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8.父との決別①
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そして、執務室の前へと辿り着いた。
少し緊張はしているが、先程よりは大分落ち着きを取り戻したように思う。
それも全てアレクシスのおかげだ。
この人の傍にいるだけで、私は本来の自分でいることが出来る気がする。
私は深く息を吐くと覚悟を決めて、トントンと扉を叩いた。
「誰だ。ここには誰も近づけさせるなと伝えておいただろう」
扉の奥からは機嫌の悪そうな父の声が響く。
私は戸惑った顔をアレクシスに向けてしまう。
するとその瞳は『大丈夫』だと言っているように見えて、私は小さく頷き口を開いた。
「リリアです。お父様に大事なお話があります」
「……入れ」
私ははっきりとした口調で答えた。
すると奥から低い声が響き、私はゆっくりと扉を開いていった。
「失礼します」
扉を開ききると、室内の光景が視界に広がる。
そして中央に置かれているソファーには、女性の後ろ姿があった。
彼女は私達の気配に気付くと席から立ち上がり、くるっとこちらを向いた。
年齢は私と同じくらいで、栗毛に同色の瞳をしている。
大きめの瞳が特徴的で、ふわっとした癖のある髪質は猫の毛のようだ。
一言で表現すれば、可愛らしい容姿をしている。
(この方は一体誰なんだろう……)
「初めまして、リリア様。私はアリスと言います」
「は、初めまして。アリス様」
予想外な展開が待っていて私は戸惑ってしまう。
傍にアリスがいるせいか、父は普段のようにいきなり怒鳴ったりはしてこなかった。
だけど私の隣にいるアレクシスには気付いたようで、怪訝な表情を浮かべている。
「リリア、その男は誰だ」
「え?」
「お前には婚約者がいるはずだ。それにまだ卒業パーティーが終わるには随分と早いな。まさかとは思うが……」
父は私に鋭い視線を向けて言った。
間違いなくアレクシスが誰なのか分かっていない様子だ。
私はどうしようと困ったようにアレクシスの方に視線を向けた。
「突然押しかけてしまって申し訳ない。シュトール伯爵と会うのは何年振りだろうか。その様子だと私の顔は忘れられているようですね」
「は……? ……っ、ま、まさかっ……」
アレクシスが挨拶をすると、父の顔色がみるみるうちに驚きの色へと変わっていく。
騎士団に入ってからは雰囲気が大分変わったので、父も一瞥した程度では気付かなかったようだ。
「思い出して頂きましたか?」
「これは申し訳ありません。まさかアレクシス殿下が訪れるなんて思いもしなかったもので……」
「ふふっ、気にしないで良いよ。突然来た私も悪いからね。このことで咎めたりはしないから安心して」
父は慌てるように椅子から立ち上がると、深々と頭を下げていた。
こんなにも戸惑っている父の姿を見るのは本当に珍しいことだ。
そして先程アリスと名乗ってきた令嬢は、頬を僅かに赤く染めアレクシスに見惚れている様子だ。
「頭を上げて。今日は大事な報告があって来たんだ」
「報告と言いますと……?」
「とりあえず、そこの部外者には出て行って貰おうかな」
「え? あ、あのっ……、私部外者ではありません!」
アレクシスは視界の端にアリスを捉えると冷めた声で呟いた。
アリスは不満気にムッとした顔を浮かべると、突然アレクシスに言い返した。
「アリス、その様な口の利き方はやめなさい。この方がどのような立場の方か分かって」
「分かっています! 王子様ですよね?」
父はアリスを止めようとするが、彼女は考えを改めるつもりはないようだ。
そしてアレクシスの前に移動して、じっと見つめていた。
「そうだね。たしかにこの国の王子で間違っていないよ。だけど私は君と話すために、ここに来たわけではない。君がいると話が出来ないから、出て行って貰えると助かるのだけど」
「会ったばかりの人間を、邪魔者扱いするなんて酷いです。私、今日からこの伯爵家の養子になったの。だから部外者なんかじゃないのに……」
「養子……?」
突然出てきた言葉に私は耳を疑った。
一体何の話をしているのか分からない。
「アリスいい加減にしなさい。私を怒らせたいのか?」
「……っ、わ、分かったわよ。出て行くわ」
父に睨まれ、渋々といった顔でアリスは部屋から出て行った。
あの父相手にここまで言い返せるなんて凄いと思ってしまった。
私は傍観者のように、その様子をただ眺めていた。
アリスが部屋から出て行くと、室内は静かになった。
養子の話は本当に初耳で驚いているが、もう私には関係の無いことなので深く考えるつもりはない。
「アレクシス殿下、大変失礼致しました。あの子は昨日まで平民としての生活を送っていて、これからしっかりと教育を受けさせます。ですので今回のことは多めに見て頂けたら」
「別に構わないよ。少し煩いと思っただけだし、今後関わることはないだろうからね。そろそろ本題に入っても構わないかな?」
「はい、勿論です。宜しければそちらの椅子におかけください」
「ありがとう。リリアも隣においで」
「は、はいっ……」
