11 / 87
11.王子からの提案①
しおりを挟む
伯爵家を後にすると、私達は再び馬車へと乗り込んだ。
夜だったこともあり、アレクシスが王都の中央まで運んでくれることになった。
今日一日で、アレクシスには感謝しても仕切れないほど助けられたように思う。
もし彼が傍にいなかったら、こんなにも上手く計画が進むことはなかっただろう。
「先程とは比べて、表情が緩みきっているな」
「あ……、失礼しました」
指摘されて、私は慌てるように自分の頬に手を当てる。
伯爵家という鳥籠から抜け出せたことが本当に嬉しくて、今の私の表情はだらしない程に緩んでいるのだろう。
慌てて答えたが、溢れ出る喜びを全て堪えることなど出来ない。
必死に表情を戻そうとする私の姿を眺め、アレクシスは満足そうに微笑んでいた。
「本当にリリアの反応は分かりやすいね。無理に我慢しなくてもいいよ。私は君の素直な表情を見るのも好きだからね」
「ち、違います! 気を抜いてしまうのはアレクシス様の前だからで……。これでも私、普段は仮面を付けて真面目っぽく演じているんですから」
こんな風に素直に嬉しさを表現したり、意見を言えるのは彼の前だけだ。
学園では地味で大人しい令嬢を演じ、屋敷では父の言葉に頷くだけの人形に徹していた。
勿論、したくてしていたわけではない。
それらの縛りが切られた今、一時的に開放的な気分になっているのだと思う。
「私は今の君の姿しかあまり知らないけど、辛そうな顔も見ていたからな。今まで良く頑張ったね」
「……はい」
頑張ったと言われると、次第に目の奥が熱くなり、じわじわと涙が滲んできてしまう。
私の事を気にかけてくれる存在がいる、と思えるだけで素直に嬉しかった。
だけど、アレクシスの前では涙を見せたくなくて、私は必死に耐えようとしていた。
彼の前では虚勢を張ってでも、強い人間でありたいと思ってしまうようだ。
(アレクシス様。いつも私のことを気にかけてくださって、本当にありがとうございます)
夜だったこともあり、アレクシスが王都の中央まで運んでくれることになった。
今日一日で、アレクシスには感謝しても仕切れないほど助けられたように思う。
もし彼が傍にいなかったら、こんなにも上手く計画が進むことはなかっただろう。
「先程とは比べて、表情が緩みきっているな」
「あ……、失礼しました」
指摘されて、私は慌てるように自分の頬に手を当てる。
伯爵家という鳥籠から抜け出せたことが本当に嬉しくて、今の私の表情はだらしない程に緩んでいるのだろう。
慌てて答えたが、溢れ出る喜びを全て堪えることなど出来ない。
必死に表情を戻そうとする私の姿を眺め、アレクシスは満足そうに微笑んでいた。
「本当にリリアの反応は分かりやすいね。無理に我慢しなくてもいいよ。私は君の素直な表情を見るのも好きだからね」
「ち、違います! 気を抜いてしまうのはアレクシス様の前だからで……。これでも私、普段は仮面を付けて真面目っぽく演じているんですから」
こんな風に素直に嬉しさを表現したり、意見を言えるのは彼の前だけだ。
学園では地味で大人しい令嬢を演じ、屋敷では父の言葉に頷くだけの人形に徹していた。
勿論、したくてしていたわけではない。
それらの縛りが切られた今、一時的に開放的な気分になっているのだと思う。
「私は今の君の姿しかあまり知らないけど、辛そうな顔も見ていたからな。今まで良く頑張ったね」
「……はい」
頑張ったと言われると、次第に目の奥が熱くなり、じわじわと涙が滲んできてしまう。
私の事を気にかけてくれる存在がいる、と思えるだけで素直に嬉しかった。
だけど、アレクシスの前では涙を見せたくなくて、私は必死に耐えようとしていた。
彼の前では虚勢を張ってでも、強い人間でありたいと思ってしまうようだ。
(アレクシス様。いつも私のことを気にかけてくださって、本当にありがとうございます)
16
あなたにおすすめの小説
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
お父様、お母様、わたくしが妖精姫だとお忘れですか?
サイコちゃん
恋愛
リジューレ伯爵家のリリウムは養女を理由に家を追い出されることになった。姉リリウムの婚約者は妹ロサへ譲り、家督もロサが継ぐらしい。
「お父様も、お母様も、わたくしが妖精姫だとすっかりお忘れなのですね? 今まで莫大な幸運を与えてきたことに気づいていなかったのですね? それなら、もういいです。わたくしはわたくしで自由に生きますから」
リリウムは家を出て、新たな人生を歩む。一方、リジューレ伯爵家は幸運を失い、急速に傾いていった。
家出を決行した結果
棗
恋愛
フィービーの婚約者ミゲルには大切な幼馴染がいる。病弱な幼馴染をいつも優先するミゲルや母が亡くなって以降溝が出来てしまった父と兄との関係にフィービーは疲れていた。
デートの約束をしてもいつも直前になって幼馴染を理由にキャンセルされ、幼馴染にしか感情を見せないミゲルを、フィービーを見ようとしない父や兄を捨てる決心をしたフィービーは侍女や執事の手を借りて家出を決行した。
自分を誰も知らない遠い場所へ行ったフィービーは、新しい人生の幕開けに期待に胸を躍らせた。
※なろうさんにも公開しています。
没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。
亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。
しかし皆は知らないのだ
ティファが、ロードサファルの王女だとは。
そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……
愛される日は来ないので
豆狸
恋愛
だけど体調を崩して寝込んだ途端、女主人の部屋から物置部屋へ移され、満足に食事ももらえずに死んでいったとき、私は悟ったのです。
──なにをどんなに頑張ろうと、私がラミレス様に愛される日は来ないのだと。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる