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30.変化②
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お茶を啜っていると、扉の方からトントンという音が響いた。
私は扉の方へと視線を向ける。
現在アレクシスとマリーは、遠征に出ていて屋敷を不在にしている。
そしてこの部屋にいるのは私とサリーの二人だけ。
――となると、今扉を叩いた人間は一体誰なのだろう。
初日に見かけた執事なのか、はたまた別の人間なのか。
私は扉を叩いた人物に興味を惹かれていた。
「リリア様はここでお待ちください」
「分かったわ」
サリーはそう告げると扉の方へと移動し、そのまま工房から出て行った。
一人きりになった部屋の静寂を感じながら、再び扉の方に視線を戻し、じっと眺めていた。
(一体誰が来たんだろう)
「…………」
(だめだ、……気になる!)
胸の奥がムズムズとする感覚にじっとしていられなくなり、ソファーから立ち上がった。
そして静かに扉の方へと向かった。
(とめられた訳ではないし、大丈夫よね)
そう自分に言い訳をして、扉に耳を近づけた。
すると微かな話し声が聞こえてくる。
声は二つあり、一つはサリーのもので、もう片方は聞き慣れない若い女性の声だった。
壁越しであるためか篭もって聞こえ、何を話しているのかはいまいち聞き取れない。
(だめだわ、全然分からない)
私は残念そうに肩を落とすと、諦めてソファーの元へと戻った。
扉の前に立っていたら、聞く耳を立てていたことがサリーにバレてしまう。
この屋敷の人間は私に隠し事をしている。
半年もの間、この屋敷で暮らしているので、それくらいは気付いていた。
何も説明をしてこないということは、故意的に何かを隠しているということになる。
だけど、アレクシスや使用人とはそれなりに良い関係を築けているので、秘密を知ってぎくしゃくしたくはない。
それならば何も知らない振りをして、楽しく過ごしていた方がいい。
私はもうすぐここを出て行くので、余計な事は知ら必要は無い。
暫くすると、ガチャと扉が開く音が響いた。
同時にサリーの姿が視界に入る。
「リリア様、申し訳ありません」
「どうしたの?」
サリーは戻ってくるなり突然謝ってきて、表情もとても曇っている様に見えた。
何故そんな顔をしているのか、全く理由が分からず私は不思議そうに首を傾げた。
「急な話なのですが、王宮に至急来るようにと伝達が……」
「え?」
全く予想していなかった発言に、きょとんとしてしまう。
(至急ってことは今から? 随分急な話ね。でもどうして? ……まさかっ)
アレクシスに何かあったのかも知れない、と不意に脳裏に過り私の表情が険しくなる。
「アレクシス様に何かあったの!?」
「いえ、殿下は関係ありません。今回リリア様を呼んだのはアレクシス殿下ではなく……、国王陛下です」
「……は?」
全く予想外の言葉が返ってきて私は再び唖然としてしまう。
(今、なんて……?)
「国王陛下がリリア様と直接話をしたいそうで、使者を寄越してきました。リリア様への面会は全て断るようにと言われているのですが、アレクシス殿下がいないことを良いことに、一向に折れなくて。これは王命であると圧力までかけてきました。……卑怯です」
私はサリーの言葉を聞きながら、何故自分が国王に呼ばれたのか、その理由を考えていた。
理由は簡単に想像出来た。
(きっと、私がアレクシス様の傍にいることが気に入らないんだわ。不在な時に呼び出すなんて、そうとしか思えない……)
いつかこんな事が起こるのではないかと思っていた。
以前はラルスの婚約者であったが、貴族籍から外れた私は王家にとって邪魔な存在なのだろう。
だから少しだけ覚悟は出来ていた。
「分かったわ。行きます」
「え!? だ、だめですっ! アレクシス殿下から、ここからは絶対に連れ出すなと止められています」
(絶対にって……。アレクシス様は本当に私の事を閉じ込めたいのね)
「だけど王命なら仕方がないわ」
「うっ……、そうですが」
サリーは本当にアレクシスの忠実な従者だ。
王命という圧力を掛けられても、主の命令を守ろうとしている。
「サリー、これはあなたが悪いわけじゃない。呼び出した国王陛下が悪いのよ! だからアレクシス様が戻ってきたら、そう言ってあげればいいわ。全部国王陛下のせいにしちゃおう」
こんなことを言ったら不敬だと言われそうだが、生憎ここには私達二人しかいない。
私は冗談ぽく話してみたが、それでもサリーは戸惑ったままだった。
「サリーが傍にいて守ってくれるのだから、大丈夫よ」
「あの、そのことなんですが……。私は行けません」
サリーは俯きながら、申し訳なさそうに呟いた。
「リリア様には伝えていませんでしたが、私は影の存在なんです。マリーと私は二人でひとつ。だから私の存在は公には知られていません。マリーはアレクシス殿下の補佐で従者。私は影からアレクシス殿下を守る役目を与えられています。最初から一人だと思わせておいた方が、何かと都合がいいので」
以前サリーは暗殺者だと言っていた。
その意味がなんとなく今分かった気がする。
現在マリーはアレクシスと共に遠征に出ている。
そんな時、サリーが王宮に現れたら……。
周囲は不思議に思うはずだ。
そして勘が良い人間は気付くかも知れない。
「そうだったんだ」
「黙っていて、ごめんなさい」
「すごく素敵! 影から守る存在なんてかっこいいわ」
私は褒めるような言葉を吐いた。
本当はどんな言葉を返して良いのか分からなかった。
ずっとマリーの影として、隠れて過ごす人生は楽しいのだろうか。
サリーにとって、それが良いか悪いかは私には分からない。
だけど、こんなにもアレクシスに忠実でいるのだから、この職に誇りを持っていることだけは間違いないはずだ。
「そ、そうですか? リリア様にそう言っていただけると、すごく嬉しいです。なんだか照れちゃいますが……」
「ふふっ、照れているサリーを見れる私は特別なのかな」
サリーの存在を知っているのは極僅かな人間のみ。
その中の一人に私が入っているのだと思うと、優越感で嬉しくなる。
「そうですよ。リリア様は特別な方です。アレクシス殿下の大切な方で、私にとっても大切な方」
「……ありがとう」
そんな風に言われると嬉しくなって、出て行く判断が鈍りそうになる。
ここでの暮らしは本当に私にとっては楽しいものだった。
誰かに私の存在を認めて貰えて、感情を殺すこと無く素直な気持ちをぶつけられる。
私の理想の場所そのものだった。
「リリア様、準備はお手伝いしますので、一度お部屋に戻りましょうか」
「そうね。ありがとう、サリー」
***
私達は一度部屋に戻り、王宮に行く支度を始めた。
これから会う相手がこの国の王であるのだから、身だしなみを整えなくてはならない。
そしてあまり長く待たせること出来ない。
その中で出来る限り着飾った。
久しぶりに着たドレスは、淡い青色でレースやフリルがふんだんに使われている可愛らしいものだった。
ここに来る前の私は、地味な色ばかり身につけていた。
特に夜会に参加する時のドレスは最悪だった。
嫌がらせのようにラルスが送りつけてきたからだ。
時代遅れのものや、煌びやかな場には不釣り合いなっものばかり。
贈られてきたものを着ないわけにもいかないので、仕方なく身に付けて参加した。
するとラルスは『お前にぴったりだな』と鼻で笑い、馬鹿にした台詞を吐いていた。
私を罵倒したいが為だけに、わざわざ贈って来たのだろう。
(嫌な記憶を思い出してしまったわ)
鏡の中に映る私は、地味とは真逆の可愛らしいドレスを纏っている。
いつかこんなドレスを着てみたいとずっと憧れていた。
アレクシスにこの姿を見せられないのが若干残念ではあるが、私の気持ちは少し上がっていた。
「すごくお似合いです! さすがアレクシス殿下のお見立てです」
「本当に素敵! あとでアレクシス様にお礼を言わなくては」
私は鏡の前ではしゃぐように動き回っていた。
ヒラヒラと裾が揺れて、優雅に見える。
白いレースもとても品があり、可愛いだけではない。
「リリア様、これを!」
「……あ」
サリーは私の手の上に眼鏡を乗せた。
久しぶりに見る、地味な黒縁眼鏡だ。
(折角可愛いドレスを着ているのに、やっぱりこれは付けなきゃいけないのね……)
もう抵抗する気はない。
私が反論すれば、サリーはどんな態度を見せるのか既に分かっていたからだ。
しかし、国王陛下の前でこんなふざけた眼鏡をかけては、失礼に当たらないだろうか。
少し心配に思えてきてしまう。
私が失礼な態度を見せれば、傍に置いてくれているアレクシスの責任問題に繋がる可能性もあるからだ。
(国王陛下に会う直前で外せばいいかな)
「屋敷の前までお送りします。もう時間も無いですし、行きましょう」
「そうね」
そう言って私達は屋敷の方へと移動した。
考えてみれば、ここに来てから屋敷の外に出るのは初めてのことだ。
少しドキドキしてしまう。
私は扉の方へと視線を向ける。
現在アレクシスとマリーは、遠征に出ていて屋敷を不在にしている。
そしてこの部屋にいるのは私とサリーの二人だけ。
――となると、今扉を叩いた人間は一体誰なのだろう。
初日に見かけた執事なのか、はたまた別の人間なのか。
私は扉を叩いた人物に興味を惹かれていた。
「リリア様はここでお待ちください」
「分かったわ」
サリーはそう告げると扉の方へと移動し、そのまま工房から出て行った。
一人きりになった部屋の静寂を感じながら、再び扉の方に視線を戻し、じっと眺めていた。
(一体誰が来たんだろう)
「…………」
(だめだ、……気になる!)
胸の奥がムズムズとする感覚にじっとしていられなくなり、ソファーから立ち上がった。
そして静かに扉の方へと向かった。
(とめられた訳ではないし、大丈夫よね)
そう自分に言い訳をして、扉に耳を近づけた。
すると微かな話し声が聞こえてくる。
声は二つあり、一つはサリーのもので、もう片方は聞き慣れない若い女性の声だった。
壁越しであるためか篭もって聞こえ、何を話しているのかはいまいち聞き取れない。
(だめだわ、全然分からない)
私は残念そうに肩を落とすと、諦めてソファーの元へと戻った。
扉の前に立っていたら、聞く耳を立てていたことがサリーにバレてしまう。
この屋敷の人間は私に隠し事をしている。
半年もの間、この屋敷で暮らしているので、それくらいは気付いていた。
何も説明をしてこないということは、故意的に何かを隠しているということになる。
だけど、アレクシスや使用人とはそれなりに良い関係を築けているので、秘密を知ってぎくしゃくしたくはない。
それならば何も知らない振りをして、楽しく過ごしていた方がいい。
私はもうすぐここを出て行くので、余計な事は知ら必要は無い。
暫くすると、ガチャと扉が開く音が響いた。
同時にサリーの姿が視界に入る。
「リリア様、申し訳ありません」
「どうしたの?」
サリーは戻ってくるなり突然謝ってきて、表情もとても曇っている様に見えた。
何故そんな顔をしているのか、全く理由が分からず私は不思議そうに首を傾げた。
「急な話なのですが、王宮に至急来るようにと伝達が……」
「え?」
全く予想していなかった発言に、きょとんとしてしまう。
(至急ってことは今から? 随分急な話ね。でもどうして? ……まさかっ)
アレクシスに何かあったのかも知れない、と不意に脳裏に過り私の表情が険しくなる。
「アレクシス様に何かあったの!?」
「いえ、殿下は関係ありません。今回リリア様を呼んだのはアレクシス殿下ではなく……、国王陛下です」
「……は?」
全く予想外の言葉が返ってきて私は再び唖然としてしまう。
(今、なんて……?)
「国王陛下がリリア様と直接話をしたいそうで、使者を寄越してきました。リリア様への面会は全て断るようにと言われているのですが、アレクシス殿下がいないことを良いことに、一向に折れなくて。これは王命であると圧力までかけてきました。……卑怯です」
私はサリーの言葉を聞きながら、何故自分が国王に呼ばれたのか、その理由を考えていた。
理由は簡単に想像出来た。
(きっと、私がアレクシス様の傍にいることが気に入らないんだわ。不在な時に呼び出すなんて、そうとしか思えない……)
いつかこんな事が起こるのではないかと思っていた。
以前はラルスの婚約者であったが、貴族籍から外れた私は王家にとって邪魔な存在なのだろう。
だから少しだけ覚悟は出来ていた。
「分かったわ。行きます」
「え!? だ、だめですっ! アレクシス殿下から、ここからは絶対に連れ出すなと止められています」
(絶対にって……。アレクシス様は本当に私の事を閉じ込めたいのね)
「だけど王命なら仕方がないわ」
「うっ……、そうですが」
サリーは本当にアレクシスの忠実な従者だ。
王命という圧力を掛けられても、主の命令を守ろうとしている。
「サリー、これはあなたが悪いわけじゃない。呼び出した国王陛下が悪いのよ! だからアレクシス様が戻ってきたら、そう言ってあげればいいわ。全部国王陛下のせいにしちゃおう」
こんなことを言ったら不敬だと言われそうだが、生憎ここには私達二人しかいない。
私は冗談ぽく話してみたが、それでもサリーは戸惑ったままだった。
「サリーが傍にいて守ってくれるのだから、大丈夫よ」
「あの、そのことなんですが……。私は行けません」
サリーは俯きながら、申し訳なさそうに呟いた。
「リリア様には伝えていませんでしたが、私は影の存在なんです。マリーと私は二人でひとつ。だから私の存在は公には知られていません。マリーはアレクシス殿下の補佐で従者。私は影からアレクシス殿下を守る役目を与えられています。最初から一人だと思わせておいた方が、何かと都合がいいので」
以前サリーは暗殺者だと言っていた。
その意味がなんとなく今分かった気がする。
現在マリーはアレクシスと共に遠征に出ている。
そんな時、サリーが王宮に現れたら……。
周囲は不思議に思うはずだ。
そして勘が良い人間は気付くかも知れない。
「そうだったんだ」
「黙っていて、ごめんなさい」
「すごく素敵! 影から守る存在なんてかっこいいわ」
私は褒めるような言葉を吐いた。
本当はどんな言葉を返して良いのか分からなかった。
ずっとマリーの影として、隠れて過ごす人生は楽しいのだろうか。
サリーにとって、それが良いか悪いかは私には分からない。
だけど、こんなにもアレクシスに忠実でいるのだから、この職に誇りを持っていることだけは間違いないはずだ。
「そ、そうですか? リリア様にそう言っていただけると、すごく嬉しいです。なんだか照れちゃいますが……」
「ふふっ、照れているサリーを見れる私は特別なのかな」
サリーの存在を知っているのは極僅かな人間のみ。
その中の一人に私が入っているのだと思うと、優越感で嬉しくなる。
「そうですよ。リリア様は特別な方です。アレクシス殿下の大切な方で、私にとっても大切な方」
「……ありがとう」
そんな風に言われると嬉しくなって、出て行く判断が鈍りそうになる。
ここでの暮らしは本当に私にとっては楽しいものだった。
誰かに私の存在を認めて貰えて、感情を殺すこと無く素直な気持ちをぶつけられる。
私の理想の場所そのものだった。
「リリア様、準備はお手伝いしますので、一度お部屋に戻りましょうか」
「そうね。ありがとう、サリー」
***
私達は一度部屋に戻り、王宮に行く支度を始めた。
これから会う相手がこの国の王であるのだから、身だしなみを整えなくてはならない。
そしてあまり長く待たせること出来ない。
その中で出来る限り着飾った。
久しぶりに着たドレスは、淡い青色でレースやフリルがふんだんに使われている可愛らしいものだった。
ここに来る前の私は、地味な色ばかり身につけていた。
特に夜会に参加する時のドレスは最悪だった。
嫌がらせのようにラルスが送りつけてきたからだ。
時代遅れのものや、煌びやかな場には不釣り合いなっものばかり。
贈られてきたものを着ないわけにもいかないので、仕方なく身に付けて参加した。
するとラルスは『お前にぴったりだな』と鼻で笑い、馬鹿にした台詞を吐いていた。
私を罵倒したいが為だけに、わざわざ贈って来たのだろう。
(嫌な記憶を思い出してしまったわ)
鏡の中に映る私は、地味とは真逆の可愛らしいドレスを纏っている。
いつかこんなドレスを着てみたいとずっと憧れていた。
アレクシスにこの姿を見せられないのが若干残念ではあるが、私の気持ちは少し上がっていた。
「すごくお似合いです! さすがアレクシス殿下のお見立てです」
「本当に素敵! あとでアレクシス様にお礼を言わなくては」
私は鏡の前ではしゃぐように動き回っていた。
ヒラヒラと裾が揺れて、優雅に見える。
白いレースもとても品があり、可愛いだけではない。
「リリア様、これを!」
「……あ」
サリーは私の手の上に眼鏡を乗せた。
久しぶりに見る、地味な黒縁眼鏡だ。
(折角可愛いドレスを着ているのに、やっぱりこれは付けなきゃいけないのね……)
もう抵抗する気はない。
私が反論すれば、サリーはどんな態度を見せるのか既に分かっていたからだ。
しかし、国王陛下の前でこんなふざけた眼鏡をかけては、失礼に当たらないだろうか。
少し心配に思えてきてしまう。
私が失礼な態度を見せれば、傍に置いてくれているアレクシスの責任問題に繋がる可能性もあるからだ。
(国王陛下に会う直前で外せばいいかな)
「屋敷の前までお送りします。もう時間も無いですし、行きましょう」
「そうね」
そう言って私達は屋敷の方へと移動した。
考えてみれば、ここに来てから屋敷の外に出るのは初めてのことだ。
少しドキドキしてしまう。
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