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21.今の二人の距離感③
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「リリア、そういえば眼鏡は?」
「……あ」
アレクシスに指摘されて、私は自分の目元に手を当てた。
急いで準備をしていたので、眼鏡のことをすっかり忘れていたようだ。
しまったと思い、私は表情を曇らせた。
不安そうな顔で、恐る恐るアレクシスの方へと視線を向けた。
(どうしよう、急いでたから持ってくるの忘れちゃった)
「ごめんなさい……」
「謝らないで。朝から可愛い素顔を私に見せてくれようとしたんだよね?」
「え?」
「……なんてね。安心して、こんなこともあろうかと思って常に持ち歩くことにしたんだ」
アレクシスは自慢げに話すと、ポケットから見慣れた眼鏡を取り出した。
どうしてそれをアレクシスが持っているのだろう。
私は驚いて呆然と固まっていた。
アレクシスが手にしている眼鏡は、間違いなく普段私が付けているものと同じものだ。
「なん、で……」
「実はね、これは新しく作らせたものなんだ。リリアが持っている眼鏡と同じものを作らせたんだよ」
「いつの間に」
「使用人に頼んで、リリアが眠っている間に少し借りさせて貰った。事後報告になってしまってごめんね」
私に了解を得ず勝手に持ち出したことは余り喜ばしいことではないが、そのような理由であれば怒る気も起きなかった。
眠っている間という、短時間の間に同じものを作ることが出来るのだろうか。
でも、相手がアレクシスであれば出来てしまうのかも知れない。
「アレクシス様は、どうしてその可愛くない眼鏡にこだわるんですか? 私にはもう必要ないのに。……折角こんなに可愛い服を着ているのに」
私は小さな声で本音を漏らしてしまう。
どう考えてもこの服にあの眼鏡は不釣り合いだ。
少しでも可愛くなった姿を見せたいという私の気持ちは、彼には届かないのだろうか。
(やっぱりこんな服、私には似合わなかったのかな……)
そう思うと泣きたい気持ちになってくる。
「今のリリアはいつもに増して可愛らしいよ。それこそ絵本の中から飛び出したお姫様のように。だからこそ他の人間には見せたくない。こんな姿を見せたら、皆リリアに心を奪われてしまう。私以外の人間がリリアに好意をもつなんて、許せない」
「……それは言い過ぎではないでしょうか」
アレクシスに可愛いと言われるのは嬉しいが、そこまでいくと逆に引いてしまう。
昨日から感じていたが、彼の言葉は極端すぎる。
以前はこんな風に感じたことは無かった。
「言い過ぎなんかじゃないよ。これは私の本音だ。もう、自分の気持ちを抑えることも、遠慮することもやめることにしたから。その理由も無くなったからね。そうだね、それじゃ明日から食事はリリアの部屋でしようか。それなら眼鏡を掛ける必要もないしね」
「……っ、我が儘言ってごめんなさい」
会話の一部は良く分からなかったが、アレクシスは意外にもあっさりと折れてくれた。
「謝らないで。今日はもう準備が出来てしまったから、これを掛けておいて。食べ終わったら、私にだけその可愛い姿をたくさん見せて」
アレクシスは照れる様子も無く、さらりとそんな言葉を口に出すと、持っている眼鏡を私の耳元にそっと掛けた。
動揺しているのは先程から私ばかりだ。
(可愛いって言い過ぎ。お世辞にしても、言い過ぎだから……)
「アレクシス様は、どうして私にここまでしてくださるんですか? もう妹になることはないのに……」
「妹?」
変な空気になってしまったので、話を変えることにした。
私が問いかけるとアレクシスの足がピタッと止まった。
「アレクシス様?」
「リリア、私は君のことを妹の様に思ったことは一度もないよ」
思わず口走ってしまった台詞を後悔した。
今のは恥ずかしさを紛らわせるために、咄嗟に口から出てしまったものだ。
今考えれば、妹だなんて恐れ多い言葉だったのかもしれない。
「ああ、そうか。まだちゃんと私の気持ちを伝えていなかったね。本当はもっと雰囲気のあるところで伝えたかったんだけど、誤解されていると思うと耐えきれない気持ちになるから、今ここで伝えてもいい?」
アレクシスは真っ直ぐに私の瞳の奥を捉えていた。
何かを予感して、私の鼓動はドクンと高まっていく。
その時急に風が吹いて、私の髪が顔にかかってしまう。
するとアレクシスは手を伸ばして、私の髪を掬い耳に掛けてくれた。
そしてそのまま頬に手を添えられる。
今の彼の表情は切なげに映っていた。
何故そのような顔を見せるのか、分からない。
だけど、知りたい。
私は昂る気持ちを抑えながら、期待するようにアレクシスの言葉を待った。
「私は君の全てを愛している」
直球過ぎる言葉に、私は目を丸くして固まっていた。
今までのアレクシスの態度から、自惚れかも知れないと思っていた反面、なんとなくそうかもしれないと感じていた。
いや、期待していたのかもしれない。
私はずっとラルスでは無く、アレクシスが婚約者だったら良かったのに……と思っていたのだから。
だけど実際に面と向かって言われると、嬉しさよりも驚きの方が勝っていた。
時間が止まったように、息をするのも忘れていた。
「……あ」
アレクシスに指摘されて、私は自分の目元に手を当てた。
急いで準備をしていたので、眼鏡のことをすっかり忘れていたようだ。
しまったと思い、私は表情を曇らせた。
不安そうな顔で、恐る恐るアレクシスの方へと視線を向けた。
(どうしよう、急いでたから持ってくるの忘れちゃった)
「ごめんなさい……」
「謝らないで。朝から可愛い素顔を私に見せてくれようとしたんだよね?」
「え?」
「……なんてね。安心して、こんなこともあろうかと思って常に持ち歩くことにしたんだ」
アレクシスは自慢げに話すと、ポケットから見慣れた眼鏡を取り出した。
どうしてそれをアレクシスが持っているのだろう。
私は驚いて呆然と固まっていた。
アレクシスが手にしている眼鏡は、間違いなく普段私が付けているものと同じものだ。
「なん、で……」
「実はね、これは新しく作らせたものなんだ。リリアが持っている眼鏡と同じものを作らせたんだよ」
「いつの間に」
「使用人に頼んで、リリアが眠っている間に少し借りさせて貰った。事後報告になってしまってごめんね」
私に了解を得ず勝手に持ち出したことは余り喜ばしいことではないが、そのような理由であれば怒る気も起きなかった。
眠っている間という、短時間の間に同じものを作ることが出来るのだろうか。
でも、相手がアレクシスであれば出来てしまうのかも知れない。
「アレクシス様は、どうしてその可愛くない眼鏡にこだわるんですか? 私にはもう必要ないのに。……折角こんなに可愛い服を着ているのに」
私は小さな声で本音を漏らしてしまう。
どう考えてもこの服にあの眼鏡は不釣り合いだ。
少しでも可愛くなった姿を見せたいという私の気持ちは、彼には届かないのだろうか。
(やっぱりこんな服、私には似合わなかったのかな……)
そう思うと泣きたい気持ちになってくる。
「今のリリアはいつもに増して可愛らしいよ。それこそ絵本の中から飛び出したお姫様のように。だからこそ他の人間には見せたくない。こんな姿を見せたら、皆リリアに心を奪われてしまう。私以外の人間がリリアに好意をもつなんて、許せない」
「……それは言い過ぎではないでしょうか」
アレクシスに可愛いと言われるのは嬉しいが、そこまでいくと逆に引いてしまう。
昨日から感じていたが、彼の言葉は極端すぎる。
以前はこんな風に感じたことは無かった。
「言い過ぎなんかじゃないよ。これは私の本音だ。もう、自分の気持ちを抑えることも、遠慮することもやめることにしたから。その理由も無くなったからね。そうだね、それじゃ明日から食事はリリアの部屋でしようか。それなら眼鏡を掛ける必要もないしね」
「……っ、我が儘言ってごめんなさい」
会話の一部は良く分からなかったが、アレクシスは意外にもあっさりと折れてくれた。
「謝らないで。今日はもう準備が出来てしまったから、これを掛けておいて。食べ終わったら、私にだけその可愛い姿をたくさん見せて」
アレクシスは照れる様子も無く、さらりとそんな言葉を口に出すと、持っている眼鏡を私の耳元にそっと掛けた。
動揺しているのは先程から私ばかりだ。
(可愛いって言い過ぎ。お世辞にしても、言い過ぎだから……)
「アレクシス様は、どうして私にここまでしてくださるんですか? もう妹になることはないのに……」
「妹?」
変な空気になってしまったので、話を変えることにした。
私が問いかけるとアレクシスの足がピタッと止まった。
「アレクシス様?」
「リリア、私は君のことを妹の様に思ったことは一度もないよ」
思わず口走ってしまった台詞を後悔した。
今のは恥ずかしさを紛らわせるために、咄嗟に口から出てしまったものだ。
今考えれば、妹だなんて恐れ多い言葉だったのかもしれない。
「ああ、そうか。まだちゃんと私の気持ちを伝えていなかったね。本当はもっと雰囲気のあるところで伝えたかったんだけど、誤解されていると思うと耐えきれない気持ちになるから、今ここで伝えてもいい?」
アレクシスは真っ直ぐに私の瞳の奥を捉えていた。
何かを予感して、私の鼓動はドクンと高まっていく。
その時急に風が吹いて、私の髪が顔にかかってしまう。
するとアレクシスは手を伸ばして、私の髪を掬い耳に掛けてくれた。
そしてそのまま頬に手を添えられる。
今の彼の表情は切なげに映っていた。
何故そのような顔を見せるのか、分からない。
だけど、知りたい。
私は昂る気持ちを抑えながら、期待するようにアレクシスの言葉を待った。
「私は君の全てを愛している」
直球過ぎる言葉に、私は目を丸くして固まっていた。
今までのアレクシスの態度から、自惚れかも知れないと思っていた反面、なんとなくそうかもしれないと感じていた。
いや、期待していたのかもしれない。
私はずっとラルスでは無く、アレクシスが婚約者だったら良かったのに……と思っていたのだから。
だけど実際に面と向かって言われると、嬉しさよりも驚きの方が勝っていた。
時間が止まったように、息をするのも忘れていた。
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