上 下
47 / 53

47.本心

しおりを挟む
「わ…私もっ…っ…!!」
ルカルドの言葉を聞いて胸の奥が熱くなり、私も自分の気持ちを伝えようとした瞬間、馬車が揺れて顔を馬車の窓にぶつけてしまった。
ドンッと鈍い音がして、額がズキズキと痛み始めた。

「痛い…」
「シンリー、平気か?この辺、砂利道だから揺れるんだ…。こっち向いて俺に見せて?」
私が振り返ると、ルカルドはまじまじと私の顔を覗き込んで来た。
あんなことを言われた後だけに妙に照れてしまう。

私はルカルドと目を合わせることが出来ずに俯いていた。
そして僅かに頬を赤く染めながら、ドキドキしていた。

「少し、赤くなっているな…。痛いよな…」
「はい…、ズキズキします…」
私が小さな声で呟くと、ルカルドは私の額にそっと口付けた。

「ひぁっ…!なっ…何をするんですかっ…!」
今の私は感情が昂っているせいか、ちょっとしたことでも体を震わせるほどに反応してしまう。
誰が見ても分かる程に、動揺しているのはバレバレだった。

「シンリー?…痛いから反応したわけじゃないよな?」
「え…?ち、違いますっ…!」
ルカルドの問いかけに私は目を泳がせながら咄嗟に否定した。
しかしそれはルカルドも気付いている様で、「シンリー?」と名前を呼ばれて顔を上げると、赤く染まった頬に手を添えられた。

「シンリーの頬、真っ赤だよ。もしかして、俺が言った事を聞いて照れてくれているのか?」
「それはっ…」
ルカルドは少し嬉しそうな顔を浮かべている様だったが、私は焦っていた。

「どうしてこんなにシンリーは可愛いんだろうな。バレバレな反応をしている癖に、それでも必死になって隠そうとするなよ…」
「……っ…」

「俺、理性保つの無理かも…。待つとか言ったけど、不安になって来た…」
「……私ルカ様となら…その…構いませんっ…!」
ルカルドは冗談ぽく話していたが、私は思い切ってそう言ってしまった。
その顔はまるで沸騰したかのように、熱を持っている様だった。
顔の奥から湯気が出て来そうな程、自分の顔が熱くなっていくのを感じていた。

「シンリー…?」
「はい…!」
ルカルドは一瞬驚いた顔をしながら私の名前を呼ぶと、私は勢いよく反応してしまった。

「今の本気…?」
「……は、はい」

「俺に抱かれる事に抵抗はないの?」
「……はい」
私は緊張し過ぎて『はい』しかさっきから答えていない。
そんな私に気付いてルカルドは小さく笑った。

「今日王宮に泊まって、一緒に寝ようか…」
「……はい。………っ…!?」

「決まりだな」
「間違えましたっ!!今のナシで…!」
私が慌てて答えると、ルカルドは小さく笑った。

「冗談だよ。シンリーの反応が可愛くて、つい意地悪したくなった」
「……っ…!!」
私がムッと睨むと、ルカルドは「ごめんな」と言って私の事をそのまま抱きしめた。

それが冗談だと分かるとほっとしたが、どこか残念な気もした。
やっとルカルドとの距離が縮まって、お互いの気持ちも繋がった。
それなら体も繋がりたいと思うのは間違ったことなのだろうか。
少なくとも私は、大好きなルカルドとはそうなっても構わないと思っている。

「私、ルカ様と一緒の部屋でも構いませんよっ…」
「シンリー?これ以上言うなら、本気で同じ部屋にするよ?」
私が続けてそう答えると、ルカルドは抱きしめてる力を弱めて、私の顔を覗き込んで来た。

「私は…それでも大丈夫です」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~

Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。 走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。

溺愛されて育った夫が幼馴染と不倫してるのが分かり愛情がなくなる。さらに相手は妊娠したらしい。

window
恋愛
大恋愛の末に結婚したフレディ王太子殿下とジェシカ公爵令嬢だったがフレディ殿下が幼馴染のマリア伯爵令嬢と不倫をしました。結婚1年目で子供はまだいない。 夫婦の愛をつないできた絆には亀裂が生じるがお互いの両親の説得もあり離婚を思いとどまったジェシカ。しかし元の仲の良い夫婦に戻ることはできないと確信している。 そんな時相手のマリア令嬢が妊娠したことが分かり頭を悩ませていた。

愛する義兄に憎まれています

ミカン♬
恋愛
自分と婚約予定の義兄が子爵令嬢の恋人を両親に紹介すると聞いたフィーナは、悲しくて辛くて、やがて心は闇に染まっていった。 義兄はフィーナと結婚して侯爵家を継ぐはずだった、なのにフィーナも両親も裏切って真実の愛を貫くと言う。 許せない!そんなフィーナがとった行動は愛する義兄に憎まれるものだった。 2023/12/27 ミモザと義兄の閑話を投稿しました。 ふわっと設定でサクっと終わります。 他サイトにも投稿。

溺愛される妻が記憶喪失になるとこうなる

田尾風香
恋愛
***2022/6/21、書き換えました。 お茶会で紅茶を飲んだ途端に頭に痛みを感じて倒れて、次に目を覚ましたら、目の前にイケメンがいました。 「あの、どちら様でしょうか?」 「俺と君は小さい頃からずっと一緒で、幼い頃からの婚約者で、例え死んでも一緒にいようと誓い合って……!」 「旦那様、奥様に記憶がないのをいいことに、嘘を教えませんように」 溺愛される妻は、果たして記憶を取り戻すことができるのか。 ギャグを書いたことはありませんが、ギャグっぽいお話しです。会話が多め。R18ではありませんが、行為後の話がありますので、ご注意下さい。

王太子殿下の執着が怖いので、とりあえず寝ます。【完結】

霙アルカ。
恋愛
王太子殿下がところ構わず愛を囁いてくるので困ってます。 辞めてと言っても辞めてくれないので、とりあえず寝ます。 王太子アスランは愛しいルディリアナに執着し、彼女を部屋に閉じ込めるが、アスランには他の女がいて、ルディリアナの心は壊れていく。 8月4日 完結しました。

王太子殿下が好きすぎてつきまとっていたら嫌われてしまったようなので、聖女もいることだし悪役令嬢の私は退散することにしました。

みゅー
恋愛
 王太子殿下が好きすぎるキャロライン。好きだけど嫌われたくはない。そんな彼女の日課は、王太子殿下を見つめること。  いつも王太子殿下の行く先々に出没して王太子殿下を見つめていたが、ついにそんな生活が終わるときが来る。  聖女が現れたのだ。そして、さらにショックなことに、自分が乙女ゲームの世界に転生していてそこで悪役令嬢だったことを思い出す。  王太子殿下に嫌われたくはないキャロラインは、王太子殿下の前から姿を消すことにした。そんなお話です。  ちょっと切ないお話です。

【完結】好きな人に身代わりとして抱かれています

黄昏睡
恋愛
彼が、別の誰かを想いながら私を抱いていることには気づいていた。 けれど私は、それでも構わなかった…。

最悪なお見合いと、執念の再会

当麻月菜
恋愛
伯爵令嬢のリシャーナ・エデュスは学生時代に、隣国の第七王子ガルドシア・フェ・エデュアーレから告白された。 しかし彼は留学期間限定の火遊び相手を求めていただけ。つまり、真剣に悩んだあの頃の自分は黒歴史。抹消したい過去だった。 それから一年後。リシャーナはお見合いをすることになった。 相手はエルディック・アラド。侯爵家の嫡男であり、かつてリシャーナに告白をしたクズ王子のお目付け役で、黒歴史を知るただ一人の人。 最低最悪なお見合い。でも、もう片方は執念の再会ーーの始まり始まり。

処理中です...