私は慌てるように答えると、アレクシスの隣に腰掛けた。
父は時折怪訝そうな顔で、私のことをじっと睨んでくる。
私は目が合う度に慌てて逸らしていた。
少し緊張はしているが、先程よりは大分落ち着きを取り戻したように思う。
それも全てアレクシスのおかげだ。
この人の傍にいるだけで、私は本来の自分でいることが出来る気がする。
私は深く息を吐くと覚悟を決めて、トントンと扉を叩いた。
「誰だ。ここには誰も近づけさせるなと伝えておいただろう」
扉の奥からは機嫌の悪そうな父の声が響く。
私は戸惑った顔をアレクシスに向けてしまう。
するとその瞳は『大丈夫』だと言っているように見えて、私は小さく頷き口を開いた。
「リリアです。お父様に大事なお話があります」
「……入れ」
私ははっきりとした口調で答えた。
すると奥から低い声が響き、私はゆっくりと扉を開いていった。
「失礼します」
扉を開ききると、室内の光景が視界に広がる。
そして中央に置かれているソファーには、女性の後ろ姿があった。
彼女は私達の気配に気付くと席から立ち上がり、くるっとこちらを向いた。
年齢は私と同じくらいで、栗毛に同色の瞳をしている。
大きめの瞳が特徴的で、ふわっとした癖のある髪質は猫の毛のようだ。
一言で表現すれば、可愛らしい容姿をしている。
(この方は一体誰なんだろう……)
「初めまして、リリア様。私はアリスと言います」
「は、初めまして。アリス様」
予想外な展開が待っていて私は戸惑ってしまう。
傍にアリスがいるせいか、父は普段のようにいきなり怒鳴ったりはしてこなかった。
だけど私の隣にいるアレクシスには気付いたようで、怪訝な表情を浮かべている。
「リリア、その男は誰だ」
「え?」
「お前には婚約者がいるはずだ。それにまだ卒業パーティーが終わるには随分と早いな。まさかとは思うが……」
父は私に鋭い視線を向けて言った。
間違いなくアレクシスが誰なのか分かっていない様子だ。
私はどうしようと困ったようにアレクシスの方に視線を向けた。
「突然押しかけてしまって申し訳ない。シュトール伯爵と会うのは何年振りだろうか。その様子だと私の顔は忘れられているようですね」
「は……? ……っ、ま、まさかっ……」
アレクシスが挨拶をすると、父の顔色がみるみるうちに驚きの色へと変わっていく。
騎士団に入ってからは雰囲気が大分変わったので、父も一瞥した程度では気付かなかったようだ。
「思い出して頂きましたか?」
「これは申し訳ありません。まさかアレクシス殿下が訪れるなんて思いもしなかったもので……」
「ふふっ、気にしないで良いよ。突然来た私も悪いからね。このことで咎めたりはしないから安心して」
父は慌てるように椅子から立ち上がると、深々と頭を下げていた。
こんなにも戸惑っている父の姿を見るのは本当に珍しいことだ。
そして先程アリスと名乗ってきた令嬢は、頬を僅かに赤く染めアレクシスに見惚れている様子だ。
「頭を上げて。今日は大事な報告があって来たんだ」
「報告と言いますと……?」
「とりあえず、そこの部外者には出て行って貰おうかな」
「え? あ、あのっ……、私部外者ではありません!」
アレクシスは視界の端にアリスを捉えると冷めた声で呟いた。
アリスは不満気にムッとした顔を浮かべると、突然アレクシスに言い返した。
「アリス、その様な口の利き方はやめなさい。この方がどのような立場の方か分かって」
「分かっています! 王子様ですよね?」
父はアリスを止めようとするが、彼女は考えを改めるつもりはないようだ。
そしてアレクシスの前に移動して、じっと見つめていた。
「そうだね。たしかにこの国の王子で間違っていないよ。だけど私は君と話すために、ここに来たわけではない。君がいると話が出来ないから、出て行って貰えると助かるのだけど」
「会ったばかりの人間を、邪魔者扱いするなんて酷いです。私、今日からこの伯爵家の養子になったの。だから部外者なんかじゃないのに……」
「養子……?」
突然出てきた言葉に私は耳を疑った。
一体何の話をしているのか分からない。
「アリスいい加減にしなさい。私を怒らせたいのか?」
「……っ、わ、分かったわよ。出て行くわ」
父に睨まれ、渋々といった顔でアリスは部屋から出て行った。
あの父相手にここまで言い返せるなんて凄いと思ってしまった。
私は傍観者のように、その様子をただ眺めていた。
アリスが部屋から出て行くと、室内は静かになった。
養子の話は本当に初耳で驚いているが、もう私には関係の無いことなので深く考えるつもりはない。
「アレクシス殿下、大変失礼致しました。あの子は昨日まで平民としての生活を送っていて、これからしっかりと教育を受けさせます。ですので今回のことは多めに見て頂けたら」
「別に構わないよ。少し煩いと思っただけだし、今後関わることはないだろうからね。そろそろ本題に入っても構わないかな?」
「はい、勿論です。宜しければそちらの椅子におかけください」
「ありがとう。リリアも隣においで」
「は、はいっ……」
私は慌てるように答えると、アレクシスの隣に腰掛けた。
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