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29.解放

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閉じ込められてからどれくらいの時間が過ぎたのだろう。
ここは地下室らしく窓も無いので昼か夜かも分からない。

肌に纏まり付く様な湿った空気を感じると、息が詰まりそうになる。
早くここから出たいのに出る方法が一切思い浮かばない。
私は端の方で体を縮こませる様に座っていた。


(ルカ様…心配してるかな…)

私はルカルドの言葉を聞かずに動いてしまったことを後悔していた。
いつも私の行動は裏目に出てしまい、結局は心配させてしまう。
ルカルドにはもう心配はかけたくないと思っていたのに…。



***



暫くすると、扉の奥の方からざわざわと騒がしい音や声らしきものが聞こえてきた。
一体なんだろうと思い、私は立ち上がり鉄格子の方に近づき耳を傾けた。

(……叫び声…?)

叫び声の様な、うめく様な声が聞こえて来ると急に怖くなった。
一体扉の奥で何が起こっているのだろう…。
不安や恐怖から気持ちだけが焦って行く。


そんな時だった。
扉が開いて、明るい光が奥から差し込んで来た。
そして奥の方には誰かの影が見える。

怖い…。
私は壁の端に移動して、身を屈めた。
見つかれば殺されるかも知れない。
あの時の様に…。


「シンリー…!」
「……ル…カ……様?」
聞き覚えのある声に気付くと私は顔を上げた。
ルカルドは私の存在に気付くと、すぐに鍵を開けてくれた。

「シンリー…!無事で良かった…本当に…良かった…」
ルカルドは中に入って来ると、私の事をぎゅっと強く抱きしめていた。
私は助かったのだと分かると、安心してじわっと涙が浮かんだ。

「ルカ様…ごめんなさいっ…私…」
「謝らなくていい。シンリーを一人にするべきじゃなかった、俺の所為だ…。本当にごめん…」
私達は二人で謝り合っていた。
ルカルドの温もりを感じると心から安心出来る。

「ルカ様…私この場所、なんかすごく嫌なので…早く出たいです…」
「ああ、そうだよな。気付かなくてごめん…」
私の言葉でルカルドは抱きしめる力を緩めると、不安そうな顔をする私を見つめた。

「怖かったよな…、こんな場所に閉じ込められて。もうそんな不安そうな顔はしなくていい。ここはもう制圧されてる」
ルカルドは優しい口調で言うと、私の手を繋いでくれた。
それからルカルドに連れられるように牢から出て、階段を上り地下牢を後にした。


***


廊下を歩いた先にある大広間に出ると、何人かの兵士が集まっていた。
部屋の壁には血飛沫ちしぶきの様な跡が残されていた。
そして袋に入れられた何かの塊がいくつか見える。
まるで惨劇の後の様な光景が広がっていた。

私はそれを見ると怖くなりルカルドの手をぎゅっと握った。
そんな私に気付いたルカルドは「大丈夫だよ」と優しい声で言ってくれた。
だけど何が起こったのかは怖くて聞くことは出来なかった。


「ルカルド殿下、……詳しい事は後程」
兵士の一人はルカルドに声を掛けると、ちらっと私に視線を向けた。
きっと私に気を遣ってくれたのだろう。

「ああ…」
ルカルドは短い返事を返すと、そのままその屋敷から出た。

外に出ると新鮮な空気が入って来て心が安らいだ。
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