自分のステータス画面を確認してみることにした。
先程の戦闘で、レベルは10から15にまで上がっていた。
私はほとんど見ていただけだというのに、パーティーを組んでいたからなのだろうか。
(あれ……? 絆レベル? こんなものあったっけ?)
私は見慣れない表示を見つけて不思議そうに眺めていた。
そこには絆レベル3と書かれてあるが、これを見るのは初めてだ。
なんだろうと思い、その上に手を触れてみると説明の画面が現れた。
『-絆システム-
特定の相手とパーティーを組み、特殊なアイテムを使用するとレベルが上がる。
1上がる毎に本能が目覚め、体に変化が起こる。
レベルが上がる毎にその変化は強くなる。
最大レベルは5。
※注意事項※
5まで到達すると禁断症状が出始めます。
特定の相手と体を結ぶことで症状は改善します。』
「……なに、これ」
私はぽかんとした顔で、その画面を眺めていた。
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