3 / 53
3.王子が絡んできた
しおりを挟む
入学式は恙無く行われた。
学園長の話から始まり、生徒会長からの挨拶と新入生代表の挨拶、そして教師の紹介へと進んでいった。
新入生代表は入学試験で1位を取った者がするらしく、選ばれたのドラグレス国の王太子であるルカルドだった。
私は席から挨拶を聞いていたけど、堂々とした喋りでさすがだなと感心していた。
後から知ったのだけど、この学園はかなり有名な魔法学園らしい。なんとかっていう大魔術師や、王立魔術団に在籍している人達もここの卒業生が殆どだとか。
私は住んでる場所から一番近い魔法学園がここだったという理由で受験したのだけど、希望したら全員がこの学園に通える訳では無かった。
年齢と魔法が使えれば誰でも入れると思っていたけど、それは入試試験の話だったみたいだ。
入学式が終わると新入生は自分のクラスの教室に散って行った。
私はドキドキしながらAクラスの教室に入った。
既に数名が教室にいて、賑やかな話声が聞こえて来た。
席の指定はなさそうだったので、私は目立たない一番後ろの端の席へと座った。
私は不安で仕方がなかった。
まさか自分がAクラスになるなんて思ってもいなかったからだ。
このクラスには平民は私以外に誰かいるのだろうか…。
Aクラスになってしまったことで、友人を作るのは絶望的になってしまった。
周りを見れば知り合いなのか仲良く談笑しているグループがいくつかある。
そんな光景を見ていると羨ましく思えてくる。
かと言って私には貴族の生徒に話しかける勇気なんて持ち合わせていない。
私は小さく溜息を漏らす事しか出来なかった。
暫くすると一際賑やかな話声が聞こえて来て視線を向けると、令嬢達に囲まれながら教室に入って来たルカルドと目が合った。
私は焦って勢いよく目を逸らしてしまった。
(……あんなに女の子に囲まれて…やっぱり王子って人気なんだなぁ…)
「隣…空いてる?」
「多分…空いてると思いま……」
暫くすると不意に頭の上から声が響いて来て顔を上げるとそこにはルカルドの姿があり私は固まってしまった。
「そうか、良かった」
「………」
ルカルドは何故か私の隣の席に座った。
(なんで…?席はいっぱい空いてるのに…)
「殿下は…前の方に座った方が宜しいかと…」
「殿下なんて呼び方はやめてくれ。クラスメイトなんだし俺の事はルカでいい。シンリーが前の席に移動するなら俺も行くけど…どうする?」
ルカルドは平然とした態度で話して来たけど、私は動揺していた。
「…殿下の事を名前で呼ぶとか…私には無理です…」
「どうして…?俺はシンリーの事を名前で呼んでるし、この学園内では身分は平等だってさっき話したよな?」
そんな事言われても、はいそうですかって受け入れられる訳がない。
私は平民で、ルカルドは王子で身分が違い過ぎる。寧ろ私に絡んで来るのは止めて欲しい…。
「じゃあ…こうしようか。シンリーがどうしても無理だって言うのなら、俺の事をルカと呼ぶのは命令だ。それなら問題なく呼べるだろ?」
「はい…?」
私の額からは変な汗が流れて来た。
「シンリーにだけ頼んでるわけじゃない。この学園にいる間は俺はただの一生徒で、シンリーとはクラスメイトだ。王子だからって特別な目で見られたくないんだ…」
ルカルドは少し悲しそうな顔をしていた。
ルカルドは学園にいる時だけは、王子ではなくただのルカルドになりたいのかな…。
特別な目で見られたくないって…そういう事だよね…?
(それに…そんな悲しそうな目で見られたら……)
「わかりました…。ルカ様って呼びます…」
「分かってくれて嬉しいよ、シンリー」
私がそう答えるとルカルドはふっと小さく笑った。
「ルカ様ー!こちらの席に来ませんかー?」
私達が話していると前の方から令嬢達がルカルドの事を呼んでいた。
「呼ばれてますよ、私の事はお気になさらず…行って来てください」
私が笑顔を浮かべながら答えるとルカルドは「シンリーも行くか?」と聞かれ私は即答で断った。
「私は端が好きなのでここで大丈夫です。殿…ルカ様は是非…行って来てください」
「そうか…分かった」
納得してくれたみたいで良かったとほっとしていると、ルカルドは前にいる令嬢達の方に視線を向けた。
「悪いな、俺は今日はここに座ることにするよ」
「……!?」
ルカルドはそう令嬢達に向かって言うと、私の方に視線を戻した。
「シンリー、ホームルームが終わったら学園内を少し周ってみないか?色々先に確認しといた方がいいだろう」
「…私と…ですか?」
「ああ、シンリーに聞いてる」
「…大丈夫ですけど…」
私が困った顔で言うとルカルドは「それなら決まりだな」と言った。
学園長の話から始まり、生徒会長からの挨拶と新入生代表の挨拶、そして教師の紹介へと進んでいった。
新入生代表は入学試験で1位を取った者がするらしく、選ばれたのドラグレス国の王太子であるルカルドだった。
私は席から挨拶を聞いていたけど、堂々とした喋りでさすがだなと感心していた。
後から知ったのだけど、この学園はかなり有名な魔法学園らしい。なんとかっていう大魔術師や、王立魔術団に在籍している人達もここの卒業生が殆どだとか。
私は住んでる場所から一番近い魔法学園がここだったという理由で受験したのだけど、希望したら全員がこの学園に通える訳では無かった。
年齢と魔法が使えれば誰でも入れると思っていたけど、それは入試試験の話だったみたいだ。
入学式が終わると新入生は自分のクラスの教室に散って行った。
私はドキドキしながらAクラスの教室に入った。
既に数名が教室にいて、賑やかな話声が聞こえて来た。
席の指定はなさそうだったので、私は目立たない一番後ろの端の席へと座った。
私は不安で仕方がなかった。
まさか自分がAクラスになるなんて思ってもいなかったからだ。
このクラスには平民は私以外に誰かいるのだろうか…。
Aクラスになってしまったことで、友人を作るのは絶望的になってしまった。
周りを見れば知り合いなのか仲良く談笑しているグループがいくつかある。
そんな光景を見ていると羨ましく思えてくる。
かと言って私には貴族の生徒に話しかける勇気なんて持ち合わせていない。
私は小さく溜息を漏らす事しか出来なかった。
暫くすると一際賑やかな話声が聞こえて来て視線を向けると、令嬢達に囲まれながら教室に入って来たルカルドと目が合った。
私は焦って勢いよく目を逸らしてしまった。
(……あんなに女の子に囲まれて…やっぱり王子って人気なんだなぁ…)
「隣…空いてる?」
「多分…空いてると思いま……」
暫くすると不意に頭の上から声が響いて来て顔を上げるとそこにはルカルドの姿があり私は固まってしまった。
「そうか、良かった」
「………」
ルカルドは何故か私の隣の席に座った。
(なんで…?席はいっぱい空いてるのに…)
「殿下は…前の方に座った方が宜しいかと…」
「殿下なんて呼び方はやめてくれ。クラスメイトなんだし俺の事はルカでいい。シンリーが前の席に移動するなら俺も行くけど…どうする?」
ルカルドは平然とした態度で話して来たけど、私は動揺していた。
「…殿下の事を名前で呼ぶとか…私には無理です…」
「どうして…?俺はシンリーの事を名前で呼んでるし、この学園内では身分は平等だってさっき話したよな?」
そんな事言われても、はいそうですかって受け入れられる訳がない。
私は平民で、ルカルドは王子で身分が違い過ぎる。寧ろ私に絡んで来るのは止めて欲しい…。
「じゃあ…こうしようか。シンリーがどうしても無理だって言うのなら、俺の事をルカと呼ぶのは命令だ。それなら問題なく呼べるだろ?」
「はい…?」
私の額からは変な汗が流れて来た。
「シンリーにだけ頼んでるわけじゃない。この学園にいる間は俺はただの一生徒で、シンリーとはクラスメイトだ。王子だからって特別な目で見られたくないんだ…」
ルカルドは少し悲しそうな顔をしていた。
ルカルドは学園にいる時だけは、王子ではなくただのルカルドになりたいのかな…。
特別な目で見られたくないって…そういう事だよね…?
(それに…そんな悲しそうな目で見られたら……)
「わかりました…。ルカ様って呼びます…」
「分かってくれて嬉しいよ、シンリー」
私がそう答えるとルカルドはふっと小さく笑った。
「ルカ様ー!こちらの席に来ませんかー?」
私達が話していると前の方から令嬢達がルカルドの事を呼んでいた。
「呼ばれてますよ、私の事はお気になさらず…行って来てください」
私が笑顔を浮かべながら答えるとルカルドは「シンリーも行くか?」と聞かれ私は即答で断った。
「私は端が好きなのでここで大丈夫です。殿…ルカ様は是非…行って来てください」
「そうか…分かった」
納得してくれたみたいで良かったとほっとしていると、ルカルドは前にいる令嬢達の方に視線を向けた。
「悪いな、俺は今日はここに座ることにするよ」
「……!?」
ルカルドはそう令嬢達に向かって言うと、私の方に視線を戻した。
「シンリー、ホームルームが終わったら学園内を少し周ってみないか?色々先に確認しといた方がいいだろう」
「…私と…ですか?」
「ああ、シンリーに聞いてる」
「…大丈夫ですけど…」
私が困った顔で言うとルカルドは「それなら決まりだな」と言った。
35
お気に入りに追加
2,782
あなたにおすすめの小説
愛する義兄に憎まれています
ミカン♬
恋愛
自分と婚約予定の義兄が子爵令嬢の恋人を両親に紹介すると聞いたフィーナは、悲しくて辛くて、やがて心は闇に染まっていった。
義兄はフィーナと結婚して侯爵家を継ぐはずだった、なのにフィーナも両親も裏切って真実の愛を貫くと言う。
許せない!そんなフィーナがとった行動は愛する義兄に憎まれるものだった。
2023/12/27 ミモザと義兄の閑話を投稿しました。
ふわっと設定でサクっと終わります。
他サイトにも投稿。
溺愛されて育った夫が幼馴染と不倫してるのが分かり愛情がなくなる。さらに相手は妊娠したらしい。
window
恋愛
大恋愛の末に結婚したフレディ王太子殿下とジェシカ公爵令嬢だったがフレディ殿下が幼馴染のマリア伯爵令嬢と不倫をしました。結婚1年目で子供はまだいない。
夫婦の愛をつないできた絆には亀裂が生じるがお互いの両親の説得もあり離婚を思いとどまったジェシカ。しかし元の仲の良い夫婦に戻ることはできないと確信している。
そんな時相手のマリア令嬢が妊娠したことが分かり頭を悩ませていた。
溺愛される妻が記憶喪失になるとこうなる
田尾風香
恋愛
***2022/6/21、書き換えました。
お茶会で紅茶を飲んだ途端に頭に痛みを感じて倒れて、次に目を覚ましたら、目の前にイケメンがいました。
「あの、どちら様でしょうか?」
「俺と君は小さい頃からずっと一緒で、幼い頃からの婚約者で、例え死んでも一緒にいようと誓い合って……!」
「旦那様、奥様に記憶がないのをいいことに、嘘を教えませんように」
溺愛される妻は、果たして記憶を取り戻すことができるのか。
ギャグを書いたことはありませんが、ギャグっぽいお話しです。会話が多め。R18ではありませんが、行為後の話がありますので、ご注意下さい。
王太子殿下の執着が怖いので、とりあえず寝ます。【完結】
霙アルカ。
恋愛
王太子殿下がところ構わず愛を囁いてくるので困ってます。
辞めてと言っても辞めてくれないので、とりあえず寝ます。
王太子アスランは愛しいルディリアナに執着し、彼女を部屋に閉じ込めるが、アスランには他の女がいて、ルディリアナの心は壊れていく。
8月4日
完結しました。
王太子殿下が好きすぎてつきまとっていたら嫌われてしまったようなので、聖女もいることだし悪役令嬢の私は退散することにしました。
みゅー
恋愛
王太子殿下が好きすぎるキャロライン。好きだけど嫌われたくはない。そんな彼女の日課は、王太子殿下を見つめること。
いつも王太子殿下の行く先々に出没して王太子殿下を見つめていたが、ついにそんな生活が終わるときが来る。
聖女が現れたのだ。そして、さらにショックなことに、自分が乙女ゲームの世界に転生していてそこで悪役令嬢だったことを思い出す。
王太子殿下に嫌われたくはないキャロラインは、王太子殿下の前から姿を消すことにした。そんなお話です。
ちょっと切ないお話です。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
最悪なお見合いと、執念の再会
当麻月菜
恋愛
伯爵令嬢のリシャーナ・エデュスは学生時代に、隣国の第七王子ガルドシア・フェ・エデュアーレから告白された。
しかし彼は留学期間限定の火遊び相手を求めていただけ。つまり、真剣に悩んだあの頃の自分は黒歴史。抹消したい過去だった。
それから一年後。リシャーナはお見合いをすることになった。
相手はエルディック・アラド。侯爵家の嫡男であり、かつてリシャーナに告白をしたクズ王子のお目付け役で、黒歴史を知るただ一人の人。
最低最悪なお見合い。でも、もう片方は執念の再会ーーの始まり始まり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる