75 / 87
75.双子の姉妹②
しおりを挟む
「まず、どうしてサリーがあんな大それたことをしてしまったのかを話す前に、あの子の生い立ちを話しておきますね」
マリーは一度深呼吸をすると、遠くを眺めるように、昔を思い出すように話し始めた。
「私達が幼かった時に街が戦乱に巻き込まれて、家族の中で生き残ったのは私とサリーの二人だけでした。生きていくために私達は必死に狩りを覚えて、冒険者として活動したり、時には傭兵として戦ったりしながら、なんとか生計を立ててました」
「……そう、だったんだ」
二人にそんな辛い過去があったなんて、思いも寄らなかった。
私はどう反応していいのか戸惑い、相槌を打つことしか出来ない。
「はい。特にサリーは強くなることに憧れを持っているところもあって、私とは違って戦闘に対して恐怖心を一切持っていなかったことで、どんどん強くなっていきました。それでサリーの噂がアレクシス様の耳にも届き、その力を買われて彼の護衛兼従者として仕えることになったんです」
「それって、いくつくらいの時だったの?」
「たしか、十歳くらいの時だったと思います」
「十歳なんて、まだ子供なのに……。その年齢で認められるなんて、二人共本当に強かったのね」
私はメイドとしてお世話をしてくれるサリーの姿しか見たことがない。
その為、上手く想像することが出来なかった。
「すごいのはサリーだけです。私はあまり戦術には長けていなかったので、使用人見習いとしてアレクシス様の傍で働かせて貰うことになりました」
マリーは困ったような表情を浮かべ続けた。
私からしてみれば、幼くして王子直属の使用人に抜擢されたことはすごいことだと思えてしまう。
「それから五年間は穏やかに過ごしてました。サリーは自身の腕を磨き、私は平穏で安定した生活が出来て本当に幸せだった。あの事件が起こるまでは……」
「あの事件……?」
マリーの表情が曇り始め、きっと良くないことが起こったのだろうと言うことだけは聞かなくても想像出来た。
「アレクシス様が騎士団に入られ、サリーもそれに同行することになりました。きっとサリーは自分の力を過信しすぎていたんでしょうね。恐怖心を持たないのがあの子の強みでもあったけど、同時にそれが仇となり瀕死な傷を負ってしまったんです」
「……っ」
「アレクシス様の傍にいることで、きっとサリーは自分も同じ部類の人間なのだと勘違いしてしまったんだと思います。あの方は生まれながらに強大な魔力を持っていた、選ばれた人間。だけどあの子は違う。サリーは努力を積み重ねて強くなっただけ。最初から、対等な立場になんてなれるはずがなかったんですよ」
「……っ、でも、助かったのよね?」
私が戸惑った様子で答えると、マリーは表情を曇らせたままで何の返答もしてこなかった。
「何か、あったの?」
「サリーはいつ死んでもおかしくないような状況でした。その時、アレクシス様がある提案をしてきたんです」
その言葉に、何か嫌な予感がした。
「アレクシス様が強大な魔力を持っていることは、既にリリア様もご存知ですよね?」
「噂くらいなら……」
当然だが、私は実際に彼が戦っているところは見たことがない。
皆が口々にアレクシスの実力を評価しているので、そうなのだろうと思っていただけだ。
「あの方は王族なので、禁書庫にも自由に立ち入ることが出来ます。そこには禁忌魔法について書かれているものも多く保管されているようなんです。アレクシス様は訓練の合間に、良くここに篭もられていました」
「禁忌魔法って私は良くは知らないけど、危険なものなの?」
私の質問にマリーは一瞬戸惑った顔を見せたが「恐らくは」と続けた。
「今回サリーがリリア様と入れ替わったのも、この魔法を用いたのだと思います」
「それって誰にでも使うことが出来るの?」
「いえ、使えません。この魔法書は厳重に保管されているので、一部の者以外閲覧は出来ないはずです」
「でもサリーはそれを知っていたのよね?」
「どうしてサリーがその方法を知っていたのかは、私には分かりません。ごめんなさい」
マリーは申し訳なさそうに謝ってきたので、私は慌てるように「謝らないで」と答えた。
「それで、サリーはどうして瀕死の状態から助かったの?」
「それは禁忌魔法を使ったからです。アレクシス様は恐らく、一度試してみたかったんだと思います。その機会にちょうど良いと考えられて、私に提案してきたんだと……」
「試すって……。それって危険じゃ無いの?」
「ある程度の魔力を持った人間が行えば可能だと思います。だけど、問題はその後です。二人の力が上手く嚙み合わないと失敗してしまう。私達は双子です。全くの他人同士が行うよりは魂の波長が合いやすくて、成功率はかなり高かったんだと思います」
彼女の話を聞いて、背筋にぞくりと鳥肌が立った。
(失敗していたら、どうなっていたんだろう。それに……)
「魂の波長って、まさか……」
「はい……。リリア様は勘が宜しいですね。アレクシス様がリリア様に行った魔法と同じものです。魂を繋げて、命を結ぶもの。片方の心臓が止まれば、もう一方も同様なことが起こる」
(え……?)
今、彼女の口からとんでもない言葉が聞こえたような気がした。
一瞬、私の思考が止まった。
「昔は戦闘の際、実力者を死なせないためにこの方法を使っていたそうです。ですが結局は命を繋ぎ止めても、弱い者を殺せば実力者も死んでしまう。デメリットの方が大きすぎる。それで危険だと判断され禁忌として人々の記憶から消されていったんだと思います」
「それって、もしサリーになにかあったら、マリーもってこと……?」
「そうなりますね。でも、私はそれでもいいんです。今までサリーには助けて貰うことも多かったし。サリーがいなければ、今の私はもう存在していなかったのかもしれないから」
「そんなことっ……」
(うそ、でしょ……? 今の話が本当だとすれば、私はアレクシス様と魂を結んだと言うことになるのよね? そして今はサリーの体に入っているのだから、マリーと命が繋がってるってこと?)
私の頭の中は混乱していた。
そんな嘘みたいな話、簡単には信じられないけど、マリーが嘘を言っているようには到底思えない。
それにアレクシス程の魔力を持つ人間ならば、使うことだって可能なのかも知れない。
「あ、リリア様。そんなに怖がらないでください。リリア様はアレクシス様と契約したので、簡単に命を落とすようなことは無いと思います」
マリーは混乱している私に気を遣ってくれているのか、そんな言葉をかけてくれたが、安心なんて到底出来なかった。
私の知らない所でこんなことが起こっていたなんて信じられないし、勝手にこんな体にしたアレクシスのことが許せない。
彼は私の気持ちを無視して勝手に行った。
あの時のアレクシスの言葉を思い出す。
彼は一切罪悪感など抱いている様には見えなかった。
ただ満足するように、うっとりとした顔を私に向けていた。
(酷い……。こんなのって……)
その後もマリーは話しを続けた。
サリーはマリーと魂の契約を結ぶことで、命を繋げることに成功した。
しかし、その契約はお互いの力を半分に分けることでもある。
サリーの力は半減してしまい、最前線で戦うことが出来なくなってしまったのだ。
その後、サリーは戦場からは離れ、王都にあるアレクシスの屋敷で働くことになった。
主に私が食していた野菜や果物の手入れや、室内の掃除、そして警備などを行っていたようだ。
たまにマリーと入れ替わって、彼女としてなりきっていることもあったそうだ。
マリーの話では、サリーは自分の気持ちを隠している様子だったが、アレクシスのことを慕っていたと話していた。
その思いが成就しないことは、彼女自身も分かっていたのだろう。
だけど、私が彼の屋敷に住まうようになって、アレクシスと近くで接する姿を見たことで、彼女に嫉妬心を芽生えさせる結果になってしまったのでは無いかとマリーは思っている様だ。
そしてマリーに対しても、劣等感のようなものを抱いていたのでは無いかとも話していた。
怪我をするまでは、サリーが頼られる側だった。
それが、あの日を境にして立場が逆転してしまったからだ。
今ではマリーはアレクシスの側近になり、サリーは屋敷で働くただのメイド。
アレクシスの傍にいることも、信頼も、全てマリーに奪われてしまった。
あの一件でサリーの命を救えたのに、心は離れていってしまったと彼女は悲しそうな顔で嘆いていた。
その話を聞いて、私まで複雑な気持ちになってしまった。
たしかにサリーがしたことは自分勝手で許せない事だ。
だけど同情心も芽生えて来てしまう。
私は甘いのかもしれないが、短い間だったがサリーの傍にいたことで情が生まれてしまったのだろう。
(私の体を奪って、その後お父様に罪を着せたのって……。もしかして、この体を守るため?)
ふとそんな事が頭を過った。
もしサリーが捕まり処刑でもされてしまえば、マリーの命も同時に消えていたかもしれない。
本当にマリーの事を恨んでいるのであれば、手間までかけてこんなことはしないはずだ。
私がいなくなれば同時に口封じも出来るのだから。
勝手な憶測だがそんなことを考えると、少しだけ心が救われた気がした。
マリーは一度深呼吸をすると、遠くを眺めるように、昔を思い出すように話し始めた。
「私達が幼かった時に街が戦乱に巻き込まれて、家族の中で生き残ったのは私とサリーの二人だけでした。生きていくために私達は必死に狩りを覚えて、冒険者として活動したり、時には傭兵として戦ったりしながら、なんとか生計を立ててました」
「……そう、だったんだ」
二人にそんな辛い過去があったなんて、思いも寄らなかった。
私はどう反応していいのか戸惑い、相槌を打つことしか出来ない。
「はい。特にサリーは強くなることに憧れを持っているところもあって、私とは違って戦闘に対して恐怖心を一切持っていなかったことで、どんどん強くなっていきました。それでサリーの噂がアレクシス様の耳にも届き、その力を買われて彼の護衛兼従者として仕えることになったんです」
「それって、いくつくらいの時だったの?」
「たしか、十歳くらいの時だったと思います」
「十歳なんて、まだ子供なのに……。その年齢で認められるなんて、二人共本当に強かったのね」
私はメイドとしてお世話をしてくれるサリーの姿しか見たことがない。
その為、上手く想像することが出来なかった。
「すごいのはサリーだけです。私はあまり戦術には長けていなかったので、使用人見習いとしてアレクシス様の傍で働かせて貰うことになりました」
マリーは困ったような表情を浮かべ続けた。
私からしてみれば、幼くして王子直属の使用人に抜擢されたことはすごいことだと思えてしまう。
「それから五年間は穏やかに過ごしてました。サリーは自身の腕を磨き、私は平穏で安定した生活が出来て本当に幸せだった。あの事件が起こるまでは……」
「あの事件……?」
マリーの表情が曇り始め、きっと良くないことが起こったのだろうと言うことだけは聞かなくても想像出来た。
「アレクシス様が騎士団に入られ、サリーもそれに同行することになりました。きっとサリーは自分の力を過信しすぎていたんでしょうね。恐怖心を持たないのがあの子の強みでもあったけど、同時にそれが仇となり瀕死な傷を負ってしまったんです」
「……っ」
「アレクシス様の傍にいることで、きっとサリーは自分も同じ部類の人間なのだと勘違いしてしまったんだと思います。あの方は生まれながらに強大な魔力を持っていた、選ばれた人間。だけどあの子は違う。サリーは努力を積み重ねて強くなっただけ。最初から、対等な立場になんてなれるはずがなかったんですよ」
「……っ、でも、助かったのよね?」
私が戸惑った様子で答えると、マリーは表情を曇らせたままで何の返答もしてこなかった。
「何か、あったの?」
「サリーはいつ死んでもおかしくないような状況でした。その時、アレクシス様がある提案をしてきたんです」
その言葉に、何か嫌な予感がした。
「アレクシス様が強大な魔力を持っていることは、既にリリア様もご存知ですよね?」
「噂くらいなら……」
当然だが、私は実際に彼が戦っているところは見たことがない。
皆が口々にアレクシスの実力を評価しているので、そうなのだろうと思っていただけだ。
「あの方は王族なので、禁書庫にも自由に立ち入ることが出来ます。そこには禁忌魔法について書かれているものも多く保管されているようなんです。アレクシス様は訓練の合間に、良くここに篭もられていました」
「禁忌魔法って私は良くは知らないけど、危険なものなの?」
私の質問にマリーは一瞬戸惑った顔を見せたが「恐らくは」と続けた。
「今回サリーがリリア様と入れ替わったのも、この魔法を用いたのだと思います」
「それって誰にでも使うことが出来るの?」
「いえ、使えません。この魔法書は厳重に保管されているので、一部の者以外閲覧は出来ないはずです」
「でもサリーはそれを知っていたのよね?」
「どうしてサリーがその方法を知っていたのかは、私には分かりません。ごめんなさい」
マリーは申し訳なさそうに謝ってきたので、私は慌てるように「謝らないで」と答えた。
「それで、サリーはどうして瀕死の状態から助かったの?」
「それは禁忌魔法を使ったからです。アレクシス様は恐らく、一度試してみたかったんだと思います。その機会にちょうど良いと考えられて、私に提案してきたんだと……」
「試すって……。それって危険じゃ無いの?」
「ある程度の魔力を持った人間が行えば可能だと思います。だけど、問題はその後です。二人の力が上手く嚙み合わないと失敗してしまう。私達は双子です。全くの他人同士が行うよりは魂の波長が合いやすくて、成功率はかなり高かったんだと思います」
彼女の話を聞いて、背筋にぞくりと鳥肌が立った。
(失敗していたら、どうなっていたんだろう。それに……)
「魂の波長って、まさか……」
「はい……。リリア様は勘が宜しいですね。アレクシス様がリリア様に行った魔法と同じものです。魂を繋げて、命を結ぶもの。片方の心臓が止まれば、もう一方も同様なことが起こる」
(え……?)
今、彼女の口からとんでもない言葉が聞こえたような気がした。
一瞬、私の思考が止まった。
「昔は戦闘の際、実力者を死なせないためにこの方法を使っていたそうです。ですが結局は命を繋ぎ止めても、弱い者を殺せば実力者も死んでしまう。デメリットの方が大きすぎる。それで危険だと判断され禁忌として人々の記憶から消されていったんだと思います」
「それって、もしサリーになにかあったら、マリーもってこと……?」
「そうなりますね。でも、私はそれでもいいんです。今までサリーには助けて貰うことも多かったし。サリーがいなければ、今の私はもう存在していなかったのかもしれないから」
「そんなことっ……」
(うそ、でしょ……? 今の話が本当だとすれば、私はアレクシス様と魂を結んだと言うことになるのよね? そして今はサリーの体に入っているのだから、マリーと命が繋がってるってこと?)
私の頭の中は混乱していた。
そんな嘘みたいな話、簡単には信じられないけど、マリーが嘘を言っているようには到底思えない。
それにアレクシス程の魔力を持つ人間ならば、使うことだって可能なのかも知れない。
「あ、リリア様。そんなに怖がらないでください。リリア様はアレクシス様と契約したので、簡単に命を落とすようなことは無いと思います」
マリーは混乱している私に気を遣ってくれているのか、そんな言葉をかけてくれたが、安心なんて到底出来なかった。
私の知らない所でこんなことが起こっていたなんて信じられないし、勝手にこんな体にしたアレクシスのことが許せない。
彼は私の気持ちを無視して勝手に行った。
あの時のアレクシスの言葉を思い出す。
彼は一切罪悪感など抱いている様には見えなかった。
ただ満足するように、うっとりとした顔を私に向けていた。
(酷い……。こんなのって……)
その後もマリーは話しを続けた。
サリーはマリーと魂の契約を結ぶことで、命を繋げることに成功した。
しかし、その契約はお互いの力を半分に分けることでもある。
サリーの力は半減してしまい、最前線で戦うことが出来なくなってしまったのだ。
その後、サリーは戦場からは離れ、王都にあるアレクシスの屋敷で働くことになった。
主に私が食していた野菜や果物の手入れや、室内の掃除、そして警備などを行っていたようだ。
たまにマリーと入れ替わって、彼女としてなりきっていることもあったそうだ。
マリーの話では、サリーは自分の気持ちを隠している様子だったが、アレクシスのことを慕っていたと話していた。
その思いが成就しないことは、彼女自身も分かっていたのだろう。
だけど、私が彼の屋敷に住まうようになって、アレクシスと近くで接する姿を見たことで、彼女に嫉妬心を芽生えさせる結果になってしまったのでは無いかとマリーは思っている様だ。
そしてマリーに対しても、劣等感のようなものを抱いていたのでは無いかとも話していた。
怪我をするまでは、サリーが頼られる側だった。
それが、あの日を境にして立場が逆転してしまったからだ。
今ではマリーはアレクシスの側近になり、サリーは屋敷で働くただのメイド。
アレクシスの傍にいることも、信頼も、全てマリーに奪われてしまった。
あの一件でサリーの命を救えたのに、心は離れていってしまったと彼女は悲しそうな顔で嘆いていた。
その話を聞いて、私まで複雑な気持ちになってしまった。
たしかにサリーがしたことは自分勝手で許せない事だ。
だけど同情心も芽生えて来てしまう。
私は甘いのかもしれないが、短い間だったがサリーの傍にいたことで情が生まれてしまったのだろう。
(私の体を奪って、その後お父様に罪を着せたのって……。もしかして、この体を守るため?)
ふとそんな事が頭を過った。
もしサリーが捕まり処刑でもされてしまえば、マリーの命も同時に消えていたかもしれない。
本当にマリーの事を恨んでいるのであれば、手間までかけてこんなことはしないはずだ。
私がいなくなれば同時に口封じも出来るのだから。
勝手な憶測だがそんなことを考えると、少しだけ心が救われた気がした。
10
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
家出を決行した結果
棗
恋愛
フィービーの婚約者ミゲルには大切な幼馴染がいる。病弱な幼馴染をいつも優先するミゲルや母が亡くなって以降溝が出来てしまった父と兄との関係にフィービーは疲れていた。
デートの約束をしてもいつも直前になって幼馴染を理由にキャンセルされ、幼馴染にしか感情を見せないミゲルを、フィービーを見ようとしない父や兄を捨てる決心をしたフィービーは侍女や執事の手を借りて家出を決行した。
自分を誰も知らない遠い場所へ行ったフィービーは、新しい人生の幕開けに期待に胸を躍らせた。
※なろうさんにも公開しています。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる